「競争力の変化に対応しうる人材が必要」日本工作機械工業会が総会を開く

会見の席で工作機械業界を取り巻く環境等を説明する飯村会長
会見の席で工作機械業界を取り巻く環境等を説明する飯村会長
 日本工作機械工業会(会長=飯村幸生 東芝機械会長)が、5月31日、東京都内のホテルニューオータニで定時総会を開いた。

 総会終了後の記者会見で飯村会長は、「変化の激しい不透明な時代に会長職を拝命し、身の引き締まる思いがしている。伝統ある会長職の重さを痛感するとともに大きな使命感を感じている。先人が築き上げてきた、長い歴史を受け継ぎ、わが国の工作機械業界のさらなる飛躍を期して将来に向けて盤石な礎を築くことが会長としての私の大切な役目であると考えている。」と意気込みを示した。

 また、業界を取り巻く環境に触れ、「トップレベルの製品とサービスの提供を通じて世界のものづくりに貢献をしてきたが、現在日本の工作機械業界は極めて大きな変化を孕んだ曲面を迎えている。技術面では高速・高精度・高剛性といった機械の性能に加え、省人力力・人口減少を背景としてIoT、AIを含めたユーザビリティ、工程集約化、自動化など、工作機械業の競争軸が変化しつつある。人材面では将来にわたって業界の基盤を維持していくために競争力の変化に対応しうる人材が必要となる。社会一般に対して工作機械業界の認知度を上げ、人材の確保、育成、技術、技能の育成と継承を着実に進めていかなくてはならない。」との認識を示した。

 今後2年間の日工会活動については、「工作機械ビジョンに指摘された4課題は当業会にとっては永遠のテーマである。IoT、コネクテッドインダストリーズの構想、自動化電動化への対応など、この後の状況を踏まえてビジョンを補完、強化し、技術・情報・人材の一体的強化を図っていく。この他、国際交流の促進、国際交流の促進、環境問題への取り組み、広報活動の強化など 、 幅広い事業についてコンプライアンスを遵守しつつ、展開していく。」と豊富を述べた。

「工作機械業界は世界市場で健闘」

 懇親パーティであいさつに立った飯村会長は、「年初の賀詞交歓会で、今年の工作機械業界は、 山から次の山に向けて尾根伝いを歩いているところと申し上げたが、尾根道には霧が立ち込め、先行き不透明感が広がっている状態だ。このところ、日工会受注額は、やや減速傾向を示し、年初見通しの年間 1 兆 6,000 億円を下回るペースで推移しているが、受注額自体は、なお高水準を維持しており、我が国工作機械業界は世界市場で健闘しているといえる。」との認識を示し、わが国を取り巻く情勢についても触れ、「産業も、経済も、社会も大きな変動の時期を迎えており、通商環境面では、米中摩擦あるいは対立が激化して、異なる社会システムや価値観の相克と覇権争いの様相を呈し、長期化する気配を見せている。Brexitの行方を始め、欧州各国の政治情勢は不透明感を増している。世界の製造業は、生産体制やロジスティックスの再構築など、パラダイムシフトといえるほどのインパクトを受ける可能性がある。他方、インドやアフリカ諸国の新たな経済的発展も見通される。」と述べた。

 技術開発については、「AIや、5Gの活用によるIoTの更なる発展、AdditiveManufacturing技術の洗練、複合加工の拡大が見込まれる。各国での少子高齢化の進展や労働力人口の減少に伴って、自動化や省力化の要請も高まると見ている。最大のユーザーである自動車産業では、世上、CASEと呼ばれる、一段の電動化や自動運転等の進展に伴う需要の変化が見込まれる。変貌する世界の産業、経済、社会の中で、我が国工作機械産業がどのようにすれば現在の優位を保ち、世界のものづくりの基盤として生き残っていけるのか、中々容易なことではないが、これからの事業環境は、強い逆風に抗して荒海を行くヨットのように、最善のコースを求めて帆を引き絞り、幾度も機敏に進路を切り替えつつ、波しぶきを浴びながら進まねばならない場合が多いだろう。会員各社がそれぞれ明確なビジョンと確固たるスキルを持って、変化する需要を捉え、機敏な経営を推進していかなければならない。」と意気込みを示した。

 日工会では、2012年5月に『工作機械産業ビジョン2020』を取り纏めているが、この件について飯村会長は、「①産学官連携の強化、②標準化戦略の強化、③JIMTOF求心力の強化、④人材の確保・周知策の強化、これらの4つの課題を中心に、鋭意事業を推進してきた。このうち、技術分野では、産学官連携によって、世界最先端の省エネ型工作機械の試作機を完成させる等、所要の成果を挙げた。国際標準化についても、我が国の提案の国際規格化に向けた活動が進んでいる。昨年のJIMTOF・Tokyo 2018は会員各社にご尽力を頂き、過去最高の来場者を得て大変な盛況となった。企画展示においては「繋ぐ」をキーワードに工業会の一体感をユーザーに示すことができた。人材確保・周知に関する事業についても、トップセミナーに過去最多の参加者を得る等、関係方面の理解が深まって来ている。」と述べた。

 2021年に創立70周年を迎えるにあたり、「この機会に、我が国工作機械業界が辿って来た足跡を、技術動向、需要構造、市場環境、国際競争条件等の変化に即して整理し、2020年代における我が国工作機械産業の戦略策定に向けた作業に具体的に取りかかりたい。技術の錬磨と情報化への対応は我が国工作機械産業の基盤であり、それを支えるのは人材である。我が国工作機械業界の技術・情報・人材の一体的レベルアップを図るべく、技術や輸出管理、サービス等の研修を通じた総合的な人材育成支援の在り方についても、早急に検討を進めていく。」とした。

経産省 廣瀬 大臣官房審議官
経産省 廣瀬 大臣官房審議官
 来賓を代表して、廣瀬 尚 経済産業省大臣官房審議官が、「米中摩擦が大きな課題になっている。世界の産業界にとっても難しい局面を迎えているのではないか。われわれも引き続き注視していく所存である。米中の関係については、単なる通商摩擦を超えて技術覇権争いといった要素が強まっている。昨年末にはTPP11が発効し、本年2月には日EU・EPAが発効した。こうした動きを新しい技術展開に繋げていただければと思っている。さらに最近、日米の貿易交渉も始まった。世界中で自由で公正な通商市場の発展が日本や米国に留まらず、各国の経済発展に繋がっていくので、粘り強く交渉を進めていきたい。」とあいさつをした。

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