工作機械需要動向(2001年1-6月実績)

日本工作機械工業会がまとめた工作機械需要動向(2011年1月~6月実績)は以下の通り。

1.概況
2011年1月6月期の工作機械受注高は6,743億円(前年同期比+52.9%)、生産高(経済産業省)は5,698億円(同63.4%)、輸出高(財務省)は3984億円(同58.6%)、輸出高(財務省)は206億円(同44.2%)となり、各指標ともに回復基調で推移した。

国内の設備投資は、「能力増強」投資は引き続き制御傾向にあるものの、震災復興・復興の「維持・補修」の他、生産体制再構築のための「合理化・再編」投資が徐々に増加している。また、3月に発生した東日本大震災直後はユーザーの投資に模様眺めがみられたものの、受注や生産などの指標を見る限り工作機械産業への影響は比較的軽微であった。海外の動向については、緩やかな景気回復が続いており、工作機械業界の主要ユーザーである一般機械、自動車、電気機械、航空機などの投資は、増加基調で推移している。

しかしながら、欧米諸国の財政赤字問題や中国での金融引き締めによる成長鈍化懸念など、世界の景気には下振れリスクがみられる。わが国の景気は持ち直しているが、海外景気の下振れリスクやさらに最近の「歴史的な円高」などにより、先行きに対する不透明感は高まっている。

参考までに、政府「月例経済報告」(8/15公表)では、わが国景気の先行きについて「サプライチェーンの立て直し、海外経済の緩やかな回復や各種の政策効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される。ただし、電力供給のせいやくや原子力災害の影響、海外景気の下振れ懸念に加え、為替レート・株価の変動等によっては、景気が下振れするリスクが存在する」としており、海外景気についても「世界の景気は、全体として回復がさらに緩やかになっており、アメリカでは、極めて弱いものになっている。先行きについては、緩やかな回復が続くと見込まれる」との見解を示している。

2.受注高(工作機械工業会調査)
2011年1~6月期の工作機械受注高は、前期比+25.4%、前年同期比+52.9%の6,743億円となり、リーマンショック後の09年上期(1,481億円)をボトムに前期比では4半期連続のプラスとなった。うち内需は2,080億円で同+20.3%、同+54.4%で、前期比は4半期連続、前年同期比でも3半期連続のプラスとなった。5半期ぶりに2,000億円台に回復したものの前回ピークである06年上期(3,762億円)比55.3%の水準に留まった。うち外需は4,663億円で同+27.8%、同+52.3%で、前期比は4半期連続、前年同期比でも3半期連続のプラスとなり、07年下期(4,487億円)以来7半期ぶりに史上最高額を更新し、外需比率も69.2%で過去最高となった。この外需増加は、日本の工作機械gア円高にあっても海外市場で需要を拡大させた結果と言えるが、一方で国内製造業の「空洞化」も作用していると考えられる。これに歯止めをかけるには、円高を是正し法人実効税率を諸外国難身に引き下げるなど、国際立地競争力を高める必要がある。

受注総額で過去最高だった07年の月間平均受注総額は1,325億円(内需:605億円、外需:720億円)、11年1~6月期の月平均受注額は1,124億円(07年比84.8%)、内需:347億円(同57.4%)、外需:777億円(同107.9%)となっており、本年上期は外需主導で回復していることが窺える。

月次の受注額では、11年年初から、1,000億円台で推移している。6月は中国を中心としたアジアの伸長により外需が史上最高額を記録した結果、1,286億円で今回復期の最高額を記録した。

内需を業種別にみると1-6月期では、全11業種全てが前年同期比+となり、主な業種では、一般機械向けは同+82.3%、自動車向けは同+35.9%で、うち自動車部品向けは同+48.0%、電気・精密機械向けが同+31.2%と回復基調にある。なお、東日本大震災直後である4~6月期は、自動車、航空機・造船・輸送用機械など5業種は前期比でマイナスとなったが、一般機械や電気・精密機械などはプラスとなり、内需全体では前期比+2.7%となった。

次に、外需を地域別にみると、アジア、欧州、北米3市場全ての地域で増加した。地域別には、アジアは、昨年来より電気機械、自動車、一般機械の設備投資意欲が旺盛な中国を中心に拡大基調で推移し2,692億円で前年同期比+37.6%となり、史上最高額を記録した。北米も一般機械(エネルギー関連)、自動車、航空機などからの受注により回復傾向が続いており、1,087億円で同+79.3%と6半期ぶりに1,000億円台に戻した。欧州はEU諸国の財政危機問題の影響もあり、国により斑模様ではあったが、ドイツ及びフランス当などで、一般機械、自動車などが回復し783億円で同74.8%となった。しかし、受注金額は1千億円を下回るレベルにあり、主要3極の中で回復の足取りは最も緩やかとなっている。

受注の増加に伴い、受注残も10年末の5084億円から6月末には6,234億円と増加している。

生産高(経済産業省:生産動態統計)
2011年1~6月期の工作機械生産高は5,698億円で前期比+17.4%、前年同期比でも+63.4%とそれぞれ3半期連続+となった。NC工作機械の生産高も4,583億円で前期比+15.0%、前年同期比+54.8%と伸長したが、生産におけるNC比率は80.4%と07年下期(90.3%)をピークにNC比率は定価している。

