「コスト競争力を維持するには省力化投資を進め、生産性改革の実現に本気で取組む必要がある」日本機械工業連合会が賀詞交歓会を開く

 日本機械工業連合会(会長=大宮英明 三菱重工業会長)が1月9日、東京都内のホテルオークラ東京で新年賀詞交歓会を開催した。
 あいさつの概要は下記の通り。

「生産性革命への取組みは世界各国、喫緊の課題として認識されている」

あいさつする大宮会長
あいさつする大宮会長
 「我が国機械産業全般の動向は、日機連の機械生産見通しにおいても、今年度の国内機械生産は、前年度比5.5%増と、この7年間で最大の伸び率が予想されるなど、国内外の景気動向を反映して総じて堅調な状況が続いている。昨年度のマイナス成長に対して今年度はほとんど全ての業種において増加基調にあり、こうした状況が新年度の4月以降も継続することを皆様方ともども強く期待するところだが、労働需給のタイト化も気になるところである。

 いざなぎ景気を超えるアベノミクスの5年間にわたる景気回復のなかで、280万人の就業者の増加に伴い、失業率はバブル崩壊以降最低の水準となり、人手不足の影響が大企業、中小企業、また地域を問わず日増しに高まっていることを、多くの皆様が実感しておられるのではないか。

 こうした労働需給のトレンドは、今後のわが国経済の状況並びに我々機械産業の行方を左右する最も重要なポイントになるのではないかと感じている。少子高齢化のなかで、今後わが国の労働力人口は、10年後には約8%の500万人の減少、20年後には約16%の1000万人以上の減少が見込まれるとも言われている。こうした予測値は、ワークライフバランスの改善等の取組みによってある程度変化するものではあるが、人手不足がわが国経済にとって構造的な課題であり、労働需給が構造的にタイト化してきていることは抗うことのできない潮流ではないかと考えている。

 こうしたなかで、政府におかれても昨年12月に、新しい経済政策パッケージを取り纏められ、少子高齢化という最大の壁に立ち向かうため、生産性革命と人づくり革命を車の両輪として、2020年までの3年間を集中投資期間と位置づけ、取組むとの方針が打ち出された。また、このための対策の一環として、一定の賃上げや人材育成、設備投資を前提条件とした法人税率の引下げ措置の導入が決定されたところである。構造的な労働需給のタイト化を前にして、人手不足を成長の隘路としないためのこれまでにない創意工夫が求められていることは論を俟たないところである。

 労働需給のタイト化は、機械産業にとって二重の意味を持っている。取引企業や自社の生産現場での人手不足に如何に対応するかという自らの課題の一方、顧客への機械及びシステムの提供を通じ、ユーザーの省人化、生産性の向上に貢献するという立場である。人件費の上昇圧力の下、企業がコスト競争力を維持する為には、相当程度の省力化投資を進め、生産性改革の実現に本気で取組む必要がある。日機連においても、こうした動きを促進すべく、所要の税制の実現につき、関係方面への要請を行ってきたが、そうしたなかで償却資産向け固定資産税課税の改善、IoT関連税制の創設、省エネルギー税制の創設等、投資を円滑化するための一連の税制が実現することとなった。人手不足のなかで製造業、サービス業を問わず所要の投資を進める上で、今回の決定は、時宜に適ったものと考えており、機械ユーザーサイドでの制度の積極的な活用を強く期待するものである。

 加えて、イノベーションを活用した生産性革命への取組みは、わが国のみならず、世界各国において喫緊の課題として認識されている。私が併せて会長を務めておりますRRI、ロボット革命イニシアティブ協議会が経済産業省とともに昨年11月末に開催した国際シンポジウムにおいても、ドイツ、アメリカ、中国、スウェーデン、チェコなど各国からの代表者が参加し、非常に強い問題認識のもとで、IoT革命を巡って極めて活発な議論が行われた。また、米国のIIC、インダストリアル・インターネット・コンソーシアムからの要請もあり、RRI-IIC間での連携協定の締結を発表致した。今年前半からも具体的な連携活動が開始される予定である。このシンポジウムに参加して、私は、取組むべき課題が山積しており、かつグローバルに共通していること、そうしたなかで課題解決に向けた各国間のコラボレーションが強く期待されていることを改めて痛感した次第である。

スマート・マニュファクチャリングに関する国際標準化に向けた取組みも今年はIEC国際電気標準会議を中心に加速していくものと思われる。国内の取組み体制も充実が期待されるところであり、関連する工業会のご協力をいただきながら、わが国がこの面でも積極的に貢献できる立場に立てるよう取組んで参りたい。」

「新たな一手にコネクテッドインダストリーズ」

経済産業省 多田 製造産業局長
経済産業省 多田 製造産業局長
 来賓を代表して多田明弘経済産業省製造産業局があいさつをした。
 あいさつの概要は下記の通り。

 「政権が発足してから5年、名目GDPは56兆円を増加し有効求人倍率が1倍を超えた。業種によって差はあるが、企業の収益も高水準に推移しており明るい兆しが出ていると認識している。新年を迎えるにあたり、こういう時だからこそ新たな一手、次を見据えた一手が必要だと考えている。政府全体としては、生産性革命、人づくり革命といった政策パッケージを提案しているが、経済産業省としては昨年3月よりコネクテッドインダストリーズというコンセプトを示ししているところである。

 少子高齢化や人手不足の問題、環境対応についてなど今後産業界が直面する課題は複雑かつ多岐に亘っている。こうした中で、従来の自社のリソースのみで対応していくだけでは一定の限界や制約があるのではないかと散見される。またリソースとしても従来の人材、資金、技術、情報といった経営資源の中でも特に情報の中でリアルなデータ、特に機械工業の分野であれば機械を使っている生産現場等々で蓄積される質の高い貴重なデータが非常に重要な経営資源になっているという認識を持っている。こうしたことを踏まえて、従来の企業や産業、あるいは国の枠を超えて様々なつながりといったものがこれからの課題を解決するために非常に重要ではないか。そのためのコネクテッドインダストリーズのコンセプトをご提案している次第である。やり方はそれぞれであり、まさにそこで創意工夫が求められるのではないか。将来に向かった投資として、設備や研究開発、人材等の様々な投資があろう。その中で使っていただけるメニューを1つでも増やそうと予算面、税制面で皆様のご協力の頂きながら政府の案を取りまとめたところである。これから通常国会で審議されるが、無事成立したあかつきには、ぜひ、皆様方に活用して頂き、次の一手として取り組む年にして頂きたいと思っている。」

 乾杯の発声は岡村 正副会長(東芝名誉顧問)が行った。宴もたけなわのころ、散会した。

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