平成24年ダイカストマシン短期需要見通し

日本ダイカストマシン工業会(会長=辻 眞氏)がこのほどまとめた「平成24年ダイカストマシン短期需要見通し」は次のとおりとなった。

[1]平成23年の市場
平成23年の日本経済は、東日本大震災によるサプライチェーンの寸断や電力供給制約といった深刻な打撃をうけた。その後官民総力を結集して復旧・復興の努力を通じてサプライチェーンの急速な立て直しが図られ景気は持ち直しに転じたが、夏以降は急速な円高の進行や欧州債務危機の顕在化により世界経済が減速し景気の持ち直しや緩やかなデフレ傾向が続きGDP実質成長率はマイナス0.1%程度に推移した。

国内においては、10月以降エコカー補助金の復活により低価格・環境対応車を中心に自動車販売が回復したことなど、政府の復興支援効果がシ団に拡大したものの本格的な回復には至らなかった。作行きの仕事量の不透明感が残ったことや、顧客からのコストダウンの要求が激しく、ダイカストメーカーの経営環境や収益性は依然として厳しい状況にあった。

世界経済は、自動車市場を中心にBRIC‘Sを含む新興国での市場拡大が進み、それに伴い部品調達のグローバル化が加速した。米国の個人消費が堅調なことから自動車販売の復調が見られ、メキシコを含む北米での設備需要が高まった。さらに低価格・コンパクト車の潜在需要が高い中国、インド、韓国での設備需要が増加した。また、東南アジアにおいては二輪車の増産が継続したことや、所得の向上に伴い自動車の需要も拡大し設備需要に繋がった。

このような外部環境の中にあって、
①ダイカストの国内生産量は92.6万トン、前年比5.6%減となった。
②ダイカスト需要の85.3%を占める国内自動車生産台数は840万台、前年比12.8%減となった。
③ダイカストマシンの生産台数は706代、前年比10.0%増となった。
④ダイカストマシン(付帯装置を含む)の生産額は269億4800万円、前年比44.0%となった。
⑤ダイカストマシンの国内向け出荷台数は163台、前年比127.7%増となった。
⑥ダイカストマシンの輸出については台数で601台、前年比4.3%増、また、金額では194億5700万円、39.9%増となった。
⑦ダイカストマシンの全出荷台数は764台、前年比12.5%増、また、全出荷額では242億8500万円、前年比51.5%増となった。
⑧主な輸出国(金額ベース)は1位中国、2位韓国、3位タイ、4位インドネシア、5位インド、6位ベトナムの順となり、東アジアと東南アジアの合計で全輸出額の93.5%を占めた。
⑨ダイカストマシンの付帯装置を含む全出荷額は277億4100万円、前年比47.1%増となった。

(1)コールドチャンバ機の市場
平成23年の全体の出荷実績は697台で前年の631台に対し10.5%増加した。

内訳は、国内向けは140台で前年の89台に対し、57.3%増、輸出が557台で前年の542台に対し2.8%増となった。

輸出比率は平成22年の85.9%から6.0ポイント減少し79.9%となった。

出荷台数を型締区分別にみると、150トン未満を除き、全ての区分で前年を上回った。

これらの数字にみられるように、秋以降東日本大震災後の自動車生産の挽回策を背景に国内ダイカスト設備の稼働率は概ね80%~90%程度まで回復が見られたことに加え、リーマンショック後長引いていた買い控えの反動で凍結されていた設備投資の回復がみられ環境対応・省エネ技術も負荷した設備への更新需要へ繋がった。一方、極端な円高の長期化に伴い海外への生産シフトが継続的に進んだ。

他方、中国市場を筆頭とする新興国での自動車生産拡大、韓国での小型車生産設備の急拡大、東南アジア地域での自動車、二輪車生産の拡大、さらにメキシコでの日系の生産拡大等増加要因があったものの、円高情勢に加え欧州金融不安あy中国金融引き締めによる下押し要因もあり、輸出は2.8%の小幅出荷増に留まった。

型締区分別に出荷台数をみると
①150トン未満           98台(前年比24.0%減)
②150トン~300トン未満      70台(前年比18.6%増)
③300トン~500トン未満      270台(前年比2.3%増)
④500トン~1000トン未満      200台(前年比35.1%増)
⑤1000トン以上           59台(前年比90.3%増)

