起業7年で取引先が2500件以上に増加した町工場 “ミナロ”

111127ミナロ1 起業わずか7年で取引先が2500件を超えた町工場が横浜市にある。
木型・モデル加工を得意とするミナロ(社長=緑川賢司氏)だ。ケミカルウッドやアクリル、ABS等の樹脂、アルミや真鍮等の材料をCADデータ、図商、スケッチをもとにマシニングセンターで削り出す。
 「一生のうち人間がやれることは知れている。だから自分がどこまでやれるかチャレンジしていきたい」と力強く語る緑川社長。
 今を生き抜く町工場の姿がここにはあった――――。

 緑川社長が会社を設立したきっかけはこうだ。
 もともと別の木型を製作する会社に勤めていたという緑川社長。サラリーマン時代はITバブル真っ盛りだったが、雲行きが怪しくなる。ご承知のとおりITバブルが崩壊したのだ。
 「うちは大丈夫だろう・・・と思っていましたが、あっけなく『来月たたみます』と宣言され、いわゆるリストラにあってしまいました。もう後がありません。道は2つ、“会社を興す”か“再就職する”か。相当悩みました」(緑川社長)

 悩んだ緑川社長は、同じくリストラされた仲間たちに尋ねた。「俺が会社をつくったら一緒にやるか」と。仲間たちは開口一番「やります!」と緑川社長に返した。
 ところが緑川社長に十分な資金はなかった。先立つものが足りないうえ、初めての社長業ゆえ見通しも分からない。正直に、「いつ給料払えるか分からない。ひょっとしたらしばらく払えないかもしれない。さらにはあなたたちから借金をしなければならない可能性もある。それでもいいか?」と念を押した。仲間の返事はもちろんYES。「ついていきます! やりましょう!」といってくれた。
 仲間の声で、再就職する道は頭から消えた。

創業時は人との縁で救われました

111127ミナロ2 ところが会社を興す場所は見つかったが、機械を設備するための電気工事が問題だった。電気工事代金が30万円くらいで済むとふんでいた緑川社長に届いた見積金額は120万円。当時は周囲から借金をしているので懐に余裕がなく、払えるわけもない。困り果てた緑川社長は、2回しか面識のない電気工事会社の社長に「出世払いじゃダメですか」とイチかバチかで尋ねた。
 なんと答えはOK。
 緑川社長は「この電気工事会社の社長のお陰で、ミナロは創業までこぎつけることができたんですよ」と当時を振り返る。
 「いやぁ、世の中捨てたもんじゃないと思いました。親切な社長がいるものなんですよ。この社長も同じように若い頃苦労したとのことで、“苦労をしている若いヤツを見ると、手助けしてやりたいんだ”っておっしゃっていました」(緑川社長)
 なんとも人の縁の不思議を感じるのだが、他にも絶妙なタイミングで緑川社長のもとへ人や資金が集まってきた。付き合いのあるサラリーマンの知人は、苦労している緑川社長を訪ねて「保険が満期になったから使ってくれよ」と70万円を緑川社長に渡した。「そんな大金貰えるわけがないだろう」と断ってはみたものの、やっぱりお金が欲しい。それを見越した知人は「ぜひ、使ってくれ」といってくれる。結局、緑川社長は、「このカネは貰うわけにはいかない。必ず返します」とありがたく受け取り、2年後には利子をつけて返金した。
 この話には後日談がある。
 現在、ミナロの事務所兼工場になっているこの建物は、その知人が務めていた家具屋だった。社長は3代目だったのだが、売り上げ不振から破産するといい出し、すでに建物には張り紙がされてあったという。慌てた緑川社長は、この建物が適正価格で売れるかどうかを調べた。少しでも借金を減らして破産の道を歩ませないようにしたい。そんな気持ちもあった。
 緑川社長が走った先は銀行だった。
「この建物を買う資金を銀行が貸してくれたら、破産寸前の3代目社長に『オレに売ってくれ!』というつもりで銀行に駆け込みました。そしたら、銀行側は融資をしてくれたのです。本当にありがたいことでした」(緑川社長)
111127ミナロ工場工場内の様子 もともと家具工場でもあったので、造りかけの家具や備品、機械工具等がゴロゴロあった。
「弁護士は中にあるものをゴミ扱いしていました。廃棄物として扱っていたんです。だけど売れるものは売った方がいいので、近所の人を集めて売りさばきました。『この売上で工場主の借金を減らすことができますから、少しでも高く買ってちょうだいね』ってフレコミをしたところ100万円以上売り上げがありました。弁護士に任せたら逆に処理代金でお金を持って行かれるところだったのにありがたいことでした。それでこの売上を工場主に渡したところ、彼は正直者だから全部正直に弁護士さんにお話しちゃった(笑)」(緑川社長)

