持続可能な宇宙空間へ! 宇宙ゴミの除去サービスを開発するアストロスケールがANAやオーエスジーなどから約28億円を調達 ~グローバル展開に向けて民間企業と資本提携~

 宇宙機の安全航⾏の確保を⽬指し、スペースデブリ(宇宙ゴミ)除去サービスの開発に取り組むアストロスケール (本社:シンガポール、創業者兼CEO=岡⽥光信氏)が、7月14日、既存金融投資家に加え、ANA ホールディングス(社⻑=⽚野坂真哉氏)、オーエスジー(社⻑=⽯川則男氏)などから、2500万ドル(約28億円)の出資を受けたと発表した。

 現在2つの人工衛星を開発するアストロスケールは、来年初旬までに微少デブリ計測衛星「IDEA OSG 1」を、2019年前半にデブリ除去衛星実証機「ELSA-d」の打ち上げを予定している。今回の資金調達により、英国子会社の設立・拡充に加え、グローバル市場へ対応するとしている。同社では新たなマネジメント体制のもと、国際競争力を高め、宇宙協力分野のさらなる拡大を目指す。

 アストロスケールの岡田CEOは、会見の席上で、従来、スペースデブリ問題が解けなかった理由について、「技術やビジネスモデル、世界的な枠組み・規制をどうするのかが解けなかった。アストロスケールは4年経ってこれらの問題を解く道筋を見つけた。あとは実行あるのみ」と話した。

 現在、交通管制、天気予報等にも必要なのは衛星だが、こうした宇宙産業の発展に伴い、宇宙ゴミ(デブリ)問題が深刻になっている。役目を終えたロケットや人工衛星は、宇宙空間で衝突し、さらに細かくなったデブリが増えていく。岡田CEOは、「宇宙空間には、1センチ以上のデブリが軌道内に約75万個存在し、地球の軌道上の衛星や宇宙機を脅かす深刻な問題となっている」と述べ、「宇宙はこのままいくと持続不可能になる」と危機感を示し、デブリ除去サービスの必要性を訴えた。同社では、ビジネスモデル、技術、規制・条約を同時に解決する民間企業の立場から、同サービスの技術実証や事業化を促進している。

 宇宙飛行士の山崎直子氏も応援にかけつけ、デブリの恐ろしさと危険性について語ったあと、「日本の技術が、今後全人類のためにある宇宙とより良くしていくことを期待している」と声援を送った。

 長峯豊之ANAホールディングス副社長は宇宙にかける思いと今回の経緯について、「ANAグループは2015年に、今後の10年を視野に入れた長期戦略構想を発表した。次は宇宙へ、というフレーズを書かせて頂いた。この先10年間でエアライン事業としてやれることは全てやりきる、そうした成長戦略を描いた上で、次にあるのは宇宙だということを当時グループ全体に発信した。ANAは創業してから今年で65年になるが、この間、培ってきた航空機の安全かつ安心なオペレーションにおいての経験とノウハウは今後拡大していく宇宙事業に活かせるのではないか。そんな思いのもと、今回参画をさせていただいた」と述べた。

 大沢二朗 オーエスジー常務は、「オーエスジーは製造業の根底を支える切削工具を製造している企業だが、今から2年前にフランスで岡田CEOに出会い、宇宙のゴミが大変なことになっていると知った。現在、ものづくりの業界は大きな変革期を迎えている。自動車業界を例にとると、従来ガソリンエンジンだったものは今後、EV化されるだろう。今まで当たり前だったことがなくなり、今まで無かったものが生まれてくる。それが宇宙産業だと思っている。弊社は製造業でありファンド会社ではない。われわれは宇宙産業の架け橋でありたいと思っている。大きな夢をみなさんと一緒に目指していく」と宇宙産業への思いを話した。

 アストロスケールの岡田CEOは、「デブリ除去サービスは、宇宙利用の持続性確保に加え、宇宙空間における運行管理に不可欠である。ANAの長年にわたる安全運行を堅持する知見や、グローバル市場を手動するエアライングループとしての経験を事業へ活かしたい。また、世界33カ国に拠点を構え、自動車・航空機産業をはじめ、世界のものづくりを支えてきたオーエスジーは、高品質な切削工具の提供のみならず、デブリ除去衛星の量産に多大な貢献をもたらす」との考えを示している。

 

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