日工会が創立60周年を迎え記念式典を開催

 日本工作機械工業会(会長=横山元彦氏、ジェイテクト会長)が、都内のホテルニューオータニで創立60周年記念式典ならびに祝賀会を開催した。
冒頭に中村健一副会長(中村留精密工業社長)が開会の辞を述べ、次いで横山会長が挨拶をした。挨拶の概要は次のとおり。



臥薪嘗胆を重ねつつ世界最高水準の工作機械で世界に貢献

あいさつをする横山元彦会長
あいさつをする横山元彦会長
 「昭和26年、1951年12月に任意団体として創立されて以来、昭和53年の社団法人への改組を経て平成23年の今日、創立60周年を迎えました。わが国工作機械産業は、他の産業と同様に文字通りゼロからのスタートを切りましたが、先人たちは諸産業の基礎である工作機械工業の使命をよく認識し、産学官の緊密な連携のもとに、優秀な欧米の工作機械の水準に追いつき、追い越すことを目標にして互いに切磋琢磨し、日々地の滲む努力をされてまいりました。わが国工作機械の性能は飛躍的に向上し良質な製品を適正な価格で迅速かつ安定的に供給できるに至り、1982年からの27年間にわたり、工作機械の生産額において連続して世界一を記録するまでに成長しました。今日におきましてもわが国工作機械産業は世界最高水準の技術力で世界のものづくりに貢献しております。しかしながら世界一になってからの道のりも決して平坦なものではありませんでした。思い起こせば特に60周年を迎えるこの10年間を振り返りますと、前半はITバブルの崩壊と同時多発テロに伴う不況に見舞われました。その後、BRICsを中心として新興諸国の目覚ましい経済発展を支えにして世界経済は大きく好転しました。工作機械の受注額も2003年以降急速に回復し2004年から5年連続で1兆円を超える高水準を確保したのち、2007年には史上最高となる1兆5900億円を記録するに至りました。しかし2008年のリーマンショックを境に世界経済は100年に1度と言われる大不況に突入し、受注額もピーク時の1/4近くまで激減するなど、業界は存亡の危機に立たされました。この未曾有の不況において業界は一致団結して臥薪嘗胆を重ね、円高に苦しみながらも中国をはじめとする新興諸国からの旺盛な工作機械需要を糧にようやく捲土重来を果たせる土壌にまで回復してまいりました。これに伴いまして、従来5割程度であった外需比率が今ではほぼ7割の水準にまで伸長し、世界経済の牽引役が欧米から新興国にシフトするなど業界を取り巻く市場環境は一変するに至りました。加えまして工作機械の新需要として台頭したこれらの新興諸国では、工作機械の生産、技術レベルも急速に向上しました。今日では日本、中国、韓国、台湾のアジア勢が世界生産の約65%を占めるに至っております。一方で技術面におきましてはコスト削減と品質維持の両立を可能にした多軸、複合化技術が大きく進展したほか、難削材加工、超精密加工、ロボット等を組み合わせた知能化などわが国の工作機械は多面的な進化を遂げており、実質的なトッププレーヤーとして引き続き世界をリードしております。このようにわが国工作機械産業は、技術的優位に立ちながらも、大きな環境変化に直面する中、本年春先に発生しました東日本大震災によりまして、日本経済も大きな影響を受けました。会員企業の懸命の努力により、震災時の生産設備は早期に復旧を果たしましたが、今なお震災による電力不足の長期化が懸念されています。また最近では欧米の財政問題を引き金とし、急速に円高が進行し、10年前は1ドル120円程度であった為替相場も最近では1ドル70円台半ばで推移するなど、外需が拡大する中におきまして、われわれ業界は極めて厳しい状況に追い込まれております。加えてこの歴史的円高により一部のユーザー産業では海外移転が急速に進展するなど国内製造業の空洞化問題が再燃しているのが現状であります。しかしながら、今や世界の総人口は70億人を突破しました。新興国を中心とした自動車や家電などの工業製品の生産増加に伴いまして、工作機械の需要もグローバルマーケットの中では更に拡大していくことが期待をされています。このように考えれば工作機械産業はまだまだ成長産業であり、その展望は極めて明るいと確信をしております。この確信を具現化するためには、市場拡大の期待がもたれる中国、インド、ASEAN地域について一層の需要開拓を推し進めるとともに、現地のニーズに適した製品の開発、供給からアフターサービスに至るまで競合する国々との差別化を図るべく、業界の知恵を絞って総合的な戦略を構築する必要があります。このような状況下でわが国工作機械産業が今後とも成長を確かなものにするには、まずは優位な人材が不可欠であることはいうまでもありません。近年では少子高齢化による若年労働力の不足や団塊世代の定年退職に伴う技術、技能の継承問題が深刻化する中、次代を担う人材の確保と育成が喫緊の課題となっております。経営面でも多くの会員企業が世代交代の時期を迎えております。幸いにして当工業会は会員が一丸となり、その時々の難関を乗り越えて行くという長く培われた素晴らしい伝統があります。今後とも世界トップクラスのマザーマシンの供給国として、この地位を維持強化すべく産学官の連携強化をはじめ、次世代技術開発の促進、会員各社の経営基盤の向上など工業会が全力を挙げて取り組む所存です」。

受賞者を代表して謝辞を述べる牧野二郎副会長
受賞者を代表して謝辞を述べる牧野二郎副会長
 経済産業大臣表彰、製造産業局長表彰が行われ表彰状並びに記念品がそれぞれ授与され、牧野二郎副会長(牧野フライス製作所社長)が受賞者を代表して「創立60周年記念式典にあたり、経済産業大臣ならびに製造産業局長より表彰状を賜り厚く御礼を申し上げる次第であります。当工業会がここまで発展しましたことは、経済産業省をはじめご列席の皆さま方の温かいご指導ご支援によるものであり、工作機械産業は自国産業の行く末とともに発展してまいりました。産業構造の変化する中にあって、日本工作機械工業会メンバーはあらゆる局面に対応するべく技術開発を進め、研鑚を進めてまいります」と謝辞を述べた。

