年頭所感(日本小型工作機械工業会/日本工具工業会/超硬工具協会/日本金型工業会)

「チャンスは誰にも公正に訪れる」

●日本小型工作機械工業会 会長 長瀬幸泰

新年あけましておめでとう御座います。平素は日本小型工作機械工業会に一方ならぬご厚情とご支援を賜りまして誠に有り難う御座います。

リーマンショック以来、当工業会では元気が出る委員会をもうけて各種勉強会や、100年に一度(め)のモノづくりコンテストなど様々な施策を実行して参りました。工業会内外の多くの皆様のお力添えのおかげで所期の目的を達成させて頂いております。チャンスは誰にも公正に訪れると感じております。ただし、それは懸命に考え、行動をした人のみに対してです。当工業会の会員企業も的確に変化に対応をすることにより活路を見いだしております。

更に世界情勢の大きなチェンジとシフトが加速度的に進む中で、今年度より会員企業の総意により日小工改革委員会を立ち上げ、自らの改革に取り組むことにいたしました。グローバルで大きな流れの中にある様々な個別且つ長期短期の課題を抱えながら経営をされている会員企業が明るく日々の企業活動をするために一助をなす事のできる工業会で有り続けたいと考えております。また、新たな魅力ある会員企業の参加が可能な仕組みの採用も積極的にはかりたいと考えております。

日本のモノづくり企業が共通に抱えている課題としては製品輸出や海外進出と技術・生産拠点の流出の違いがない交ぜになっており、製品の輸出には規制がかかっているが技術の流出には歯止めがきかない。あるいは、本社は日本に残るが生産拠点の大半は海外にという構図ができかねない状況です。これは何よりも国や企業が人を大切にしないこともその一因であるとも考えられます。単なるものづくりから感動と誇りの持てる魂を込めたことづくりへの意識転換が重要であると思います。つくる人と販売する人と購入する人の良い関係が永く続くためには人の関わりの重要性を再認識、再構築することが不可欠です。顧客満足から感動へ概念のシフトも求められると思います。
 
本年も皆様の倍旧のご支援を頂きますようお願い申し上げますと共に本年が皆様にとって輝かしい年になりますように衷心より祈念申し上げます。

「大転換期への対応力」

●日本工具工業会 理事長 石川則男

2011年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

2008年後半に世界経済を危機に陥れた世界同時不況は、昨年は欧州金融不安とドル安に形を変え不透明さは継続したものの実体経済は回復の道のりを歩みました。牽引車は新興国、特にアジア地区の経済発展であり、一部の産業では過去最高の業績が見込まれています。

一方、当工業会を取り巻く環境は、自動車のハイブリッド化とEV化が進んだこと、またパソコン、携帯電話等のネット端末化が進み、それぞれの部品構成と生産方式に大きな変化が見られました。自動車では電動モータが増加する中、中国が輸出制限を行ったレアアースがモータ用の磁石には欠かせないことが広く知れ渡り中国のみに依存するリスクが問われました。IT製品ではハードディスクユニットが搭載されないIT機器および、タッチパネル方式の入力端末が飛躍的に増加すると共に、部品の生産方式も射出成形部品が減少し機械加工部品が増加するなどの変化をもたらしました。また円高が企業の海外生産を後押しし、特に主力の顧客グループである自動車産業の海外移転が進んだことにより、工具メーカーにとっても、製品群においても、外需を取り込んだ企業と内需に依存した企業に大きな差が出ました。このような状況下、大転換期にある主要顧客層に対応すべく工具メーカーも変化に対応する力が求められており、技術力の分野では熟練の技術を伝承可能な生産技術に転換することが挙げられます。新興国メーカーの技術的な追い上げは現実のものとなりましたが、日本の工具メーカーが持っているノウハウはものづくりにおいても、顧客のアプリケーションに対応することにおいても一日の長があります。しかしながらそのノウハウも一部の熟練者に依存する形に留まっていては技術の伝承が難しいばかりか、次世代の技術に転用する財産をみすみす失ってしまうことになりかねません。勘とコツに頼らない体系だった技術への転換の努力を怠らないようにしたいと思います。また製品開発の分野では、超精密、高能率、環境対応型の製品に注力することが挙げられます。高付加価値製品の開発は、将来の成長には不可欠です。また顧客開拓では医療、エネルギー、宇宙航空、ITなど当工業会の持っている卓抜した技術を活かすことが出来る顧客層を、内外を問わずに広げることが重視されます。日本工具工業会としてはアジアでの見本市および展示会に出展したいものの、単独出展に躊躇される会員を募り、複数企業が共同出展できるような企画に取り組みたいと考えますので、会員各社のご意見を丁寧に伺いたいと思います。

また、昨年、当工業会の英語名をTHE JAPAN SOLID CUTTING TOOLS’ ASSOCIATIONに変更いたしました。略称はJSCTAのままですがSはSMALLからSOLIDのSに変更いたしました。SOLID TOOLは再研磨を行い、何度も研ぎなおして使用するものです。将来、再研磨事業を行っておられる企業にも多数ご入会いただき、工具素材にこだわらないアフターサービスを含んだソリッド工具の工業会として発展したいというのが当工業会の方向です。
最後に皆様の一層のご発展を祈念いたしまして年初のご挨拶とさせていただきます。

