DMG MORI「IGA INNOVATION DAYS 2017」が大盛況のうち閉幕 ~世界初披露のマシンも展示~

 DMG森精機(社長=森 雅彦氏)が6月20日(火)~6月24日(土)の5日間、同社伊賀事業所でプライベートショー「IGA INNOVATION DAYS 2017」を開催し、約9,000名の来場者で賑わった。

 世界最大のショールームである「伊賀グローバルソリューションセンタ」をメイン会場に、最新鋭の工作機械約60台の展示に加え、各分野の専門家による「技術セミナー」や70社以上のパートナー企業の出展、5軸加工体験や工場見学など様々なイベントで来場者を魅了した。

 

10年おきに技術革新が起きている

 開催初日には、テクニカル記者会見が開かれ、森社長、DMG MORI AG Chairman of the Executive Board Christian thönes氏によるプレゼンがあった。

 森社長は、会見の席で、「われわれは10年おきに技術革新が起きている」と話し、その歴史を次のように述べた。

 「1950年に最初の数値制御式工作機械がアメリカのマサチューセッツ工科大学で発明された。1960年にプログラミングの概念が工作機械の中に置かれるようになった。70年代になり、初期の数値制御装置が出来て、この時期に100社近い数値制御装置メーカーが誕生している。私どもは79年に上場し、当時、日本では最大の数値制御旋盤メーカーとなることができた。80年代になると、立形のフライス盤に数値制御装置とATC装置が付いて、立形マシニングセンタができた。85年を中心にMV-Juniorと呼ばれる40番テーパのマシニングセンタをつくったが、日本で大ヒットとなった。この時に二部上場から一部上場となり、立形マシニングの生産台数は日本で一番になった。90年代になると、横中ぐり盤等に数値制御装置とATC装置が付いて、横形マシニングセンタになり、これにLPP装置が加わり、横形マシニングブームが起こった。特に第一次半導体ブームとあいまって、真空装置のチャンバー等を削り出すために世界中で横形マシニングが売れた。2000年代になると制御装置とサーボモータの技術との摺り合わせの技術がさらに進化し、旋盤とマシニングセンタが一緒になったミルターンが一般化、現在のNTシリーズ、CTX TCシリーズが良く売れており、2000年から2010年まではミルターンの時代だった。現在は医療器具の生産等にこの装置は使われている。2010年以降は、同時5軸の加工機が登場し、CPUとメモリの発達によって、CAD/CAMと機械は完全に一体化、サーボの精度も上がり、回転軸等が精密に剛性も高いものとなった。現在は、自由自在に動く主軸を用いてギアの加工やタービン形状の加工等、従来は専用機で限られた形状しかできなかったものが、設計者が3次元CADで描いた自由自在な曲面を自由自在に再現することが可能になっている。まさにデジタル技術と機械の技術が完全に一体化しつつあろうとしているものである」

大勢の来場者で賑わった
大勢の来場者で賑わった
 今後の10年、2020年以降、製造現場で何が起こるのか。
 森社長は未来の加工について、「今回の展示しているアディティブマニファクチャリング、切削加工と付加加工の良いところを合わせた技術が出てくるだろう。またミルターンの自由自在に動く軸を使って従来不可能といわれていた様々な形状のものを素早く削ることが可能になる。また、個々の機械で処理していたものが、より速く繋がるインターネットや無線技術等を使って、あたかもひとつのラインが、ひとつの工場が、ひとつの会社が、ひとつの装置のように動いていくような技術が出てくるのではないか。センサーも進化しており、熱が見えるようなセンサーや振動が手にとって分かるようなもの、センサーや計測の技術を合体させたような、見ただけで寸法や温度、表面粗さが分かるようなもの、人間の目に変わるような自動化計測装置が出てくるのではないか。こうしたところの開発は動いている」と話した。

 その一方で、「世の中で生産技術者が不足している」という森社長は、「われわれのお客様が多忙で生産技術にまで手を加えている時間がない。その部分を私どもに依頼されるようになった。この現実をしっかりと受け止めていくことが必要であると考えている」旨を述べ、「全世界でワークの形状がほぼ一緒になってきている。同じ品質のものが世界中で同時多発的に必要とされてきており、加工分野は非常にエキサイティングで素晴らしい成長が見込めると期待している」と明るい見通しを示した。

 DMG森精機の強いところは、社員の多様性があるということだ。ドイツと日本がメインだが、その他の国も合わせて数十カ国の社員が力をあわせて働いている。このことは顧客の多様性を想像することに繋がる。

 目先数年のトレンドについて、森社長は、「自動化」、「5軸化」、「複合化」を挙げた。
 

展示されていたアディティブマニュファクチャリング(AM)機である「LASERTEC 30 SLM」は日本初披露! 工作機械メーカーだからこそのクラス最小のフロアスペースと一体型の材料粉末調整システムによる効率化が強みだ。
展示されていたアディティブマニュファクチャリング(AM)機である「LASERTEC 30 SLM」は日本初披露! 工作機械メーカーだからこそのクラス最小のフロアスペースと一体型の材料粉末調整システムによる効率化が強みだ。
 自動化は、様々な自動化、計測、プログラミング、工具選定、ロボットを付けるような人に変わる自動化等。5軸化については、「技術が良い具合に成熟してきたので、旧来からの専用機を5軸に置き換える時代に来ている。従来複数工程に亘っていた焼き入れ、ワーク全体が歪むような強烈な焼き入れは別だが、局所的にちょっとだけ、例えばベアリングが嵌まるところだけ硬くしたい、ある箇所だけレーザーで表面処理だけ変えたい等の複合化のニーズはたくさんある。アディティブと切削の複合化もさらに普通になってくるでしょう」と述べた。

 しかしながらこれらの“適正である工作機械”は本体や構成要素があって成り立つものである。

 森社長は、「コストありきで、5年10年経つとサービスできなくなるような時代は終わった。偽物安物の時代は終わった」と本物志向の時代が到来したことを歓迎し、「今まで世界最高、とは言わなかったが、今回は、いち工作機械技術者として、本当に良い機械が出来たと心の底から技術者に感謝したい」と新製品開発に携わった技術者にねぎらいの言葉を述べた。

世界初披露のマシンや世界各国から厳選・認定した周辺機器を展示! 新機能も新発表!

