三井精機工業の「MTF2016」(本社会場)をレポート! ~奥田社長に意気込みを聞く~

 
(写真提供:三井精機工業)
 
 三井精機工業(社長=奥田哲司氏)が、プライベートショー「MTF2016(MITSUI TECHNICAL FAIR2016)」を開催した。今年のテーマは、「技術と技能で未来に挑戦」。
 関東地区(本社会場)は、1月26日(火)から27日(水)の2日間開催された。機能の充実や操作性を改良した新型ジグ研削盤「JB350G」をはじめ、人気の5軸制御立形マシニングセンタ「Vertex55X Ⅱ」、水潤滑式オイルフリーの未知なる可能性を追求した「i-14000Xシリーズ」などが展示され、多くの来場者で賑わった。本社会場内で奥田社長に「MTF2016」への意気込みをお聞きした内容とともに、レポートを掲載する。

ユーザーニーズを機械に反映! 注目の中部地区はポートメッセなごやで華やかに開催!

奥田社長は「工作機械は高精度・高剛性・スピード生産性が重要」と話す。
奥田社長は「工作機械は高精度・高剛性・スピード生産性が重要」と話す。
 本社工場を皮切りに1月26日からスタートした「MTF2016」。会場内に入ると、来場者の熱気をすぐさま感じるほど、多くの来場者が賑わいをみせている。毎年、この「MTF」に足を運んでいる筆者も、この混雑振りに「今年はなにかが違う」と思ったほどだ。会場内の入口すぐには、ジェイテクトの「FH550 SX」が展示されていた。そうしてズラリと並ぶコンプレッサ、人気の5軸マシニングセンタ「Vertex55X Ⅱ」に、待望の新製品、高精度ジグ研削盤「J350G」が並ぶ。奥のほうには、ダカール用の日野レンジャーが展示され、来場者を楽しませていた。また周辺機器を担う協賛メーカー43社の製品も多数並んでいた。

 今回、注目したいのは、中部地区。なんと2月16日から開催される名古屋会場は、メカトロテックジャパンでお馴染みの“ポートメッセなごや”で華々しく開催される。奥田社長はこの件に関して、「今まで工作機械の実機展示を限られた場所でしか置いていなかったこともあり、できるだけ多くの方の目にわれわれの機械を見て欲しいので、昨年から商社さんの大きなプライベート展示会の時には工作機械も実機展示をさせていただくようになりました。工作機械を実機展示するということは、大きな会場が必要になりますから気合いを入れています」と意気込みを話してくれた。

精機工場内に展示していた横形マシニングセンタ「HPX63 Ⅱ」は角スライド機最速の早送り速度54m/min、加速度0.5Gを達成! シリンダブロックの加工時間を12%短縮している。
精機工場内に展示していた横形マシニングセンタ「HPX63 Ⅱ」は角スライド機最速の早送り速度54m/min、加速度0.5Gを達成! シリンダブロックの加工時間を12%短縮している。
 もともと奥田社長は自動車メーカーの技術畑を歩んでいたことから、ユーザーとしての経験も長く持っているという強みがある。どんな機械が生産現場で威力を発揮するのか、リサーチも怠らない。同社で定評のある横形マシニングセンタについては、「精度と剛性という面では良かったのですが、最近は生産性を高めるためのスピードも重要視されるようになりました。そこで従来の『HPX63』を改めて、新製品として『HPX63 Ⅱ』をリリースしました。数字で言えば早送り54m/min、加速度0.5Gという角ガイド機ではトップクラスの早送り速度を誇ります。高精度・高剛性に加えてスピード生産性を実現させました」とのこと。

 「今まではどちらかというと開発スピードが遅かったように感じる」と自社に対し若干厳しい目を向けた奥田社長は、“効率的な開発”を行っていくため、開発を決める“商品企画会議”の担当を従来の企画部署から、営業へ移したという。「お客様からのご意見に耳を傾け、開発の優先順位をしっかりつけられる形で商品開発を行っていかなければ、と思っています。ちょっと古い言い方ですが、昔はよく言われていたプロダクトアウトからマーケットインプラスというか、こちらからも提案させていただけるようにと、舵を切っているところです」とのこと。

新製品の水潤滑インバータオイルフリーコンプレッサ「i-14000X」に来場者も興味津々
新製品の水潤滑インバータオイルフリーコンプレッサ「i-14000X」に来場者も興味津々
 三井精機の強みのひとつに、コンプレッサがある。同社独特の圧縮機構であるZスクリューと水潤滑システムで出消費電力量の大幅削減ができる仕組みは、1982年に世界で初めて圧縮機構を発表して以来、時代のニーズに対応し、高効率・省エネルギーのコンプレッサへと進化を遂げている。オイルが一切不要なためにエネルギーロスはなく、排出油をカットし、コスト削減と省エネを追究。潤滑油が水なので、食品業界、医療業界からも高い評価を得ている。

 潤滑油が水ということもあって、「寿命が短いのかな?」と思ったところ、奥田社長は、「潤滑油が水となると寿命が短くなる、という心配事がありましたが、スクリューの肝心なところをステンレスに変えて寿命向上を図っているんですよ」と返答してくれた。

 奥田社長は、「これからどんどん三井精機も変わっていきますので楽しみにしていてください」と明るい声でしめくくった。

新製品の高精度ジグ研削盤『J350G』は世界1の広範囲な砥石自動切込みストロークを実現!