「パラダイムシフトはチャンス」

●超硬工具協会 理事長 倉阪克秀

謹んで新年のお祝いを申し上げます。

昨年を振り返りますと、世界経済は、欧米では失業率の高止まりや信用収縮による景気停滞の長期化が進み、中国などの新興国では欧米市場の低迷による輸出の減速や投機資金流入によるバブル懸念、日本においては、デフレ基調長期化や恒常的な円高により、内需は総じて低調に推移しました。一方、政治外交面でも日米、日中関係の悪化、北朝鮮問題など、不透明感と不確実さが世界を覆った一年でありました。

さて政治経済とも閉塞感のある日本ですが、国内の産業は、農業を含め非常に難しい立ち位置にあります。パラダイムシフトが急速に進展、新興国の台頭と低価格・巨大市場の出現、技術の流出、また当協会に大きな影響を持つレアメタルをはじめとした資源問題の中にあって国内製造業の「縮み」が懸念されます。
当業界の超硬工具出荷高は、09(平成21)年度2,035億円でした。本年度は円高が続き回復が遅れておりますが、08年度と同じレベルの約2,800億円の見込みです。これは、07年度比78%に相当します。07年度と比較すると中国を主とした東アジア向け輸出割合が、07年度が59%、10年度上期68%と大幅に増加しているのが特徴です。生産面を焼結重量の推移で見てみますと、07年度通年では516トン/月、08年度上期517、08年度下期299、09年度通年310、10年度上期450、10年10~11月487トン/月です。円高の影響により金額ベースで07年度比78%ですが、物量ベースでは94%まで回復していると言えます。

昨年日本は、レアアースの調達が滞るという大きな問題に直面しました。当協会の製品の主原料のタングステンはレアメタルであり、原料として輸入しているAPT(WO3)の10kg当たりの価格が、高騰しており300ドルを突破しています。このタングステンの原始埋蔵量は620万トン、可採埋蔵量は290万トンと推定されています。この7割近くが中国に賦存しています。一方、中国政府は、輸出許可枠を毎年2~3%削減しており2011年は、前年比マイナス300トンの15,700トンに決定し、資源の統制をさらに強めており、当協会にとって非常に大きな問題となっています。

さて、冒頭に述べたように日本の製造業は「縮み」とも言える厳しい環境にありますが、これを打開、再生し国内製造業の復権を図ることが必要です。その方策としては強い産業のさらなる強化、国内に残すべき技術と製品を世界トップレベルへ押し上げるとともに、これらを生産するマザー工場の充実を図ることが重要です。この中にあって当協会の多数が関与する切削加工を取り上げると、試作を含め多品種少量生産に適しており、そこに技術革新の方法とその活路を見いだせると考えます。

パラダイムシフトは、資源にも大きな変化をもたらしました。タングステンの安定調達と大規模なリサイクルの仕組み作りは当協会にとって従来に増して重要な活動となっています。行政とともにスクラップの回収、低コストリサイクルの実現に取り組んでまいります。一方、タングステンの依存度を減らし、脱タングステンの材料開発が必要です。材料開発は、日本製造業の優位の一つですが、エコ・軽量化による加工対象物の非鉄・非金属化に伴いさらにその要求は、高まっていくものと考えます。このようなパラダイムシフトを逆にチャンスと捉え、日本が強いこの分野を活かすことが重要と考えます。
リーマンショックを乗り越えたものの、新たな厳しい環境を迎えておりますが、本年も一層のご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げるとともに、皆様のご多幸とご発展を心よりお祈り申し上げ、新年のご挨拶といたします。

「明るい希望が湧いてくる年に」

●日本金型工業会 会長 上田勝弘

謹んで平成23年の新春を御祝い申し上げます。

会員の皆様もここ数年来の厳しい環境に耐えしのぎ心新たに新春を迎えられた事と存じます。リーマンショック以来、大手企業の業績は回復の軌道に向かっており、業績好調の決算を発表している企業数も増えておりますが、中小企業は回復はおろか廃業倒産の連鎖が続いております。我々金型関連産業も必死になって営業を続けているものの、先の展望がはっきりしておりません。

自動車、家電、電子機器の産業は、大きなマーケットであるインド・中国を中心として東南アジアでし烈な価格競争を展開しており低コスト第一主義の調達を強化しており、本来日本で発注されていた金型も海外現地へ発注され、日本の金型関連需要は減り続けております。

日本の投資を活発化し雇用の増大、景気浮揚を促進する為、菅総理を中心として昨年9月より4回にわたり官邸で「国内投資促進円卓会議」が行われ、私も金型工業界代表として中小企業施策に対するきめ細やかな専門会議の開催を要求致しました。法人税率5%引き下げも行われる様ですが、利益の出ない業界や赤字の出ている会社には無縁です。今は国を挙げての需要創出が最大の問題です。我々企業も戦術、戦略を根本的に見直しながら脱兎の如く明るい希望が湧いてくる年になる様に会員の皆様と頑張る事を念願しております。

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