〈年頭所感〉日本工作機械工業会/日本機械工具工業会/日本工作機器工業会

「次世代工作機械の研究開発や国際標準化への戦略的活動を推進」
●日本工作機械工業会 会長 花木義麿

 2016年の新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げます。
世界経済は、中国の経済成長の鈍化や地政学的リスクの高まりなど、一部で景気の先行きに不透明感が見られます。しかし、我が国の経済は異常な円高の是正による企業収益の改善を背景として、総じて緩やかな回復基調にあります。
 
 昨年の工作機械の受注動向を見ますと、省エネルギー設備導入補助金や生産性向上設備投資促進税制等の政策の後押しもあって内需が盛り上がり、外需も自動車産業向けを中心に高い水準で推移しました。この結果、受注総額は1兆5,000億円程度に達したものと見込まれます。本年も引き続き堅調に推移していくことが期待されます。

 今、世界各国において、製造業の技術革新が強力に進められています。ドイツのIndustrie 4.0や米国のIndustrial Internetなど、スマートファクトリーの実現に向けた取り組みが推進されています。日本では、ロボット革命を軸に製造技術の革新が進んでおります。

 世界の主要工作機械見本市において、IoTを意識した機械や、Additive Manufacturing技術と融合した工作機械も見かけるようになりました。工作機械のイノベーションは日進月歩であります。日本も産学官の英知を結集して技術の高度化を図り、世界のものづくりの発展に貢献していかなければならないと強く感じております。我が国工作機械業界の競争力強化に向け、日工会は昨年設立した「加工システム研究開発機構」を中心に、革新的な次世代工作機械の研究開発や、国際標準化への戦略的活動を推進して参ります。

 本年11月17日から東京ビッグサイトにて開催致しますJIMTOF・Tokyo 2016では、永年の懸案であった展示スペースが拡張されます。一段と多くの出展を募り、国際色豊かな充実した展示会とすべく、万全を期して参ります。
 
 来場者の皆様にご満足頂ける、最新の技術、製品を各社から提案して参ります。企画展示やセミナーを通じて、一般の方々に工作機械産業の重要さ、面白さをご紹介致します。また、理工系の学生を対象に恒例の「工作機械トップセミナー」を催します。
世界のものづくり産業の繁栄に貢献すべく、日本の工作機械業界は本年も諸活動に鋭意取り組んで参ります。

 関係各位にはご指導、ご鞭撻と更なるご支援を賜りますようお願い申し上げます。
平成28年が皆様にとって大きな飛躍の年になることを祈念致しまして、年頭のご挨拶とさせて頂きます。

「世界需要を取込んでいくことが必然的な流れである」
●日本機械工具工業会 会長 本間博夫

 平成28年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。平素から、関係各位のご支援、ご協力に対し、心から感謝申し上げます。

 昨年は、各会員、経済産業省、事務局のおかげもあり、旧・超硬工具協会と旧・日本工具工業会が67年の歳月を経て統合を果たしました。今回、初めて統合後の新年を迎えましたが、この短い間にも、各員が、試行錯誤しながら運営してきたことについては、非常に頭が下がります。今年も引き続き活発な活動をおねがいしたいと思います。

 さて、新年に際し、どのように当工業会のプレゼンスを更に向上させるのか、いくつか課題を挙げたいと思います。

 まずは、現状認識として、当工業会の足下の状況について触れますと、今年度の出荷規模は4,760億円と、昨年度の4,553億円から、約4.5%伸長する見込みに対しまして、輸出比率は33%から34%と、1ポイントしか伸びていない、内需頼みの出荷構造になっております。しかしながら、日本国内の中長期的な需要構造の変化を見てみますと、自動車メーカー各社が、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などのモーターで駆動する環境対応車の開発にしのぎを削っており、航続距離は、エンジン車と遜色のないレベルまで向上してきております。エンジンがモーターに切り替わっていくことで、これまで工具の主戦場でありました、エンジンやトランスミッションの需要が、確実に減退していくものと思われます。