工場ラインでは「Vertex55 Ⅱ」がズラリと並んでいた。このことから人気ぶりが理解できる。
工場ラインでは「Vertex55 Ⅱ」がズラリと並んでいた。このことから人気ぶりが理解できる。
 さて、三井の人気機種といえば、『Vertex』だが、ジェットエンジンに使っているようなブレードを加工する需要がこのマシンにはある。展示されている『Vertex55X Ⅱ』は特殊なテーブル、しかもDDテーブルで回転の立ち上がり、立ち下がりが速いのが特長だ。この回転軸の加速度がなぜ必要か、というと、材料の表の面を削って裏側に移行するとき、180°ひっくり返る時にスピードが遅いと時間が取られてしまう。表から裏、裏から表とこれを何千回と繰り返すので、これをスピーディに行わなければ全体の加工時間の短縮に影響するというわけだ。

 ブレードは空気の流れる部分に使われるが、加工面が荒れると空気が乱れてしまい、性能に大きな影響を与える。
 
 営業本部の下村栄司主査は、「最近、新しいエンジンの仕事がかなり日本に入ってきているので、ブレードの加工需要は増加しています。新しいエンジンでなにが変わったかというと、材質がますます削りにくくなっていることでしょう。また、面の状態が乱れることによって、燃費の低下や騒音が増加するといった問題も勃発します。それらを改善するためのニーズがこの『Vertex55X Ⅱ』にはあるのです。エンジンは燃料を燃やすので、その燃やす温度も高ければ高いほど効率が良くなって燃費も良くなる。燃焼温度は1500~1700℃なので、これだけの高温ですと普通の鉄は溶けてしまうので、新しい材料の開発は今後どんどん進んでいくでしょうね」と話してくれた。

ジグ研削盤「J350G」。砥石自動切込み(U軸)の-3~50mmのストロークは世界最大級を誇る。
ジグ研削盤「J350G」。砥石自動切込み(U軸)の-3~50mmのストロークは世界最大級を誇る。
 さて、穴径や面祖度、ピッチ等いろんな精度を究極に出さなければならないのが、ジグ研削盤の役目である。やはりワイヤーカットだと電気で加工しているので、加工面が脆くなる、という話も聞く。また、何万ショットもプレスで打ち抜くと、金型の寿命にも響いてくる。型の寿命を延ばすためにはジグ研が役に立つが、今回の三井精機が新しくリリースしたジグ研削盤『J350G』は、従来のジグ研にはない技術が搭載されていた。

 最大の特長はなんといっても広範囲な砥石自動切込みストロークを実現していること。なんと砥石自動切込み(U軸)の-3~+50mmというストロークは、あらゆるジグ研削盤の中でも世界最大級を誇る。下村主査は、「例えばひとつの金型の中でも一種類の穴だけでなく、小さい穴から大きな穴まであるわけです。この穴を自動で加工しようとすると今までは、径の差が直径4ミリまでしかできなかった。20mmの穴と24mmの穴だったらOKですが、20mmと24mmと30mmがあったら、この3種類はできないわけです。そこでこのストロークを格段に増やして、遊星回転で穴径の異なる穴を加工する際に、1本の砥石で小さな穴から大きな穴まで連続して自動加工することができるようにしました」とのこと。

タッチパネル採用で直感的な操作ができる
タッチパネル採用で直感的な操作ができる
 そしてもうひとつ注目したいのが、実際の操作を徹底解析してレイアウトした主操作盤『G-MAPS(ジーマップス)』だ。この『G-MAPS』は、Grinding-Mitsui Advanced Programming Supportの略で、タッチパネル採用により直感的な操作もでき、MDIキーボードの併用により従来NCと同様の操作も可能な操作盤である。機械操作部は実際の検索作業を考慮してアナログ系のスイッチを多用しており、“人間の感覚をずいぶん大切にしているな”、という印象を受けた。加工に必要なデータを入力するだけで最適な研削加工プログラムを自動生成する『G-MAPS』の名付け親は、下村主査と聞いた。なかなかゴロが良いネーミングだ。

大盛況だったセミナー
大盛況だったセミナー
 今回、本社会場では様々なセミナーを行っているが、筆者が聴講したのは、同社の事業企画本部商品開発部の鳥山真理さんが講演した『新規開発機種の紹介』。展示されている新機種について技術面からも非常に分かりやすく丁寧に解説をしていた。





徹底した造り込みを見ることができる精機工場。キサゲの実演もできる!

天井には無数の穴が開いており、大量の空調空気を送る。
天井には無数の穴が開いており、大量の空調空気を送る。
 次に見学したのは、1年ぶりの精機工場。
 なんといっても「1µm以下の精度を測る技術が高精度機械を生む」という熱い思いが伝わるような測定室はなんと±0.1℃。測定場所の環境や方法、評価の基準において、全てがパーフェクトな条件を揃えている測定室である。

 工場内の設定温度に対しても±0.4℃にコントロール。時間的にも空間的(上下方向、水平方向)にも均一な温度分布を実現。二重構造の天井から床面に向けて大量の空調空気を送るため、極めて温度の安定性が高い仕組みをしている。床付近でも風速がほぼゼロという徹底ぶりだ。

本社工場内ではキサゲの実演コーナーも設置してあり、多くの来場者が挑戦していた。。
本社工場内ではキサゲの実演コーナーも設置してあり、多くの来場者が挑戦していた。。
 なお、関西地区(大阪会場)は2月9日(火)~10日(水)まで花博記念公園鶴見緑地「水の館」(ハナミズキホール)で、中部地区(名古屋会場)は2月16日(火)~17日(水)まで名古屋国際展示場 第3展示館(ポートメッセなごや)でそれぞれ開催される。

 特にポートメッセなごやは今回大注目のプライベートショーとなっている。広い会場内で、ゆっくりお目当ての機種を見学したり、講演を聴いたりしてみてはいかがだろうか。今回の講演は、なかなか聴講するチャンスがないものもあるので、要チェックだ!


中部地区の講演スケジュール

moldino_banner

 

 

intermole2024_大阪