ボーイング787 搭乗記(1)

業界に詳しい下村栄司氏がカメラを引っ提げボーイング787をレポートしてくれました! 全日空がボーイングから受領した787の初号機、つまり世界初の787を隅々まで独自目線で探索! さぁ、ご覧ください!


話は少し古くなりますが、1月末に憧れのボーイング787に搭乗することができました。
昨年の11月に国内線に就航してから1月の時点で、787に搭乗した人は何と10万人にもなるのだそうです。それを考えると今さら珍しくもないような気がしますが、世界的に見れば10何万人めの搭乗者となるわけで、やはり珍しいと言えると思います。

搭乗した便は羽田7:50発、広島行きANAの673便です。私の家から羽田空港までは約2時間かかるため、これに乗るためにかなり早起きしました。ちなみに、乗った787の機体番号は”JA801A”。マニアならすぐわかると思いますが、全日空がボーイングから受領した787の1号機、ということは営業飛行に使われている世界最初の787ってことです。どうだ!


飛行機の機体番号はだいたいこの辺りに書かれています。787を見かけたら注目!(ちなみにこの写真はJA801A)



そろそろ出発時間が迫ってきました。

「本日使用します機材は、エーエヌエーがボーイングと開発から関わり、世界に先駆けて導入しましたボーイング787でございます。」と誇らしげなアナウンスが。いよいよ乗れるんだ・・・期待に胸をふくらませて機内へ。

機内に入ると、まずおしゃれなバーカウンターがお出迎え。飛行機と思えないほど高い天井と、その高さを引き立たてているのが青いLEDの照明です。曲線を多用したデザインも新しい飛行機という印象を強めています。




座席は窓側。787の窓は今までの飛行機の窓に比べて約1.3倍と大きくなり、明らかに外の様子が見やすくなりました。そして、窓には従来のようなプラスチック製のシェードがありません。787ではなんと電気式のシェードになっています。窓の下に付いているスイッチ(写真の白黒の丸いもの)を押すことで光の透過率を電気的に変え5段階に明るさを調整できます。一番暗くしても、かすかに外の様子がわかるってところがなかなかニクイです。
座った座席がちょうど主翼の直前ということもあって、エンジンが良く見えます。見ての感想は「エンジンでっか~」。これは専門的になりますが、最近のエンジンでは燃費を良くしたり、騒音を低くするため、「バイパス比」が高くなっており、そのためにファンの直径が大きくなり、エンジン直径も大きくなるのです。ちなみにファンとは、エンジンを前から見ると扇風機の親分みたいな羽が見えるでしょ。あれです。「バイパス比」を説明するとややこしくなるんでここではやめときますが、興味のある方はインターネットで調べて下さい。
離陸時の印象は、「エンジン音が静かだな」。ロールス・ロイス製Trent1000エンジンは控えめな音でパワフルに787を上昇させていきます。

眼下に見えるのは、雪化粧した富士山です。たまたま機体左側の席に座っていたので撮影できたショットです。天気もよく、ラッキーでした。


美しい!日本人の心、富士山よ~



広島までのフライトは1時間ちょっとなので、トイレに用がある以外の人は座席に座ったままじっとしています。でも、せっかく787に乗ったのだから機内を見て回らなければ787ファンとは言えません。
シートベルト着用サインが消えたところでカメラ片手に「機内探索」に出ました。




カメラが引けな~い! 全体が入らな~い! 不覚にも左側に自分の手がうつってしまった!
カメラが引けな~い! 全体が入らな~い! 不覚にも左側に自分の手がうつってしまった!
「787・・・いいですね」と、キャビン・アテンダント(CA)の方に声をかけてみました。すると、「この飛行機の中で、唯一窓のあるお手洗いがあるんですよ。」と教えてくれました。そして、わざわざそこまで案内してくれました。
787ファンとしては実は知っていたのですが、1箇所だけとは知りませんでした。ちなみにトイレに窓がある飛行機は787だけです。本来の用事はなかったのですが、「世界初、窓のある飛行機のトイレ」を写真に収めるべく、中に入ってみました。


トイレの窓からの「絶景」
トイレの窓からの「絶景」
中は結構広くて快適そう。温水便座(商品名ウォッシュレットってやつです)付きというのも787が初めて・・・のはずだったのですが、就航が大幅に遅れてしまったため、777の一部改装仕様機に先を越されてしまったそうです。飛行中は窓の外から用を足しているところを見られる心配はなさそうですが、ここにも例の電気シェードが付いているので一番暗くしておけば安心して用が足せます。それにしても、10,000m上空を眺めながらオシッコ(またはウンコ)をするっていうのはなんて贅沢なんでしょうか。しかし写真でもわかる通り、後ろを向きながらの体勢になるので、中国雑技団並みのしなやかさがないと実際は無理そうですが。

やっぱりCAの方とは会話をしてみるもんです。いろいろと話しをしていたら、私を787ファンと認識してくれたのかどうかはわかりませんが、「搭乗証明書を差し上げましょうか。」とのこと。恥ずかしながら、そのようなものがあるとは知りませんでした。「何?それ。」とは決して言わず、「ぜひお願いします!」と。

しばらくしてからCAの方が私の席までわざわざ持ってきてくれたのがこれです。感謝!感激!雨あられ!です。私にとっての787初フライトの良い記念になりました。

【文・写真:下村栄司】