碌々産業が満を持して微細加工市場に新機軸を投入! 微細加工機のあるべき姿を形にした『Vision』とは!?

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静岡ショールーム内にて。画面左がVision。
 碌々産業(社長=海藤 満 氏、本社:東京都港区4-23-5)が、微細加工市場に新機軸のマシン『Vision』を投入した。微細加工機の革新的マシン『MEGA』を市場投入したのは1996年。以降、1号機の開発から通算で1000台を超えるMEGAを微細市場に供給し続けており、20年以上ベストセラー機の地位を確保している。2010年にはMEGAの上位機種として『Android』を市場投入、さらにその上位機種として2016年のJIMTOFでは次世代微細加工機『P12-C Genesis』を発表し、大きな注目を浴びた。同社の“高精度微細化へのシリーズ化”はここから始まっている。

わたり加工にサヨナラを! 碌々が考える汎用性

180508top1INTERMOLD(大阪)で展示された「Vision」 ベストセラーのMEGAが市場投入されてからというもの、加工現場からは「もう少し大きな微細加工機が欲しい。」というニーズがあった。その要望に応えるように『CEGA』を開発したのは2000年のこと。それから18年の時を経て、今春、大型微細加工機の市場ニーズに応えた『Vision(ビジョン)』が満を持して誕生した―――。

 Visionとは、将来の展望や先を見越す力を示す言葉によく使われるが、今回、新しいマシン名について、「われわれが求める微細加工機のあるべき姿を形にするという意味が込められています。」と話す海藤社長。φ16エンドミルによる重切削から鏡面仕上げまで1台で加工できるマシン、汎用性のある微細加工機が今回の開発コンセプトだという。 

180508top2展示会では加工サンプルが並ぶ。あまりの美しさに来場者も魅了される。 荒加工・中仕上げ加工・仕上げ加工を1台でこなせるマシンというと、“わたり加工”を可能な限り少なくできるマシンを実現したことになる。わたり加工とは、例えば重切削用のマシンで加工をして、その後に中仕上げ、そして仕上げ要の加工機に・・・という具合にワークを載せ替えていくことを意味するが、クランプしてアンクランプ、また掴み直す、ということを行わなければならず、この過程で精度が損なわれてしまうことが悩ましい。このような悩みを解決するためには、1台で加工を終えることが望ましいとされている。もちろん複数台のマシンも必要ない。

 海藤社長は、「1台で加工が済めば理想です。2台も高価な機械を購入する必要もありません。理想のマシンを具現化するため、こうした課題を踏まえつつ、今回、微細加工のあるべき姿を表現したVisionの開発に至りました。このマシンは、従来、困難といわれていたことを覆し、ユーザーのお声を反映して開発したマシンなのです。」と開発の背景について話した。

 このマシンは、加工機の状態と設置環境などを監視、表示、蓄積して見える化の実現を図った「M―Kit」を搭載して、現場のさらなる高精度化をサポートし、さらにネットワークを通じて微細加工がスムーズに行われる環境をユーザーとメーカーがキープするシステム『RCMS(ROKUROKU CLOUD MONIITORING SYSTEM)』にも対応できるというのだから心強い。φ16エンドミルでガリガリ削れたうえに鏡面加工までできてしまう、という一見、相反する難しいことを『Vision』1台で対応できてしまう汎用性こそ、『Vision』の強みなのだ。

180508top3ピカピカの加工サンプルが微細っぷりを物語る。 このマシンのスペックは軸移動量(X/Y/Z):650×550×300mm。ツールシャンクはHSK-E40。3万回転で15kW、20馬力という強力なパワーを持つ。主な特長は、全軸リニアモータ駆動、超精密特殊直動ガイドであること。

 このメリットについて、海藤社長は、「通常のマシンは停止状態からスピンドルを3万回転廻すと発熱によってスピンドルがギューッと伸びます。その伸びが止まった後も揺動してしまうんですね。ですが、Visionは15分でサチュレートしたあと一切揺動しない。Z軸がとても安定しています。また、X軸の変位は1.5ミクロン、Y軸も2.0ミクロン以内に入っており、かなり精度も保たれています。また、縦形マシニングセンタでは真円度で精度を見ますが、このマシンは真円度が0.62ミクロン。通常の旋盤よりも良い結果になりました。」と自信たっぷり

