「2019年の受注額は統計史上3番目の1兆6,000億円を目指す」日本工作機械工業会が賀詞交歓会を開く

 日本工作機械工業会(会長=飯村幸生・東芝機械会長)が去る1月9日、東京都内のホテルニューオータニで新年賀詞交歓会を開いた。あいさつの中で飯村会長は、2018年の好調な受注額について、「関係業界各社の的確な対応によって、競争力が強化・維持され好調な受注に繋がった。」と振り返り、今年の受注額については、統計史上3番目の1兆6,000億円を目指すと述べた。

技術面でも世界の工作機械産業を牽引

飯村会長
飯村会長
 あいさつに立った飯村会長は、日頃の感謝を述べたあと、「本日は、日工会として平成を締めくくり、次の時代を展望する賀詞交換会となった。平成の30年間に我が国工作機械産業は、質・量ともに大きく発展し、変貌を遂げ、平成初期には1兆円を切ることも多かった年間受注額は、近年では恒常的に1兆円を大きく超え、昨年では2兆円の背中が見えるところまで来た。外需比率も3割を切っていたが、今や約6割となって世界のものづくりを支えている。受注に占めるNC機の比率は98%に達している。」と述べ、技術面でも世界の工作機械産業を牽引していることを示した。

 昨年の感想について、「世界経済は前年を上回る成長軌道を歩み、我が国経済も緩やかな回復基調をたどった一方、国内では北陸での大雪、中国地方の集中豪雨や北海道の大規模地震など、自然災害が相次いだ。また、日本の品質が問い直された一年だった。海外では、米中の貿易摩擦の激化を始め、欧州各国の政治的混乱も広がり、内外ともに様々なリスクを内包した好調ながら、脆弱さも露呈した一年だった。」と振り返り、こうした環境下で、「わが国工作機械業界の受注は総じて好調に推移した。」と述べ、「外需でも、欧州・北米で設備投資が堅調な動きを示したが、中国では、年央以降、電気機械のみならず、一般機械や自動車等で設備投資に顕著な減速が見られ、海外市場はまだら模様となった。」との認識を示した。

 また、昨年11月に開催したJIMTOF2018について触れ、「JIMTOF2018では、国内外からの来場者数は、ともに過去最高を記録し、合計15万3,000人余りとなった。世界最高レベルの技術ショーに相応しいプレゼンスを示すことが出来たと思っている。」とし、お礼の言葉を述べた。

見通しについて

 飯村会長は、「工作機械業界では競争軸が変化しつつある。」としたうえで、「工作機械ユーザーは、これまでの高速・高精度・高剛性といった機械の基本的な性能に加え、IoT・AIを含めたユーザビリティ、工程集約化、自動化、ターンキーなどを訴求するようになっている。それと呼応した日工会会員企業を始め、関係業界各社の的確な対応によって、競争力が強化・維持され、好調な受注に繋がったと考えられる。これらの結果、2018年の受注総額は、11月時点で既に一昨年の水準を上回り、2年連続で史上最高額を更新した。」と述べた。

 また、2019年の受注額の見通しについては、「世界情勢は今、政治、経済、社会の各側面で流動化の度を増している。昨年末には株式市場も乱高下を示し、為替市場を含めボラティリティーの高い現在の環境を改めて実感する結果となった。受注環境についても潮目が変わり、軟調な部分が出始めている。中国については、生産過剰に対する緊縮策の影響が残るほか、半導体景況の悪化、スマートフォン需要の低迷、そして、益々先鋭化する米中対立など、複合的なマイナス要因から、設備投資の手控え感がある。他方、内需に加え、欧州、北米地域の需要には底堅いものがある。」とし、2019年の日工会受注額については、「1兆6,000億円を見込んでいる。この受注額は、2018年に比べると、約12%程度の減少だが、統計史上3番目の高い水準である。“山高ければ谷深し”というが、私どもは谷に向かって下っているわけではなく、現在の我が国工作機械業界は、力をつけ、山から次の山に向けて、尾根伝いを歩いているところだと認識している。不透明な環境下にあっても、世界の工作機械ユーザーが、競争軸のシフトを進める日本の工作機械メーカーに期待するところは大きいと考えている。」と力強く述べた。

 日工会の活動についても、「会員企業に共通する諸課題の解決のための基盤を提供することを旨として事業展開に努めたい。昨今の通商環境の目まぐるしい変化に的確に対応し、安全保障輸出管理等の業界共通の関心事項に関する、付加価値の高い情報の提供に努めていく。」としたうえで、「技術分野では、Connected Industries 構想に向けたアクションプランとして、産学官が連携してIoTやAI技術を進化させ、業界各社を通じての共有領域の拡大を図る。次回JIMTOFは、2020年、オリンピック後の開催となる。昨年のJIMTOF・ 2018の開催結果を基に課題を抽出し、国際性や社会一般への工作機械の認知度等の更なる向上を目指して、開催準備に取り掛かる」とした。

 また、日工会では、2012年に『工作機械産業ビジョン2020』を取りまとめ、中長期的視点から我が国工作機械産業が対処すべき以下の四つの課題を抽出している。

①産学官連携の強化、②標準化戦略の強化、③JIMTOFの求心力の強化、④人材の確保・周知策の強化―――IoTやConnected Industuriesの構想等、その後の状況変化に応じてビジョンを随時補完し、技術・情報・人材の一体的強化を図るとしている。また、2021年の創立70周年に向けて、「技術や需要構造、国際競争環境の変化に対応していくための
戦略を策定する準備に取り掛かりたい。」とした。

「さらなる海外市場の開拓を」経済産業省 井上製造産業局長

経済産業省 井上 製造産業局長
経済産業省 井上 製造産業局長
 来賓を代表して井上宏司 経済産業省製造産業局長が、「工作機械業はマザーマシンと呼ばれるように製造業の根幹を支える重要な産業である。今年1年が業界のさらなる発展と成長の年になることを祈念している。」とあいさつをした。また、通商関係について触れ、「このところ保護主義的な動きが懸念されている。知的財産や技術を巡る国際的な覇権争いがあり、不透明で懸念される動きのある中、昨年の末にはTPP11が発効、今年2月には日 EUのEPA協定が発効される。この工作機械業界もさらなる海外市場の開拓をして頂きたいと考えている。ソサエティ5.0に向けた第四次産業革命、コネクテッドインダストリーズの推進についても、工作機械業界が先陣を切って積極的に取り組んでいる。昨年のJIMTOFでもIoTやAIを活用した様々な技術製品等を展示し、会場全体を繋ぐといった取り組みを行って頂き、過去最多の出展者数・来場者数を記録した。今後の受注増にも貢献するものとして期待をしたい。」と声援を送った。また、中小企業との取引適正化について、「政府をあげて取り組んでいる。サプライチェーン全体として持続的にウィンウィンの関係で成長を続けて行けるような取り組みだが、工作機械業界においては昨年の2月に樹種行動計画を策定して頂き、こうした取引の適正化にも取り組んで頂いている。特に成果が出ているところでは、不合理な原価低減要請を行わないという徹底については、全体の8割超が対応されている。」として、感謝の意を表した。

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