年頭所感(日本機械工業連合会/日本産業機械工業会/日本工作機械工業会/日本工作機器工業会)

「『外需の内需化』は我が国の新たな成長に欠かせないファクター」

●日本機械工業連合会 会長 伊藤源嗣

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。皆様におかれましては、お気持ちも新たに新年を迎えられたことと存じます。
年頭にあたり、平素より日本機械工業連合会にお寄せ頂いております皆様の暖かいご指導とご支援に対し、心より御礼申し上げます。

さて、我が国の経済は、アジア新興諸国の成長や政府の経済対策効果などで緩やかな回復が続いてきましたが、大幅かつ急激な円高の進行、海外経済の減速、経済対策効果の一巡などにより、生産や輸出が鈍化するなど、先行き不透明感が広がっています。昨年7-9月期の国内総生産(GDP)は、実質で前期比1.1%増、年率換算では4.5%増となり、4四半期連続のプラス成長を確保したものの、10-12月期は一転してマイナス成長が懸念されており、政府には景気を底割れしないよう、緊急経済対策や22年度補正予算に盛り込んだ即効性のある事業を早期に実施して頂きたいと思います。

近年、我が国を巡る経済社会環境は、急速な少子・高齢化による人口減少が進む一方、新興諸国も加えたグローバル競争の激化、低炭素化社会への対応など、困難な課題に直面し、世界での我が国の経済的地位も低下が続いています。これらの困難を乗り越え、将来に亘る我が国経済の持続的成長を確保するには、企業が積極的な研究開発の推進や新規事業分野の開拓などに努め、国内外において産業活動をより活発化していくことが必要、不可欠であります。しかし、我が国企業はグローバル競争を行ううえで大変大きなハンディを負っております。我が国は、法人税率が世界最高水準にあり、経済連携協定では近隣諸国に遅れを取り、温暖化対策コストは高まり、労働規制も強化に向かい、加えて、史上最高値に迫った限度を超える円高の進行です。これらが是正されないとすると、企業の海外流出を余儀なくし、雇用を減少させ、我が国のものづくり基盤の衰退をも招きかねません。政府には我が国企業が対等な条件で海外企業と競争を行うことができるよう、国際水準の事業環境整備を早急に進められることが喫緊の重要政策と考えます。

我が国は輸出主導型経済で成長してまいりました。人口減少時代を迎え、海外需要の重要性はますます高まっています。「外需の内需化」は我が国の新たな成長に欠かせないファクターであります。欧米の先進諸国市場が成熟する中、新興国や途上国市場には計り知れない将来性があります。特に、我が国にとって世界の成長センターであるアジアの新興諸国の存在は重要で、その関係強化は不可欠であります。積極的な貿易、投資の振興を図り、我が国の優れた社会・生産インフラ等の輸出により相手国の経済発展に貢献することにより、我が国の将来の成長を確保することができると考えます。一方、韓国はEUとの自由貿易協定(FTA)締結に続き、先月、米国とのFTA締結交渉に合意し、協定発効後は韓国の価格競争力が強化され、我が国の対米貿易は大きな影響を被ることが懸念されています。現在、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加が検討されていますが、政府におかれては国益という「全体最適」の視点で早急に決断され、交渉に参加してアジア太平洋地域を中心に経済連携協定を一層強力に推進して頂きたいと思います。

新興国や途上国への対応への取組みとして、当会はインド、東欧のルーマニアとウクライナ、昨年はベトナムとシンガポールへ視察団を派遣し、政府機関、業界団体、機械関連企業を訪問して各国との関係強化を図ってまいりました。今年2月には、今後の投資・市場先として期待される旧ユーゴスラビア地域のクロアチア、セルビア等への訪問を予定しております。

我が国経済はデフレの長期化など困難な状況が継続していますが、我が国産業の大黒柱である機械業界はそれを乗り越え、日本経済の先を切り開いて行かねばなりません。近年の新興諸国の追い上げは目を見張るものがありますが、我が国が世界をリードする産業分野は未だに少なくはありません。中でも、「省エネ」と「環境」の分野は今後も世界的な需要の伸びが大いに期待されており、我が国企業は世界レベルの技術を更に高め、新製品・新技術をいち早く開発して、世界市場に送り出すことが重要です。併せて、開発した製品や技術を知財で守り抜く事業戦略の構築も必要となってきます。また、グローバル競争に勝ち抜くには、単に新製品や新技術の開発だけにとどまらず、生産技術、プロセスなどあらゆる分野でイノベーションを果たし、自らを高度化していくことが重要と考えます。

