年頭所感 「経済の好循環をより力強く回していく」 経済産業大臣 宮沢洋一

(はじめに)
平成27年の新たな年の訪れを謹んでお慶び申し上げます。

昨年末の衆議院選挙を経て発足した安倍第三次政権において経済産業大臣に再任されました。新年を迎えるにあたり、経済産業大臣として取り組むべき主要な課題と大きな方向性について、改めまして一言、申し上げます。

(福島復興)
まず始めに、故郷の住み慣れた我が家に戻れないまま避難を続けられている八万人の福島の方々に寄り添い、福島復興に全力を尽くします。

昨年十月に経済産業大臣に就任して以来、地元の方々の声に耳を澄まし、その思いを胸に刻みながら、福島復興に取り組んでまいりました。今後も、避難指示の解除、生活基盤の再建と産業の復興、イノベーションコースト構想の具体化等を進めてまいります。

福島再生の大前提となる福島第一原発の廃炉・汚染水対策については、昨年12月に4号機の使用済燃料プールからの燃料取り出しが完了し、今年度末には凍土遮水壁の凍結作業が開始される予定です。引き続き、国も前面に立って、廃炉・汚染水対策を着実に進めていきます。

(経済の好循環)
過去2年間のアベノミクス「三本の矢」の経済政策により、有効求人倍率は22年ぶりの高水準、昨年の賃上げ率は過去15年間で最高となるほか、経常利益は過去最高水準となるなど、雇用や企業収益を中心に、経済の好循環が生まれ始めました。この好循環をより力強く回していくことが私に課された大きな使命です。景気回復の実感を全国津々浦々に届けられるよう、強い覚悟を持って職務に臨みます。

足下の景気は、緩やかな回復基調が続いているものの、実質GDP成長率が2四半期連続でマイナス成長になるなど、まだまだ脆弱な部分もあります。

このような景気状況に対して、スピード感を持って的を絞った対応を行うため、年末に経済対策を閣議決定いたしました。地域の工場・オフィス・店舗等における省エネ設備の導入支援や、中小企業・小規模事業者への資金繰り・事業再生支援を通じて、電気料金や材料費の上昇等の負担増加に対応してまいります。また、中小企業・小規模事業者の事業革新のため、革新的な設備投資やサービス開発・試作品の開発を支援していきます。

また、法人実効税率を数年で20%台まで引き下げることを目指し、成長志向に重点を置いた改革に取り組みます。大胆な法人税改革により、我が国の立地競争力を高めるとともに、企業による設備投資を促します。あわせて、ビジネス環境の整備、積極的な外国企業誘致を推進し、対内直接投資の拡大を図ります。

これまで政府を挙げて、民間企業の皆様には賃上げをお願いしてまいりましたが、経済の好循環をより力強く回していくためには、賃上げの流れを加速し、また地方の中小企業にも行き渡らせることが重要です。昨年の政労使会議において取りまとめられたとおり、経済界には、賃金の引上げに向けた最大限の努力を図るとともに、取引企業の仕入れ価格の上昇等を踏まえた価格転嫁や支援・協力について総合的に取り組んでいただきたいと思います。

(中堅・中小企業が主役として担う成長戦略、地方創生)
我が国の成長を支えるのは、富士山のような一部の大企業だけではありません。日本中に小さな山を沢山つくっていくことが必要です。付加価値が高く、ニーズに合った少量生産・サービス提供から成る山々です。成長戦略の主役は、中小企業の皆様です。

私は、アベノミクスの三本目の矢、成長戦略の実現は、成長のためのエンジンを取り替える作業だと捉えています。かつての日本経済のエンジンは、高度成長期には適していましたが、残念ながら環境にはよくない、燃費も悪いエンジンでしたが、今後は、高付加価値で、コンパクトで環境に優しいエンジンに変えていく事が必要です。

新たな成長分野を切り開く中堅・中小企業による「第二の創業」やベンチャー企業の育成を強力に支援していきます。コーポレートガバナンスの強化や、大胆な事業再編の促進、IT利活用の促進等、サービス業を含めた日本経済全体の生産性や収益を向上させていく取組も、進めてまいります。

加えて、職務発明制度の見直しや営業秘密の保護強化、知財人材の育成等の知的財産・標準化戦略を推進し、世界最高の知財立国を目指します。また、イノベーションシステムの改革を進め、優れた研究開発成果を事業化・産業化に結びつけるとともに、官民で緊密に連携して、戦略的な国際標準の獲得や認証基盤の整備を推進します。

