ダイジヱット工業に聞く「高能率加工」

写真左から井川課長 木村主査
写真左から井川課長 木村主査
自動車や航空機、家電、通信機器など、われわれの生活を豊にする製品には部品が必要であり、この部品には切削加工が必要不可欠。そして、これらの製品を支える部品の数々に、国際競争力の強みである“加工技術”が詰まっている。
各種切削工具や耐摩耗工具、それらの超硬合金素材を世界中に供給しているダイジヱット工業の強みは素材・製品の開発に加え、原料粉末の調製から最終製品まで一貫して社内生産を行っていることだ。
フレキシブルな生産体制と高い品質で加工現場の信頼も高い同社が、このほど新製品をリリースした。

近年、材料も多様になっている。材料が変わると工具寿命も変わってくる。消耗品である工具寿命はとても気になるところだ。能率のいい工具で加工コストを削減するための秘策を加工現場は常に考えている。

今回、一般鋼加工でもテーブル送り10mの高送り加工を実現した『QMミル MPM形』は、小径多刃物モジュラーヘッドは小型チップ仕様で、刃先交換式ながら最小径φ10で2枚刃、φ32で8枚刃の多刃仕様。高速・高能率加工が可能になった。

「独自の3次元形状を有した低抵抗形チップと多刃仕様で小型サイズでも能率よく加工ができるようになりました。BT30の小型マシニングセンタにも対応しています」と話すのは、同社の営業部販促課課長の井川貴夫氏。

低抵抗・多刃使用で高速高能率加工が可能
低抵抗・多刃使用で高速高能率加工が可能
「防振効果に優れたオール超硬シャンクアーバ『頑固一徹』との組み合わせで、嫌なびびりもありません。高能率加工はもちろんのこと、チップの超寿命化を実現しました」(井川氏)

チップバリエーションも豊富で、ホルダが共有でき、1本で高送り+肩削り加工が可能なことも嬉しい。チップ材種には、汎用性が高く、一般鋼から高硬度材、チタン合金・耐熱合金等の難削材まで対応可能な新PVDコーティング材種「JC5118」および断続切削に最適なPVDコーティング「JC8050」を採用している。
「QMミルは低抵抗。切りくず排出量がスムーズで切削熱の発生も少ない。高送りでもびびりなしです」(井川氏)


優れた切りくず処理性を発揮!

工具寿命を延ばす秘訣のひとつに高剛性かつ耐久性に優れる『G-Body(ジー・ボディ)』がある。この製品は耐熱性に優れた強靭性鋼+表面のGN処理により、表面硬さ65HRC以上と高硬度かつ熱変位に強く、本体耐久性や工具寿命を従来他社製品比30%以上アップしている。
「過酷な加工条件にも威力を発揮するうえ、切りくずの溶着や錆の発生を抑制する効果もあるんですよ」(井川氏)

この“頑固”な『G-Body』の製品開発の背景には突き出し長さが短い(50㎜以下)加工や荒加工時の切りくず噛みこみによる破損対策があった。良い工具でクオリティの高い製品を生み出してして欲しいというメーカーの願いがあるのだ。

切りくずといえば、軽~重切削の広い領域で優れた切りくず処理性を発揮するステンレス鋼旋削加工用『SZブレーカーチップ』もこのほど新登場した。この製品は、新開発の耐欠損性に優れた専用母材料と高速切削・境界摩耗に強い新CVDコーティングJC525Xを採用している。

SZブレーカーチップ
SZブレーカーチップ

「上下面のコーティングを除去することでホルダとの密着性を向上させました。振動を抑制することにより超寿命化を実現しています」と話す同部署主査の木村聡氏。形状にも独自の技術が詰まっている。

切れ味と耐欠損性を両立させているのは切れ刃5°のポジティブランド。急角度のブレーカ斜面は広い領域で良好な切りくず処理性能を発揮する。広いブレーカ溝は切りくず詰まりを防ぎ、スムーズに排出する仕組みだ。ステンレス鋼の切削速度Vc=150m~250m/minでの高速切削時に工具の長寿命を示し、連続加工のみならず強断続加工にまで対応する。

ところで、切削工具の寿命を左右するのは形状の他にもコーティングがあるが、同社のコーティングにも注目したい。
今回新たに発表された新材種である『CVDコーティング JC525X』だが、耐熱性の高いコーティング皮膜と靭性の高い超硬母材料が特長だ。

TiN層
特殊表面処理により溶着を防止。

α-Al₂O₃層
耐熱性と耐酸化性に優れ高速加工を可能にする。

TiCN層
高い耐摩耗性と耐欠損性で境界摩耗を抑制。

超硬母材
靭性の高い母材料がチッピングを抑制。

CVD皮膜の残留応力を減少させる処理を行うことにより、コーティングの耐剥離性を向上。それに伴い、耐欠損性もさらにアップしている。

独創性と高い技術力で加工現場に貢献するダイジヱット工業。今後もユーザーの課題解決に独自の製品開発をもって応えるとしている。

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