デンソーが経済産業大臣賞 新機械振興賞

機械振興協会(会長=庄山悦彦氏)が2月24日、東京プリンスホテルで第8回新機械振興賞表彰式を開催した。今年度は23件(うち中小企業6件)の応募の中から経済産業大臣賞1件、中小企業長庁長官賞1件、機械振興協会会長賞3件が表彰された。
この賞は、従来の機械振興協会賞(昭和40年度創設)と中堅・中小企業新機械開発賞(昭和45年度創設)を統合し、平成15年度に発足したもので、今回が第8回目にあたる。
表彰対象は、独創性、革新性および経済性に優れた機械工業技術に係る研究開発およびその成果の実用化により新製品の製造、製品の品質・性能の改善または生産の合理化に顕著な業績をあげたと認められる企業等および研究開発担当者である。

技術革新で経済の活性化の先導的役割を

開式に先立ち、庄山会長が、「わが国は創造性に富んだ活力のある経済産業社会の実現に向け、グローバル化、少子高齢化、環境エネルギー問題等に対応した技術開発、人材育成等の推進を強く求められており、こうした中で、機械工業には内外の環境変化に対応し、現在のような厳しい経済環境下においても地道な新技術の開発をはじめとする技術革新を通じ、経済の活性化に先導的役割を果たすことが期待されています。優秀な研究開発を行い、その成果の実用化に成功された企業および研究開発担当者を表彰する制度を昭和41年以来実施していますが、わが国の機械工業における技術開発の一層の向上を図るため、平成15年度に従来の制度を統合し、新機械振興賞を創設しました。今年度は機械工業関係の団体等から23件にのぼる受賞候補を推薦いただき、その業績は専門的、かつ多岐であるため各部門の専門家である幹事会幹事による詳細な調査に基づき、審査委員会において審査を行った結果、技術・独創性・経済性の優れた5件の表彰を決定いたしました。」とあいさつを述べた。

日本の技術を世界に展開させる突破口になる

海江田万里経済産業大臣の代読として鈴木正徳経済産業省製造産業局長があいさつを述べた。この中で、「新機械振興賞を受賞された皆さま、おめでとうございます。今回、表彰された技術は、いずれも独創性や経済性に優れており、製品の品質改善や、生産合理化に結びついた素晴らしい技術です。中でも経済産業大臣賞を受賞された“省エネ・小型・低圧ダイカストシステム”は高い品質や生産性を維持したまま、CO2排出量、エネルギー使用量を6割削減といった深い環境性能を実現するとともに設備全体を6割以上小型化することに成功した画期的なシステムです。わが国のダイカスト加工は今や自動車部品だけでなく、最近では通信機械や日常品など私たちにとっても身近な製品をつくるために利用されています。今後、このような画期的なシステムの普及が進めば、わが国の省エネ化、低炭素化を加速化される力強い流れが生み出されていくことでしょう。こうした流れは環境というわが国の強みを活かし、アジアをはじめとする新興国の成長を日本の成長に結びつけることを掲げた新成長戦略の実現を目指す上で非常に心強いものです。海外展開にあたっては、設備全体が巨大であることと多くのエネルギーを必要とすることの2つの課題を克服しなければなりませんでした。これらの課題を克服しうる可能性を示した今回の技術が日本の優れた環境技術を広く海外へ展開させるための突破口となり、世界と日本がともに成長し、地球温暖化などの課題解決に向けてともに邁進できる日ができることを期待しています」と優れた日本の環境技術への期待を述べた。

