機械工業生産額(改定)見通し調査概要 

日本機械工業連合会がこのほどまとめた機械工業生産額(改定)見通し調査の概要は以下の通り。

≪平成21年度の生産動向≫
日本の機械工業は平成20年9月の米国の金融危機に端を発した世界同時不況の影響を受け世界経済が低迷する中で、生産は大幅な落ち込みとなった。しかし、各国政府による景気対策が行われ、とりわけアジア・中国などの新興国における景気刺激策の効果には目覚ましいものがあり、わが国機械工業も21年度に入り振興国向け輸出を中心に回復の兆しが出始めて来た。新興国向けの外需に加え、国内でも家電エコポイント、エコカー減税や補助金などが追い風となり、これら対象製品を中心に個人消費も持ち直し、鉱工業生産も輸出や個人消費に連動し徐々に回復を辿っていった。ただ、回復の内容は新興国の外需や製作に後押しされた業種・機種が中心で、以前厳しい業種・機種もあり、設備投資もストック調整圧力が強く下げ止まってきたものの、企業の投資マインドは慎重に推移した。

こうした中で、平成21年度の機械工業生産額は、前年度比18・6%減の61兆5488億円となった。機械工業の主な動向は以下の通り。

【一般機械】
一般機械の生産額は前年度比(以下同様)28.9%減の9兆8638億円となった。
機種別にみると、「ボイラー電動機」はボイラー・タービン、内燃機関ともに国内での設備投資の減退による需要減により16・3%減。「土木建設機械」は内需の激しい冷え込み、外需もアジア圏以外ではかつてない落ち込みとなり55.2%減。「印刷・製本・紙工機械」は景気低迷による企業の広告宣伝費の縮減、印刷物の少量化、印刷価格の下落、業界内の過当競争等の問題に対する改善も進まず44.2%減。「ポンプ・送風機・圧縮機」は内需は官公需、民需ともに減少、外需も減少したことから14.0%減。「油空圧機器」は下期に輸出は回復したものの、国内需要の冷え込みが大きかったことから29.4%減。「ロボット」は2大ユーザーである自動車産業と電機・電子機械産業向けの設備投資抑制の影響を大きく受けたことから53.6%減。「農業用機械器具」は国内が“緊急機械リース支援事業”の補助金により需要は一時的に回復したものの市場は縮小が進み、海外は北米の市場低迷、欧州市場も減少、アジアでは中国での補助金の支援の遅れや景気後退もあり13.7%減。「金属工作機械」は後半にやや持ち直したものの、不況からの長いトンネルを抜け出せず55.6%減。「第二次金属加工機械」は国内では前年下期からの受注激減が影響し、海外向けでも北米、欧州、アジアをはじめ全地域で厳しく47.7%減。「鋳造装置」は鋳造機械等の設備に過剰感があり、ダイカストマシンもダイカスト製品の大幅な生産減少の影響を受け51.3%減。「繊維機械」は繊維を除き、化学繊維機械、準備機械、編組機械等、全ての機種で減少し17.8%減。「食料品加工機械」はユーザーである食品産業に生産設備の設備や増設、新規製品投入と既存製品の品質改善に向けた動きがあったが、消費市場全体の縮小と低価格製品へのシフトが響き、全体的に設備投資意欲が減退、機械や設備の販売価格引き下げの傾向もあり1.3%減。「木材加工機械」は新設住宅着工戸数の大幅な落ち込みに加え、不況や円高も影響し49.7%減。「事務用機械」は個人消費の低迷と生産拠点の海外移転の進展により、国内生産の減少や世界的な経済の悪化により29.7%減。「ミシン」は工業用が主要需要先の中国市場の低迷が影響し生産は大幅に減少、家庭用は個人消費の低迷と生産拠点の海外移転の進展により、国内生産が減少し31.4%減。「冷凍機・同応用装置」は天候不順の影響や設備投資の減少などにより冷凍空調用圧縮機、空気調和関連機器、冷凍冷蔵関連機器、冷凍空調用冷却塔の全てで減少し、全体で12.4%減。「軸受」は需要先の自動車をはじめとする製造業で生産調節や設備投資の削減が続き17.4%減。「半導体製造装置およびFPD製造装置」は下期に需要増加に伴い価格が上昇するなど持ち直したものの、設備投資の本格回復には至らず27.5%減少した。

