ロボットで2016年までに100万人以上の雇用を創出

 国際ロボット連盟(IFR:International Federation of Robotics、会長=榊原伸介氏)は、11月9日~12日に東京ビッグサイトで開催された「2011国際ロボット展」の開催にあわせ、世界のロボット産業の現状と中期見通し、IFRがシンクタンクに委託し調査を行ったロボットと雇用に関するレポートをまとめ発表した。発表内容は以下のとおり。

産業用ロボットの明るい展望

 ロボットは、産業の競争力の強化と雇用拡大の重大な鍵である。2011年には、今までの最高販売実績となる14万台のロボットの販売が予想されており、対前年比で18%の大幅な増加が予想される。さらに2012年から2014年にかけては、年平均約6%の増加が見込まれ、2014年には約16万7000台のレベルに達すると期待されている。
 世界中の向上で作動するロボット数は、2014年末には約130万台に達するものと予想される。ただし、この楽観的な予測には一定のリスクが含まれることも避けがたい。すなわち、世界経済の減速や、主要な市場の財政問題に起因する景気後退などである。

■自動車産業とエレクトロニクス産業は引き続き主要な牽引車

 産業用ロボットの受注の多くは、引き続き自動車産業から来るものであろう。電気自動車、新素材(例えば炭素複合材料)、生産設備の近代化が、設備投資のための主要な牽引車である。また、電気/電子機械産業は引き続き、生産能力と近代化への投資を継続していくと観られる。電子製品や新しい製品技術による消費者マーケットの拡大傾向を含むエネルギー効率の高い製品へ向かうトレンドは、エレクトロニクス産業にロボット導入をさらに促進させる要因として挙げられる。LED照明を内装したLCDテレビ、例えばスマートフォン用のタッチパネル、OLEDテクノロジー、3Dディスプレイ使用も増加傾向にある。
 大洋電池の需要もまた、大幅に増加していくと思われる。他の全ての産業の設備投資も盛んになりつつある。

■アジアが主要な牽引車
 新興成長市場と北米では、ロボット導入の拡大が継続されるであろう。特に中国へのロボット供給は、さらに急増することが見込まれる。遅くとも2014年までにロボットの年間供給では中国が他の国々を抜いて、世界のロボット市場になるであろう。

 韓国へのロボット販売量は2010年の大量設備投資の後だけに、2011年はわずかな増加に留まるであろう。韓国は世界でも有数の自動化が進んだ国であり、2011年の最高設備投資レベルを上回ることは現実的に考えにくい。エレクトロニクス産業と自動車産業の大量投資後の景気後退は、20102年と2014年の間に来る可能性が高いと推測される。

 日本における投資は、震災復興や新しいプロジェクトに向けて、ここ数カ月のうちに増大すると予想される。日本の震災の結果、日本企業は工場などの生産設備を分散させることを始めている。これはヨーロッパ、北米ならびにアジア市場に、ロボット」導入への多大な投資につなげることになろう。日本における投資は、震災復興や新しいプロジェクトに向けて、ここ数カ月のうちに増大すると予想される。

 アメリカでは引き続き工場の自動化を進めていく必要がある。グローバルなマーケットにおける競争力を維持するためには、この方向の投資をしなければならない。ヨーロッパにおけるロボット販売は、西洋諸国の緩やかな投資のために、平均以下で推移していくと観られる。中欧や東欧の国々のロボット導入は急増が見込まれる。低賃金の国々である中欧や東欧およびアジアや南アメリカでは、賃金の上昇と生活水準の向上のために自動化促進がなされるものと思われる。

■ロボットの多様化

 ロボット用途の多様化はますます促進されている。消費財は即時性とともに、個性化(消費者のための商品の様々なバージョンやバリエーション)が進んでいるが、これには柔軟な自動化が必要である。ロボットにいくつかのプロセスを1回プログラミングすると、プロセスからプロセスへの簡単な切り替えが可能となる。標準的なアプリケーションを使うことによって生産効率は向上する。優秀な視覚機能を持ったロボットは、難しい仕事を完璧にこなせるようになり、さらに品質管理などの分野で、それに付随する作業もできるようになった。ロボットと作業者は垣根なしで互いに仕事をすることができるようになり、オフラインプログラミングとシミュレーションツールは、ロボットのアプリケーションを容易にする。

