航空宇宙好き、集まれ!(前編) ~独断と偏見の国際航空宇宙展(JA2012)レポート~

航空宇宙好きで有名な下村栄司氏がレポートを書いてくれました。
さすがは業界人です。記者とは違う視点がたまらない! 

というわけで、下村氏ならではの国際航空宇宙展レポートをご覧下さい! 

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いつか書こう書こうと思いつつ、ついに年が明けてしまいました。
昨年の10月に名古屋で行われた国際航空宇宙展(JA2012)に行ってきました。似たような名前の展示会がいくつかあるので紛らわしいのですが、この展示会は日本航空宇宙工業会(SJAC・・エスジャックって言います)が主催するアジアで最大のエアショーだそうです。

今回で13回目ですが、前回は2008年に開催されたので4年ぶりということになります。最近はオリンピックと同じ、だいたい4年に1回の開催です。今回見逃した方は残念ながら4年後まで待たねばなりません。

航空宇宙産業のメッカと言えば中部地区、と言うことで今回は名古屋での開催となりました。しかも、企業の展示はポートメッセなごや、航空機の実機展示やブルーインパルスなどの飛行展示は中部国際空港(セントレア)と2会場体制を取ったのも今回初の試みです。

日程は前半の10月9日から12日までがビジネス中心の「トレードデー」、12日から14日までが一般を対象とした「パブリックデー」です。特にパブリックデーの土日、セントレア会場はものすごい人出で、2会場で目標の93,500名を大幅に上回る162,884名の来場がありました。

実は筆者の会社は、今回初めてこの展示会に出展しました。航空宇宙大好きの筆者には嬉しい限りだったのですが、出展者という立場で企画・準備・運営に関わるとなると、これが結構大変です。やはり、単なる見学者の立場の方が気楽かなと思います。でも、ブースの対応はほとんどそっちのけで会場を見て回れたので、結局良かったのかもしれません。

単純な展示会レポートではつまらないので、筆者の独断と偏見(?)に基づく、かなり偏ったものになりました。前編のポートメッセなごや会場、後編のセントレア会場の2つに分けてレポートします。

では、さっそく行きましょう!


LUPA AIRCRAFT MODELS
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いきなりマニアック(?)な話題から。
オランダの航空機モデル・メーカーです。いろいろな航空機のモデルを展示即売していました。
実物の1/100や1/200の大きさが多く、1/100のモデルはかなり迫力があります。エアバスのA380とA350XWBのモデルもありました。

ちょうど筆者の会社が次の展示会でこの機種の部品を展示することが決まっていたので、「モデルもあると盛り上がるなぁ」と思い、会社に事前の了解を得ずに買ってしまいました。
2機で5万円ナリ。もし、会社から「そんなもん、払えねぇ!」と言われたら家に飾るしかありません。しかし、「そんな大きなもの、どこに置くのヨ!」という妻の鬼のような形相が浮かんできます。


結構でっかいA350。めでたく会社には費用を認めてもらえました。個人的には今回の「おみやげ」として787とA380の1/200モデルを買いました。
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歴代のロケットたち(企画展示)と世界の航空機メーカー

130204c(右の写真)奥側の5つがスペースシャトル(コロンビア、アトランティス、チャレンジャー、ディスカバリー、エンデバー・・全部言える人はそこそこマニアです)。手前に1つだけあるのはロシアの宇宙往還機ブランと打上用ロケットのエネルギヤ・・スペースシャトルそっくりですが、真似したわけじゃないらしい。こちらもモデルです、ロケットの。これ、全部ペーパークラフトです。ぱっと見、とても紙とは思えません。よくできてます。作者は中川義通(よしみち)さんと言って水戸市総合教育研究所で天文学や宇宙科学を青少年に解説しているとのこと。ちょうど本人がいたので、話を聞いてみました。
「これって、全部紙なんですか?よくできてますね!型紙はどうしてるんですか?」
「アメリカのインターネットのサイトで全部公開されてますよ。ただ、私が独自に工夫してる部分もありますけど。」
「スペースシャトルなんか同じようなものが5つも並んでますけど・・」
「引退するまで135回のフライトがあったんですが、どれひとつとして同じ形の物がないんですよ。例のサイトには135回全部のフライトの型紙があります(スゴイ!な、なんてマニアックなんだ!世の中広し!)」
「これだけあるのに、アリアン5(欧州宇宙機関の主力ロケットです)とかがありませんね」
「(困った顔をしながら)えー、実はまだつくってないんです。そのうちつくろうかとは思ってるんですけど」
ロケットのモデルたちは同縮尺なので、大きさの違いがよくわかります。アポロ計画で月に人を送り込んだサターン5の大きさが目立ちますが、ロシアのソユーズ(国際宇宙ステーションに人を運べる現在唯一のロケット)が意外にちっちゃい。我がJAXAのH2Aよりもちっちゃいのが印象的でした。
蛇足ですが、天文や宇宙に興味のある方は作者の中川さんのサイト「星屋のつぶやき」がおもしろいです。筆者など足元にも及ばないマニアックさです。アドレスはここ↓
http://y-nakagawa.cocolog-nifty.com/murmur/