機種別にみると、前期比では、第数でNC横型旋盤、NC専用機、その他の専用機、NC形彫り放電加工機の4機種、金額ではNC形彫り放電加工機の1機種を除く全ての機種でプラスとなった。前年同期比マイナスとなった機種は台数でNC形彫り放電加工機の1機種のみで、金額では全ての機種で+となった。

層生産高に占めるシェアはマシニングセンタ32.3%、その他の金属工作機械27.0%、旋盤22.3%、研削盤9.8%、専用機6.3%、歯切り盤及び歯車仕上げ機械2.3%の順となっている。

3月に発生した東日本大震災ではサプライチェーンが崩壊し、自動車産業が国内外で一時操業停止に追い込まれるなど、製造業に多大な被害を与えた。また、国内54基ある原子力発電のうち約2/3にあたる33基が震災の影響及び定期点検などにより運転を停止したことから、日本全国で電力供給力不足の問題が生じている。工作機械産業は、東北地方に生産拠点を置く企業は少ないため震災による直接的被害は少なく、また、電力供給力不足の問題では、各社節電に務めm、サマータイムの導入、工場稼働日の変更等の対応を計るなどして、受注増に対応するため生産活動を続けている。

工作機械部門の月末常用従業員数は、リーマンショック後10年3月23,190人を底に、生産の増加に伴い11年6月には24,173人まで増加している。

4.輸出高(財務省:貿易統計)
2011年1~6月期の工作機械輸出高は前期比+11.5%、前年同期比+58.6%の3,984億円となった。うちNC工作機械輸出高は同+11.8%、同+59.3%の3,7694億円で輸出におけるNC比率は94.6%と過去最高を記録した。

仕向先を地域別にみると、アジアは前期比+9.2%、前年同期比+48.4%の2,712億円となった。東アジアでは世界最大の輸出相手国である中国が1,518億円で前年同期比+80.3%と3半期連続のプラスとなり、韓国は375億円で同+87.2%、台湾は162億円で同+36.1%となり、その他アジアでは、タイ225億円(同+18.4%)、インド134億円(同+35.1%)、インドネシア86億円(同+71.2%)、ベトナム52億円(同+35.1%)、シンガポール35億円(同+24.1%)などで増加となった。

欧州は、前期比+26.2%、前年同期比は+88.1%の518億円となり、うちEUは、同28.8%、同+95.3%の443億円となった。主要国ではドイツ134億円(前年同期比+144.2%)、ベルギー90億円(同47.8%)、オランダ57億円(同+129.2%)、フランス47億円(同29.2%)、イタリア36億円(同114.6%)、イギリス24億円(同62.8%)、欧州のその他の国では、トルコ27億円(同221.5%)、スイス22億円(同+356.1%)、ロシア17億円(同+52.2%)と、ほとんどの国が昨年の反動もみられ増加となった。

北米は680億円で前期比+11.5%、前年同期比+93.2%と2半期連続のプラスとなった。そのうちアメリカ618億円(前年同期比+92.9%)、カナダ33億円(同+68.3%)、メキシコ29億円(同+142.9%)となった。

世界3極以外では、ブラジル45億円(同43.6%)とプラスを示した一方、オーストラリア16億円(同△7.4%)は減少した。

総輸出高に占めるシェアはアジアが68.1%、北米が17.1%、欧州が13.0%となり、輸出相手国上位10カ国のうちアジアの国が7カ国を占めた。

機種別にみると、マシニングセンタは前期比+13.1%、前年同期比は+57.3%の1,629億円(シェア40.9%)、旋盤は同+10.7%、同+53.4%の865億円(同21.2%)とこの2機種で6割以上を占めている。

輸入高(財務省:貿易統計)
2011年1~6月期の工作機械輸入高は前期比+26.8%、前年同期比+44.2%の206億円、うちNC工作機械は同+39.1%、同+65.4%の171億円(NC比率79.6%)となった。

主な輸入先は、ドイツ49億円(z年年同期比+65.9%)、中国48億円(同+51.1%)、台湾24億円(同+50.3%)、スイス21億円(同+190.7%)、タイ15億円(同+78.3%)の順となり、この5カ国で輸入総額の76.3%のシェアを占めている。アジア諸国からの輸入が増加する中、韓国9億円(同△37.8%)は減少した。

機種別のシェアをみると、旋盤19.4%、研削盤18.8%、放電加工機12.5%、マシニングセンタ12.2%、歯車機会7.1%の順となっている。

今後の見通し
2011年の受注額見通しについては、2010年末の日本工作機械工業会経済調査委員会での検討結果を基に、年初に「11,000億円(内需:3500億円、外需:7500億円)」と公表した。しかし2011年に入ってからは受注額が月次で1,000億円を上回る水準で推移しており、同委員会では年央に再検討を行った。その結果を踏まえ、内外景気の先行きには不透明感があるものの、米国をはじめとして各国の景気が大幅な減速には至らないとの前提の下、2011年の工作機械受注額見通しを「1超3,000億円前後(内需:4000億円、外需:9,000億円)と上方修正した。

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