 工業用通信規格(イーサネット・バス)により、ロボットコントローラーのセントラル機能は同台される。ロボットコントローラーによるシステム全般やより多くの機能の制御が進みつつあり、現在では他のコントローラー(例えばPLC)は、ロボットコントローラーに統合されつつある。

 主なテーマの一つは、ロボットを使ってエネルギー効率をよく生産することである。新世代の産業用ロボットには新しい制御システムが付随しているので、エネルギー消費量を減少させる。ロボットのサプライヤーはたゆまる企業努力により、さらなる技術の進歩へと邁進している。

■プロフェッショナルサービスロボットは地位を確立しつつある

 今後のサービスロボットシステムの目的のひとつは、活動のキーとなる領域にある市民のサポートであろう。プロフェッショナル領域のサービスロボットは、肉体的労働を軽減し、有害または危険な状況での作業を回避し、ロボットたちによって個人の安心、安全、快適、楽しみが工場されることと期待されている。

 企業向けのサービスロボットの売上高は、合計約8万7500台に増加すると予測されている。そのうち、搾乳ロボットが2011~2014年には2万5500代以上、同様に防御アプリケーション用のサービスロボットが2万2600台(ユニット)以上の販売が見込まれている。これはかなり控えめな見積もりである。これらの2つのサービスロボットグループは、プロフェッショナルなサービスロボット予測販売総数の55%を占めている。

 強力な成長分野は一般使用のモバイルコンピューター・システム(モバイルプラットフォーム)であると思われる。サービスロボットのサプライヤーは、一般使用で約1万2000台のモバイルプラットフォームが、2011年から2014年までの間に販売されると推定している。これらのモバイルプラットフォームは、硬度にカスタマイズされたサービスロボットソリューションの設計のためのスタンドアロンコンポネントとして購入されている。
 センサーの多様性や有能なナビゲーションシステムによって、モバイルプラットフォームを異なる環境で、自由に好きな場所に移動し、データ収集などの様々なタスクを実行することを可能にする。ロボットアームやシンプルな昇降機能などの追加の操作機能を追加することによって、周囲の上京と直接インタラクティブに対話し、なおかつ、それを修正することもできるものである。ネットワーク通信機能付きのプラットフォームは、幅広い範囲にインタラクティブのコンセプトをデザインすることができる。

 物流システム、洗浄システム、セキュリティ、救助システム、医療などのロボットの販売も、この期間に大いに増加することが見込まれている。

 福島の原子力発電所災害の後、レスキューロボットは日本ロボット開発の最優先課題になっている。災害によって工場および住宅等が破壊された際には、レスキューロボットが間違いなく人々の救助に貢献するであろう。

■パーソナル/家庭用ロボットの使用は増加傾向

 これまでのところ、パーソナル/家庭用ロボットは、主に家庭用ロボットの分野で使用されている。内訳は、真空掃除、芝生の刈り取り、おもちゃのロボットや趣味、教育と研究を含むエンターテインメント、レジャーのロボット等である。

 2010年のパーソナル/家庭用のサービスロボットの販売総数量は、約220万台であった。今後2011年から2014年までには、約1440万台が追加発売され、販売高や約54億米ドルに上ると予想される。

ロボット工学は今後5年間で雇用を創り出す牽引車

 報告書はマーケットリサーチ会社であるメトラ・マーテック社の調査に基づいて作成された。それによれば、現在稼働している100万台の産業ロボットにより300万人の雇用が直接創出されたと結論づけている。さらに、今後5年間のロボット導入の拡大により、100万人分の硬度な仕事が世界中で創出されると予測しており、今世紀における最重要な産業である家電製品、食料品、太陽光発電、風力発電、最先端の電池産業、あるいは他の多くの分野において、雇用の創出はロボットにより支援されるであろうということである。

 また、ロボット導入の促進により、直接的な創出が期待される100万の雇用に加え、製造業雇用が確保されることにより、間接的に周囲の地域社会の雇用も確保できることになる。すなわち、レストラン、商店街などのサービス経済等が多大な波及効果の恩恵を受けることになるからである。

 『雇用にプラスの影響を与える産業ロボット』(メトラ・マーテック社:2011年11月)によれば、「世界的規模で考えると、自動化とロボット化が無ければ、携帯電話やプレイステーションのようなエレクトロニクス製品の低コストでの生産も不可能となり、300万人~500万人の雇用が生み出すこともできなかっただろう」ということである。

