【トップインタビュー】70年以上の歴史を誇るユキワ精工 酒巻弘和社長に聞く 

171218top

 ユキワ精工(社長=酒巻弘和氏、住所:住所:新潟県小千谷市千谷2600-1)は、1946年に祖父の岩雄氏が創業、以来ドリルチャックの製造から始まり、コレットチャック、ツーリングシステム、CNC円テーブルといった製品の開発や製造、販売事業を続け、70年以上の培われたノウハウを駆使して新製品の開発や専用機の自社開発に注力している。
 
 そんな歴史あるユキワ精工が本年6月、前社長の和男氏(現会長)からタスキを受け、弘和氏が社長に就任した。同社の経営理念は「和をもって一致協力する」。100年企業を目指して、顧客の生産性向上に貢献するための努力を惜しまない。酒巻新社長に今後の意気込みを伺った。

全てはドリルチャックから始まった

171218top1 ―本年6月に3代目の社長に就任されましたが、貴社は70年以上、この雪深い小千谷の地で高い技術力を育んでいます。
 酒巻 私の祖父は終戦前に、理研コンツェルンといわれている企業の中で勤めていました。現在、小千谷が特定分野で高いシェアと技術力を持つ企業が豊富である、というのも、昔は織物関係が発展していて、機械を扱う方達が多かったという地盤があったようです。弊社は理研さんから独立したのですが、戦争の時に疎開してきた企業も発展を遂げています。終戦後に独立して、当時はグラインダーもボール盤も製造していた祖父は、ものづくりのなんでも屋さんに近い存在だったのだろうと思います。当初は苦労も多かったようで、必要に応じて製材機等もつくったようですが、今度はお金が回収できないとか(笑)
 ―そこでドリルチャックにたどり着いた。
酒巻 そうです。そこで祖父が目を付けたのが“ドリルチャック”でした。「これだったら日本一になれるかもしれない」といって始めたと聞いております。
 ―そこから発展していったのですね。
 酒巻 ドリルチャックに落ち着いたあと、社内設備を内製化しなければということで、コレットチャックをつくりました。今度は自動化するための設備の一部である円テーブル/割出台が必要になったので製造することになりました。コレットチャックはツーリングシステムにも応用し、現在製造現場に貢献をしています。全てはドリルチャックからスタートしているんですよ。社内で使っていた設備を市販化していったのです。
 ―3代目の社長に就任して半年が過ぎましたが心境の変化はありましたか。
 酒巻 会長である父が社長業をしていたのは29年間でしたが、実は父が社長になる前から専務という肩書きで実質、社長の仕事をこなしていたんです。私も同じで、社長を就任する前は常務という肩書きでしたが社長業に近い業務内容でした。常務のときにも責任を持っていたつもりですから、社長になってから、といってその点はまったく変わっておりません。しかしながら、ひょっとしたらこれから想像を超えることが起こる可能性もありますし、まだまだ未知の世界が広がっているので頑張っていきたいと思います。現在会長が健在ですし、なにか分からないことがあれば聞けば良いので、その点私は恵まれていると思っています。
 

仰天! ユキワ精工のコレットはこんなところにも使われている!