130204z■出展者の優越感

パブリックデーの土日はポートメッセなごやもかなりの混雑でした。一体どれくらいの人数が入場待ちをしているのかなと、10時の開場前の様子を見に行って見ました・・ら、何と長蛇の列。みんな辛抱強く開場を待っています。我々出展者は専用のパスをぶら下げているので、あたりまえですがゲートはスイスイ通過できます。なぜか優越感を味わえました。


130204d■エアバス

会場案内のパンフレットを見るとエアバスがありません。あれ?今回は出展しないの?と思ったらEADSの名前でちゃんと出展していました。ちなみにEADSはエアバスの親会社です。日本のエアラインの機材はボーイング中心でエアバスはあまり馴染みがありませんが、スカイマークエアラインがA380を6機注文するなど、最近注目です。会場では最新機種であるA380とA350XWBのでっかいモデルを展示していました。

■ボーイング
日本のエアラインではお馴染みですが、民間用の旅客機ばかり作っている会社ではありません。話題のオスプレイやF15戦闘機などもボーイング製って知ってました?ビデオを流していましたが、これがとてもカッコイイ!

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787のフライトシミュレータを置いて、希望者(VIPかな?)は体験することができたようでが、パブリックデーは閉まってました。(お客さんじゃない人は相手にしなくて当然かな)

右から737MAX(開発中), 737NG, 787, 777,747-8 奥がフライトシュミレータ(閉まってますが・・)
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130204g■ロッキード・マーティン

ロッキードと言えば今では軍用機メーカーですが、オジサン世代には懐かしいL-1011トライスターという旅客機(同社最後の旅客機です)をつくっていました。全日空も21機飛ばしてました。あの田中角栄さんの「ロッキード事件」で有名ですね。
さて、ここは何と言っても防衛省が次期戦闘機とし決定したばかりのF35でしょう。展示してあったモデルには既に日の丸をつけて存在感を示していました。日本は2016年度にとりあえず4機導入ですが、1機あたりの価格は約100億円!・・これで1人しか乗れません!100億円あれば200人乗れる旅客機が買えます(もちろん、乗れる人数で比較するのはナンセンスですが)。ちなみにこのF35、ほぼ同一の機体で異なる目的に対応できる3種類の機種を開発するという野心的な試みであったためか、開発費が雪だるま式に膨れ上がり(何と31兆円だって)、この先もこれで済むかどうかもわかりません。納入は遅れるは値段が上がるはなんてことにならなきゃ良いのですが。

頑張る日本のメーカー群

130204h写真左:カメラを持ってブース内をウロウロしていたら、三菱重工の人から「MRJと一緒に撮ってあげましょう」ということで、パチリ。■三菱重工業

日本を代表する航空宇宙メーカーといえばここでしょう。
話題はやっぱりMRJ。
今まではモデルの展示が中心だったのですが、今回は実物大の客室のモックアップを持って来ました。トレードデーには希望すればシートに座らせてもらえたみたいです。今年(2013年)初飛行とのことなので、楽しみです(787の二の舞にならなきゃいいけど・・)。

