DMG森精機 森社長に聞く 「10年後に1兆円規模を目指す!」

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 今年7月はDMG森精機(社長=森 雅彦氏)のイベントが豊富だった。7月9日から13日の5日間は、同社伊賀事業所でプライベートショー「伊賀イノベーションデー2019」を開催し、会期中は、顧客累計数5,000社約10,000名、サプライヤ、学生等も含む来場者累計数は約13,000名と大いに賑わいを見せた。イベント初日には奈良事業所から移転し拡張したグローバルパーツセンタの開所式も行い、24時間以内パーツ発送率95%とAIの活用でさらなるサービス強化をすると発表した。

 同社では製造現場に生産改革を加速するための活動を活発に行っており、自動化、デジタル化を推進し、5軸加工機普及に注力している。また、同社では人材育成や働き方改革にも注力しており、大胆な取り組みも実行している。

 森社長を訪ね、お話しを伺った。

地政学的リスク 慎重に対応

190829top1伊賀イノベーションデー・テクニカル記者会見での森社長。自らプレゼンを行った。 ―昨今、米中の貿易摩擦や流動化する欧州、日韓の摩擦拡大などにおける悪影響が懸念されていますが、地政学的リスクについてのお考えは。 
  工作機械は外国為替管理法のもと、厳しく規制されているので、経産省や、ドイツの監督官庁と相談しながら慎重に対応しています。申請しても許可が下りないものに関しては、前金を頂いている場合でも、申し訳ないのですがお断りしているケースもあります。
 ―前金を頂いているのに悩ましいとは思いますが、影響を回避するための策はありますか。
  政治学者でコンサルティング会社ユーラシアグループの社長でもあるDr.イアン・ブレマー氏に、十数年、弊社のコンサルをお願いしていることもあり、専門家の意見をしっかり聞いています。地政学的リスクについて感じることですが、例えば、中国などは今まで未開だった方が製造工場で黙々と働くことで、毎日決められた時間に出勤する、あるいはルールを守ることなどを覚え、業務をこなすために必要なスキルを勉強していったのですが、自動化・システム化が進んでいく中で、低開発国から高賃金の国に進出するとなると、どのようにハンズオン(体験学習)のトレーニングを行うかをしっかり検討しなければならないと感じています。古くは日本も韓国も台湾も経験してきた同じようなことが中国ではなんとかやって来られたのですが、さらに中国の奥地やインドの奥地となると、今後どうやって社会化や貨幣の供給を行っていくのか。アフリカもこれから工業化が始まりますが、なかなか難しいのではないか、という感想を持っています。
 ―近年、IoT、ビッグデータなどの言葉をよく聞くようになりました。米中貿易摩擦も一部ではITを巡っての覇権争いとも言われています。日本はビッグデータやIoTの構築などはそれを実行した企業が所有しますが、中国の場合、国家のものになるというイメージがあります。この点についてのお考えは。
  デジタル化は中国のほうが進んでいます。例えば、偽札が横行していることもあり、現金決済はなくなって、ほぼデジタル決済になっています。中国のインターネットは中国国内で限ってみれば世界で最も安全なインターネットでしょう。国が全部見ていますから。そうしたこともあって、中国のお客様はコネクティビティが凄い。全てが繋がっています。
 ―率直な印象として、なんとなく不気味に感じてしまうのですが。
  私もお客様に「気持ちが悪くありませんか?」と尋ねたことがありますが、「気持ちが悪いけれど、国が見てくれるので、悪意を持ったウィルスが入る隙がないので安全だ。」と返ってきました。海外に輸出をして儲けたり、海外で稼いだお金を自国に持って帰ってきて再投資をする。そして従業員を雇用し、高級車に乗ろうがマンションを購入しようが海外旅行に行こうが、そのレベルにおいては普通のお金持ちとして扱われるようです。中国のお客様は、とても真面目に将来を考えている方が多く、自分の子どもはアメリカや日本の大学に入学させたり、しっかり勉強をして跡継ぎになってくれれば良い、と考えている方が大半で、海外に逃避をしようと考えている人はほとんどおらず、性善説ではありますが、こうした仕組みも案外、うまくいくのではないか、と感じています。
 ―見方を変えると違ったものが見えてきます。
  本音をいえば、憎しみを全面に出した覇権争いよりも、もっと他に考えなければならないことがあると思うのですよ。例えば共通の敵もあるじゃないですか。
 ―共通の敵とは?
  地球温暖化やウィルスなど、こうした地球規模で解決しなければならない共通の敵と戦ったほうが良いのですが、残念なことに現在、そうではないのが悲しいところです。