【電気機械】
電気機械の生産額は前年度比(以下同様)14.8%減の6兆2552億円となった。
機種別にみると、「回転電気機械・静止電気機械器具・開閉制御装置」は設備投資の冷え込みや輸出環境の悪化などの影響を受け、17.6%減。「民生用電気機械」は生活密着型の製品で、買い替え需要に支えられている堅実な市場とはいえ、景気減退の波を受け3.6%減。「電球」は経済不況の影響とともに電球形蛍光ランプなど蛍光ランプの生産拠点が海外に移り20.4%減。「電気計測器」は電気計器が増加したものの、電気測定器、工業用計測制御機器、放射線計測機器、環境計測器が減少し、全体では14.2%減少した。

【情報通信機械】
情報通信機械の生産額は前年度比(以下同様)22.8%減の5兆8623億円となった。
機種別にみると、「民生用電子機器」は薄型テレビへのエコポイント付与による需要の高まりは大きかったものの、全体では景気後退からの買控え等の影響による上期の大幅な落ち込みをカバーできず、また、価格下落もあり19.5%減。「通信機器」は、携帯電話が景気悪化と新販売方式の影響による買い替え需要の減少、有線達松機器は不況の影響により減少、有線ネットワーク関連機器も前年度NGN大型投資の反動や民間設備投資の抑制により減少し、通信機器全体では22.4%減。「電子計算機および関連装置」は低価格志向や景気の落ち込みによるリプレースの長期化もあり28.2%減少した。

【電子部品・デバイス】
電子部品・デバイスの生産額は前年度比(以下同様)28.4%減の6兆9540億円となった。
各国での経済対策の効果によりデジタル最終製品需要の持ち直しも見られたものの、上期の大幅な落ち込みの影響は大きく、受動部品、接続部品、電子回路基板、集積回路、液晶デバイス等ともに大きく落ち込んだことから、「電子部品」は28.7%減少、「電子デバイス」は28.2&減少した。

【輸送機械】
輸送機械の生産額は前年度比(以下同様)11.1%減の26兆4382億円となった。
機種別にみると、「自動車」は国内販売では登録乗用車に環境対応車に対する税の減免措置や補助金による押し上げ効果がみられたものの、乗用車全体では雇用・所得環境の悪化により減少、トラック・バスも景気後退による減少が見られ、輸出も一部の仕向け国で回復がみられたものの、全体としては厳しい状況が続いたため、自動車全体では14.3%減。「自動車部品」は国内の自動車需要の減少、海外でも主要取引先の日系自動車メーカーの生産が減少したこと等により海外への部品輸出が減少し、結果として国内の部品生産が減少したことから5.2%減。「産業車両」は上期は落ち込みが続き、下期は在庫調整の進展や前年度急減に対する反動もあり、後半から回復に転じたものの年度計では厳しく50.9%減。「鋼船」は引き続き高水準の竣工が続き、船価回復後の受注船も順次竣工したため15.1%増。「航空機は発動機、機体部品、装備品が増加したものの、機体、発動機部品が減少し、全体で7.3%減少した。

【精密機械】
精密機械の生産額は前年度比(以下同様)18.9%減の1兆825億円となった。
機種別にみると、「計測機器」は主要需要先の低迷、輸入品を含めた低価格化競争の激化、円高の影響などにより測定機器、試験機、測量機器がともに減少し23.6%減。「光学機械」は写真機が15.1%減、望遠鏡・顕微鏡が不況や円高による海外メーカーの価格優位性の高まりで10.1%減、カメラの交換レンズ・付属品が1.2%減となり、光学機械全体で6.0%減少した。

【金属製品】
金属製品の生産額は前年度比(以下同様)15.4%減の2兆4746億円となった。
機種別にみると、「鉄構物・架線金物」は6.5%減。「ばね」は自動車の生産と密接に層管氏9.2%減。「機械工具」は特殊鋼工具が自動車向けの需要が大幅に減少し46.6%減、超硬工具が主なユーザーである自動車、工作機械向けが厳しく32.3%減、ダイヤモンド工具が半導体、自動車向けに戻り基調にあったものの公共投資向けが低調に推移し20.8%減、機械工具全体では33.1%減となった。

【鋳鍛造品】
鋳鍛造品の生産額は前年比(以下同様)18.7%減の2兆1905億円となった。
機種別にみると、「粉末冶金製品」は13.9%減。「鍛工品」は自動車向けの製品によって需要に差があり減少、産業機械・土木建設機械向けでは在庫調整が進みつつあったが、廉価な汎用製品の生産が海外にシフトし大幅な減少をしたことから、全体で18.6%減・銑鉄鋳物は24.4%減。「可鍛鋳鉄・精密鋳造品」は17.6%減。「非鉄金属鋳物」は16.8%減。ダイカストは14.6%減少した。