あいさつする黒田篤郎大臣官房審議官
あいさつする黒田篤郎大臣官房審議官
 続いて会長感謝状並びに表彰状が贈呈された。来賓を代表して上田隆之経済産業省製造産業局長の代理である黒田篤郎大臣官房審議官が、「様々な産業の礎として工作機械は日本の産業を支えてきたと思って過言ではありません。また、代表的な輸出製品として長年貢献してきました。今では世界でトップクラスの技術を活かして東アジアをはじめ世界中の製造業を支える大きな力になっていると周知しています。会員企業の皆さまのご尽力に心から敬意を表したいと思います」と祝辞を述べた。閉会の辞は森雅彦副会長(森精機製作所社長)が述べ、第一部の記念式典は終了した。

業界は中国・インド・ASEAN 巨大市場が横たわっている環境下にある

第2部・開会の辞を述べる稲葉善治副会長
第2部・開会の辞を述べる稲葉善治副会長
場所を移して第二部の祝賀会が開かれた。
開会の辞を稲葉善治副会長(ファナック社長)が述べた。この中で稲葉副会長は、「こうしたたくさんの方々と60周年、還暦を迎える祝賀会を迎えることができて大変嬉しく思います。10年前の50周年からを振り返ってみますと、まさに試練の連続というような10年間でした。50周年を迎えたときにITバブルの崩壊、それから3年前のリーマンショック、今年に入ってからは東日本大震災、そして現在も続いておりますタイの洪水では多くの日経企業が被災されております。これに追い打ちをかけるように超円高という、私どもの業界をこのような試練が降りかかっております。このような中で27年間守り通してきた世界一の工作機械の生産高も中国に首位の座を明け渡しておりますが、こういったネガティブな面だけではありません。業界が一致団結して乗り越えております。日本がこれまで培ってきた技術力、勤勉な国民性、また、極端な個人主義に走ることのない協調性をともなった国民的な性格、こういった強い見方がある限り、品質・性能に関して世界のトップを走っていけると思っております。そして隣にアメリカ、ヨーロッパを凌ぐマーケットができたと考えれば今後中国、インドとASEANという巨大な市場が横たわっています。日本の工作機械業界は大変明るいと感じています」と述べた。
 横山会長があいさつを述べたあと、黒田審議官が来賓の祝辞を述べた。鏡開きが行われ、宴たけなわのころ散会した。

■経済産業大臣表彰(役員歴順)
・松浦正則 松浦機械製作所会長
・鴫谷 定昌 シギヤ精機製作所相談役
・牧野二郎 牧野フライス製作所社長
・中村健一 中村留精密工業社長
・野田謙一 碌々産業会長
・北村耕一郎 キタムラ機械会長

■製造産業局長表彰
・山口元造 新日本工機副会長

■会長表彰■
学識経験者(五十音順)
・青山藤詞郎 慶應義塾大学理工学部長・教授
・上野 滋 機械振興協会元理事・技術研究所次長
・齋藤義夫 東京工業大学教授
・清水伸二 上智大学教授
・新野秀憲 東京工業大学教授
・竹内芳美 中部大学教授
・堤 正臣 東京農工大学教授
・光石 衛 東京大学教授
・諸貫信行 首都大学東京教授

役員 会長歴任者
・大西 匡 ジェイテクト顧問

役員 副会長歴任者
・山田隆哉 ジェイテクト相談役

役員 永年役員(役員歴順)
・柏 淳郎 オークマ前会長
・樫藤達郎 カシフジ社長
・森 昌彦 森精機製作所社長
・山岡靖幸 神崎高級工機製作所社長
・高松喜与志 高松機械工業社長

永年会員(アルファベット順)
創立以来の会員(20社)
・大日金属工業
・浜井産業
・ジェイテクト
・唐津鐵工所
・カシフジ
・牧野フライス製作所
・三菱重工業
・三井精機工業
・新潟マシンテクノ
・野村製作所
・岡本工作機械製作所
・オークマ
・オーエム製作所
・大阪機工
・碌々産業
・新日本工機
・滝澤鉄工所
・トーヨーエイテック
・ツガミ
・和井田製作所

在籍50年以上の会員(12社)
・シチズンマシナリーミヤノ
・エンシュウ
・不二越
・富士機械製造
・キタムラ機械
・コマツNTC
・村田機械
・日進機械製作所
・大垣鐵工所
・西部電機
・ヤマザキマザック
・安田工業

在籍40年以上の会員(16社)
・エグロ
・ホーコス
・豊和工業
・市川製作所
・神崎高級工機製作所
・コンドウ
・光洋機械工業
・倉敷機械
・松浦機械製作所
・中村留精密工業
・シギヤ精機製作所
・静岡鐵工所
・スター精密
・東洋精機工業
・山崎技研

在籍30年以上の会員(10社)
・ファナック
・ホンマ・マシナリー
・キリウテクノ
・紀和マシナリー
・三菱電機
・森精機製作所
・小川鉄工
・桜井製作所
・ソディック
・津根精機

在籍20年以上の会員(6社)
・アマダマシンツール
・ブラザー工業
・黒田精工
・共和産業
・大鳥機工
・高松機械工業

事務局永年職員
・山本元芳
・大槻文芳
・本多啓子
・佐藤節子
・峰 葉子
・田中一彦
・市村 修

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