碌々産業がデジタルデータを駆使する「マシニングアーティスト」の普及へ ~微細加工技術者をリスペクト~

190213top 微細加工機を製造している碌々産業(社長=海藤 満 氏、本社:東京都港区高輪4-23-5)が、微細加工機をあやつるオペレータを『Machining Artist(マシニングアーティスト)』と呼び、普及活動を行っている。
 
 海藤社長は、「昔は汎用旋盤を経験や感性で操って超高精度な加工を実現した人たちを“職人”と呼んでいましたが、現在、微細加工機をあやつるオペレータは、デジタルデータを駆使して微細加工を実現しています。とてもマニアックな方も多く、中には加工をとことん追求する姿から、マニアックを通り越して“変わり者”といわれている方もいらっしゃいます。その方達の微細加工への飽くなき追求が、世界における電子機器等のブレークスルーに繋がっているのだと思っています。われわれは、そのオペレータの方々を尊敬の念を持って『Machining Artist』と呼ぶことにしました。」と話す。



誇り高きマシニングアーティストの存在なくして商品は生まれない!

190213top1真っ赤なステッカーにマシニングアーティストの文字 真っ赤なステッカーにMachining Artistの文字。同社では現在、マシニングアーティスト普及活動の一環として、ステッカーを配っている。使用されているフォントは、同社の微細加工機『Android』や『Vision』と同じものだ。

 なぜ、マシニングにアート(芸術)なのか―――。

 「ものづくりは芸術。感性が重要です。感度の高い感性は新たな発想を生み出します。」と海藤社長。「極端な話ですが、マシニングセンタを扱うオペレータがいなければ、スマホも世の中に存在する電子機器もできなかった。オペレータの感性が微細加工技術に磨きをかけ、さらにその技術が進化していく。日本は微細加工が得意分野であり、日本経済の底力でもあるのです。非常に重要な分野ですから、活性化を図るためにも今の時代を生きる子ども達や若い方にも慣れ親しんでいただくために、“マシニングアーティスト”という言葉を普及させたいと思っています。」と活動の思い入れについて話した。

190213top2碌々産業ならではの微細加工技術を盛り込んだキーホルダー 微細加工現場は昔と違い、今では床もピカピカだ。まだまだイメージ的には汚い現場で汗を流しながらのキツイ作業を想像する方も多いと聞くが、現実は、温度管理された清潔な工場で加工を行うのが主流である。人間のもつノウハウをも数値化することによって、安定した品質の製品を効率良くつくり、高い経済効果を生み出していく。生産された製品は様々なものに組み込まれ、形を変えてわれわれの生活を豊かにする商品となる。これが製造業の醍醐味でもあり、その鍵を握るのが、オペレータ―――つまり海藤社長のいう『マシニングアーティスト』なのだ。

190213top3 海藤社長は、「オペレータの皆様にもこうした高い意識とプライドを持って貰いたいと願っています。そこで今回、『エキスパート マシニングアーティスト』を創設しました。弊社の営業技術課で基準をつくっています。基準に合致した人には、エキスパートマシニングアーティストの認定書とキーホルダーを授与することにしました。」と削り出しのキーホルダーを見せてくれた。直彫りのカーボン調だ。同社ならではの微細加工技術を盛り込んでいる美しいキーホルダーだ。

190213top4MA―Labはマシニングアーティストの美意識を刺激する場所 登録票をつくり、同社の『MA―Lab』に飾るという。このMA-Labとは、Machining Artist’s Laboratoryの略であり、同社のショールームでもある。マシニングアーティスト達が集う場所として新たに名前を付けたとのこと。海藤社長の「工業製品の水準を超え、工芸品の領域へ踏み込んだ最先端の加工シーンで腕をふるう技術者たちの繊細な感覚は厳しい審美眼を持っている。マシニングアーティスト達の美意識に応え、感性を刺激し、加工へのモチベーションを高める場所でありたい。」との願いがこもっている場所でもあるのだ。

190213top4J-BOX ところで、『MA-Lab』には、碌々産業のマシンがズラリと並んでおり、この中には、“J-BOX”という小部屋がある。中は、±0.1の極めて安定した温度環境だ。超精密の恒温環境でさらなる精密微細加工を実現する部屋である。無人環境による加工を実現するため、遠隔操作盤による加工開始/停止、CNC画面の確認、サウンドチェッカーによる加工モニタが可能になっている最先端の特殊な部屋だ。ちなみにこの設備につけた“J-BOX”の由来は、ジュエリーボックスから取っている。6年ほど前に行った取材では、海藤社長が、このネーミングの由来について、「ジュエリーのような繊細さと美しさは微細加工に通じるものがある。」と話していたことを思い出した。こうした発想は、現在の『Machining Artist』普及活動に繋がるものがある。

