平成24年度機械工業生産額(改訂)見通し調査がまとまる 日機連

このほど日本機械工業連合会が平成24年度機械工業生産額(改訂)見通し調査をまとめた。

1.概況
■平成23年度の生産動向

日本の機械工業は、前年度末に発生した東日本大震災により回復過程をたどっていた生産、輸出への下押し圧力が強まったものの、見込みを上回る早さで供給制約が解消されるなど、景気は緩やかながらも持ち直しの動きがみられた。しかしながら、秋にはタイ洪水の影響により一時的にサプライチェーンが寸断されるなど足踏み状態となり、欧州の金融不安や激しい円高は企業活動に厳しい影響を与えた。

こうした中で、一般機械、輸送機械、精密機械などが、生産活動の制約が多い条件の下で概ね健闘したものの、情報通信機器、電子部品・デバイスが大きく減少したことにより、平成23年度の機械工業生産額は前年度日1.7%減の67兆6946億円となった。
機械工業の主な動向は次のとおり。

(1)一般機械
一般機械の生産額は前年度比(以下同様)5.7%増の13兆4718億円となった。
機種別にみると以下のとおり。
「ボイラー・原動機」は、ディーゼル機関が輸出を中心に回復したことから、全体で0.9%増。「土木・建設機械」は、内需の回復基調が続き、外需も資源開発国向けに加え、従来の主要マーケットである欧米が回復したことから、29.4%増。「印刷・製本・紙工機械」は、環境対応や生産合理化に適合した高付加価値設備が増加し、4.0%増。「油空圧機器」は、油圧機器が建設機械需要が拡大する中国を中心に、空気圧機器も輸出が中国をはじめとする新興国や欧米で堅調に推移し、8.9%増。「ロボット」は、国内外ともに自動車産業向けの設備投資が回復したことから、8.5%増。「動力伝導装置」は、下期に資源開発関連で建設機械、鉱山機械関係向けの需要増や米国製造業の回復の影響もあり、9.9%増。「農業用機械器具」は、国内向けは被災地域で減少したが、海外では北米、欧州、中国向けが堅調に推移し、全体で1.0%減。「金属工作機械」は、国内向けの回復は緩やかなものの、アジア、北米地域向けが依然として好調で、24.6%増。「第二次金属加工機械」は、機械プレスやワイヤーフォーミングマシンが伸び、27.6%増。「鋳造装置」は、鋳造機械、ダイカストマシンがともに大幅に伸び、39.4%増。「繊維機械」は、化学繊維機械、紡績機械が増加したものの、準備機械、繊機、編組機械等で減少し、全体では6.0%減。「食品加工機械」は、需要先の食品業界で年度後半に復旧需要があったが、全般的に新規設備投資は手控えられたため1.6%減。「包装機械・荷作機械」は、瓶詰機械、製袋充填機、容器成形充填機等が増加し、全体では0.8%増。「木工加工機械」は、国内が国産材利用振興政策により、海外はロシア、米国の需要造により、38.3%増。事務用機械は、海外での現地生産が進み国内生産の減少傾向が続いたことから14.5%減。「ミシン」は、中国での需要鈍化があったものの、東南アジア等での需要増により、0.8%増。「冷凍機・同応用装置」は、例等冷蔵関連機器等で増加したものの、例等空調用圧縮機、空気調和関連機器で減少し、全体で4.9%減。「軸受け」は、国内が自動車向けを中心に、海外は米国、欧州向けが伸びたことから、4.2%増。「半導体製造装置及びFPD製造装置」は、TV向けを中心とした大型パネル用の設備投資が先送りされたこともあり、2.3%減少した。

(2)電気機械
電気機械の生産額は、前年度比(以下同様)1.4%の6兆8665億円となった。
機種別にみると以下のとおり。
「回転電気機械・静止電気機械器具・開閉制御装置」は、上期は震災の影響を乗り越え順調に推移し、下期は汎用品のアジア市場での需要減や円高の影響を受けたモノの、通期で3.9%増。「民生用電気機械」は、エコポイント制度終了による反動減や海外での現地生産、さらには海外生産、海外販売を行う「アウトアウト」も拡大し世界規模での最適地生産が進んだことから、10.2%減。「電球」は、節電の影響、生産拠点の海外か、電球形LEDランプの普及の影響を受け、一般照明用電球、電球形蛍光ランプが減少し、23.3%減。「電気計測器」は、工業用計測制御機器が減少したものの、電気計器、電気測定器、放射線計測器、環境計測器が増加し、全体では0.8%増加した。

