年頭所感(日本小型工作機械工業会/日本工具工業会/超硬工具協会/日本金型工業会)

多様化、細分化、多層化が進行する中にチャンスはある
●日本小型工作機械工業会 会長 長瀬幸泰

2012年の年初に当たりまして、ご挨拶申し上げます。
旧年中は、当工業会に対しまして格別のご厚情とご高配を賜り誠に有り難う御座います。
東日本大震災や記録的な豪雨をもたらした台風、更にタイの大洪水による歴史的な大被害に遭われました皆様、企業様には衷心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧、復興をお祈り申し上げるばかりです。

本年は、昨年に引き続き、激動と混沌とマダラ模様の一年になるのではないかと考えております。あらゆるもの、事柄が一言ではくくりきれない多様化、細分化、多層化が益々進行する年であると思います。同じ経済圏でも良い国とそうでない国、同じ業界でも業績好調な企業とそうでない企業がないまぜに存在し複雑な相互作用によって難しい対応が求められます。ソブリンショックなどの深刻な問題もありますが、同時にこのような状態は、誰にでもチャンスのある状態であることを意味致します。当工業会は、このような時代の大きな変化に対応すべく、「人財の育成」と「会員相互の信頼の構築」を重視した活動を行う一方で『未来創成委員会』を立ち上げ、一年かけて今後の当工業会のあるべき姿を模索致して参りました。多くの方の英知と共感を基に本年は一定の方向性の確立と具体的な行動のスタートの年とさせて頂く所存で御座います。

何卒、倍旧のご指導、ご鞭撻を賜ります様お願いを申し上げます。

工具はモノづくりの鎹(かすがい)
●日本工具工業会 理事長 増田 照彦

ちょうど一年と少し前の初冬、ひょんなことから「鎹」という漢字は「かすがい」と読むことを知りました。「かすがい」はホッチキスの針のような、そっけなく単純な形状なのに「仲を取り持つ」「繋ぎ合せる」という大事な機能を果たしていることに魅力を感じました。そんなふうに生きたいものだし、役にたちたいものだと、2011年の年賀状には押上にある馴染みの長屋茶房の絵に加え一文字「鎹」と記しました。

その時には「鎹」の心もちで一年が乗り切れるし乗り切ろうと考えておりましたが、まったく知らぬが仏で、それが3月11日以降は世の中が「絆」一色になりました。

理不尽な複合災害時には、お客様へのご迷惑を最小限にと、のたうちまわりながらも対応し、夏の節電もなんとか乗り切りました。私たちの主力産業である自動車業界も震災影響を取り戻すべくフル生産を計画されていたことから、景気も順調な回復を辿るに違いない、何か流れを変えるひとつの好機にしたいなどと市場が自信を取り戻しつつありました。

ところが文字通り、降ってわいたタイの洪水がサプライチェーンの寸断をひきおこし、自動車産業はもとより、電気、機械、素材と幅広い産業に悪影響を与えることになりました。そして為替においても、欧州ユーロ圏の信用不安からくる円の独歩高が際限なく進み、史上最高値を更新するなど、企業収益を押し下げ、海外生産の一層の加速による国内産業の空洞化が心配される昨今であります。よくもまぁ次から次へとあらゆる課題が私たちの試練のネタになるものだと呆れるほどやってくるものです。

そんな状況下、当工業会は平成23年度の生産額を昨年度に続いて1000億円を超えると見通しました。なかなかしぶとい存在感であります。

新年度になれば、各産業にて昨年度来の作り損ねた挽回生産が始まり、秋にはJIMTOFが「匠の技と先端技術の融合」というテーマで開催されます。高度な熱処理技術、優れた材料技術と最先端のコーティング技術を生かしたかけがえのない商品をお客様に提供することで社会に貢献してゆきたいと考えております。

環境対応については温暖化、廃棄物対策、化学物質管理に取り組んでおりますが、前年度実績をベンチマークにして第二次環境自主行動計画を策定し取り組んでおります。

そしていよいよ来年5月には世界切削工具会議(WCTC)が京都で開催されます。現在、超硬工具協会と共同で実行委員会を立ち上げ、準備を開始しました。あらゆる難事から見事に立ち直った元気な日本を世界にお見せできるよう魅力的なプログラムを提供してゆきたいと考えております。

昨年は「絆」に意識が集中しましたが、あらためて「鎹」を想い起こし、お客様、商社様と「かすがい」。超硬工具協会とも「かすがい」、当工業会会員の皆様同士で「かすがい」、そもそも工具はモノづくりの「かすがい」なのでありました。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。            

品質と日本ブランドの強みで国際競争力を維持
●超硬工具協会 理事長 田中啓一

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
昨年を振り返りますと、年頭においては、2008年のリーマンショックを乗り越え、日本経済にも、ようやく明るい陽射しが射すものと思っておりました。