 主要先進国全般において、2000年から2008年にかけてのロボットの導入が増加したにも拘わらず、製造業での雇用も増加している。同様なパターンは、現在、急激なロボット使用が増大している中国、ブラジルその他の新興諸国においても見られる。ブラジルにおいては、この調査期間中に、ロボットの総数は4倍に増え、生産と雇用も20%以上増えた。

 また、ロボットへの投資を促進し続けている諸国では、製造業の雇用も多くなっているということも指摘されている。

 上掲の『雇用にプラスの影響を与える産業用ロボット』では、「大幅に自動化とロボット化を進めたドイツと日本の(自動車)産業は、好調な市場リードを続けている。ドイツは自動車部門における雇用者数が増加した」と報告している。

ロボット配備により成長した重要な領域

 報告書では、ロボット配備によって成長した注目すべき3つの領域が紹介されている。
 
・人間の安全性が保証できない領域。
 ・高賃金のため採算割れになる領域。
 ・人間が仕事をするのに不可能な領域。

 安全性を確保できない状況におけるロボット投入の利点は、メリーランド州ボルチモア(アメリカ)のマーリン・スティール社が優れた実例として挙げられている。同社は12年前から自動化を導入し、それ以降は会社も労働者も共に利益をあげることができたという。

 経営者であるグリーンブラット氏は1998年にこの会社を買収したが、当時の労働者の時給は6米ドルで、その他の手当はゼロだった。作業は主導で1時間300の金属製バスケットを生産することだった。当時のことは、経営者自身が「非常に低レベルの単調で、かつ危険な仕事だった」と述べている。それが「現在では当社の労働者は残業と特別手当を含めて時給20米ドル~30米ドルを得ている。毎時2万個のCNC金属製バスケットを生産する4台のロボットを監督するだけで、品質は非常に上昇し、それとともに弊社の事業は拡大し、優良顧客から尊敬を受けている。昨年は30カ国以上に輸出することができて、業績を大幅に上げることができた。さらに、マンパワーを25%以上アップさせた。ロボットのお陰で作業者自信も仕事に関心を寄せ、かつ安全になっている」ということである。

 高賃金の国々においても、ロボットが雇用維持に寄与している良い例として、デンマークのオーデンセ・スチール造船所が挙げられる。ヨーロッパでは、造船業は過去20年~40年間、斜陽産業だった。だが、同造船所ではロボットが効率削減の鍵となった。同社は自律的ロボットアーク溶接システムに投資することで、大きい利益が生み出されるようになったのである。同造船所では、手作業時代に比べ現在では生産性が6倍まで向上しており、熟練溶接工の雇用を確保しながらも、生産のスピードアップを達成し、品質を向上させた。

 報告書により、電子工学部門、半導体部門、製薬部門等のハイテク産業の成長には、手作業では困難な高品質、精密性、迅速さ、トレーサビリティがロボットの支援により達成されたことが明らかになった。ロボットは、以上のような部門においては特に産業の発展と雇用の拡大に寄与しているとされている。

将来――2016年以降ロボットが最も営業力を発揮する部門

 上掲の『雇用にプラスの影響を与える産業用ロボット』によれば、「ロボットは将来もっと身近なものになっていくと予想される。小型化と新しいセンサー機能により、ミニチュア化、様々な生産量や素材、製品の形状などの供給が進むことで、より多くの産業で使われるようになる」とされている。

 中でも、サービス産業内にはより浸透していくことが期待される。特に、人口の高齢化に従って介護者の絶対数が不足していくサービスサポートが必要なヘルスケア部門で、ロボットはより必要とされるであろう。同様に運送部門やホームサービス部門でもロボットは重要な役割を果たすことになる。同時にセキュリティ部門においても、家庭やオフィスの警備や国境監視、日常及び緊急時向けの市内その他のモニター監視に求められるようになるであろう。

 報告書は、次世代ロボット工学はロボット工学産業自体においても、今後さらなる雇用の増加が生み出されるであろうと述べている。ロボット工学産業部門ではすでに30万人が採用されていると推定されており、今後5年以内にはさらに45万人以上が必要であるとステイされるという。中でもサービスロボット分野は中期的には他の産業部門より高い成長率が期待されるため、将来の雇用の主要な要因になることができるとしている。

*調査方法
 調査では250人以上の労働者を抱える企業が対象。分野は、自動車部門、電器部門、食品飲料部門、プラスチック部門、化学・製薬部門。さらに世界経済を代表するブラジル、中国、ドイツ、日本、韓国、アメリカの6カ国に焦点が当てられている。