人材の強みを生かす組織作り

190829top3伊賀事業所内にある保育園。創造的で心を豊かにするための情緒教育にも注力している。 ―貴社では全社を挙げて社員のワークライフバランスの充実・強化をしており、社内で託児所を開設するなど、女性社員が働きやすい環境作りにも注力されています。
  世の中の流れでもある通り、仕事において活躍したいという前向きな希望を持つ女性が、その能力を十分に発揮できる社会の実現が求められています。現在、弊社は女性執行役員が1人ですが、将来は幹部の3分の1は女性が占める可能性が非常に強いと感じています。すでにドイツではそうなりつつあります。社員が仕事において活躍するためには、会社が環境整備を実行していかなければなりません。また、企業としては地域社会とのあり方も考えていかなければならないと思っています。多くの個人には家族や親戚、友達がいて、身近な集団としては会社やどこかのクラブもありますが、中でも雇用したりされたりしている会社の役割は非常に大きい。ですから、会社でできる範囲内で、できるだけのことは実行していこうと思っています。
 ―貴社では優秀な若いエンジニアも多く在籍しておりますが、工作機械業界を目指す若者に対して期待したいことはありますか。
  今の若者に、団塊世代のリプリントのようなことが起こっているように感じます。最近は1980年代の音楽なども流行だしました。流行というのは30年おきに同じことが繰り返されるようです。メンタリティーも強くあって欲しいですね。せっかく新しいテクノロジーがあって、世界中どこでも自由に行けて、いろんな物が読めて聞けて、味わえるようになっているというのに、その一方で、理由をつけて自分の殻に逃げ込んで閉ざしている若者がいるのも事実であり、勿体ないと思います。もう少し飛び出す勇気を持って、活躍する場を見つけて欲しい。外に出れば視野が広がります。若い分、経済的苦労も多いとは思いますが、それでも前向きに活動していれば、きっとお金は後からついてくるでしょう。

「まだまだやりたいことが山積み!」 気になるアノ質問、67才説に変更!

190829top4 ―非常にお聞きしづらいことで恐縮ではございますが、10年以上前のことですが、森社長は47才を迎える頃に社長を引退したいとおっしゃっていたことがあり、このとき森社長の47才説が話題になりました。その後、時代の流れも目まぐるしく、あっという間に月日が経過しました。勇気を持ってお尋ねしますが、その後の心境の変化を教えてください。
  もう20年社長を務めて現在57才になりました。あと10年はまだまだ頑張れます。47才から67才に変更してください(笑)
 ―47才の時に感じたビジネスと、それから10年後の今はビジネスの面白さは違いますか。さらに10年後、森社長が目指していることを教えてください。
  今のほうが断然ビジネスに面白みがあります。条件も整ってきています。どんどんやりたいことが出てきました。あと10年で実行したいことのひとつに、1兆円規模の会社にしたいという目標があります。もうひとつ、技術的には、製造業の中でも切削加工やアディティブマニファクチャリングの分野において、世界で1番とんがった会社にしたい。そして、60才になるまで、あと3年ありますが、3年後は、無借金経営を実行する予定であり、その目処がついてきました。まだまだやりたいことが山積みです。
 ―ありがとうございました。