個人的にはH2Aロケットの次(H3Aかな?)が気になりました。既にエンジンの開発(LE7X)は進んでいて、説明を聞いたら信頼性の向上にも重点を置いているとのこと。ひょっとしたら有人飛行も視野に入ってるかもしれません。

130204i写真左は「ドクターヘリ」、写真右はXC-2とXP-1の模型。1社で2機同時に開発してしまうなんてボーイングやエアバスだってやらない!■川崎重工業

この展示会を主催しているSJACの会長会社ですので、展示も盛大です。目立つのはBK117のドクターヘリ仕様の実物機です。BK117はユーロコプタードイツ社と共同で1982年から生産しており、最近めでたく1000機の納入を達成したそうです。
ヘリコプターの実機ばかりが目立ちましたが、実は最近川崎重工さんは航空機を独自に、しかも2機同時に開発したんです。防衛省向けですけど。1つは2007年9月に初飛行したXP-1次期固定翼哨戒機(潜水艦を探します)。もう1つは2010年1月に初飛行したXC-2次期固定翼輸送機です。XP-1はボーイング737-800やエアバスA320とほぼ同じ大きさ、XC-2はそれよりも大きい機体です。XP-1は民間の旅客機に転用することはできませんが、XC-2の方は民間の輸送機に転用できる可能性があります。武器輸出三原則次第ではありますが。

130204j真ん中の黒い板が4500個穴をあけたCFRP板。1枚の板に500個穴がありますが、加工時間は20分で、従来の1/3とのこと■富士重工業

日本の三大機体メーカーの最後は富士重工業です。
前回の展示は賑やかだったのですが、今回はちょっと地味でした。注目はCFRPの穴あけ技術で、独自に開発したRドリルは、ドリル自身がCFRPによってセルフリグラインドされるというもので、4500個穴をあけたサンプルを展示していましたが、4500個目の穴でも充分きれいでした。




130204k写真左:787用のエンジンGEnxの模型。写真右:液水ターボポンプ。ちなみに液酸ターボポンプも似たような形状です。ひとつのエンジンに両方あります。■IHI

ジェットエンジンといえば、やはりこのメーカーでしょう。真っ黒でレトロな感じのエンジンが目につきます。これは「ネ20」と言って、終戦直前の1945年に完成した日本初のジェットエンジンです。現在でもエンジンの基本的な構造はこれと変わっておらず、当時の技術がいかに先進的だったかが想像されます。その他にGE90(B777用)、GEnx(B787用)、V2500(A320用)、PW1100G(A320neo用)などの民間機用エンジンの模型がズラリ。

IHIは宇宙関連の製品も航空関連に負けず劣らずやってます。H2AやH2B(どちらも日本の主力ロケット)のメインエンジンに使われている液酸ターボポンプ/液水ターボポンプに個人的には興味津々です。地球の重力を振りきって過酷な環境の宇宙へ飛んで行くロケットの中では私達の想像を超えた「極限状態」が展開されています。例えば液水ターボポンプ。燃料である液体水素(何とマイナス253℃!)をタンクからもってきて圧力を300気圧まで上昇させます。タンクから吸い込む液体水素の量は1秒間に約530リットルだって!。下の写真右がカットモデルです。左部分がポンプで右部分が回転のパワーを生み出すタービンです。タービンを回す動力は550℃のガスです。要はひとつの装置の中に一方はすごい低温、もう一方は高温の両極端が同居しているってことです。回転数は毎分42,000回転で、馬力は28,000馬力。60cm×70cmくらいの小さな装置ですが、大型タンカーを動かせるほどの馬力があります!。すごい技術。惚れ惚れしてしまいます。

■工作機械メーカー

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工作機械メーカーでは三井精機工業、ヤマザキマザックが頑張っていました。この展示会の「主役」ではないので、コマ数も少なくパネルやサンプルピースといった地味系の展示でした。他に工作機械関連ではオーエスジー、スギノマシン(ウォータージェットの実機展示)、ブルーム(松浦機械の5軸立形MCで実演)などなど。

まだまだ書ききれないことがたくさんありますが、長くなってしまったのでこの辺で前編のポートメッセなごや編を終わりにしたいと思います。後編はセントレア(中部国際空港)編です。お楽しみに!
(写真・文:下村栄司)