わが国はものづくりでやっていくしかない

審査報告を審査委員会委員長である吉川弘之科学技術振興機構研究開発戦略センター・センター長が述べた。この中で吉川委員長は、「今回、23件の応募がありました。独創性・革新性・経済性の面からみて優れた機械構造技術に関する研究開発であるかどうか、またその実用化により新製品の製造・製品の品質性能の改善に寄与したか、また、生産の合理化に顕著な業績を上げたと認められるか、社会に対して有意義であるかどうか、という点を基本として審査いたしました。とくに中小企業における技術術発展は、わが国にとって極めて重要であるので、その技術の発展、進歩に寄与していることも重要な基準としております。金融危機、その後の世界における様々な変化もあり、その結果、世界の不安定要因が各国に大きな衝撃を与えました。各国はその国に相応しいそれぞれの方向でその衝撃を克服しようと努力しています。わが国も様々な努力を進めていますが、その中でものづくり技術の向上が中心的な課題であると考えます。わが国はものづくりでやっていくしかない。一方で、省エネルギー、資源開発、安全、健康問題、少子高齢化社会への対応など、これらの大きな問題のある中、このような状況の中でのものづくりへの追求が求められている。これらの課題にどのように取り組んでいるかも審査の過程で充分に熟慮しました。また、基礎研究に基づく新技術開発が重要ですが、新しい開発だけでなく、社会的期待に応える技術を実現することが大切です。そのためには、社会の状況を洞察し、さらに将来、社会が何を求めるのか深く考えた上での技術開発が重要であり、そのような開発者が育ってくることを期待しています。また、このような開発者が理解の深い技術者、あるいは組織に囲まれて開発するということも大切です。今回の受賞業績から、そのような状況が現実に可能であったことをここに喜んで報告いたします」と述べたあと、受賞概要を説明した。

世界レベルの技術を世界市場に送り出すことが重要

伊藤源嗣日本機械工業連合会会長の祝辞を代読して石坂清同常務理事が、「機械工業の分野で新技術・新製品の開発に優れた成果をあげられた受賞者の皆さまに心からお祝いを申し上げます。顧みますと近代におけるわが国産業社会の発展の歴史は、わが国の技術開発の歴史であります。これまでわが国は世界に先駆けて独創的な先端技術や新製品の開発に成功を収め、国際競争力の高い工業製品を世界に送り出すことにより経済の成長と繁栄を確保してまいりました。国際競争力の源泉はたゆまざる技術革新であり、新技術の開発は天然資源に乏しいわが国にとってまさに生命線であると言えましょう。中でも機械工業がわが国の技術開発に果たしてきた功績は大きなものがあります。さて、近年の韓国や中国をはじめとする新興諸国の追い上げには目を見張るものがありますが、わが国がリードし、世界に貢献する産業分野は決して少なくはありません。環境技術や省エネルギーなど、今後世界的な需要の伸びが大いに期待できる有望分野です。わが国企業はこれら世界レベルの技術をさらに高め、新製品、新技術をいち早く開発して、世界市場に送り出すことが重要であると考えます。そのためには企業はさらなる技術開発を進める必要があります。政府におかれましても技術開発の重要性を踏まえ、来年度からはじまる第四期科学技術基本計画の中で積極的な施策を打ち出されています。本日、受賞されました真摯な技術開発の取り組みはまさに日本が求めている姿であり、他の模範となるものであります。」と述べた。

日本の素形材産業の発展に貢献するものと自負

受賞者を代表して加藤宣明デンソー社長が、「世界経済が中国、インドなどの新興国が牽引する形で回復しつつありますが、私たち日本の製造業はグローバルレベルでの厳しい競争に直面しております。今後日本の製造業が競争力を維持していくためには、技術力やものづくりの力により一層磨きをかけて世界のお客様や社会のニーズに応えていくことが不可欠です。今回受賞いたしました、東洋機械金属、宮本工業所、デンソーの3社共同開発の省エネ小型低圧ダイカストシステムは素形材加工のひとつであるダイカスト加工におきまして、従来システムに比べ50%以上の省エネと大幅な小型化を実現しました。本開発は生産活動の効率を高めるとともにCO2排出量削減を実現するシステムであり、日本の素形材産業の発展に貢献できるものと自負をしております。本日の受賞は、開発や生産にかかわった技術者たちにとりましても、大きな喜びでございます。」と謝辞を述べた。
*受賞内容詳細はこちらをクリック(過去記事)⇒http://seizougenba.com/node/262

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