日本金型工業会 型種の壁を越え、金型産業の未来を切り拓く――6社連携「NMA」が始動

調印後の様子。写真左上から、カワマタ・テクノス 川又社長、ペッカー精工 小泉社長、マルスン 鈴木社長、日進精機 伊藤社長、左下から、七宝金型工業 松岡社長、日型工業 渡辺社長

 

 日本のものづくりを根底から支えてきた金型産業が、長期的な縮小と構造転換の岐路に立っている。日本金型工業会の資料によると、国内金型産業の生産高は、ピークだった1991年の約1兆9575億円から、2023年には約1兆4333億円となった。統計の集計方法に変更があるため単純比較には注意を要するものの、事業所数と従業者数についても長期的な減少傾向が続く。2023年の事業所数は4321事業所で、その約8割を従業者19人以下の事業所が占めている。

 こうしたなか、日本金型工業会は、型種の壁を越えて会員企業の技術と営業力を結集する「NMA(Next Mold Alliance)」を始動した。日型工業(社長=渡辺隆範氏)、カワマタ・テクノス(社長=川又重雄氏)、七宝金型工業(社長=松岡寛高氏)、日進精機(社長=伊藤敬生氏)、ペッカー精工(社長=小泉秀樹氏)、マルスン(鈴木將生氏)の6社が、それぞれの専門性を生かして連携。プレス、鍛造、鋳造・ダイカスト、プラスチック、ゴムなど、幅広い型種の相談窓口をNMAに一本化し、案件ごとに最適な企業を組み合わせることで、単独企業では対応が難しい案件にも一元管理で応える。信頼関係で結ばれた優良企業6社による型種横断の連携から、金型産業の新たな挑戦が始まった。


NMAとは――型種の壁を越える企業連合 ~価格ではなく、「品質」と「時間」で勝つ!~

 

 アライアンスとは、複数の企業がそれぞれの独立性を保ちながら、技術、人材、設備、営業網などの強みを持ち寄り、共通の目的に向けて協力する企業連携を指す。

 NMAは、日本金型工業会の事業プロジェクトとして発足した型種横断型のアライアンスである。顧客からの相談窓口をNMAに一本化し、案件の内容に応じて、鋳造、鍛造、ダイカスト、プレス、プラスチック、ゴムなど、それぞれの型種を得意とする企業を最適に組み合わせる。受注から製品完成までを一元的に管理し、単独企業では対応が難しい複数型種にまたがる案件や大型案件にも、ワンストップで応える仕組みだ。

 参加企業が一つの会社に統合されるわけではない。各社が培ってきた専門性と経営の独立性を保ちながら、互いの技術、設備、人員を補完し合い、一社の枠を超えた対応力を生み出すところにNMAの特徴がある。この型種横断の企業連携を率いるリーダーは、日型工業の渡辺隆範社長(以下渡辺リーダー)である。

 渡辺リーダーが、金型産業の将来に対して最も強い危機感を抱いているのが、海外メーカーとの競争である。

 海外との競争力を考えるうえでは、品質、価格、納期の三つを切り離すことはできない。しかし、人件費をはじめとするコスト構造が異なる新興国企業に対し、日本企業が価格だけで勝負することには限界がある。国内では人手不足が深刻化する一方、働き方改革に伴う労働時間の制約もあり、短納期への対応も容易ではない。

 そのなかで、日本の金型企業が強みを発揮できるのが、長年培ってきた技術に裏打ちされた品質である。NMAでは、その技術力に加え、参加企業の設備と人員を最適に組み合わせることで、製作期間の短縮を図る。

「例えば、一社では3カ月かかる仕事を、3社で連携することによって1カ月で終わらせる。技術を持つ各社の設備と人員を最大限に活用すれば、新たに設備や人員を増やす必要もありません。これまで3~4カ月かかっていた金型の製作期間をできる限り短縮し、お客様には、いわば〝時間を買っていただく〟方向へ持っていきたいと考えています」

 価格の安さではなく、高い品質と納期短縮によって顧客に新たな価値を提供する。渡辺リーダーの言葉からは、日本の金型産業が世界で生き残るためのNMAの戦略が見えてくる。

約500人以上の人材と30人規模の営業力を結集

「各社が持つ技術、人材、設備、営業力を一つの競争力として束ねることがNMAの狙い」と渡辺リーダー

 NMAの狙いは、単に参加企業の間で仕事を融通し合うことではない。型種や企業の壁を越え、各社が持つ技術、人材、設備、営業力を一つの競争力として束ねることにある。

 参加6社の従業員を合わせると約500人に上り、営業職も約30人を数える。個々の企業では営業できる地域や市場に限りがあっても、NMAとして連携すれば、顧客との接点を大きく広げることができる。高い技術力を持ちながら、企業規模や営業体制の制約によって、その力を十分に市場へ届けられなかった日本の金型企業にとっても、新たな可能性を示す取り組みとなる。

 すでに参加企業間では、それぞれが対応できる型種や保有設備の情報を共有している。今後は営業担当者を含めた交流会も開き、技術と営業の両面で相互理解を深めていく方針だ。

「6社を合わせると約500人の人員がおり、営業職も30人程度の力があります。NMAとして連携することによって、これまでの枠を大きく広げることができます。型種や設備に関する情報は、すでに共有できています。今後は営業職を含めた交流会も開き、技術交流を深めていきます」(渡辺リーダー)

 各社の得意分野を持ち寄り、案件に応じて最適な技術、設備、人材を組み合わせる。NMAは、個々の企業の規模を超えた〝ひとつの金型企業〟としての力を備えようとしている。

海外拠点もNMAの力に――将来は「株式会社NMA」も!?

 NMAの活動領域は国内にとどまらない。参加企業は3~4カ国に海外拠点を持っており、渡辺リーダーは、それらの拠点も含めてNMAの事業基盤だと捉えている。すでに海外案件の相談も入り始めているという。

「海外拠点は、それぞれの参加企業が持つものですが、そこも合わせてNMAだと考えています。最終的には、それぞれの会社が世界的なメーカーになればいい。将来は『株式会社NMA』という形になってもよいと、私は考えています」

 国内金型企業の力を束ね、単独では対応が難しかった大型案件や海外案件へ挑む。NMAが目指しているのは、受注を分け合うための緩やかな連携ではない。約500人の人材、約30人の営業力、各社の設備と海外拠点を結び、日本の金型産業が世界で戦うための新しい事業体をつくることである。

 金型は、完成品の表舞台に姿を見せることは少ない。しかし、同じ品質の製品を安定して生み出す量産技術の根幹であり、日本の製造業を足元から支える存在だ。金型産業の弱体化は、一業界だけの問題ではない。国内で製品をつくり続ける力そのものの衰退につながる。

「日本に製造業がしっかり残っていく足がかりをつくりたい」

 渡辺リーダーが掲げるこの言葉には、NMAに参加する6社だけでなく、日本のものづくり全体に対する強い危機感と覚悟が込められている。企業と型種の壁を越えて結集した6社の挑戦が、金型産業、そして日本のものづくりの未来を力強く切り拓いていく。
 

MOLDINO