インフルAからの回復

まったく油断も隙もありゃしない。
身体が資本であるのはよく分かっているので、日頃からうがい手洗いは徹底し、健康管理にも気を遣っていたんだけど、かかる時にゃかかるのよね、インフルエンザ。

怒濤の賀詞会ラッシュが済んだあとは、これまた怒濤の原稿処理等と取材や営業に打ち合わせ、他にも靴下を洗ったり、風呂に入ったり、猫を可愛がったり、化粧をしたりと、とにかく多忙ながら、スケジュール通りに事は進行していた。

そう、あの忌々しいウィルスに冒されるまでは―――。

実は賀詞会シーズンも終了を遂げた1月22日あたりに一度、風邪をひいている。熱も出たので、慌ててかかりつけの医師のところに飛び込んだ。仕事が詰まっているので、休むわけにはいかんのだ。その時、医師から「インフルエンザが流行っているので検査をしましょう」と言われ、他人に見られては恥ずかしいデリケートな部位のひとつ、鼻の穴に強引に綿棒を突っ込まれた。

「ぬぅっ! い、いたい! はやくはやく、はやくぅ~~!」
鼻腔をつんざく、あまりの痛さに思わず目頭を押さえるわたし。結果は陰性で、5日分の風邪の諸症状に対応するお薬を貰い、飲みきる頃には、体調もすっかり良くなった。

ところが。

それから日も浅い2月2日(火)の夜。喉に若干の異変を感じたわたし。
この日は午前中に名古屋で楽しみにしていた取材があり、朝4時に起床した。取材終了後、本来ならばまだ名古屋に留まりたいところだったのだけれど、原稿が山のように詰まっていたのもあって、ブーメランのように東京に戻った日だ。

喉がイガイガしはじめたので、風邪をブリ返したか? と不安になった。体質的にどうも新幹線に乗ると風邪をひきやすくなるので、風邪薬をのんで机に向かった。

3日(水)になった。
相変わらず喉がイガイガし、ときたま、ケホケホとカラ咳が出るようになった。頭が痛いとか、熱が出るとか、そんなことがなかったので、そのまま机に向かっていた。夜は、月島で会食があるため、出かけた。

美味しい食事を味わいながら、楽しいひとときを過ごしたあと、帰宅。この日は原稿の山を考えて、好きなアルコールもセーブするという節度ある大人の女に変身し、床に着いた。

なんとなく目覚めたのは、日付も変わった4日(木)の午前2時ごろくらいだろうか。トイレに行こうと思い、身体を動かすと、頭が重く、身体もだるいではないか。微妙なイガイガだった喉が一気に熱くなり、喉どころか耳まで痛んだ。

フラフラしながらトイレから戻る。嫌な予感がしたので、体温計で熱を測ると37.5℃だった。

(ちきしょう。熱が出ちゃったよ)
解熱鎮痛剤を飲んで、うつうつと夢の中を彷徨った。

急激な体調の悪化

おそらく2時間後ほど経過したあたりだろうか、あまりの寒さに瞳を開けると、身体がガクガクブルブルと震えだした。

寒すぎる!!! 喉が痛い!! 
もう一度熱を測ると38℃。解熱鎮痛剤を飲んだにも関わらず、熱が上がるとは。

それから、またうつらうつらと夢の中に戻っていった。
はっきり目覚めたのは数時間後で、身体はすでに起き上がれなくなっていた。筋肉が痛み出した。

(やばい。病院に行かなきゃ・・・・)
かかりつけの医院の診察時間を待って、なんとか立ち上がったものの、今度は着替えられない。頭がフラフラするので、冬場だからまぁいいだろう、とパジャマのまま、コートを着て、病院に向かった。

うちからかかりつけ医のところまではおおよそ徒歩6分。普段はなんとも感じない距離だ。
だけど、この日は違う。一歩前に足を出すのもツライ。

力尽きたわたしは、その手前にある、かかりつけ医とは違う病院にかけこんだ。おそらくこのままでは食事ができないだろうから、ビタミン剤入りの点滴をしてもらおうと考えていた。

病院に行くと、おでこにピッと1秒ほどで結果が出るという機器で熱を測られた。結果は37℃もなかった。おそらく外気の温度に影響されたのであろう、そんなハズはない、と思ったのだけれど、反論する元気もなかった。病院で利用している機器の結果なので、ガタガタいうこともなかろう。とりあえず、症状を訴え、「身体がツラくて食事もできないと思うので点滴をして欲しい」、とお願いをした。なんていったって、38℃も熱がでりゃ肉体はビタミンCを大量に欲するはずだ。点滴をしてもらい、ひととおりの風邪薬を出してもらって家に着いた。点滴を打っているときによく眠ったのと、なんとなく点滴を打ったので、少し身体がラクになったような気がした。

ラクになった・・・のは、本当に気だけだった。それから1時間も経たぬうち、どんどん熱は急上昇。39℃超えという久々のハイスコアをはじき出した。つらい。過呼吸と勘違いするほどの激しい咳に襲われた。処方された薬もほとんど効かない。熱は一向に下がらない。こいつはおかしい。ちなみにこの日の食事は水とスポーツ飲料とプロティンのみ。

