味覚・嗅覚障害からの回復

デタラメ不良開業医についてベストブック社の月刊ベルダ9月号にもコラムを書かせて頂き、それでもまだ怒りの炎は燃え上がり、書き足りないので製造現場ドットコムのコラムでは詳細に経緯を書いたのだけど、その後、症状が奇跡的にに回復しました。

コラム【直目】「不良開業医には行政処分を求む」↓
http://seizougenba.com/node/10202

コラムにもあるとおり、五感の一部が消失し、人生最大の絶望のどん底にいたわたし。

結構きついステロイドの内服で、体調も思わしくないうえ、精神的ダメージは相当のものだった。誰がなんといおうと、永遠の28歳と言い張っていてもすっかり中年。結構な波瀾万丈の人生を歩んできたけれど、ことごとく乗り越えて来られたのは“元気”があったからだ。

アントニオ猪木は「元気があればなんでもできる」と言っていたけれど、まさにその通り。苦難を乗り越えるには、健全な肉体と精神がなにより必要なのだ。

今回は健全な肉体と精神に大きなダメージを喰らった。食べ物への執着が強いわたしにとって、味覚・嗅覚を失うのはどんなに辛かったか。アロマの香りも、愛する猫の肉球の臭いも、大好きなカレーの匂いも、入れ立てのコーヒーの香りも、森林浴の緑の香りも、なにも感じないなんて!

万が一、ガス漏れが起きても、臭いに気付かず、大ピンチになる可能性だってある。今後、知人たちと食事をしたりしても「これ、美味しい~!」と、言えない。大好きな日本酒もまったく味わえないとなると、他人と共有する歓びも大幅に減少するのは確かだ。食事は大切なコミュニケーションのひとつでもあるわけだしね。

そのうち、味覚だけは、苦い、しょっぱい、甘い、という“大味めいたもの”は少しだけ理解できるようになったけれど、ダシのウマミなど、細かい味は分からないうえ、嗅覚は全く戻らなかった。未来を悲観して、熟睡することもできない。それでもうつらうつらしながら、目覚めるたびに嗅覚は戻っているだろうか、と、冷蔵庫の中にあるキムチの匂いを嗅ぎ、愛用している香水をふりかけてみる―――が、さっぱり香りを認めることができない日が続いた。

感冒等後の嗅覚障害は予後が悪いという現実。その絶望感たるや、大げさではなく、本当に“生きる楽しみを失った”に等しい。

どんなに苦しんでも明日は来るわけで、どうにもならないことを悩んでも仕方ないと感じたわたしは、味が分からないのに、大好きなものを食べるようにした。友人らを誘ってレストランにも行った。

舌や鼻がダメでも脳みそが覚えているかもしれない―――なにも感じなくなった神経を呼び起こしてくれるかも、という藁をもすがる思いがあった。

大好きなオイスターバーで

牡蛎が大好きなわたしは、オイスターバーにいた。喉が渇いていたのでビールを頼んだ。やっぱりビールは若干苦みを感じる炭酸水といった具合で風味は分からなかった。生牡蛎は、レモンを絞ってもレモンの風味を感じることもない。グニグニしていてゴム製品を噛んでいるよう。いつもならば、レモンの風味、磯の香りがミックスされて、その美味しさに悶絶していただろう。食事に付き合ってくれたツレといろいろ話しながら、焼き牡蠣を口に入れた。ベーコンとトマト、ウニが乗っかってる2つの焼き牡蠣。これらはわたしの大好物だ。

ところが!
グニャグニャとベーコントマトの焼き牡蠣を噛んでる時だった。
突然、パチッと電気のスイッチが入るような感覚で、ベーコンの焦げた風味を口の中で感じた。醤油の香ばしさも! うま味があるじゃんか!

慌てて、とっさに自分の手を嗅いだ。かすかにハンドクリームの良い香りを認めた。次に自分の髪の匂いを嗅いだ。いい匂いじゃんか! 指の匂いを確かめた。まさしく先ほど絞ったレモンの香りを認めた。グラスの中の残ったビールも単に炭酸水のようなものから、突然、ちゃんとビールの味がした。感じる、感じるわ!

このお陰で甦ったのよ!
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味が分かる歓びに、涙がこぼれた。

とりあえず、匂いを感じた、ということは、神経はやられていないはず。
治る! と確信した――――。

なのになのになのに!

翌日の朝になると、また、匂いは消えていた。ひょっとして夕べはビールで血行が良くなったから匂いを感じることができたのか? それに伴い味覚もまだ鈍い。

夕方になると若干匂いを感じるように鼻は目覚める様子をみせるけれど、歓びもつかの間、翌日の朝には、嗅覚が消滅する。ただし、味覚と嗅覚が連動しているのが分かったのは救いだった。嗅覚が戻れば、味覚もうまみ成分も感じることができる。そんなことを繰り返し、そのうち昼頃には匂いを感じるようになり、どんどん匂いが分からない時間が短くなっていった。

そうして嗅覚の検査日を迎えた。

検査は微香のものからキツイ匂いのものまで、花の香りから、う●こや、生乾きの洗濯物の臭い香りまでを「これはなんの匂いですか?」と、クイズ形式で当てていく、というもの。同じモノと感じた匂いが3つ合致すれば検査は終わる。それによると、通常の方より良い数値を叩きだしたようなので「異常なし」、とお墨付きをもらった。もともと味覚と嗅覚は敏感なほうだと思っていたので、すっかり全快していたことを実感した。

なにが早期回復のきっかけになったのかは良く分からない。
もちろんきつ~いステロイド内服の治療の効果が一番なのだろうけれど、それだけじゃないだろう。

しぶとく好きなレストランに行ったことが良かったのか。健康に良いとされるスズメ蜂入り蜂蜜を仕入れたのが良かったのか。(この効果の高さには驚いた!)

風邪等をひいた場合、匂いが感じられない、味が分からなくなる等、皆さんも経験があると思います。明らかにいつもと違う嗅覚異常の症状が出た場合は、一刻も早く、耳鼻咽喉科で診察をしてもらうことをオススメします。診察が遅れればそれだけ、回復が遅れ、予後が悪くなり、最悪、元に戻らない場合もあるんですって。

今でも、五感の一部を消失する恐れがあったかと思うと、あのデタラメ不良開業医に怒りが収まらず、「いつも温和なわたしを本気で怒らせたな!」と感じている今日この頃ですが、自分の身を守るのは自分しかないと実感しました。これを機に、日頃から健康に意識しようと思います。