「売るのは測定器ではなく生産性」 ~ブルーム-ノボテスト 朝尾信之 日本法人社長に聞く~

 

 

 労働人口の減少を背景に、製造現場では自動化・無人化が急速に進んでいる一方、高品質な製品をつくるだけでは差別化が難しくなっている。安定した品質と高い生産性をいかに両立するかが企業の競争力を左右するなかで、注目を集めているのが工作機械内で加工物や工具を測定する〝機上測定〟だ。

 現在、工作機械市場が好調に推移しているが、機上測定の需要も着実に伸びており、いわば機上測定は工作機械の性能を最大限に引き出す重要な技術となっている。こうした市場ニーズを背景に工作機械の高性能化を支えるキーテクノロジーを保有しているのがドイツに本社を構えるブルーム-ノボテストだ。世界中を飛び回る日本法人社長の朝尾信之氏にお話しを伺った。


設備投資活発化が追い風

 ― 工作機械市場は好調が続いています。機上測定器の需要にも変化はありますか。
 朝尾 まず、受注量そのものが大きく伸びています。今年1月から5月までの受注は前年同期比で約30%増となりました。特に工具長を測定するレーザ測長器は約40%も伸びています。設備投資の拡大に加え、自動化や高精度加工へのニーズの高まりを背景に、機上測定の採用が広がっていると感じています。
 ― 市場の拡大に伴い生産が追いつかない状況でしょうか。
 朝尾 ありがたいことに受注は非常に好調ですが、生産が追いつかず、お客様にはご迷惑をおかけしています。現在は早期の解消に向け、ドイツでも生産能力の増強を進めており、安定供給体制の強化に取り組んでいます。
 ― 好調な受注を支えている要因をどのように見ていますか。
 朝尾 大きな要因は、AIや半導体関連と航空・宇宙・防衛分野の設備投資です。これらはヨーロッパやアメリカに加え、アジアでも活発な投資が続いています。また、工作機械市場全体が好調に推移していることも追い風です。日本工作機械工業会では2026年の受注見通しを上方修正し、2兆円を見込んでいます。こうした市場環境を背景に、工作機械メーカー各社の生産も活発化しており、機上測定機器を供給する弊社は、その恩恵を受けています。機械の高性能化や自動化が進むほど、機上測定の重要性は高まります。その意味においても市場の拡大は単なる数量増ではなく、機上測定そのものへの期待の高まりでもあると感じています。
 ― 日本市場は海外ほどの力強さが見えにくい面もありますが、それについてどうお考えですか。
 朝尾 日本の製造業は依然として自動車産業の影響を大きく受ける産業構造にあります。そのため、市場環境が変化した際には次の成長分野へスムーズにシフトする難しさがあるのではないでしょうか。もちろん自動車産業は日本の基盤産業ですから、今後も重要な位置付けに変わりはありませんが、世界では先ほどお話ししたとおり、AIや半導体関連、航空・宇宙・防衛産業などへの投資が拡大しており、こうした成長分野を取り込みながら、いかに産業の裾野を広げていくかが、日本の製造業にとって重要なテーマになると感じています。
 

INTERMOLD2026(大阪)にてブース内で朝尾社長自らプレゼン。来場者に現場の自動化・効率化のノウハウを提供した

 ― 不確実性が高い時代について企業はどのような備えが必要だとお考えですか。
 朝尾 重要なのは、供給体制をどう確保するかという点です。不確実性というと、景気後退や供給不安などネガティブなリスクに目が向きがちですが、今回のような世界的な需要拡大を事前に予測することも容易ではありません。企業の多くは通常、在庫を抑える経営を進めていますが、その結果、需要が急増した際に供給が追いつかず、大きな機会損失を生んでしまうことがあります。今回、私たちもその難しさを痛感しました。需要があるにもかかわらず十分に供給しきれないことは非常に責任を感じます。今後はこうした〝上振れ〟の局面にも対応できるよう我々も生産改革に取り組んでいます。
 ― 好況時の機会損失も企業にとってはリスクにつながるということですね。
 朝尾 その通りです。在庫を持つことはコストやリスクにつながりますが、一方で需要が急増し、市場で品薄や価格高騰が起きている局面では、製品を安定供給出来ること自体が大きな価値になります。必要な製品であれば、お客様の購買意欲は価格によって左右されにくくなります。もちろん、過剰在庫は避けなければなりませんが、在庫を持つリスクと販売機会を逃すリスクは常に表裏一体です。このバランスをどう取るかが、これからの経営においてますます重要になってくると考えています。

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