東日本三菱日立ツール報告会 「こんなとんがった会社があってもいい」 

 三菱日立ツール(社長=増田照彦氏)が、6月16日、第一ホテル両国で「東日本三菱日立ツール報告会」を開催した。

 増田社長は冒頭、「三菱日立ツール創業より丸2年が経過した。まさに“ときは宝をみるごとし”。お客様からも旧来からの日立ツールの良さを見失うことなく、良さ、すなわち、“お客様の困り事に真摯に向き合う”、“金型に強い”、“難削材に出くわした際のファーストコールを頂ける工具メーカー”として認識を頂いていることをありがたく思っている」と日頃の感謝を述べたあと、「日立ツールの伝統的で安定した問題解決型・技術提案型の企業文化に加え、“まして人”的な投入、2年で50億円を超える大胆な設備投資の実施、すべてのスタッフにスポットライトを当てることにより活き活きと輝ける一人ひとりになるような会社、親しみのある会社を目指してきた。誤解を恐れずに申し上げると、生産財を取り扱うメーカーにとっては、家族経営が最適であるという思いと持論がある。この900名の企業を如何に家族経営的に経営していくかを頭において取り組んできた。親会社となった三菱マテリアルには大変恐縮だが、“こんな尖った会社が一つくらいあってもいいよね”という会社になりたくて2つの実践哲学をふりかけた」と話した。

今後の方向性と二つの実践哲学

 増田社長は実践哲学の内容を、①「ものに真(こころ)ありて まして人」、②「楽しくなくっちゃ人生じゃない・会社じゃない 同時に優しくなくっちゃ人間じゃない」と説明した。

 これは、「あらゆるものに心があると思ってみようよ。それを作った人、使う人の心を感じて、心の詰まった商品をそっくりそのままお客様にお届けする、正しくお使い頂く。まして人は心の塊ですから、そのあなたが発するそのひと言で相手はやる気になったり、がっかりしたりするのですから、美しい正しい言葉で伝える、言葉にきちんと責任を持とうよ」という意味が込められているという。

 もう一つの「楽しくなくっちゃ人生じゃない・会社じゃない」では、「文字通り、人は不幸になりたがりますし、起きてもいないことを想像して、くよくよしがち。足りない点を嘆いていてもなんにも始まらない、別の言い方をしますと今あるものを活かしきって前を向こうよ」という前向きな姿勢を示したものだ。

説明をする増田社長
説明をする増田社長

 増田社長は続ける。
 「今まで決して逃げないで、めげないでやってきた己のプライドにおいて、覚悟を決めて実践する、前に進む、あらゆることに陽気の陽の心で向かい合う。その結果、笑ったら勝ち、笑わせたら勝ちということを目指してきた。この実践哲学を会社に注入できれば、日々の生活が、暮らしが、一瞬一瞬のときが、もっともっと心から楽しめる。あなたとお付き合いして良かった、はじめまして、貴方に逢えてよかった、逢えてうれしい、そんな会社“体”になると信じて実践してきた」。

 増田社長は、話の中で、自身を超硬合金で例え、「その硬さを支えているタングステンのような秀でた材種ではないので、せめて糊の役目、バインダーの機能、接着剤の働きぐらいはしたいものだと考え、考えられる限りコバルトのような“つなぎ役”に徹してきた」とし、その結果、「代理店様、特約店様、皆様方を含めて、周りが真剣に動いてくれた。具体的には欠品問題、納期問題、新製品の発表件数、品質問題、安全問題など徐々にではあるが及第点、すなわちお客様の笑顔に少し近づいた。が、当社の潜在力はこんなもんじゃない。改善提案の積み重ね程度のことで満足なんかしてはおられない。どんなに美しく、便利で役立つ工具であったとしても、今というときの中に留めることはできないし、もし今に止まってしまえば やがて早い段階で、美しくお役に立てる工具ではなくなってしまう」と危機感を覗かせた。

 「私たち一人ひとりの限りある命が精一杯の心で技術そして製品に向き合うからこそ、美しく役に立つ工具が道を間違えずに進化してゆくことになる」。

 また、三菱マテリアルグループの中で、“独特の存在感”を出し続けるには――を考え、「当社の良さをもっと引き出して、手際がいい職人技、職人さんの手をどう工具に転写できるか、手だけでなく、心、すなわち心際がいい職人技、職人さんの心をどう工具に転写できるかを最大限考えて当社が当然持っている嫌な部分、欠点さえも気付かなくさせる長所で大概のことを埋め尽くしてしまうことだと考えた」と思い入れを語った。