 一方、世界の工具需要は、約2兆円規模と推定されるなかで、当工業会のシェアは20%台前半であり、海外には、まだまだ需要があると考えられます。この需要を取込むため、当工業会発足時の大きな目的の一つとして、会員の国際化を掲げ、国際委員会を新設しました。

 また、昨年、国産の小型ジェット機MRJが初飛行を果たしました。戦後初の国産飛行機YS11が飛んでから約半世紀が経ち、ものづくりに携わってきた私自身にとっても、非常に感慨深いものがあり、今後ますます、日本の航空機産業は、拡大していくものと思われます。
航空機の機体や部品は、炭素繊維強化プラスチックや、インコネル材を中心とするニッケル基合金など、難削材の塊であり、自動車部品と比較しますと、加工能率はまだまだ低い状況です。言いかえれば、工具における技術革新の可能性が大きく残された分野であるとも言えます。当工業会で、まずはJISへの規格化、更にはISOへの規格化を進めることで、この分野で日本の工具が世界の標準となることを目指していきたいと考えます。

 以上のように、世界需要を取込んでいくことが、必然的な流れであると思っておりますし、そのサポートができる工業会でありたいと思っております。

 最後になりましたが、当工業会への更なるご指導、ご鞭撻をお願いし、年初のご挨拶とさせていただきます。

「ダイナミックなイノベーションを大胆なスピードで成し遂げることが大事」
●日本工作機器工業会 会長 寺町彰博

 あけましておめでとうございます。
 年頭に際し、所見を述べさせていただきます。

 昨年の世界経済は、前半は先進国がけん引役となり緩やかに回復しましたが、後半には中国経済の減速が世界経済へと波及しました。さらにギリシャを始めとした南欧問題の再燃、イスラム国の活動の活発化といった地政学リスクなど、これまで世界経済にくすぶっていた不安定な要素が具現化し、先行きに不安な影を落とした1年となりました。

 日本に目を向けますと、企業収益の回復により堅調に推移していた設備投資が中国経済の不透明感などを背景として慎重化したことなどにより、経済は低調に推移しました。一方で、リニア中央新幹線の本格的な着工、そして国産の小型ジェット旅客機が半世紀ぶりに初飛行を果たすなど、日本の強みである、ものづくりの明るい未来を象徴する出来事もありました。
 
 世界経済の見通しに不透明感が高まっている中、新興メーカーとの競争は激しさを増してきています。さらにインダストリー4.0がもたらす大きな変化に対し、チャンスと捉えるか、遅れをとるかが問われる時代になってきています。一方で、iPhoneの活躍に象徴されるように、より付加価値の高い製品やブランドの価値が再考されてきているのも事実です。そのような中、外部環境に左右されずグローバル競争に打ち勝って成長していくためにも、私たちは「強み」を磨き続けなければなりません。日本の製造業の強みとは、これまで着実に積み上げてきた確かな技術とノウハウによる高付加価値な製品力、そしてそれに裏打ちされたブランド力です。これらの強みを徹底的に磨き、ダイナミックなイノベーションを大胆なスピードで成し遂げることが大事です。併せて低い生産性、脆弱な企画力、スピード感の無さといった弱みは、着実に改善していかなければなりません。これらを成し遂げ、革新的且つ創造的な製品を世に送り出すことができるならば、必ずや日本の部品製造業はさらなる成長を遂げ、グローバル競争の中で打ち勝って行くことができるものと考えております。

 従いまして、当工業会といたしましても、会員の皆様とともに強い信念を共有するとともに、これまで以上に連携を深め、日本の製造業の発展に寄与できますよう、積極的な活動を展開してまいる所存です。
 
 最後になりましたが、会員企業様の益々のご発展と皆様のご健勝とご多幸を心より祈念し、年頭の挨拶とさせていただきます。

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