「各国経済が単独で機能する時代は終った」日工具

日本工具工業会(理事長=石川則男氏)は、1月7日午後12時30分より都内のメルパルク東京で新年賀詞交歓会を開催した。


冒頭、石川理事長が参会者にお礼の言葉を述べたあと、「早いもので世界同時不況の発端となったリーマンショックから2年あまりが経過しました。各国政府の景気対策、アジア経済の成長、その後、スマートフォン、電気自動車に代表される新製品・新技術というものが相次いで発売され、世界の景気は着実に回復しました。その結果、ものづくり世界地図も大きく変わり、世界経済はアジアを中心とする新興国経済への依存度を高め、各国経済が単独で機能するという時代は終焉を迎えました。我が国を取り巻く環境では尖閣諸島問題で事を発した外交問題が中国のレアアースや金融という経済摩擦に繋がり、日本経済の中国依存に対して大きな懸念を抱かせた1年でもありました。2010年度は1年の平均ドル・円レートが87円という史上最高の円高水準が続き、日本の製造業は海外生産を加速させ、結果として国内の製造に携わる特に中小企業は大変な状況が続いています。このような中、日本工具工業会は最大の顧客であります自動車産業が世界的に回復を遂げた関係で、最悪期であった2009年度から回復しました。当工業会の通期の見通しは対前年同期比157%の970億円、特殊鋼工具に限って言えば156%の756億円となっております。これは2008年度の約90%、ピークであった2007年度の73%というレベルです。2011年度を迎えるにあたり、前向きな1年にしたいと思い、前向きな投資ということで考えてみたいと思います。私ども工具メーカーにとっての投資というのは、新規にお客様を開拓する投資、新製品を開発する投資、ものづくりそのものを改造・回転する投資でありますが、顧客開拓では医療・エネルギー・航空宇宙など当工業会が持っている卓抜した技術を活かすことができる顧客層を広げたいと思います。製品開発の分野では超精密、高能率、環境対応型の製品に注力したいと考えています」と挨拶をした。

今年は新たな飛躍のチャンス

来賓を代表して藤木俊光経済産業省製造産業局産業機械課長が、「グローバル競争が進んでいく中で日本がどのように立ち位置を守っていくのかという課題もあり、円高問題など予断を許さない状況がある一方、最悪期は脱し、一歩一歩着実に階段を上っていけるのではないかとやや明るい展望が持てるお正月だと思っています。経済産業省は昨年、産業構造ビジョン2010、新成長戦略をまとめました。まずは法人税減税について実効税率を5%引き下げることに決定しました。FTA、TPP等では農業問題を含めて日本の国を拓いていくという姿勢をしっかり保って取り組んでいきたいと思います。今年はそういう意味で新たな飛躍のチャンスの年だと思っております」と挨拶をした。

乗り越えなければくぐり抜けていくしかない

増田照彦副理事長が、「人間というのは季節の中でうまく1年の区切りを考えたなと思います。過去と他人はどうしようもないが、未来と自分はなんとかなるという言葉もあります。このお正月でリセットしてまた一歩踏み出したいと思っています。もし、このお正月でリセットにつまずいた場合は、旧正月もありますし、年度変わりもあります。色んな区切りを上手に活用するのも一案です。最近の報道を見ますと為替や環境、人材等の“リスク”が叫ばれていますが、どの時代でも懸案事項や心配事というのは4つや5つはありました。こうなれば覚悟を決めて皆さまと一緒に乗り越えていくしかない、乗り越えなければくぐり抜けていくしかないということを誓い合いまして乾杯をしたいと思います」と述べ、声高らかに乾杯の発声を行った。

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