この日は相当苦しんだ。トイレにいくのもやっとだ。身体中が痛くて全身に力が入らない。特に股関節が痛くてたまらないうえ、いくら布団をかぶっても寒い。ガクガクブルブルと全身の筋肉を使って、身体を発熱させようと己自身が奮闘しているのが分かった。それと同時に、襲いかかるのは仕事への不安感。この不安感をなんとか払拭するのはTwitterが役にたった。どうも、なにかしていないと、落ち着かない性質らしい。愛猫のぽぽ嬢は、くたばっている私の側から離れない。ずーっと母猫のように枕元で私を見守ってくれた。

2月4日(金)になった。あまりの急激な体調の変化に、本当に風邪だろうかと不安を覚えたので、今度はなんとしても、いつものかかりつけの医師にみてもらおうと、ふんばって病院に向かった。なんて遠いんだ・・・・たった6分の距離だけど頑張って歩いた。

わたしを待っていたのは、やっぱり鼻の穴を陵辱されるあの検査だった。やっぱり痛かった。涙目に映った綿棒の先には粘度の高い鼻水があった。これを検査薬に混ぜ、検査キットに染みこますと・・・あれよあれよという間に、Aというところに一筋の悲しみの色をしたラインが浮き出てきたではないか。それを見て、(あぁ、A型にかかったな)と医師から説明を受ける前に悟った。あぁ、仕事どうしよう。サイトの更新、そして依頼されている原稿の締め切りが――――と鼻腔の奥とともに心が痛んだ。

恐るべしイナビル

薬が処方された。「イナビル」という粉末を吸引するタイプの新しい薬だ。
1回の処方で済むという手軽さがウリらしい。
家に帰って指示通り、イナビルを吸引すると・・・・ゲホゲホゲホっ! 咳き込んでしまい、ああっ! せっかくのイナビルが!!!! という、まったくシャレにならないミスをここぞとばかりに犯してしまうタイミングの悪い自分に腹が立った。

1回で効果を発揮するのがウリ

薬を空気中に放出してしまった感があったので、効果のほどが気になるところだ。もし、効かなかったらどうしよう・・・・。

そうして金曜日も木曜日と同じく丸1日、熱と激しい咳に苦しみながら過ごした。この日の食事はイチゴ2個と、甘酒に生姜を入れたもの、スポーツドリンク。ほとんど食べられなかった。フラフラして頭を上げて起き上がり、咀嚼するのが苦痛なのだ。仕事への焦りを紛らわそうとスマホを寝床でいじるも、すぐに力尽きる。力尽きてほとぼりが冷めては、また、スマホをいじり、力尽きる、の繰り返し。

2日もまともにご飯が食べられないのに、熱で身体のエネルギーが奪われる・・・となると、出動するのは、年末年始のツケである脂肪細胞であろう。さぁ、出動だ、脂肪細胞! とぼんやり考えていた。きっと痩せるに違いない。

猫はデリケートだ。
ぽぽ嬢もご飯を食べなくなった。

インフルAと診断され、薬を投与した翌日の2月6日(土)の朝。
出なかった汗が出はじめ、ようやく震えていた身体が熱い、と感じるようになった。熱が下がりはじめ、一気に身体がラクになったのには驚いた。
恐るべしイナビルの効果。

(一気に食欲も出てきたぞ) 

ということで、この日の夜はにんにくの焼いたやつを摂取。そのあと、菌は汗と共に流しちまえ! ってことで、風呂に入って大量に汗を流し、速効で布団にくるまり就寝。

そうして7日(日)の今日を迎えたわけだけど、昼には、すっかりステーキ200gをペロリと平らげたわたし。我ながらものすごい回復力である。食欲の無かったぽぽ嬢もガツガツとご飯を食べ始めた。

で、現在、すでにこうして机に向かっている。今夜は遅れたぶん、なんとしても頑張らなければなるまい。

インフルの前では無力だ。うがい手洗いを徹底しても、かかるときはあっという間にかかる。聞いたところによると感染して24~48時間以内に発症するというから、おそらく空気の乾燥した満員新幹線の中で感染したのであろうと睨んでいる。飲み物をのんだあと、マスクを付けるのを忘れて居眠りしたのがいけなかった。

また、以前、インフルエンザの予防接種をしたのだけれど、アレルギー反応が出て、今年は接種をやめてしまった。やっぱり多少のアレルギーは辛抱して打つべきだったのかもしれない。

しかし、インフルエンザってヤツは案外、気を遣っても、体調不良だったり、抵抗力が弱ったりするとツケ込んでくる。やっぱり滋養と休息・睡眠は重要である、と改めて認識した次第なんですが、まだまだ流行っているみたいなので、皆様も気をつけて下さいませ。

ということがあり、サイトの更新が若干遅れることをお詫び申し上げます。