「今年は昨年を上回る明るい兆し」日本工作機械工業会が賀詞交歓会を開く

 日本工作機械工業会(会長=花木義麿氏)が1月10日、都内のホテルニューオータニで賀詞交歓会を開催した。あいさつに立った花木会長は、「年初から原油価格の暴落、6月には英国のEU離脱決定により金融市場が大きく動揺し、円高が急激に進行した。11月の米国大統領選挙でトランプ氏が当選し、その後為替が大きく円安に転じるなど社会、経済、政治が激しく揺れた1年だった。ものづくりを巡る動きでは、世界各国においてIoT技術を高度に活用し、新たな生産体制を構築する取り組みが進んだ1年だった。この生産革新の動きが顕著に表れていたのが、昨年11月に開催したJIMTOF2016だった。出展各社からIoTを活用し、工場全体の生産を最適化したスマートファクトリー、高度な自動化、無人化やAIを搭載したスマートマシン、切削加工と積層造形加工を融合したハイブリッドマシン等々、高度なソリューションや製品が多数展示され国内外の来場者から大きな注目を集め、工作機械トップセミナーや国際工作機械技術者会議、企画展示など併催行事なども大きな成果を挙げることができた。来場者総数は過去最高を記録し、計14万7000人余となった。世界最高レベルの技術ショー、国際ショーとしてJIMTOFの存在感を示すことができた」と日工会の活動に触れたあと、昨年の工作機械の市況について、「内需はものづくり補助金や設備投資減税など政策の後押しもあり堅調に推移した。外需は中国の経済の停滞により設備投資が減速し、また、その他、アジア市場も停滞した。欧州市場は比較的底堅く推移したが、大市場の米国は前年比減少した。この結果、2016年の日工会受注額は、1兆2000億円台半ばになったと思われる。昨年8月に修正した受注見通しの1兆3000億円を幾分下回る見込みであるが、6年連続して1兆円を上回ることができた。厳しい経営環境ではあったが、一定の成果を残すことができ、世界における日本の工作機械のプレゼンスの高さが反映されたものだと評価をしている」と述べた。

 2017年の見通しについては、「本年の世界経済で注目されるのは米国の経済政策だと思われる。今月20日にトランプ新政権が始まるが、新大統領は国内のインフラ投資の拡大に注力する姿勢を打ち出している。しかし、TPPからの脱退も明言しており、環太平洋圏における経済連携の強化には不透明感が漂っている。ものづくりにおいては世界各国で生産革新が加速し、高付加価値が工作機械の高度なソリューションへのニーズは一段と高まると見込まれる。本年の経済環境に不透明感はあるが、総じて世界経済、日本経済は好転していくものと期待される。このような中、日本の工作機械は競争力を活かして受注を拡大していける環境が整ってきていると見ている」としたうえで、2017年の日工会受注額は、「2016年より10%ほど上回る1兆3500億円の見込み」とした。

 また、「世界各国でものづくりの革新が進む中、高付加価値マシン、高度なソリューションへのニーズは底堅いものがあるうえ、円安での投資マインドが引き上げられる。海外市場においても日本製品の価格競争力が高まっていくと見込まれる。国内では、ものづくり補助金や減税措置など投資促進策が継続され、市場喚起が期待される。米国においてはインフラ投資の拡大や規制緩和、減税期待などにより設備投資が回復に向かうと見込まれる。欧州では政策革新が精力的に進まれる中、日本のスマートマシン、スマートファクトリーの提案等、これにより昨年を上回る受注が見込まれると思う。アジアにおいても産業の高度化に向け、高付加価値マシンのニーズは底堅く推移すると見込まれる」と明るい見通しを示した。

「第四次産業革命の波に向かう前提条件が整った」

 続いて糟谷敏秀 経済産業省製造産業局長があいさつをした。挨拶の概要は次の通り。

 「賀詞交歓会の出席者数と景気と比例しているのではないかと思うときがあるが、景気は底堅く推移している表れではないかと期待を込めている。昨年の受注状況は対前年比で減少するということが続いたが、世界経済は全体的に緩やかな回復が期待されている。今年は経済の好転による世界的な需要拡大や円安により工作機械業界が上向いていくことを期待する。経済産業省としても設備投資を後押しするための補助金や税制による支援策を引き続き実行し内需を喚起していく所存である。昨年11月に開催されたJIMTOF2016で、限られた時間であったが拝見させてもらい非常に感銘を受けた。工作機械の高精度化、また、加工工程の集約化が進んでおり、1台の機械で切削も積層造形も合わせ行うとことをはじめとして、各社の技術力の素晴らしさを感じることができた。また、工具の出展も様々あり、切削工具ひとつとっても実に奥深く、具体的にお伺いすることができた。JIMTOFでは過去最多の来場者数を記録したとのことだが、まさにこれはわが国の工作機械業界の高い期待の表れではないか。今後の受注増にも必ずや貢献するものだと感じている。また、今回のJIMTOFでは、工作機械同士が繋がり、データのやりとりができる技術的基盤が整ったということを実感した。各社の先進的な取り組みを拝見し、第四次産業革命の波に向かう前提条件が整ったと感じた。他方、各調査によると、世界の工場内設備機器が約5800万台あるらしいが、このうちネットワークに繋がっているのが8%という結果を拝見した。今後は既存の機器を含めレトロフィットでさらに繋がる機械を増やしていくことが必要になる。また、単に繋がるだけではなく、繋がって共有することによって得られたデータをどうやって有効活用していくのか、ということが問われる年になるだろう。デジタル化の進展を背景に製品やサービスのライフサイクルが非常に短くなっている。世界中の先進的な企業は他社の後追いでは利益は上がらないので、ないものを生みだそう、見えないものを見よう、という全く新しいビジネスモデルを創り出すことにしのぎを削っている。こうした中で大切なのは、第一にスピードであり、第二に減点主義ではなく失敗を許容した試行錯誤であり、第三に競争と協調の使い分けである。言い換えれば協調領域の最大化であり、オープンイノベーションである。また第四時産業革命はデータに価値があるが、データを集める仕組みがまだまだ出来上がっていないというのが正直なところであろう。自社の製品を拡販するために、他社の製品と差別化して壁をつくって囲い込もうとする限り、なかなかデータを集約するという仕組みを構築するのは難しいのではないかと感じている。ものの販売という既存のビジネスモデルを時には否定してかからないとサービスソリューションから収益を上げる新しい大胆なビジネスモデルは生まれないのではないか。ぜひ皆様方にはこうした攻めの取り組みを果敢に進めていただきたいとお願いをしたい。また攻めと同時に重要な技術を守る産業安全保障やサイバーセキュリティへの対策、これには改めて万全を期していただきたい。繋がるとリスクは増えるので、サイバーセキュリティの対策をこれまで以上に本腰を入れていただけるとありがたいと思っている。経済産業省は第四時産業革命をチャンスに変えていくために工作機械に焦点を当てたインターフェースの協調領域の整備やセキュリティ対策に取り組んでいく。取り組みの成果は3月のハノーバで開催されるCeBIT(セビット)でなんらかの形で発表させていただきたいと考えている。引き続き、第四次産業革命への皆様方の取り組みの加速を全力を挙げてサポートする」。

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