「時代は“機電再融合”へ」日機連が賀詞交歓会を開く

日本機械工業連合会(会長=岡村 正 東芝 相談役)が1月7日、東京港区のホテルオークラで賀詞交歓会を開催した。岡村会長のあいさつの概要は以下のとおり。

わが国経済はアベノミクス効果の下で、株価の上昇、雇用の回復など、この2年間に亘って大幅な改善が示された。振り返ると、わが国製造業は、とりわけ2008年9月のリーマンショック以降、グローバル市場の急激かつ大幅な変動、超円高、東日本大震災やタイの洪水による2度に亘るサプライチェーンの大きな混乱など幾多の困難に直面してきた。

この間、企業にあってはコストの削減を含めてグローバル企業としての競争力の回復に必死で取り組むなかで、政府にあっては安倍政権の下でデフレ脱却に向けた力強い政策展開がこの2年間において図られ、企業経営にたずさわるものとしてもここに至って漸く愁眉を開くことができ、総じて明るい表情でお正月を迎えることができたのではないかと感じている。政策当局の皆様のご尽力に対して心から感謝の意を表したいと思う。

しかしながら、いわゆる6重苦といわれた問題の全てが解決したわけではない。新しく迎えた2015年はこうした残された課題に官民挙げて取り組み、中長期の成長につなげる「成長戦略の力強い前進の年」にぜひともしたいものである。

いくつかの課題について申し上げると、第一に足元の景気動向がある。昨年7-9月期の実質国内総生産(GDP)が2四半期連続のマイナスとなるなどの動きの背景に、耐久消費財を中心とした需要回復の遅れがある。日機連が11月にまとめたわが国機械工業全体の改訂生産額見通しにおいては、こうした動きの中で、国内機械生産は、今年度僅かではあるが、マイナス(99.8%)が予想されている。これをなんとしてでも来年度に向けてプラスにもっていかねばならない。「地産地消」の中デカ以外にシフトした生産を国内に戻すことはありえないとの見方もあるが、新たなビジネスの創出も含めて国内ものづくりの再構築と輸出力の強化が課題である。航空機分野では、国内初のジェット旅客機「MRJ」がいよいよ初飛行を迎え、このニュービジネスを必ず成功させるとの信念の下に、われわれは一丸となってこの挑戦をサポートしていきたい。交通システムやエネルギープラントなどのインフラ・システムの輸出についても、現状の10兆円から2020年には30兆円にまで引き上げようとの政府の戦略目標の下で、トップセールスを含めて官民一体となった取り組みのさらなる強化が求められている。また、自動車運転車や燃料電池車をはじめとする自動車業界の取り組み、世界的な向上の省力化需要の拡大や医療・介護などの新たな社会的需要を背景としたロボティックス分野での地平線の広がりなども、そのひとつひとつがわが区に経済の新たな成長に繋がるものと信じている。

今年の二つ目の課題は、エネルギー環境問題である。本年末にパリで開催される「COP21」に向けて本年半ばまでにはわが国としての目標を表明することも必要になってくるものと思われる。こうしたなか、東日本大震災以降、わが国では地球温暖化問題が忘れ去られた感すらあるがCOP21に向けてもう一度この地球温暖化の問題を直視するなかで、そのための現実的選択として、省エネのもう一段の深掘りとともに、原子力の貢献を再評価する取り組みを期待したいと思っている。

三つ目の課題は、税制の国際的ハーモナイゼーションの問題である。日機連においても他団体と連携して法人税の引き下げ等の税制改革を要請してきた。暮れの自民党税制大綱において、法人税引き下げに向けての一歩が踏み出されたわけだが、さらなる取り組みが必要であり、またOECDの「BEPS行動計画」の動きなどがあり、グローバル化と税制という視点から総合的な課題の把握と対応が政府、企業ともにますます強く求められてきていると感じている。また、グローバル競争激化の中で、FTAやTPP交渉についても本年は是非大きな前進を期待したいものである。

第四の課題は、世界的な製造業復権に向けた動きである。
ドイツが国家戦略として推進する「インダストリー4.0」では標準化に向けた取り組みを中心にして自国に有利な展開を図ろうとする動きが如実に出てきており、米国もまたこれに対抗して官民挙げた動きを始めていると聞いている。これらの動きを総じて捉えれば、各国ともかつての製造業離れから転じて機電再融合とも言うべき形で製造業にリソースを集中させようという動きを顕在化させているということであり、また、政策的には、産業政策の復権とでも言うべき共通現象である。日機連においても昨年から調査研究を進めるとともに、この3月にはドイツにミッションを派遣し、ドイツ機械工業連盟(VDMA)とも意見交換を行う予定であり、会員各位の多数の参加を期待している。「インダストリー4.0」の動きはICTと機械の融合というイノベーションの問題であるとともに企業の取引形態の変化にも波及する多面的、多層的な問題であり、政策当局ともよく連携を取らせていただき議論を進めていきたいと考えている。

「経済の好循環がはじまった」 

来賓を代表して、黒田篤郎 経済産業省製造産業局長が、「過去2年間のアベノミクスの経済政策によって求人倍率が22年ぶりの高さ、企業の経常利益も全体としては過去最高水準になるなど、企業収益を中心にようやく経済の好循環がはじまった。今年はこれをさらに力強く回していくためにも全国津々浦々、このアベノミクスの成果を波及させていく大事な年になる。今年は戦後70年になるが、機械産業は日本経済を牽引し、最近ではリーマンショックなど数多くの試練も乗り越えた。現在も皆様には3.11以降の燃料費増の苦しい中、貿易黒字の稼ぎ頭として、まさにわが国経済を引っ張っており、心から敬意を表している。一方、今後の展望に目を向けると、現代社会の進展に伴って機械産業の将来を巡る国際的な覇権争いが熾烈を極めはじめている。米国ではgoogleをはじめとするIT企業がビッグデータを活用して製造業に参入する動きが盛んになってきており、ドイツでは“インダストリー4.0”という、ITを使って変種変量生産を目指し、工場間や企業間のM2M(M to M)という通信ネットワークを介して最も有利で効率的な生産を行う動きがある。このような世界的にも大きな新しい環境の中で、わが国がものづくりの国として勝ち抜いていけるように政府としては、日本の技術の優れた機械技術の結晶ともいえるロボットをコアにして現在、官邸で総理をヘッドにしてロボット革命実現会議を行っている。こうした中で5カ年計画をつくり、オリンピックイヤーである2020年を目標にロボットをコアとして日本の機械産業の最高峰を目指していきたい。なお、経済産業省全体としては、わが国の稼ぎ頭である製造業をいかに応援するかをしっかり考えていきたい。その流れとして、昨年末にまとまった税制大綱では来年度、2.51%の法人税引き下げを決定した。また、再来年にかけて合計で3.3%の引き下げを行う。6重苦の課題もあったが、概ね大きな方向性が出てきている。こうしたことで民間企業の皆様には事業環境を良くして頑張っていただきたい」とあいさつをした。

伊藤源嗣副会長(IHI相談役)の発声で乾杯をした。

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