しかしながら、3.11の「国難」ともいうべき、東日本大震災を経験いたしました。日本国民は総力をあげ、復興に邁進してきましたが、まだまだその傷跡は癒されておりません。
また、追い打ちをかけるように、10月にタイにて大洪水が発生し、洪水自体は終息を迎えたものの、自動車関連を主として部品調達等、我が国の産業に大きな影響がでており、生産活動の全面的な回復までにはもうしばらく時間がかかると思われます。

世界経済は、リーマンショック以来、世界経済を牽引する地域や国の存在が無い状況となり、さしもの中国市場も伸び率の鈍化がみられ、ヨーロッパの一部地域の政府債務危機は、更に景気が下振れするリスクとしてマイナスの要素をもっています。

日本経済は、東日本大震災の影響に端を発して依然として厳しい状況にありますが、今年は緩やかに持ち直すことが期待されています。具体的には、個人消費については供給量の回復による自動車販売、自粛ムードの後退による旅行等のサービス消費が持ち直してくると考えられます。設備投資については震災後に手控えられていた投資活動が再開され、震災からの復旧需要が見込まれています。

我々製造業では、東日本大震災の影響で一旦大きく落ち込んだ生産活動が、サプライチェーンの立て直しや各種の政策効果等を背景に徐々に回復しました。夏場の電力不足も節電の工夫等により何とか乗り切り生産活動を後押ししました。情報通信部門に停滞はあるものの、国内生産に占めるシェアが高い業種では、前向きな動きが見られ、緩やかながら景気の持ち直し傾向が続くことが期待されています。

当協会において、超硬工具出荷額は、2011年度上期は1,453億円(実績)でありました。2011年度下期は、国内外の経済、産業指標は先行き不透明感があるものの、工作機械、自動車、産業機械産業と同様に、主として中国をはじめとするアジア地区の新興国需要に支えられると予想されます。2011年度通期の出荷額を、不透明な要素は見られるものの、3,020億円(見通し)と策定いたしました。しかし、この見通しは、ピーク時でありました2007年度の3,572億円の84.5%であり、まだまだ「道半ば」という思いであります。

当業界の製品主原料であるタングステン(APT)価格は、10㎏当たりの単価が昨年末時点で450ドル前後と、依然として高止りを継続しており、主要生産国の統制等により多少のぶれはあるものの、急激に価格が下降するとは考えられません。そのような状況の中で、我々の使命は、弛まぬ技術革新により、さらに製造原価を抑え、その品質と日本ブランドの強みでもって国際競争力を維持することにあります。

また、理事長としてお願いをしてきましたが、企業の責務である「コンプライアンス」を最優先とし、業界全体がお互いに切磋琢磨し、共に栄えていかねばなりません。
時代は、我々に新たな環境とチャレンジの場を提供します。

本年も一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。最後になりましたが、皆様のご多幸とご発展を心よりお祈り申し上げ、新年のご挨拶といたします。

生き残りをかけてあらゆる諸方策を駆使
●日本金型工業会 会長 上田勝弘

謹んで平成24年度の新春を迎えてのご挨拶を申し述べます。
会員の皆様も引き続き厳しい経営環境を耐えしのぎ心新たに新春を迎えられた事と存じます。

昨年は天災、人災、経済災という複合災害に見舞われた戦後最大の日本列島受難の年であったと思います。一日も早く被災地の復興が進展する事を切に願っております。しかしながら日本の〝ものづくり産業〟特に我々金型産業は、引き続き大手ユーザーの海外進出が止まらず、受注額が大きく減少し続けております。超円高現象も長期化するものと思われます。

また、金型の受注コストも人件費、電気、材料、輸送費、法人税率等々、アジア諸外国に比べてすべて高く、まるでハンディキャップのあるゴルファーがスクラッチで勝負するようなものですから、基本的に勝ち目はありません。品質レベルで同等クラスの金型は海外調達が多くなっています。

我々がこれからの生きる道は、①自社の得意技術を強くしていくこと ②営業力を強化すること ③海外進出する体制を作り上げること ④他社との連合を考え企業力を強くすること ⑤国内の人材の育成や海外との人的ネットワークを構築すること ⑥中小企業に対する補助、支援制度を効果的に活用すること ⑦国内外のユーザー等の情報を最大にキャッチしながら経営戦略を立てることなど、色々な諸方策を駆使して頂きたいと思います。

社団法人日本金型工業会は、会員の皆様の身近に発生する取引上のトラブルや相続や知的財産権問題、経営の問題等にもお応え出来るべく、経済産業省との連携を強めて頑張る所存でありますので、会員の皆様方も一体となって金型工業会活動を盛り上げて頂く事を期待しております。

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