世界最高クラスの切削能力を発揮する立形マシニングセンタ 「NVX5080 2nd Generation」 は世界で初めて披露された。
世界最高クラスの切削能力を発揮する立形マシニングセンタ 「NVX5080 2nd Generation」 は世界で初めて披露された。
 今回のIGA INNOVATION DAYS 2017では、世界最高クラスの切削能力を発揮する立形マシニングセンタ NVX5080 2nd Generation の世界初披露、セレクティブレーザメルティング方式を採用したアディティブマニュファクチャリング(AM)機であるLASERTEC 30 SLMの日本初披露、2500mmの長尺ワークに対応するALX2500の参考出品をはじめ、生産性の向上や経営力の強化に役立つ製品や技術として、自動化システムやテクノロジーサイクルのご紹介、品質・性能・保守性に優れた世界各国から厳選・認定した周辺機器を”DMQP”として展示した。

また、近年製造業分野においても注目されているインダストリー4.0/コネクティッドインダストリーズへのDMG MORIの取り組みについて、ショールーム内の機械、ロボットをネットワークで接続してCELOSで管理やモニタリングを行うスマートファクトリの実例を紹介し、来場者を魅了した。

 今回の展示会では、同社の提唱する「テクノロジーサイクル」の新機能となる「島残し・オープンポケット機能」と「文字加工機能」を開発したと発表し、注目を集めた。

 テクノロジーサイクルとは、①機械本体、②切削工具や周辺機器などのオープンイノベーション、③組込ソフトウェア、④CELOSなどのHMI(Human Machine Interface)を融合させた同社の新しいソリューションの形を指す。これを用いることで、これまで専用機や専用プログラム、特殊な工具で行っていた加工・段取り・計測を汎用的な工作機械や標準的な工具・治具などで、誰もが簡単に短時間で素早い立ち上げと高い品質を実現させるものだ。

島残し・オープンポケット機能
 ・ポケット形状内に島形状を提議し、複雑なツールパスでも短時間で変換。
 ・オープン部を提議することで、取り代のない部分のツールパスを省略し最適なパス生成が可能。
 ・エアカットが大きく削減できるため、加工時間を短縮。

文字加工機能
 ・文字加工のプログラミング作成をサポート
 ・直線、円弧の文字配列やイタリック体のフォントなど複数の書体やレイアウトに対応。

DMG MORIの自動化ソリューション ロボットやローダなど9つの自動化システムも展示

 今回同社では、生産性向上に貢献する9つの自動化システムを展示していた。同社では、機械本体だけでなく、機械・輸送装置・周辺装置・生産管理システム、加工技術・治具・工具・測定まで一体となったシステムをワンストップで提供するトータルソリューションを顧客のニーズに合った自動化システムとして提案している。

 優位性は、同社がワンストップでサポートすることで、システム構築までの期間が短縮され、顧客は納品後すぐに量産を開始できることだ。心配な稼働後のトラブルやサポートについても、窓口を一本化しているので、安心である。

 「オペレータが使いやすい」“Smart Machine”、「工場長が管理しやすい」“Smart Factory”、「会社の収益向上に貢献する」“Smart Company”の3つが体感できる展示内容となっていた。

■自動化システム出展機
〈ガントリローダシステム〉
① G 100M|480
・高速ローディングを実現した機械本体と一体型のコンパクトな自動化システム
② ALX 2500 MC|500
 ・モジュール設計により、増設やレイアウト変更が可能な投資価値の高い自動化システム

■ロボットシステム
③ NTX 1000 SZM 2nd Generation
・FANUC社製ロボット「LR Mate 200iD」を搭載したコンパクトな機内走行式ロボットシステム
④ NZX 2000|800 STY3
 ・簡単に設置可能な移動式の「Robo2Go」を搭載したターニングセンタ用ロボットシステム
 ・SELOSの搭載によりロボットの専門知識がなくてもシステムを制御できる
⑤ NRX 2000
 ・安川電機社製ロボット「MOTOMAN-GP8」と世界最速のガントリーローダを搭載したロボットシステム
⑥ NVX 5100|50 
 ・不二越社製7軸ロボット「MR50」を搭載し、モジュールユニットを組み合わせたロボットシステム
⑦ CMX 600 V
 ・モジュール設計により増設やレイアウト変更も可能な投資価値の高いロボットシステム

■パレットハンドリングシステム
⑧ NHX4000 2nd Generation
 ・多品種少量ワークの自動運転に最適なラウンドパレットプールシステム(21面パレット搭載タイプ)
⑨ NHX5000 2nd Generation
 ・長時間の自動運転を実現するリニアパレットプールシステム(24面パレット搭載タイプ)

 同社は、「グループの総合力を結集して最新の技術動向にも迅速に対応し、生産性の向上や経営力の強化に役立つ製品や技術を通してお客様とともに前進していく。会期中に来場者から頂いた貴重なご意見、ご感想は、今後の製品開発やサービスサポートの充実につなげていく」としている。

 

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