日本は「科学技術創造立国」・「知財立国」を目指せ!

先日、帝国データバンクが衝撃的なデータを発表した。
国内製造業が2002年以降で4万社が消滅、製造業全体の売上高推移をみても2000年に比べ14兆円が減少しているという。

現実はこんなものじゃないだろうと推測する。夜逃げや届け出を出さない企業も含めると数は増加するからだ。

これを年商別にみると、中小企業と大企業が対照的な結果になっている。年商10億円未満の中小企業が2000年に比べて22.8%の減少で、減少率はトップ。年商規模が小さくなるほど減少率は上がっていた一方、1000億円以上の大企業は5.3%上回り、売上高は増加していた。

これからも中小企業が業績悪化に頭を抱えていることが分かるが、現在、化け物のような円高問題や、原料高がこれでもかと製造業に追い打ちをかけている。まさに危機的状況、瀕死の状態であるが、この問題は経営者だけが四苦八苦してもどうにもならない。特に円高問題は、日本一国で為替介入をしても、その場しのぎで効果はないだろうと推測する。先進国で協調介入をしようとしても、先進国でさえ、自国の財政難でそれどころではなく、協調介入の実現は困難だからだ。先般、日本だけで為替介入をしたが、効き目があったのは残念ながら1日だけだった。おそらく今後もこんな状況が続くと思われる。

品質の良いものを日本でつくっても価格競争で今のところは確実に負ける。そのため現在、海外生産比率を上げる、海外調達を増やす等の円高対策を行っている企業も増加した。海外生産拠点を新設・拡充する企業が増える一方、国内生産は縮小せざるを得ないような状態である。

政府は海外移転を食い止めようとしているフシがあるけれど、企業が“生き残ること”を第一に考えれば、むしろ積極的に海外に進出することも視野に入れるべき時代がきたのかもしれない。なぜなら、現在の円高基調は今後も続くと思われるうえ、将来的には東アジア共同体らしきものも組織されると思われるからだ。地理的にもアジア地域は日本から遠くないので国内出張と同一視されるようになってもおかしくない。ちなみに裾野が広く経済波及効果の高い自動車業界の動きをみても、インドネシアが東南アジアにおいてタイに次ぐ二番目の輸出ハブになると見込んだトヨタは3.4億ドルを投じてインドネシアに新工場を建設すると発表した。この動きはトヨタのみならず、各自動車メーカーも相次いで同国での生産能力を増強するとしている。

ところが、中小企業の多くは海外に出たくても資金力に乏しく動きが取れないのが現実であるから、ここは一発、政・官・財を挙げて海外進出ファンドの創設など、思い切った海外進出支援策が必要ではなかろうか。政府の中小企業政策も“従来型支援”から大きく転換すべきであると考える。

日本の中小企業には、優れた技術と技能を持つ会社も多い。先ほど、“品質のよいものを国内でつくっても価格競争で負ける”と書いたが、世界中探し回っても他にない唯一の技術と技能があれば、値段が高くても顧客はついてくる。これは強い。競争しなくて済む。どこにも追随させないほどの技術と技能があれば必ず国内で生き残れる。救いはそんな会社が日本にゴロゴロしていることだ。実際、私が今まで取材した町工場の中には『この加工はウチでしかできない』と自信に満ち溢れているところがたくさんあった。

産業空洞化が懸念されているが、先述の理由から日本の大企業は、これからも国内で世界最先端の技術を開発し、コストの安い海外で生産する体制が加速してくるだろう。そうなれば新興国への技術流出は当たり前と捉えなければならない。以前にコラムでも書いたが、(「見たくないものに目を向けることも時には必要」)現実から目を背けてはいけない。

今、産業界が考えなければならないことは、技術流出をもろもとしない、強固なものづくりである。

真似をされたらそれを上回る技術を開発すればよい。新技術・新商品は世に出せば、間もなく旧技術・旧商品になってしまうものである。目まぐるしく変わる時代の中で新製品を次々と展開し、売っては逃げるの“売り逃げ”をするのも日本企業が生き延びる道のひとつであろう。そのためには、“創造する力”が必要だ。

日本の得意な技術は、「切る」「磨く」「穴をあける」「削る」そして『考える』。
今こそ日本が目指すべきものは『科学技術創造立国』あるいは『知財立国』だ。

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