三菱マテリアル、1GPa級超高強度銅合金を開発 AI時代の電子部品を支える「MSP®5-SSH」
三菱マテリアルはこのほど、電子機器の小型化・高性能化ニーズに対応する超高強度銅合金「MSP®5-SSH(Super Spring Hard)」を開発した。従来の「MSP®5」シリーズが持つ高い導電率を維持しながら、1GPa(1,000MPa)級の超高強度を実現したのが最大の特長。AIサーバーやデータセンター、ロボティクス、車載機器などで需要が高まる電子部品のさらなる小型化と大電流化を支える材料として期待される。
近年、AIの普及に伴うデータセンター投資の拡大や、自動車の電動化・高度化、産業用ロボットの高性能化を背景に、電子部品には高い導電率を維持しながら、より高い強度を備えた材料が求められている。端子やコネクタには、小型化とともに大電流への対応が求められる一方、発熱抑制や電力損失の低減も重要な課題となっている。
こうした市場ニーズを踏まえ、同社は「MSP®5」シリーズの性能をさらに高めた「MSP®5-SSH」を開発した。導電率43%IACSを維持しながら1GPa級の引張強さを実現し、電子部品のさらなる小型化と高性能化を後押しする。
同社は2021年に、マグネシウムを添加元素とする固溶強化型銅合金「MSP®5」の量産を開始した。同材料は、強度、導電率、成形性を高いレベルで両立する材料として市場で採用が進み、さらに2025年には高強度タイプ「MSP®5-ESH(Extra Spring Hard)」を投入し、高強度用途への適用領域を拡大してきた。
〈技術的特長〉
(1) 1GPa級の超高強度と高導電率を両立
「MSP®5-SSH」は、1GPa級の引張強さと導電率43%IACSを両立している。従来のMSP®5シリーズが持つ高い導電率を維持したまま強度を向上させることで、電子部品の小型化や大電流化を可能にする。また、ベリリウム銅やチタン銅が使用されてきた高強度用途において、端子・コネクタの発熱低減や電力損失の抑制にも貢献する。
(2) 超高強度化しても優れた成形性を実現
「MSP®5-SSH」は、1GPa級の超高強度を実現しながら、MSP®5シリーズの特長である優れた成形性を維持している。高強度材料は一般的に加工時の割れが懸念されるが、端子成形で求められる箱曲げ加工においても最小曲げ半径R=0の加工に対応可能。また、プレス打抜き加工においても高い寸法精度を実現し、バリの発生を抑制する。これにより、複雑形状部品の安定した量産を可能にする。
(3)シンプルな製造プロセスで環境負荷を低減
「MSP®5-SSH」は、1GPa級の超高強度を実現しながら、MSP®5シリーズの特長である優れた製造性を維持している。固溶強化型銅合金であるため、ベリリウム銅やチタン銅などの析出強化型(析出強化型=固溶後、母相〈溶媒原子〉の中で別の原子〈溶質原子〉を析出させることにより、材料を強化する手法)材料で必要となる複雑な熱処理を必要としない。これにより、製造プロセスの簡素化が可能となり、エネルギー使用量やCO₂排出量の低減に貢献する。
同製品は、三菱マテリアルグループが中期経営戦略で掲げる「資源循環ビジネスで未来を創る企業へ」の取り組みの一環として開発された。同社は「量から質への転換」を進め、高付加価値製品へのシフトを加速しており、「MSP®5-SSH」についても、成長が続く車載、産業機器、AIサーバー関連市場を中心に展開を進める方針だ。


