加工に携わり150有余年 現場のニーズに応えて

トーバン工業はバリ取り洗浄機械、表面仕上、研磨装置の専門メーカーとして多くの加工現場に貢献してきた。同社の歴史は古く、江戸時代末期に、東京(当時の江戸)の赤坂村で田島善五郎氏が始めた刀鍛冶が始まりである。以来明治時代の2代目徳次郎氏による銅壷職、大正から昭和に渡り3代目春五郎氏による自動車板金の田島製作所へと受け継がれ、創業以来、150有余年、一貫して金属加工に携わっている機械メーカーだ。

「うちは金属に関係するものなら何でもやり遂げます」と話すのは、トーバン工業社長の田島泰彦氏。先代の春五郎氏は第2次世界大戦後から復員後、戦災にあった自動車の再生事業に取り組んだ。まだ国産車のなかった時代、古い小型乗用車や小型トラックに手を加えてエンジンをオーバーホールしたり、フレームを改良して美しいボディをのせ、自家用車やタクシーとして納入した。まだまだ大手の自動車メーカーが占領軍から生産を許されてなかった時代に、再生車を通じて戦後の復興に貢献したのだ。残念だが当時の資料はほとんど残っていないという。大手自動車メーカーの生産再開で同社はこの分野から撤退してしまった。

ところが昭和30年代になると、得意の板金技術を買われてIBMのコンピュータ部品を引き受けるようになり、これが大きな飛躍につながった。しかし、高度成長期のコスト高に押され、経済環境も大きく変化し、注文は激減。そこで考え出した新製品が板金加工から機械メーカーへ脱皮するきっかけになった平面バリ取り機『バリタック』である。同社は、時代に翻弄されながらも時流を読み、時代を生き抜いてきたのだ。

バリ取り加工の自動化研究で技術力の高さが認められた

バリタックSP
バリタックSP
「少しでもバリが残ると許されない。このバリを削り落す手間と時間は重荷であり、これをなんとかしようと協力会社と自動化研究を進めました」(田島社長)
この研究開発したバリ取り機は、高速回転するブラシが研削刃の役割を果たしてバリを削り取るのが特長。従来のパレル方式やブラスト、ハンドモーター、電解方式に代わる新技術として注目され、技術力の高さが認められた。1977年には日刊工業新聞社選定の十大新製品賞に見事入選している。その後、バリ取り機は『バリタック』の名称でシリーズ化し、改良を重ね今や業界の標準機とみなされるまでに至っている。自動車部品や電子機器、精密機器などの製造ラインに組み込んで24時間の連続操業に耐えられる強靭さは強みのひとつだ。現在、『バリタック』シリーズの技術を活かした半導体基板を研磨する『PCBパフ研磨機』など、現場の作業効率を改善する豊富なマシン群を展開している。

150年以上の歴史を持つ同社は、常に時代のニーズに応えながら新しい道を切り拓いてきた。まさに時代に挑戦しつづける“伝統あるベンチャー企業”という言葉がぴったりである。
「この分野で最高の技術を生み出し、お客様と供に利益を出し、繁栄することを最終目標に掲げ、日々機械の技術改革、最新技術の開発に努めています。自動車部品、IT関連部品、家電部品、航空機部品など、それぞれの詳細な部品をどのような加工ツールを使用すれば要求された通りに仕上がるかを考えています。その時代が求める加工ニーズに応えていくことが使命であり、またわれわれは製品を売りっぱなしにはしません。売ったら最後まで顧客のニーズに応えます」(田島社長)

燃焼防止装置『ウォーターフォールS型』で加工現場の“もしも”に備える

いつの時代も加工現場の悩みに耳を傾け、開発に活かしてきた同社。ものづくりの気迫を代々受け継いできた田島社長だが、今回、画期的な製品を世に送り出した。燃焼防止装置『ウォーターフォールS型』である。

「以前、顧客の工場でボヤ騒ぎがありました。溶接で発生するヒューム、高速切断機、グラインダー、サンダー、砥石およびブラシによる研磨作業中に発生する火の粉は、集塵機に重大なアクシデントをもたらす危険があります。その時はボヤ騒ぎで済みましたが、このアクシデントで、発生しやすい集塵機火災を未然に防ぎ、工場内の安全環境を整えるためにどうしたらよいのか・・・と開発した製品が、『ウォーターフォール』です。集塵機に吸い込まれてくる火の粉を消化して除去すれば集塵火災は防げます」(田島社長)

この装置は滝状に流れるシャワーに火の粉をぶつけて消化し、微量の火の粉はサイクロン方式のスパイラル吸引によって冷却消化させる。この2つの機構により熱粒子は完全に除去され、粉塵は水タンクに沈下。タンクからクーラントポンプで汚れた水を吸い上げて、鉄類の場合はマグネットセパレーターでろ過し、非鉄の場合はろ布式フィルターでろ過される。ろ過されたクリーンな水はシャワーへと循環される仕組みである。まさに現場で起こってはならない“もしも”に備えた装置である。

ウォーターフォールS型
ウォーターフォールS型

どんな時代であろうとも、一貫して現場のニーズ応えたトーバン工業。加工現場で起きている悩みに耳を傾け、今日も新しい技術や製品開発に注力している。





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