 未来を見据えた『Vision』を世に送り出した今、海藤社長は次の一手についてどんなことを考えているのか。

 「将来的には、さらに複合的な加工、例えばチョッピング機能を駆使したグラインディング加工を加えた複合微細加工機の開発も視野に入れているんですよ。マシニングセンタで仕上げをやろうとすると、延長線上に研削が出てくる。その領域まで1台の機械で済ませてしまいましょう、というのがわれわれの考え方なのです。」と碌々産業らしい返答があった。

180508top4海藤社長と社名の由来である漢詩の一節。「甲等碌々、所謂因人、成事者也」(こうらろくろく いわゆるひとによりて ことをなすものなり)。個人の力と個性が集結し、刺激し合い初めて大きな力と成り得る、との意味がある。 海藤社長が常々発信している言葉の中に、加工機そのものの進化に加え、最適なソフトウェア、最適な工具、最適な加工環境を含めた“四位一体”の考え方がある。一貫して微細加工のレベルアップを追求している姿勢に陰りはない。

 微細加工の市場はでは高密度な微細加工のニーズが生まれている。勘の良い読者の皆様は、同社の微細加工機の歴史が携帯電話とリンクしていることを薄々感じているだろう。妙に大きかったショルダーフォンは、どんどん進化しタブレット式が主流になり、カメラモジュールの精度も良くなった。ちょっとしたデジカメと変わらない画素数まで進化した現在、それに見合ったレンズの金型にとてつもない精度が要求されるようになった。そのニーズを満たすための機械をつくったら、人気機種『Android』ができた。つまり、冒頭に記載したとおり、同社の微細加工のシリーズ化は時代の要請に合致していたといえる。

“R-design”にみるデザインコンセプト

180508top5同社の超精密恒温状態の加工スペース「J-BOX」。安全に機械が作動している様子。呼吸のように点滅する様が美しい。 海藤社長のマシンに対する思い入れのひとつに“美しさ”がある。
 
 「例えばRa3ナノの鏡面仕上げ加工の切削面はため息の出るような美しさがあります。工業製品の水準を超え、工芸品の領域へ踏み込んだ最先端の加工シーンでは、その世界で腕をふるう技術者たちの美しさを愛する心と芸術を解する繊細な感覚。これこそ“マシニング・アーティスト”と呼べる存在だと思います。こうした人たちは、おそらく加工機に対しても厳しい審美眼を持っており、彼・彼女たちの期待に応えるためにわれわれは、手にする道具に感性の領域まで踏み込んだカタチを提供することだと考えます。したがって、求めたのは、美意識に応え、感性を刺激し、加工へのモチベーションを高めるマシンなのです。」と海藤社長。

 感性に響く機能美―――。

 同社はそれを“R-design”と名付け、微細加工機の一貫したデザイン敷くとしている。R-designのRはResound(響く・共鳴する)デザインを指す。

 シャープな彫刻的面構成を持つ基本フォルム。低重心・高剛性を重視したキャストアイアン・ベースドデザイン、そして視認性を高めつつ、動物的な躍動感を醸し出すアーモンドアイスリット&アイライン発光。そして作業者がワークを見やすいよう窓が傾斜という配慮。

 さて、こうしたマシンづくりに、欠かせない人物がいた。

180508top8海藤社長のデッサン。 それが日原左知夫氏だ。碌々産業とのコラボは1993年機械工業デザイン賞受賞の立形マシニングセンタ『KX』からだという。その後、海藤社長のデッサンのもと、『MEGA』のデザイン開発に関わった。つまりは海藤社長のアイデアを具現化しているという頼もしい工業デザイナーだ。海藤社長いわく、「碌々のコンセプトや業界の要求内容も熟知してくれて、私の頭の中を全て読んでくれる方なんですよ(笑)」という。

 海藤社長は最後に、「今回発表した『Vision』は、微細加工機を操り、限りなく微細な加工品を生み出すマシン・プレイヤーのためにつくりあげた機械です。これからも“微細加工機の新しい基準”を世界に発信していきます。」としめくくった。

 なお、『Vision』は、同社静岡ショールームで見学することができる。