≪平成22年度の生産動向≫
平成22年度の機械工業は、前年度からの各国政府による景気対策の効果や、中国・アジア等の新興国を中心とする海外経済の回復に伴う輸出の増加、国内ではエコカー減税・補助金、家電エコポイントなどの政策効果による押し上げ、今夏の猛暑効果などに支えられ、生産は緩やかに持ち直してきた。さらに、企業収益の改善や設備投資の持ち直し、企業の業況判断の改善などの動きも見られ、今年度の機械工業は輸出関連、会期対策関連絡みの機種を中心に増加が見込まれている。
ただ、ここにきてマクロ経済は、円高の継続や海外経済の減速懸念、欧州を中心とした国際的な信用収縮の不安や、政策効果の息切れ・一巡など、今後「踊り場」入りの可能性も高まるなど先行き厳しい状況にある。
こうした中で平成22度の機械工業生産額は前年度比9.4%増の67兆3535億円となる見通しである。
機械工業の主な動向は次のとおり。

【一般機械】
一般機械の生産額は前年度比(以下同様)24.2%増の12兆2491億円となる見通しである。
機種別にみると、「ボイラー・原動機」は内需では既存の設備の維持等を目的とした更新需要による回復、外需ではアジアや中東向けの需要拡大や、環境意識の高まりを背景にしたエネルギー転換等の需要増も見込まれ14.2%増。「土木建設機械」は内需は前年度に底を打ち回復基調に入り、外需もアジアをはじめとする各地域で強く持ち直し65.4%増。「印刷・製本・紙工機械」は国内は印刷需要の回復の遅れが懸念されるが、高付加価値設備の需要を中心に底は脱し、海外では中国をはじめとする東アジア地域の需要も回復の兆しが見られることから15.0%増。「ポンプ・送風機・圧縮機」は内需は民需を中心とした更新需要、外需も新興国や産油国における需要増が期待できることから5.0%増。「油空圧機器」は輸出が中国を中心としたアジア向けで伸長し、国内でも在庫調整がひと段落し需要増が見込まれることから23.2%増。「ロボットは2大ユーザー産業である自動車と電気・電子機械向けが中国を中心としたアジア向けで伸長し、国内でも在庫調整がひと段落し需要増が見込まれることから76.6%増。「農業用機械器具」は前年度の緊急農機リース支援事業の反動や、円高の影響による不透明感はあるものの、各種販売対策による梃子入れ、海外もアジアでの回復が期待されることから1.9%増。「金属工作機械」は国内向けの回復は海外に比べ以前として力強さに欠けるものの、中国をはじめアジア向け需要が好調で46.0%増。「第二次金属加工機械」は中国からの受注が急回復しており、韓国、台湾も回復基調にあり、輸出がけん引する形の生産増加が期待され18.4%増。「鋳造装置」は需要先の設備投資意欲が低く、低水準が続くが、厳しかった前年度からの持ち直しもあり14.5%増。「繊維機械」はアジア新興国からの受注の急増などから生産が回復してきており、化学繊維機械、準備機械、繊機、編組機械等、全ての機種で増加が期待でき64.9%図。「食料品加工機械」は精米、製粉などのユーザー産業の一部に設備投資需要があり、緩やかな上昇が見込まれることから1.2%増。「木材加工機械」は以前として厳しい状況が続くものの前年度からの持ち直しもあり、製材機械、チップ機械、合板機械、木工機械のいずれも増加が見込まれ23.6%増。「事務用機械」は海外での現地生産が進み国内生産の減少傾向が続くことから20.4%減。「ミシン」は工業用が主力の中国市場で輸出縫製および内需縫製の需要が増え、家庭用は主要市場の北米、欧州の需要は堅調だが、生産拠点の海外移転が進展しているため横ばい、ミシン全体では31.2%増。「冷凍機・同応用装置」は重要産業の設備投資が持ち直し、更新需要も期待されることから7.2%増。「軸受」は景気対策の効果や在庫調整の進展が期待され16.1%増。「半導体製造装置およびFPD製造装置」は重要が回復し、各デバイスメーカーの大型設備投資案件も再開されており、設備投資の大幅な回復が期待できることから70.8%増加する見通しである。