主役である中堅・中小企業がより一層輝くことにより、地域経済の底上げも可能になります。このため、地域の多様性、自主性を生かした様々な取組を、政府を挙げて応援すべく、昨年発足した「まち・ひと・しごと創生本部」の下、関係府省と連携しつつ、積極的に施策を展開してまいります。

全国の皆様に期待いただいている「中小企業需要創生法案」の次期通常国会での成立に万全を期します。創業間もない中小企業の官公需の受注促進と、「ふるさと名物」の開発・販路開拓による地域の需要創生を目指します。さらに、地域発の新たな事業の担い手創出や事業承継を円滑に行うため、創業準備、創業、事業の継続・発展、事業承継の各段階での課題解決に向け、支援の充実・強化をしてまいります。

(エネルギー政策)
エネルギー政策については、安全性(Safety)、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)の「3E+S」の実現を基礎として、昨年4月に改訂した新たなエネルギー基本計画に基づき、政府として引き続き様々な取組を行っていきます。特に、エネルギーミックスについては、現実的かつバランスの取れたエネルギー需給構造の将来像を示すべく、しっかりと検討を進めてまいります。

まず、引き続き再生可能エネルギーの最大限かつ持続的な導入を進めてまいります。系統接続が保留されていた問題に関しては、昨年末、対応策を発表しました。これにより、早急な保留解除につなげるとともに、①太陽光に偏らないバランスの取れた導入と、②きめ細かな出力制御を通じた導入量の最大化の実現を図ります。

原子力は重要なベースロード電源と位置づけています。その上で、徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入を進めつつ、原発依存度を可能な限り低減します。原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原発の再稼働を進めます。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得られるよう、取り組んでまいります。

高レベル放射性廃棄物の最終処分については、処分地選定に向け、科学的有望地を示す等により、国民や地域の御理解をいただきながら、将来世代に先送りしないよう着実に進めてまいります。

また、低廉で安定的な電力供給を実現するために、本年の通常国会には、電力システム改革の総仕上げとなる第三弾の法案を提出します。本法案により、2018年から2020年を目処に法的分離による送配電部門の一層の中立化が実施され、送配電ネットワークを各事業者が公平に利用できるようになります。電力システム改革と併せ、エネルギー供給構造の一体改革を推進し、総合エネルギー企業創出の観点から、都市ガスの小売全面自由化や熱供給の料金規制の撤廃などの改革を進めていきます。

さらに、米国からのシェールガス・LNG輸入の実現や、昨今の国際情勢も踏まえた権益確保や供給源の多角化、LNG産消会議の開催等を通じた買主側のバーゲニングパワーの強化等、エネルギーコストの低減に向け、オールジャパンで取り組みます。製油所等の事業再編や石油サプライチェーンの強靱化等を通じ、石油の安定供給の確保にも引き続き取り組みます。

(対外経済政策)
成長著しい新興国市場の獲得は、中堅・中小企業を始めとする我が国企業の成長にとって不可欠です。成長の度合いや競争環境等、国ごとの特性を踏まえつつ、戦略的な取組を進めます。先進的な環境エネルギー技術など我が国の強みを活かしたインフラシステム輸出、中小企業の海外販路開拓等支援、クールジャパンの国際展開などにも取り組んでまいります。加えて、将来の海外市場獲得のための規制・基準の作成、競争政策の調和促進、地域的広がりをもつ高いレベルのルール設定等を戦略的に行い、日米欧の先進国間でも連携を行っていきます。

日本の成長を支える通商枠組みに関して、積極的に交渉します。TPPの早期合意に向け全力を尽くすのはもちろん、本年が合意の目標年でもある日EU・EPAやRCEP、更には日中韓FTAを含めた全9つの経済連携交渉を積極的に推進します。また、WTOについては、ドーハ・ラウンドやITA拡大交渉等の多国間・複数国間の取組を進めます。

(おわりに)
今年は、戦後70年の年にあたります。終戦後の焼け野原の中から、先人の方々が額に汗して働き、今日の日本経済を築き上げてきました。その日本経済をより一層力強く発展させ、国民の暮らしの豊かさに繋がるよう職員一同奮闘してまいります。一層の御理解と御支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

平成27年元旦
経済産業大臣 宮沢洋一

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