190213top5細かいところにも碌々産業のこだわりが! 微細加工において並々ならぬ意欲をみせる同社だが、昨年11月にさらに自動化、無人化を考慮した微細加工機に特化したクラウドサービス『AI MACHINE Dr.』をリリースし、加工室内の温度や機械設置場所の室温も監視するサービスを開始している。最大36項目に亘る機体情報をセンサリングすることにより、ユーザーとメーカーが一体となって機体を厳格に管理・監視できるものだ。クラウドを利用するため、機械がどこにあってもリアルタイムで遠隔監視が可能というメリットがある。


190213top6AI MACHINE Dr.で遠隔監視・管理が実現。 「簡単にいえば遠隔医療と同じ考え方です。」と海藤社長。一般的なIoTアプリケーションといえば、異常検知や予防保全といった機械に焦点をあてているが、『AI MACHINE Dr.』は、ミクロン台の超精密な加工をどう安定して維持するか、という加工に焦点をあてているのが最大の特長だ。同社の『MA-Lab』は、加工サンプルも豊富に展示してあり、単なるショールームから、さらなる進化を遂げていた。

碌々産業が考えるエキスパート マシニングアーティストの基準とは

190213top7鈴木本部長 では、同社が考えるエキスパート マシニングアーティストの基準とはなんだろう――。

 鈴木孝宏 技術本部本部長(以下鈴木本部長)に尋ねたところ、①ミクロン台の超精密で且つ、美しく繊細(高品位)な加工を深く追求する人 ②自分の仕事に強い拘りとプライドを持ち、常人には真似の出来ない微細加工を行っている人、③微細加工に対し常に向上心と進化を求める人、④加工技術を見える化し(数値化=デジタルデータ化)し、論理的に分析をする人 ⑤自分の得たスキルを後人へ伝承する事にためらいの無い人――の5つを兼ね備えた人であることを挙げた。

 「見える化は重要で、裏をとる技術ともいいます。微細ではない加工技術は切屑の色、匂いや音などで判断する雰囲気でしたが、微細になると見えません。それをひとつひとつ、工具がついている、振れていない、クランプされている、プログラムも間違っていない、温度管理も出来ている・・・だけでは、微細加工は達成できないのです。これらをひとつひとつ数値化する。つまり裏を取って、それを利用し、精度に繋げられることが微細加工機をあやつれるマシニングアーティストだとわれわれは考えています。」と鈴木本部長。

190213top9 海藤社長も製造現場の厳しさについて、「アート作品は一つで良いのですが、われわれはインダストリーの分野で仕事をしています。例えばスマホですと1億個ほどつくるのですが、それを均一にミクロン台の加工精度を保たなければならず、暗黙知のカンでつくっているとしたならば再現することはできません。したがって暗黙知を数値化、見える化することはとても重要なことなのです。データを分析し、加工に置き換えていく作業はとても大切で、工業製品の分野では、人間の健康状態や気分で微細加工ができたりできなかったりという不安定なことはあってはならないのです。どんなに大量に、ものを生産しても全て同一の安定品質が求められるのですから。」と述べた。

ただいま静岡工場が進化中!

190213top9巨大な岡本工作機械製作所のマシンが納入。目を懲らさなければ見えないほど人が小さく見える。 さて、同社では静岡工場が進化中だ。G-Stu.は研削工場(Grinding Studio)だが、ちょうど新しい設備が納入されていた。岡本工作機械製作所の巨大な油制圧の平面研削盤だ。ストロークは8m。設置するのに5mを掘ったという。写真を見ると、いかに巨大なマシンなのか分かるだろう。人間が小さく見える。

 完全な工場の恒温化を目指す海藤社長。『Site23』は、ボックスインボックス。「工場の中にもうひとつ箱をつくった。」という。ここは23℃±0.5℃で徹底した温度管理がなされている。

190213top10工場内にある「Site23」では徹底した温度管理のもと機械がつくられている。 「微細加工機をつくる工場として、妥協無しの徹底追求です。マーケットは絞られますが、あまり景況に影響されず、ここでしか出来ないものがある。ピンポイントでグローバルニッチトップ戦略を貫き通します。」と勢いのある海藤社長。

 碌々産業はあと3年で創業120年目に突入する―――。

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