新しい発想は楽しい環境から

111127ミナロ3遊び心満載! 製作したガンダム 創業7年で2500件以上の顧客を確保した緑川社長の営業手法だが、仕事を取って来るという発想ではなくて“加工を手伝ってくれる”ところを探したところがユニークである。
 「会社を始めるのでぜひ手伝ってください」といって、顧客ではなくて仲間を広げていったのだ。
 「仲間が増えていくと、その横の連携からどんな仕事でも受けられる体制ができます。さらには同業者からも“手伝ってほしい”ということもあります。会社がずっと成長していければいいのですが、人生そう甘くはありません。落ち込むことだってあります。悪い時にどう解決するかが重要なのです。以前勤めていた会社が閉めざるを得なかったのも、おそらく下請け体質の依存型から脱却できなかったからだと感じています。町工場が新規の顧客を獲得するためにも新たな販促ツールを考えなければなりません」(緑川社長)
 緑川社長はかつて自分の勤めていた会社が業績不振に陥ってしまった理由のひとつに“依存型体質”をあげている。
111127ミナロ4看板犬のレオンくんもミナロの仲間。愛嬌たっぷりにお出迎え このご時世、先の見通しが分からないからこそ、大手依存型にならぬよう、自ら仕事を確保するという意気込みが必要だと感じた緑川社長が目をつけたのは、インターネットだった。HPを開設し、情報発信をしていった。材料販売のオンラインショップもつくった。設立7年後で2500件、現在、個人も含め3000件を誇っている。
 「クリエーティブとイノベーションの一番近い製造現場だからこそ、現場が創造しやすい環境を整えていくことの重要性を強く感じます」(緑川社長)

ものづくりの可能性を広げてくれるケミカルウッド

111127ミナロ5切る、削る、塗る、貼るがラクラク! 加工性や環境性に優れた人工木材のケミカルウッド 納期まで時間がないがクオリティが高い品質を求めている現場に重宝されているミナロの治具・検査治具。
 近年、少量対品種生産のニーズが高まっているため在庫を多くつくらないよう金型のチェンジが必要となるが、金型から取り出された製品の品質管理のためにハイトゲージやレイアウトマシンで測定していてはその間に生産が止まってしまいロスタイムとなる。ミナロの治具・検具の特長は、必要最小限の仕様と硬質な“ケミカルウッド”でひと現場一台でも負担のかからないコストを実現していることだろう。
 この“ケミカルウッド”とは、加工性や環境性に優れた人工木材を指す。原料は主にウレタン系であり、天然木のように木目がないので、切削加工の際の方向性を問わないのが魅力の材料なのだ。お試し無料サンプルもあるので、実際の加工で試してみてはいかがだろうか。

“心技隊”は製造業を元気にする集団

 「技は心と共にあり」を合言葉に製造業に係る経営者集団の「心技隊」の隊長でもある緑川社長。昨年に引き続き「第二回ものづくり流行語大賞」のエントリーを開始している。エントリー受付は本年12月31日まで。
 また、2012年2月2日(木) にはパシフィコ横浜展示ホールC-Dにて、『全日本製造業コマ大戦』を開催する。喧嘩ゴマを通じて製造業を盛り上げることが目的のこの大会、優勝者は取材を受ける際すべてのコマを展示する。 大のおとな達がプロの道具を使って設計から製造、そして対決。 製造業に携わる大人が本気で取り組む意地とプライドのガチンコ勝負を展開する。
 現在、心技隊では『全日本製造業コマ大戦』の参加者を募集している。
詳しくはこちらのHPまで⇒  http://sngt.jp/