(3)情報通信機械
情報通信機械の生産額は、前年度比(以下同様)21.8%減の4兆6470億円となった。
機種別にみると以下のとおり。
「民生用電子機器」は、薄型テレビやDVDビデオが地上デジタル放送完全移行後の反動減、カーナビゲーションシステムは震災による自動車減産の影響、デジタルカメラは対抗ズイやスマートフォンへの需要シフトの影響があったことから、全体では34.4%減。「通信機器」は、有線通信機器では通信事業者のトラフィック増強や企業BCPへの投資強かがデチタル伝送装置やネットワーク接続機器の生産増を牽引したが、無線通信機器で携帯電話が大幅に減少したことから、通信機器全体では10.0%減。「電子計算機及び関連装置」は、前年の教育用パソコン特需の反動減もあり、17.7%減少した。

(4)電子部品・デバイス
電子部品・デバイスの生産額は、前年度比(以下同様)12.5%減の7兆3736億円となった。
スマートフィン向けは堅調だったものの、薄型テレビの需要減少、工場被災の影響による自動車向けの減少、海外でも円高の影響や需要低迷を受け、「電子部品」は10.7%減少、「電子デバイス」は13.4%減少した。

(5)輸送機械
輸送機械の生産額は、前年度比(以下同様)0.8%増の28兆0974億円となった。
機種別にみると以下のとおり。
「自動車」は、年度前半には東日本大震災による工場被災や部品調達問題等により工場の稼働率が大きく落ち込んだが、後半には部品調達の改善による生産回復、増産により、自動車全体で2.2%増。「自動車部品」は、自動車市場で上期は震災等の影響により減少、下期は生産の回復等により増加したことから、1.5%増。「産業車両」は、フォークリフトトラック、ショベルトラックともに国内が順調に増加し、海外も新興国市場を中心に伸びたことから、全体では14.0%増。「鋼船」は、手持ち工場の減少により徐々に操業を落としたことにより、12.3%減。「航空機」は、機体、発動機、装備品が減少したものの、機体部品、発動機部品が増加し、全体で0.7%増加した。

(6)精密機械
精密機械の生産額は、前年度比(以下同様)7.3%増の1兆3307億円となった。
機種別にみると以下のとおり。
「計測機器」は、計量機器が自動車、工作機械向けで伸び、分析機器は海外が新興国で好調であったが、国内では微減に留まり、測量機器は復興需要により微増となり、計測機器全体で7.6%増。「光学機械」は、写真機が5.1%増、望遠鏡・顕微鏡が円高、震災、タイ洪水の影響を受け6.2%減、カメラの交換レンズ・付属品が9.6%増となり、光学機械全体で6.2%増加した。

(7)金属製品
金属製品の生産額は、前年度比(以下同様)1.0%の2兆6930億円となった。
機種別にみると以下のとおり。
「鉄構物・架線金物」は、19.6%減。「ばね」は、2.1%減。「機械工具」は、特殊鋼工具が自動車向けが好調で20.9%増、超硬工具が1.4%増、ダイヤモンド工具が半導体、太陽光発電向けで減少、公共工事関連向けも回復せず3.5%減、機械工具全体では3.5%増。「バルブ・コック・鉄管継手」は、3.4%増加した。

(8)鋳鍛造品
鋳鍛造品の生産額は、前年度比(以下同様)6.6%増の2兆7342億円となった。
機種別にみると以下のとおり。「粉末冶金製品」は、24.9%増。「鍛工品」は、自動車、産業機械、建設機械向けともにいずれも堅調で、5.7%増。「銑鉄鋳物」は、5.4%増。「可鍛鋳哲・精密鋳造品」は、1.7%増。「非鉄金属鋳物」は、5.5%増。ダイカストは自動車、二輪車向けが堅調で、1.4%増加した。