日本機械工業連合会では、我が国機械工業の競争力を維持、発展させていくための課題に鋭意取り組んでおります。本年も、将来を担う技術系人材やグローバル人材の育成方策、レアメタル等資源制約に対応する材料再資源化の調査研究、R&D戦略と知財・標準化戦略を事業戦略に組み込んだ技術戦略、機械の安全・安心のシステム構築に関する研究など、我が国機械業界の企業経営にとって密接なテーマでの調査研究を進めるとともに、税制面での改善や外需拡大支援策の推進など機械業界の事業環境改善に向けた要望や政策提言などを進めて参ります。

最後になりましたが、皆様には大変厳しい事業環境が続く中、ご苦労が多いことと存じますが、日本機械工業連合会は、新たな時代に求められるニーズに対応し、皆様と産業界の利益のために誠心誠意努力を続けたいと存じます。皆様の一層のご活躍とご健康を心から祈念申し上げます。

「活力ある経済社会の構築に向けて」

●日本産業機械工業会 会長 日納義郎

平成23年を迎えるにあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

昨年のわが国経済は、新興国経済の好調さを背景として外需を中心に年前半までは緩やかに持ち直しつつありました。しかしながら、長引く先進国経済の低迷や急激な円高の進行、エコカー補助金やエコポイントなどの景気対策が一段落したことから秋以降の景気回復の勢いは鈍化し、足踏み状態となっております。

私ども産業機械業界の昨年の受注も、年初より外需の増加や製造業の需要の持ち直しなどから、リーマン・ショック直後の激しい落ち込みを底として緩やかな回復が続いたものの、秋以降、一部の機種には減速傾向が見られるなど、本格的な回復を示すまでに至っておりません。

本年も産業機械業界には、厳しい受注環境が続くものと思われますが、これを乗り越えるためには、我々自身もさらなる自助努力が必要です。ものづくりの原点である技術力をさらに強化するとともに、魅力ある製品・サービスをお客様に提供し、国内外で新たな需要の創出や市場の拡大などに引き続き努めていくことが、この厳しい経済状況を克服し、活力ある経済社会の構築に繋がると確信しております。

特に、グローバリゼーションが一段と加速する中、わが国が持続可能な経済成長を実現するためには、アジアを始めとした海外市場へ積極的に展開することにより、新しい経済成長の形を構築していく必要があります。また、わが国の優れた社会インフラ等の輸出により、相手国の経済発展や環境保全、地域の構成に貢献していくことも益々重要になっていくものと考えます。

他方、昨年12月にはCOP16が開催され、わが国政府の粘り強い交渉により京都議定書の単純延長という最悪の事態は回避されました。しかし、地球温暖化を防ぐためには、主要排出国や新興国、途上国も参加する新たな枠組みの構築が不可欠であるとともに、地球規模での低炭素社会の構築に全世界が取り組みを加速していく必要があります。

政府におかれましては、わが国のみならず世界経済が環境保全と両立しながら成長・発展していくため、わが国の優れた新エネ・省エネ・環境保全分野の技術とサービスの普及促進に向けた支援制度の拡充をお願いしたいと思います。

また、グローバリゼーションが加速する中において、諸外国に比べ遅れ気味のEPA・FTAの締結を強力に推進され、わが国産業界の国際競争力強化に繋がるビジネス環境を確保していただくことを期待しております。

私ども産業機械業界も、技術革新や技術結合などの推進により高度な技術やサービスを生みだし、高品質で信頼される製品と高い技術力を提供し、わが国産業の競争力強化と地球環境保護に貢献する所存です。

年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましては一層のご指導、ご協力をお願いしますとともに、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

「有為な人材の確保・育成事業の総仕上げに注力」

●日本工作機械工業会 会長 中村健一

平成23年の新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

昨年の工作機械業界を振り返りますと、外需主導の回復傾向が鮮明となり、直近11月までの受注額累計は、前年同期比2.5倍の8,798億円と、大幅に増加しました。このうち、内需は、緩やかに上向きつつあるものの、製造業が大幅な円高に苦しんでいることもあり、依然として設備投資は低水準にあると言わざるを得ません。今後、日本の産業構造が大きく変革していく中で、工作機械業界としては、同じ問題を抱える他の機械産業とともに知恵を出し合って、諸課題に取り組む必要があると感じております。

他方、外需については、アジアを中心とした新興国市場が旺盛な需要を示し、とりわけ、中国は外需の中で38%、受注全体でも26%と高いシェアを持つに至りました。受注全体に占める外需比率は7割近くにまで伸長しています。
もう一つ、昨年10月から11月にかけて開催したJIMTOF 2010では、総来場者数が前回比で2割程度減ったものの、来場するお客様は、従来以上に真剣な眼差しで設備導入を検討しておられたことなど、実りのある展示会となり、今後の受注も期待が持てるものと感じています。加えて、会期中に開催した恒例の「工作機械トップセミナー」には、全国63校の大学・高専等から過去最高となる455名の学生が参加するなど、人材確保・育成の面でも大きな成果がありました。