171218top3今年10月に開催されたMECT2017のブースにて。多くの来場者が足を運んだ。 ―現在業界も活況が溢れており、ご多忙な印象を受けます。
 酒巻 私は出張も多いので週末に会社の机の上を片付けなければならないこともありますが、何もしない日もあります。案外、出張であちこち行ったりするほうが気分転換になるのです。仕事につながるヒントはフとしたところにあると感じており、色んな方とお話しすることは私にとって良い刺激になります。
 ―技術を売る、ということは難しいことですが、その点どうお考えですか。
 酒巻 一般消費材ではないわれわれの製品の良さを知って頂くということは、実際にご使用して頂かなければ伝わらないこともあります。どうやって売るのか、と考えたときに、社内には大ベテランも新米もいます。売るのは同じ製品でも相手に訴求するための説明内容にバラつきが出ないようにすることも難しい。そこで弊社では、社内研修を設け、その点をクリアにするべく頑張っています。
 ―最近はコレットチャックも専用カタログを製作し、奮闘ぶりが窺えます。
 酒巻 コレットチャックは実に面白い製品で、50年以上も製造販売をしておりながら、ダイヤモンドの原石のような部分がある。メインのお客様は自動車部品等で活躍されている方ですが、最近増加しているのがコンタクトレンズを磨くためのレンズをキュッと掴むコレット。他にも医療系の部品加工に使用する小型マシンに使用されるものから工具を掴むものまで、用途は広がります。われわれが気付かないような用途がたくさんあると感じているので、どの産業でも高い精度を維持するような製品で貢献していきたいですね。そのためには常にアンテナを張り巡らせ、敏感にニーズをキャッチするようにしたいと思っています。
 ―モノを掴むというのはあらゆる製造工程に必要ですから、貴社の製品は私たちの知らない業界でも貢献しているのでしょうね。
171218top4社内が一丸となって販促活動に注力。写真左下にある黄金の丸にあるのは同社の人気製品「スーパーG1チャック」。このシールを名刺に1枚1枚貼る。 酒巻 皆様はご存じないでしょうけれど、弊社では“ホタテコレット”もあるんですよ。
 ―ホタテ!? 
 酒巻 ホタテ貝は海の中で紐を付けて泳がせるので、ホタテ貝に糸を通すための穴を開けるマシンがあるんです。そのコレットは当然、海水にも錆びないものが必要になります。ユキワ精工といえば、ツーリングシステムのほうがイメージしやすいでしょうけれど、こうした用途もご相談に応じながら製作しています。
 ―最近仕事を通して嬉しかったことはありますか。
 酒巻 印象に残っているのは、昨年のJIMTOFの時に、あるお客様が弊社のブースに訪ねて来られ、「ぜひ挨拶をさせてください」と仰いました。「ユキワさんのホルダーを使って本当に助かりました」とお礼を言われたのです。そのためにわざわざ立ち寄って下さったことは本当に嬉しかった。ありがとう、のパワーは凄いんです。われわれのモチベーションも一気に上がりました。そこで感じたことは、「われわれの製品を使っていない皆様も使えばいいのに」ということ(笑)この件について私は本気で思っていますから、余談ですが自分の名刺に商品を示すシールを1枚1枚、売れろ売れろ、と念じながら貼っています(笑)熱意は気持ち。気持ちの部分はビジネスにおいても重要な要素だと考えています。

「誇れる人材」、「誇れる工場」、「誇れる製品」

 
171218top5平成29年新潟地区QCサークル発表大会で聴講者が最も感銘を受けた会場特別賞を受賞。 ―貴社の優位性について教えてください。
 酒巻 「誇れる人材」、「誇れる工場」、「誇れる製品」の3つです。われわれの会社がある小千谷市にとっても、製造業は有利な職業だと思っています。人材の点から申しますと、現在、熟練技能者の減少により製造現場では技術力の低下や技能・技術継承が危惧されていますが、優良企業が集中しているこの地域には、こうした課題に対応する組織、「テクノ小千谷名匠塾」があり、技能者を育成しています。ここで国家技能検定を受けてもらいます。国家の技能検定ですから、仕事の中でスキルアップができます。1級を持っていれば、あってはならないことですが万が一、行き詰まったときに隣の会社が面倒を見てくれるでしょう。私も1級を持っている優秀な人材がやってきたら採用します。なので、弊社の社員には「自分を守るためにも60才までに1級を取りなさい」と言い続けています。
 ―そこで優秀な人材が在籍している誇れる工場につながるわけですね。
 酒巻 メーカーにとって工場は“顔”だと思っています。お客様は工場に入っただけで「この会社は信用できるかできないか」と判断します。製造業の皆様はこういうところに敏感で、工場に入った瞬間、なんとなく分かるものです。ですから、お客様が工場に入った瞬間に、安心できるような空間にしたい。そのために工場自体をショールーム化し、どこからどうみてもお客様に納得して頂ける形にしていけたら、と現在注力している最中です。
 ―誇れる工場がつくり出すのは、誇れる製品ですね。
 酒巻 誇れる人材が工場で最高の製品をつくっていく。メーカーであるわれわれは当然、品質の取り組みについて厳しいのですが、ひとつ目線を変えてみると、考えなければならないこともあります。
 ―それはどういうことでしょうか。
 酒巻 例えば中国等の製品と比較すれば、品質が良いと言われます。相手との差が大きければ「ユキワ品質は良い」と言われるし、相手の品質が上がれば、いずれ、そうも言われなくなるでしょう。そこで、われわれのスタンダードな部分を強化するべく、すでに社内で30年ほど前から「QCサークル活動」をおこなっています。お陰様で、平成29年新潟地区QCサークル発表大会では、聴講者が最も感銘を受けた会場特別賞には、弊社の“もやしモンサークル”が受賞しました。弊社には自主的に製品の品質管理や作業能率の改善などのためにアイディアを出し合い議論するこのQCサークルが30サークルほどあり、こうした社員の活動成果も製品造りに大いに役立っています。
 ―ありがとうございました。