【電気機械】
電気機械の生産額は前年度比(以下同様)3.9%増の6兆4991億円となる見通しである。
機種別にみると、「回転電気機械・静止電気機械器具・開閉制御装置」は国内での急激な落ち込みによる反動増や中国を中心としたアジア向け輸出が堅調で7.3%増。「民生用電気機械」は生活に密着している製品で堅実な市場とはいえ、生産の海外シフトが拡大しており、4.2%減。電球は機械・機器部品用途の回復が期待され1.8%増。「電気計測器」は電気計器が減少するものの、電気測定器、工業用計測制御機器、放射線計測器、環境計測器が増加し、全体では24.3%増加する見通しである。

【情報通信機械】
情報通信機械の生産額は前年度比(以下同様)4.1%増の6兆1018億円とんばる見通しである。
機種別にみると、「民生用電子機器」は薄型テレビへのエコポイント付与による需要の高まりと地上デジタル放送移行への買い換えが下期も進み、カーナビゲーションシステムも廉価タイプが拡大傾向にあることから、全体では9.8%増。「通信機器」は急増するトラフィックへの対応のため大容量・高速化バックボーンへの投資やLTEへの投資が機体できるものの、通信キャリアの設備投資はNGNへの投資がひと段落し投資抑制傾向にあり、また、民間設備投資は今後緩やかな回復が見込まれるものの、本年度が底とみられ6.4%減。「電子計算機および関連装置」はパソコンで真OS搭載機の発売による企業向けの需要が好調で、先延ばしになっているリプレース需要も徐々に進んでいることから11.4%増加する見通しである。

【電子部品・デバイス】
電子部品・デバイスの生産g買うは前年度比(以下同様)19.6%増の8兆3188億円となる見通しである。
各国政府の経済対策や海外でのデジタル製品需要の回復による好転が期待され、各社グローバルな生産体制の確立も進むことが予想されることから、「電子部品」は21.1%増加、「電子デバイス」は19.0%増加する見通しである。

【輸送機械】
輸送機械の生産高は前年度比(以下同様)4.0%増の27兆5084億円となる見通しである。
機種別にみると、「自動車」は国内販売では年度前半にエコカー減税・補助金による押し上げ効果、景気回復に伴う需要喚起があったが、後半には補助金終了に伴う反動減が予想され、輸出においては全体として回復基調が継続することが期待されるため、自動車全体では5.0%増。「自動車部品」は自動車市場で上期はエコカー減税・補助金により国内需要が回復したことから、部品生産も増加が見込まれ4.0%増。「産業車両」はフォークリフトトラック、ショベルトラックともに国内外とりわけ海外市場は回復基調にあり、今後もこの傾向は続くとみられることから28.9%増。「鋼船」は引き続き安定した竣工が見込めるが、高水準の竣工が続いていたため反動により0.5%減。「航空機」は発動機部品が減少するものの、機体、発動機、機体部品、装備品が増加し、全体で5.7%増加する見通しである。

【精密機械】
精密機械の生産額は前年度比(以下同様)7.9%増の1兆1678億円となる見通しである。
機種別にみると、「計測機器」は緩やかではあるものの回復傾向にあり、測定機器、測量機器が増加し12.6%増。「光学機械」は写真機が7.5%減、望遠鏡・顕微鏡が11.3%増、カメラの交換レンズ・付属品が0.6%減、光学機械全体では0.3%減少する見通しである。

【金属製品】
金属製品の生産額は前年度比(以下同様)4.9%増の2兆5956億円となる見通しである。
機種別にみると、「鉄構物・架線金物」は3.2%減。「ばね」は14.4%増。「機械工具」は特殊鋼工具が国内の自動車産業向け、海外もアジア向けの需要が好調で57.0%増、超硬工具が中国をはじめとする輸出主導の急回復により44.8%増、ダイヤモンド工具が自動車、工作機械、IT産業向け需要が増加し35.8%増、機械工具全体では44.8%増加する見通しである。

【鋳鍛造品】
鋳鍛造品の生産額は前年度比(以下同様)13.7%増の2兆4909億円となる見通しである。
機種別にみると、「粉末冶金製品」は4.7%増。「鍛工品」は原材料価格の値上げやコスト低減要求など厳しい面はあるものの、中国をはじめとするアジア諸国の回復が著しく、自動車向け需要が安定し、建機、鉱山関係向けでは波が大きいが順調に回復基調にあることから全体で11.4%増。「銑鉄鋳物」は40.0%増。「可鍛鋳鉄・精密鋳造品」は8.8%減。「非鉄金属鋳物」は8.4%減。ダイカストは5.4%増加する見通しである。

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