「“外需の内需化“は新たな成長に欠かせないファクター」 日機連

日本機械工業連合会(会長=伊藤源嗣氏)は、1月6日午前11時より都内のホテルオークラで新年賀詞交歓会を開催した。
冒頭、伊藤会長が参会者にお礼の言葉を述べたあと新年の挨拶をした。
挨拶の概要は次のとおり。


「我が国の経済は、アジア新興諸国の成長や政府の経済対策効果などで緩やかな回復が続いてきましたが、急激な円高の進行、海外経済の減速、経済対策効果の一巡などにより生産や輸出が鈍化するなど、先行き不透明感が広がっています。昨年7-9月期のGDPは実質で前期比1.1%増、年率換算では4.5%となり4四半期連続のプラス成長を確保しましたが、10-12期は一転してマイナス成長が懸念されています。先日発表された日銀の短観では大企業製造業の景況感が1年9カ月ぶりに悪化に転じるなど踊り場曲面に入っております。政府におかれては、景気が交代せぬよう、緊急経済対策や22年度補正予算に盛り込まれた即効性のある事業を早期に実施していただきたいと思います。

近年、我が国をめぐる経済社会環境は、急速な少子高齢化による人口減少が進む一方、新興諸国も加えたグローバル競争の激化、低炭素化社会への対応など困難な課題に直面しており、世界での我が国の経済的地位も低下が続いています。これらの困難を乗り越え、将来に亘る我が国経済の持続的成長を確保するには、企業が積極的な研究開発の推進や新規事業分野の開拓などに努め、国内外において産業活動をより活発化していくことが不可欠であります。しかし、我が国企業はグローバル競争を行ううえで大変大きなハンディを背負っております。我が国は、法人税率が世界最高周水準にあり、経済連携協定でも近隣諸国に後れを取っています。また、地球温暖化の対策コストも高まる懸念がありますが、我が国の高度技術のグローバル展開の好機でもあり、その対応を強化すべきと考えます。加えて、史上最高値に迫った限度を超える円高の状況が続いています。これらが是正されないとすると、企業の海外流出を余儀なくし、雇用を減少させ、我が国のものづくり基盤の衰退をも招きかねません。政府におかれては我が国企業が泰等な条件で海外企業と競争を行うことができるよう、国際水準の事業環境整備を早急に進めていただくことが喫緊の重要政策と考えます。今回の税制改正では経済産業省のご努力もあり、法人実効税率が5%引き下げられる方向となりました。我が国経済の活性化に向けた第一歩であり、我が国企業の国際競争力の強化のため、今後も国際水準の税率までの引き下げを実施していただきたいと思います。

我が国は輸出主導型経済で成長してまいりました。人口減少時代を迎え、海外需要の重要性はますます高まっております。「外需の内需化」は我が国の新たな成長に欠かせないファクターであります。欧米の先進諸国市場が成熟する中、新興国や途上国市場には計り知れない将来性があります。特に、我が国にとって世界の成長センターであるアジアの新興諸国の存在は重要であり、その関係強化は欠かすことができません。アジア新興諸国へ積極的な貿易、投資を行い、我が国の優れた社会インフラ、生産インフラ等の輸出により相手国の経済発展に貢献することにより、我が国の将来の成長を確保することができると考えます。一方、韓国はEUとの自由貿易協定締結に続き、先月、米国とも協定締結交渉に合意し、協定発効後は韓国の価格競争力が強化され、我が国の対米貿易は大きな影響を被ることが懸念されております。現在、環太平洋経済連携協定構想への参加が検討されていますが、政府におかれては国益という「全体最適」の視点で早急に決断され、交渉に参加して、アジア太平洋地域を中心に経済連携協定を一層強力に推進して頂きたいと思います。

新興国や途上国への対応への取り組みとして、東海はインド、東欧のルーマニアとウクライナ、昨年はベトナムとシンガポールへ視察団を派遣し、政府機関、業界団体、機械関連企業を訪問して各国との関係強化を図ってまいりました。今年2月には、今後の投資・市場先として期待される旧ユーゴスラビア地域のクロアチア、セルビア等への訪問を予定しております。皆様のご参加をお願い申し上げます。

我が国経済はデフレの長期化など困難な状況が継続していますが、我が国産業の大黒柱である機械業界はそれを乗り越え、日本経済の未来を切り開いて行かねばなりません。近年の新興諸国の追い上げは目を見張るものがありますが、我が国が世界をリードする産業分野は少なくはありません。中でも「省エネ」と「環境」の分野は今後も世界的な需要の伸びが多いに期待されており、我が国企業は世界レベルの技術をさらに高め、新製品・新技術をいち早く開花して、世界市場に送り出すことが重要です。合わせて開発した製品や技術を地財で守る一方、標準化により市場の拡大を図る等の事業戦略の構築も必要であります。また、グローバル競争に勝ち抜くには、単に新製品や新技術の開発だけにとどまらず、生産技術、プロセスなどあらゆる分野でイノベーションを果たし、自らを高度化していくことが重要と考えます」

日本の総合力は強み

続いて、来賓を代表して長尾正彦経済産業省大臣官房審議官が、「円高、地球温暖化問題等、皆さまを取り巻く環境がスムーズにいかない現状の中、とにかく邪魔な環境を取り除き、スムーズに仕事ができるよう環境を整えるのがわれわれ政府の役目だということで、年も明けましたので引き締めていきたいと思っています。新興国も育って来た中、日本は世界でも法人税が高いという問題がありましたが、昨年末の税制改正では法人税減税について実効税率を5%引き下げることに決定しました。イコールフッティングでは、TPPの観点から、農業への課題等がありますが、大畠大臣も農業も独自産業化が必要であるとしています。海外需要の獲得についても政府も官民一体となって注力していきたいと存じます。

プラント、インフラ、鉄道、原子力等々日本が総合力を持って進めば価格競争に負けるわけがないということで新しい体制を組み直しました。海外の需要を取り込んでいただくのが狙いであります。昨年末もベトナムの原発2基が受注できました。トルコの原子力も手ごたえが出始めています。したがって、今後は良い動きが皆様のお仕事の関係でも出てくると思います。

機械業界含めて、やはり日本は製造業の復権が第一です。農業もそうですが、ビジネスにも直結する機械分野が多々あろうかと思います。貴工業会が機械の安全の関係で国際規格の策定や国内での普及について力強く取り組んでおられますが、これはとても重要なテーマです。もともと安全や安心は日本のクオリティの強みであり、この分野ではどこの国にも負けないと思っています。今年も課題が山積かもしれませんが、経済産業省全体で応援していきたいと思います」と挨拶をした。

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