「日本の工作機械産業を一段と強化」日本工作機械工業会が総会を開く

花木会長
花木会長
 日本工作機械工業会(会長=花木義麿 オークマ社長)が5月25日、東京都千代田区のホテルニューオータニで第5回定時総会・懇親会を開いた。
 総会終了後の懇親会で壇上に立った花木会長のあいさつの概要は、以下のとおり。

 2013年に日本工作機械会長のバトンを引き継いでから、3年が経過した。この3年の間、工作機械産業は新たな潮流に直面し、私どもを取り巻く経済環境も刻々と変化している。技術面ではドイツのインダストリー4.0や、アメリカのインダストリアル・インターネット等、機械や工場間、あらゆるものをネットワーク化し、繋がる工場とする取り組みが進められている。工作機械においてもスマートマシン、スマートマニュファクチャリング、スマートファクトリー等の知能化技術、ICTを駆使した革新が進められている。日本でも政府のロボット新戦略の後押しを受け、工作機械とロボットの融合やネットワーク化が加速している。工作機械自身も一段と知能化や多機能化が進んでいくと思われる。また3Dプリンタに代表されるアディティブマニファクチャリング技術は従来の金型、医療分野のみならず自動車、航空機等の分野にも広がりをみせている。経済面ではTPPの発行によって環太平洋地域の経済成長と工業化の進展が期待される。米国では原油安の影響から第二次産業の減速がみられるが自動車や航空機産業の投資は好調である。一方、2000年代から世界経済を牽引してきた中国では、量から質への転換が進められている。欧州は財政問題や近隣の余波を受けつつも緩やかな景気回復が進んできている。これを為替面では2013年以降、超円高の修整が進んだが、ここにきてやや不安定な動きがみられる。新興国経済の減速や原油価格の下落、あるいは世界経済の不透明さは国際社会が直面する大きな課題となっている。このような環境の中、昨年7月に産学官の叡智を結集して加工システム研究開発機構を立ち上げた。先端技術研究開発、標準化研究開発、教育普及の3部門を設け、すでに世界最先端の研究開発や戦略的な国際標準化活動を開始している。研究者・技術者の育成に向けた取り組みにも着手している。その他、各委員会、研究会を中心に多くの調査・研究活動を進めてきた。恒例の工作機械トップセミナーの開催、高齢者雇用の施策の提案、輸出管理に評価基準変更への対応、自動車産業のパワートレイン関係への調査や、省エネに向けた取り組み等、業界の未来に向けた日工会事業を推進してきた。展示会関係においては、昨年ミラノで開催されたエモショーや北京で開催されたCIMTをはじめとする展示会の場で主要工業会との交流を深めた。これらの機会に記者会見を開催し、積極的にJIMTOF2016の広報を展開してきた。これらの活動実績を踏まえ、2016年度においては、私が会長の任に就いて以来、重点的に取り組んできた4つの課題、産学官連携の強化、標準化戦略の強化、JIMTOF求心力の強化、人材確保の強化、これらをはじめとする中長期的な課題での対応をさらに進化発展させていく。まず、技術分野については、加工システム研究開発機構の活動が2年目を迎える。将来にわたる日工会の技術開発のプラットフォームと位置付け、活動を精力的に続けていく。本年11月に開催するJIMTOF 2016を成功に導くべく万全の準備を進めていく。少子高齢化が進むわが国にあって人材の確保は喫緊の課題である。2006年から継続して実施している工作機械トップセミナーをJIMTOF2016に併せて開催し、わが国工作機械産業の発展を担う若くて優秀な人材の確保に向けた事業を展開していく。先日、米国のガードナー・ビジネス・メディア社が2015年の世界の成形型を含む工作機械の国別生産額を公表した。切削型だけの集計ではないが、この中で、わが国の工作機械の生産額は134.9億ドルで、世界の工作機械の生産額中16.8%のシェアを占め、世界第2位の座を堅持している。高機能・高性能・高品質の日本の工作機械は世界市場から高い評価を得て求められている。日本の工作機械産業を一段と強化していくことが私どもの使命である。各会員企業が技術力、販売力、サービス力を一段と強化するとともに日工会として業界全体としての課題に総力を挙げて取り組んでいく所存である。日本の製造の復権とものづくりの発展に貢献していく。昨年春先に公募があった省エネ補助金では、日工会は該当設備証明書を1万2439件発行した。また、一昨年3月から開始された生産性向上設備投資減税では同様に3万件以上の証明書を発行している。これは日本国内の製造現場に、更新が必要な老朽設備が数多く存在していることといえる。わが国製造業の国際競争力を維持し、向上させるため老朽設備の更新を促進する政策を継続していただくことが望まれる。

「ものづくりに価値づくりを」

糟谷 経産省製造産業局長
糟谷 経産省製造産業局長
 来賓を代表して糟谷敏秀 経済産業省製造産業局長が、「先週金曜日に(5月20日)にものづくり白書を国会に提出した。良い技術を使って良いものをつくるだけでは、生き残れない時代になった。ものづくりに加えてサービス、ソリューションといった価値を提供するという、ものづくりにプラスした企業を目指していただきたいというメッセージを送らせて貰った。日本の企業は現場力をはじめとして、高い技術力を持っている。経済については、新興国を中心として若干不透明さがあるのは事実である。こうした中で、未来に向けた投資をしっかりと行って、日本経済を官民一体になって力強く成長させていかなければならない。ものづくり白書で調べたところ、古くなった機械設備を更新するだけでなく、能力増強のための投資をやられている。こうした企業の多くがものづくり補助金、省エネ補助金を活用している。政策効果によって、日本の製造業の体力をさらに蓄えていただきたい。今年のものづくり補助金は給与総額を上げた企業には加点をする。設備が新しくなるだけでなく、働く人についても利益を上げた果実が回って明日に向けて成長していくような形にしたいと思っている。人の投資について気になっていることがあった。最近、国際標準化の会合に行くと中国、韓国の若者が多い。調べてくれた人によると、40代以下の技術者において、中国は6割、韓国は4割5分、日本は5%。つまり日本からの標準化会議の参加者の95%が50代60代なのだそうだ。それだけ経験豊かな方に参加いただいているのは心強いが、こうした方々があと30年働くことができればいいのだが、そうでなければ若手の標準化人材を着実に育てていくことも必要であると考える」とあいさつをした。

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