(2)ホットチャンバ機の市場
平成23年の全体の出荷実績は67台で、前年の48台に対して39.6%増となった。

内訳は、国内向けが23台で前年14台の64.3%増、輸出は44台で前年の34台に対し29.4%増となった。

輸出比率は平成22年の70.8%から5.1%ポイント減少し65.7%となった。

出荷台数を型締区分別にみると、前年と比べて30トン未満及び100トン以上では増加、30トン~100トン未満では減少した。

30トン未満の国内市場においては、年明けから前半にかけてはリーマンショック後長引いていた買い控えの反動で凍結されていた更新需要が順調に推移していたが、後半は東日本大震災の影響を受けて伸び悩んだ。

また、輸出において中国、インド、東南アジアで二輪車、自動車及びIT関連、玩具の増産で需要があった。その中でも東南アジア向けの二輪車関係の需要が特に好調であった。そしてダイカストメーカーにおいても生産拠点の海外シフトが進み、輸出比率が相変わらず高く推移した。

型締区分別に出荷台数をみると
①30トン未満        43台(前年比104.8%増)
②30トン~100トン未満   12台(前年比25.0%減)
③100トン以上        12台(前年比9.1%増)となった。

[2]平成24年の市場見通し
平成24年の日本経済は、本格的な復興施策の集中的な推進によって雇用・所得環境の改善が見込まれることにより、民間住宅投資及び民間設備投資は増加する予想であり、さらに外需についても、高成長を維持する中国、インド、東南アジア及び北米、中米向け輸出の伸長により緩やかな回復傾向を維持するものと思われる。国内の物価動向も消費者物価がわずかながらも上昇に転じ、日銀のインフレ目標を軸にデフレ脱却に向けた取り組みが想定される。

2012年の世界経済は、主要国が昨年来金融引き締め政策から金融緩和景気刺激策に舵を切っており、緩やかな成長が維持されるものと思われる。但し、欧州の経済・市場動向が引き続き懸念される。

米国経済は昨年10月~12月の実質GDPは、個人消費を支えに前期比年率で2.8%増加となり景気の底堅さをみせている。雇用情勢の着実な改善とともに、FRBはゼロ金利政策を2014年まで続ける方針を打ち出しており景気を下支えしていくものと思われる。

中国経済は、積極的な財政支出と柔軟な金融政策で景気を軟着陸させるとともに、持続可能な成長への転換を図り、7.5%程度の成長を維持するものと思われる。

インドにおいても2年超に及んだ金融引き締めに幕をおろし、市中の資金量を管理する預金準備率を3年ぶりに引き下げると決定するなど景気を下支え、前年をわずかに上回る7%台の成長を維持するものと思われる。

東南アジアの経済は、インドネシアに代表されるように個人消費が牽引し内需を中心に堅調に推移するものと思われる。

但し、下振れ要因として、国内においては、極端な円高の進行やそれに伴う国内空洞化の加速、電力供給制約等があげられる。

海外においては、欧州債務危機の長期化、深刻化による新興国への影響や、先進国金融緩和がもたらす通貨過剰流動性と中近東諸国の政治不安による資源価格・商品価格の高騰と為替相場の不安化等が懸念される。

型締区分別に出荷台数を見渡すと
①150トン未満        150台(前年実績比53.1%増)
②150トン~300トン未満   51台(前年実績比27.1%減)
③300トン~500トン未満   309台(前年実績比14.4%増)
④500トン~1000トン未満   229台(前年実績比14.5%増)
⑤1000トン以上        68台(前年実績比15.3%増)とした。

(2)ホットチャンバ機の市場見通し
平成24年のホットチャンバ機の国内需要は35台、前年実績比52.2%増、輸出は44台で前年と同実績とした。

合計では79台の出荷を予測し、前年実績比17.9%増とした。

主な予測要因としては
①国内は前年に引き続き、更新需要に期待できること。
②輸出は中国、タイ、インド及び東南アジアでの二輪車、自動車及びIT関連の増産による設備需要が前年に引き続き期待されること。
IT関連の増産による設備需要が前年に引き続き期待されること。
上記以外に為替変動により、わずかな期待ながら円安傾向に傾けば輸出において玩具関連の増産計画が進み設備需要が見込めること。

型締区分別に出荷台数を見渡すと
①30トン未満        35台(前年実績比18.6%減)
②30トン~100トン未満   16台(前年実績比33.3%増)
③100トン以上        28台(前年実績比133.3%増)とした。

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