ジェイテクトが低トルク・高耐摩耗性ボールハブユニットを開発
ジェイテクト(社長=安形哲夫氏)は、軸受事業のブランド「Koyo」に新たにタグライン「Key of your operation」を設定し、「お客様とともに課題を解決し、嬉しさを提供するパートナーとしてあらゆる産業に貢献しています」をテーマに掲げているが、このほど軽自動車からSUVまでの幅広い車種向けに、従来よりも大幅な低トルク化を実現し燃費向上に貢献するとともに、寒冷地での車両輸送時の耐摩耗性能を大幅に向上したホイール用ボールハブユニット(以下、HUB)を開発した。
HUBは、自動車のホイールを支える軸受として使用されている。自動車業界を取り巻く環境として、グローバルな燃費・CO2規制が継続して強化されており、同社では、HUBのトルク低減による、燃費向上への貢献を目指した。
HUBは、「円滑にタイヤを回転させる機能を持つ軸受」と「タイヤに掻き上げられた泥水を軸受内部に浸入させないシール」とで構成されており、トルク損失として「①軸受転がり抵抗」と「②シール摺動抵抗」とがある。今回開発品は、これらの抵抗を低減するために、特にグリースとシール形状に着目している。
グリースに関して、軸受部については、これまで基油に鉱油を使用していたところを、低粘度合成油へ変更するなど、グリース組成の全要素をHUB使用環境に最適化し、軸受寿命と低トルク化の二律背反をブレークスルーし、両立している。
耐摩耗性については、ロシア・北欧など極寒環境では列車で完成車を輸送する際、レールの継ぎ目からの振動によってHUBの軌道面が摩耗する現象がある。開発品では軸受部グリースに低温環境に適した添加剤を使用することで、HUBの耐摩耗性能を向上させ、従来比で摩耗量70%低減を実現することができた。
この製品の特長は、ダントツの低トルク化を実現したこと。この開発ポイントは、独自開発の低粘度グリースを採用したこと。構成成分を最適化し、低トルク化を実現している。シール形状は、ダブルアキシャルシールを採用し、シール性と低トルク性を両立した。これにより、従来比でトルク50%減を実現し、車両の4輪全てに用いることで、自動車の燃費0.5%向上に貢献した。また、寒冷地での車両輸送時の耐摩耗性能を向上させたことも優位性のひとつ。これは、軸受け部グリースに低温環境に適した添加剤を使用したことが開発の鍵となった。これにより、完成車を列車輸送する際の振動によるHUBの軌道面摩耗を従来品比で70%低減(特に、ロシア・北欧等の極寒冷地域)する。