本年の工作機械受注については、引き続き新興国市場を中心とした外需主導で総じて堅調に推移するものと考えておりますが、まだまだ懸念材料もあり、具体的な受注額に関しては見通し難い状態であることから、先ずは一兆円台を目標に業界を挙げて頑張っていきたいと思います。
このように受注環境が少しずつ好転する中、わが工作機械産業では、引き続き技術面において世界をリードし、日本はもとより世界の産業界に貢献する自覚と使命感を持って、今後の成長・発展に向けて各般の事業を展開していく所存であります。

特に本年は、これまで業界を挙げて取り組んできた、有為な人材の確保・育成事業の総仕上げに注力します。具体的には、毎年の業界イベントとして広く定着した学生対象の「工作機械トップセミナー」について、工作機械の重要性や素晴らしさを学生達に理解してもらうという当初の目的に加え、企業と学生の有意義なファーストコンタクトとして活用できるよう、さらに拡充・強化したいと考えます。加えて、「工作機械の教育用映像」を本年中に完成させるほか、工作機械の設計理論と実務の有機的な結合を図るべく、業界の若手エンジニアを対象とした「工作機械の基礎講座」を本年1月に開講するなど、産学の間に存在する知識やスキルのギャップを補完していきたいと考えます。

また、長期的視点に立って、今後大きな成長が見込まれる新興国市場のニーズに即した製品の開発・供給を推し進めるとともに、同市場において日本の工作機械メーカーが自由かつ公平な競争ができる環境の整備に努めていきたいと考えます。
このほか、次世代に向けた技術開発の切れ目ない前進、環境問題への積極的な取り組み、次回JIMTOFに向けた対応などにも傾注していきます。
本年も関係各位には、ご指導、ご鞭撻とさらなるご協力を賜りますようお願い申し上げますとともに、平成23年が皆様にとってさらなる飛躍の年になることを祈念致しまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

「モノづくりの強さの源泉である“ハイクオリティ”を忘れてはならない」

●日本工作機器工業会 会長 寺町彰博

あけましておめでとうございます。年頭に際し、所見を述べさせていただきます。

昨年は、各国が実施してきた景気刺激策の効果による個人消費の持ち直しが企業収益の改善に寄与し、設備投資に波及するなど、世界経済は2008年秋以降の低迷からの回復の動きが見られました。
そのような中、世界経済には大きな構造変化がもたらされました。一つは消費国の変化です。従来の先進国に代わり中国をはじめとする新興国が世界の消費を牽引する構図が明らかとなりました。そしてもう一つは生産国の変化です。歴史的にも消費地すなわち需要地に生産が育つのは必然であり、新興国が消費国のみならず、生産国としても存在感を増してきました。

新興国での消費と生産が増加する中、日本企業からボリュームゾーン(最も量が売れる価格帯)への対応という言葉が発せられる機会が増えたように感じます。確かに現在のボリュームゾーンである低価格帯への対応は非常に重要です。しかし現状を意識するあまり品質を疎かにしてしまっては、経済の発展と共にボリュームゾーンが上がった時点で競争力を喪失することになりかねません。従って、我々は日本のモノづくりの強さの源泉である「ハイクオリティ」を決して忘れてはならないと考えます。また日本には「ホスピタリティ」という強みがあります。これは、相手の期待するものを察して行動することであり、私たち日本人が徹底して教育されてきたことです。そして、ハイクオリティとホスピタリティによって付加価値が向上した製品を、飽くなき生産性の追求とともに生産することで、私たちは顧客にとっての「リーズナブルプライス」を実現してきました。この「ハイクオリティ」「ホスピタリティ」「リーズナブルプライス」の3つが、日本のモノづくりの強さの源泉にほかならないと考えます。

今後私たちは、新興国が中心となった新たな世界経済の枠組みの中で競争に打ち勝っていく必要があります。さらに、昨年の中盤以降、為替が円高基調で推移するなど、日本の製造業にとっては逆風が吹いています。しかしながら、自らの強さの源泉を認識し絶えず磨き続けていけば、日本の製造業は引き続き世界の製造業の発展を牽引していくことができると信じて疑っておりません。

当工業会といたしましても、会員の皆様とともに熱い気持ちを共有し、日本の製造業の発展に寄与できますよう、積極的な活動を展開してまいる所存です。
会員の皆様、関係者の皆様におかれましては、舵取りの難しい環境下ではございますが、引き続きお互いに協力し合い、共に発展してまいりましょう。
最後になりましたが、会員企業様の益々のご発展と皆様のご健勝とご多幸を心より祈念し、年頭の挨拶とさせていただきます。

moldino_banner

 

 

intermole2024_大阪