平成24年度の生産動向

平成24年度の機械工業は、東日本大震災からの復興需要や企業の設備過剰感の緩和等によって緩やかな回復基調にあったが、ここのところ伸びが鈍りつつある。金融不安による欧州景気の懸念は、堅調だった中国を初めとする新興国経済の減速をもたらし、さらに最近の日中関係の悪化は中国に積極的に展開するわが国機械工業にとって不安材料のひとつとなっている。他方、米国経済は緩やかな回復が続いている。国内は、依然として厳しい円高や電力供給不安、原油高が下振れ要員となっている。

こうした中で平成24年度の機械工業生産額は前年度比1.1%増の68兆4690億円となる見通しである。
機械工業の主な動向は次のとおりである。

(1)一般機械
一般機械の生産額は、前年度比(以下同様)1.0%減の13兆3343億円となる見通しである。

機種別にみると以下のとおり。「ボイラー・原動機」は、円高等を背景にした価格競争の激化や生産拠点の海外シフトが進むと見込まれ、5.0%減。「土木建設機械」は、国内の震災からの復興需要、海外は北米での堅調な推移が見込まれ、11.1%増。「印刷・製本・紙工機械」は、需要業界である印刷産業の低迷は続くものの、引き続き国内外ともに環境対応や生産合理化に適応した高付加価値設備が増加すると見込まれ、0.3%増。「油空圧機器」は、内需が震災からの本格的な復旧・復興需要、外需は欧州や新興国を中心に厳しさも見られるものの、資源開発関連機器等の需要が期待でき、3.2%増。「ロボット」は、自動車産業向けで内需の堅調が続くものの、国内外ともに電気機械産業向けで下落が見込まれ、10.0%減。「農業用機械器具」は、国内向けが米価の高値安定によるコンバインの活況等に期待、海外は中国での補助金制度変更による減少、タイでの洪水からの回復、北米での需要増が見込まれることから、1.0%増。「金属工作機械」は、国内はやや弱含み、海外は欧州で厳しいもののアジア、北米地域武家が堅調で、0.1%増。「第二次金属加工機械」は、円高の影響やコスト競争力の問題はあるものの、輸出が牽引する形の生産増加が期待され、3.8%増。「鋳造装置」は、上期は鋳造機械が前年度並み、ダイカストマシンは回復基調にあったが、下期はいずれも不透明であり、2.0%減。「繊維機械」は、欧米での需要が減少し、中国・東南アジアでは繊維機械投資の低迷が見込まれることから、33.3%減。「食料品加工機械」は、復興需要と手控え状態が長期化した設備更新が期待されることから、3.2%増。「包装機械・荷作機械」は、瓶詰機械、製袋充填機、小箱詰機、ケース詰機械等が増加すると見込まれ、全体では0.7%増。「事務用機械」は、海外での現地生産が進み国内生産の減少傾向が続くことから、2.0%減。「ミシン」は、国内生産および輸出に大きな動きはないものの、単価の下落が見込まれ4.5%減。「冷凍機・同応用装置」は、例等冷蔵関連機器等で減少するものの、例等空調用圧縮機、空気調和関連機器で増加が見込まれ、全体で0.7%増。「半導体製造装置及びFPD製造装置」は、半導体メモリ市場等の悪化による需要減やTV用大型パネルの設備投資抑制が続き、17.4%減少する見通しである。

(2)電気機械
電気機械の生産額は、前年度比(以下同様)1.1%減の6兆7937億円となる見通しである。

機種別にみると以下のとおり。「回転電気機械・静止電気機械器具・開閉制御装置」は、国内では震災復興需要により電力用機器が堅調に推移しているものの、海外は中国を中心としたアジア市場において汎用品の輸出低迷が続いており、1.1%減。「民生用電気機械」は、国内の電力供給不安、企業のグローバル展開に伴い海外生産シフトがさらに進むとみられ、4.3%減。「電球」は、生産拠点の海外化や電球形LEDランプの普及の影響を受け、一般照明用電球、電球形蛍光ランプが減少すると見込まれ、21.0%減。「電気計測器」は、電気機器、放射線計測器、環境計測器が減少するものの、電気測定器、工業用計測制御機器が増加し、全体では6.7%増加する見通しである。