新ブランド「MOLDINO(モルディノ)」にかけた思い

新ブランドロゴ
新ブランドロゴ

 同社は最近、「MOLDINO(モルディノ)」という新ブランドを立ち上げた。「エポック」、「アルファ」、「ガレア」は商品ブランドだが、この「MOLDINO」は、企業ブランドの位置付けにある。未知の領域にも果敢に挑戦し、金型業界に更なる“加工イノベーション”をもたらす決意をブランド名に込めて、「MOLDINO」(Mold+Die+Innovation)としている。

 「この二年間で確実に新しい企業文化が育ちつつあると自負し、自覚している」とする増田社長は新ブランド立ち上げの経緯を次のように説明した。

 「自分たちはなかなか自分たちそのものが見えない。見えるのは鏡に映った我が姿。鏡はすなわち皆様方、ユーザー様の評価だと感じている。そのためには一層、製造と営業を鍛え抜くこと、そして製造と営業の壁、垣根を低くすることだと思っている。そしてこのツールビジョン“お客様と私たちの笑顔のために未知の領域にも果敢に挑戦し続け、共に成長するかけがえの無いパートナー”になるときの“お客様”とは誰のことなのか? 本来は金型に強いメーカーだったが、金型は難削材を相手にすることが多いので、難削材に強いメーカーとなり、難削材という言葉を聞くと、嬉々として現場最前線に飛び出す営業マン、技術者が増えた。大手メーカーとの差別化で、この規模の有利さで生きてきた切削メーカーとしてはどこまで戦線を拡大できるのか? その拡大は本当にお客様が望んでいるのか? そんな問答から経営資源の多くの比率を金型に割こうと決めた」。

 この考えのもと、「MOLDINO」が立ち上がった。金型を表すモールド&ダイ。この分野でユーザーの一歩先ゆく加工イノベーションを興す――という決意をブランドに込めているという。

 また、ロゴについて増田社長は、「ロゴの青と赤の配色は今までの当社の良さを引き続き踏襲してゆくことの表明。青色は水、赤は炎としたならば、漢字で表すとサンズイに炎、即ち“あわい” 淡々との淡。当然のようにMOLDINO路線を進み、淡々と金型業界に貢献していく。MはモルディノのMと三菱日立ツールのM。顧客と共に、サプライヤ―も交えたひとが手に手を取って進んでいく姿を表現した。切削工具の先端、技術力を研ぎ澄ませて、とんがっていく決意も表わしている。もっと言えば、独自のブランドをわざわざ立ち上げたのは、『今後も独立体でやっていきますよ、日立ツールの良さはなくさないですからご安心下さい』との宣言でもある。言葉を変えると、日立ツールと三菱マテリアルを単純に足して二で割るようなことはしない」と強い決意を示した。

17年度営業本部方針

 矢倉 功営業本部長のあいさつのあと、十倉直樹 営業本部 副本部長から「営業本部概況」、小櫻一孝 国内営業部長から「国内営業概況」、新見章彦 営業本部長兼野洲工場長、井田久晶 理事 成田工場長から「製造本部概況」の報告があった。

 この中で、17年度営業本部方針について、①ブランド「MOLDINO」の浸透と活用による拡販、②新商品の拡販、③やるべきことはスピード感を持ってやりきろう、④新営業体制による営業力アップ、⑤国内―海外のさらなる連携強化――とし、具体的には次の通りとした。

(1)主要特約店および参加ユーザーとの関係強化
 ・「MOLDINO」ブランド浸透に向け、相互理解を深める。
 ・工場正体を継続し、ものづくりの現場を見学してもらいつつ、丁寧に方針を説明、共有してもらうことで信頼関係を強化する。

(2)国内ユーザーのマーケティング強化
 ・外部機関も利用し、ユーザーの情報収集を強化する。
 ・過去より蓄積している情報・データをセイサ、データベースを更新し、ターゲットを明確化する。

(3)海外
 ・海外営業体制=2部体制を統合、全世界の営業展開をスタート。
 ・現地発信型新商品・重点新商品・ソリューション提案による成長分野への拡販。
 ・ニッチトップを目指す=①金型 ②高性能ドリル市場。
 ・現地営業スタッフの技術力アップ。
 ・「MOLDINO」ブランドの浸透=代理店会等を通じ、新ブランド世界発信。

 続いて表彰式が行われたあと、「新製品セミナー」を日畑忠広 ソリューションセンター長が行った。

 

 第2部の懇親会では、酒井俊司NaITO社長の乾杯の発声で開宴した。
 縁もたけなわの頃、三橋 誠 テヅカ社長の中締めで散会した。

 

 

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