(3)情報通信機械
情報通信機械の生産額は、前年度比(以下同様)0.4%増の4兆6672億円となる見通しである。

機種別にみると以下のとおり。「民生用電子機器」は、カーナビゲーションシステムが自動車生産の回復により増加、デジタルカメラも一眼レフタイプの世界的な需要増加やコンパクトタイプでも高ズーム機種の需要増加が期待でき、また、薄型テレビでは2~3代目のテレビとしての中小型モデルの需要があるものの、地上デジタル放送完全移行後の需要減少の影響を大きく受けていることから、全体では10.9%減。「通信機器」は、有線通信機器では民間投資及び個人消費需要の持ち直しに加え、トラフィック強化を進める通信事業者の需要が旺盛であり、無線通信機器では多機能携帯電話の需要造が見込めることから、通信機器全体では9.2%増。「電子計算機及び関連装置」は、パソコンで新OS登場による個人需要の高まりが期待され、1.9%増加する見通しである。

電子部品・デバイス
電子部品・デバイスの生産額は、前年度比(以下同様)3.4%減の7兆1209億円となる見通しである。新型スマートフォン向けの部品需要が期待できるものの、欧州や中国の景気減速の影響や、円高の継続による高付加価値製品の海外への生産委託の加速が懸念されることから、「電子部品」は3.2%増加、電子デバイス」は7.5%減少する見通しである。

(5)輸送機械
輸送機械の生産額は、前年度比(以下同様)4.1%増の29兆2376億円となる見通しである。

機種別にみると以下のとおり。「自動車」は、国内がエコカー減税・補助金による需要の喚起があり、海外は欧州金融不安による市場の停滞や、円高に伴う価格競争力の低下が懸念されるものの、米国市場の回復や新興国市場の拡大が期待されるため、自動車全体では、2.0%増。「自動車部品」は、自動車市場で上期はエコカー補助金効果により増加し、下期はエコカー補助金終了後の反動減が懸念されるものの、通期では12.6%増。産業車両」は、フォークリフトトラック、ショベルトラックともに、輸出の落ち込みは大きく、回復も遅れるものの、国内で安定した需要が期待され、全体では0.1%増。「鋼船」は、引き続き手持ち工事の減少により徐々に操業を落としていくことが見込まれ、14.1%減。「航空機」は、発動機が減少するものの、期待、期待部品、発動機部品、装備品が増加し、全体で14.3%増加する見通しである。

(6)精密機械
精密機械の生産額は、前年度比(以下同様)3.2%増の1兆3736億円となる見通しである。

機種別にみると以下のとおり。「計測機器」は、計量機器が国内で震災復旧関連の設備投資が落ち着きを見せ始め微増、分析機器が新興国での需要オズ、測量機器が円高による需要減が見込まれ、全体で2.7%増。「光学機械」は、写真機が21.6%増、望遠鏡・顕微鏡が新興国での需要造で5.0%増、カメラの交換レンズ・付属品が4.8%増、工学機械全体では4.4%増加する見通しである。

(7)金属製品
金属製品の生産額は、前年度比(以下同様)0.1%増の2兆6968億円となる見通しである。

機種別にみると以下のとおり。「鉄構物・架線金物」は、9.8%減。「ばね」は、自動車向けの需要造が見込まれ、3.2%増。「機械工具」は特殊鋼工具が受注環境が悪化してきており3.8%減、超硬工具が1.4%増、ダイヤモンド工具が自動車関連向けの増加を期待するものの、先行きは不透明で0.5%減、機械工具全体では0.1%増。「バルブ・コック・鉄管継手」は、震災の復興需要で、1.2%増加する見通しである。

(8)鋳鍛造品
鋳鍛造品の生産額は、前年度比(以下同様)1.0%増の2兆7621億円となる見通しである。

機種別にみると以下のとおり。「粉末冶金製品」は、0.4%増。端工品」は、需要先の海外展開や部品の現地調達が加速しているものの、自動車、産業機械、建設機械向けで生産増が見込まれ、3.5%増。「銑鉄鋳物」は、5.0%減。「可鍛鋳鉄・精密鋳造品」は、0.9%増。「非鉄金属鋳物」はm2.8%増。「ダイカスト」は、自動車向けが堅調で、5.8%増の見通しである。

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