日工会が、5月15日~19日までモスクワで開催された「METALLOOBRABOTKA 2017」(主催=Expocentre〈エキスポセンター〉、Stankoinstrument〈ロシア工作機械工業会〉)の結果報告をまとめました。概況は下記の通りとなっております。
展示会概況
出展機の動向
①ロシアの製造業では、雇用維持が優先され、生産効率を求めたロボット導入などの動きは限定的。一部メーカを除いて自動化を意識した出展は多くは見られない。
②同時5 軸制御MC やターニングセンタなどの出展やIoT 関連の展示があるも、積層造形融合機など最先端技術をアピールする機械の出展は皆無。
③欧州のメーカを含め多くがレーザ加工機を出展、塑性加工の前工程を意識させる量産に向けた機械の出展が主流。
④ドイツ、スイス、イタリア、中国、台湾が国別パビリオンを設け積極的な出展を演出。
業界関係者ヒヤリング
①ロシアの産業は、資源関連と自動車産業が雇用を牽引・維持。一方で、競争力不足が経済の減速を招き、投資低迷傾向を助長。
②この為、不急のものを除いて、設備投資は厳しい状況が継続、不透明な経済環境下、個人消費も低調。2016 年の自動車販売台数は、ピークだった2012 年の半分以下の水準。
③前回展で実機を出展したが、ロシアの経済情勢を考え、加工サンプルとカタログによる出展に切り替えた。
④高機能機の需要は、確実にあるも経済制裁や輸出管理の問題から売れ行きの見通しは不透明。ロシアはハイテク機械の需要と非自動化の機械需要が混在。
⑤ロシアの製造業にとって最大のライバルは中国。安価な模倣品が市場に入り製品価額を撹乱。
ロシア経済・ビジネス展望(参考:JETRO・モスクワ事務所等)
(1)ロシアの実質GDP 成長率の推移は、2007 年は8.5%。リーマンシックのあった2008 年は、5.2%へと落ち込み、翌2009 年には、▲7.8%とさらに落ち込み、その後2010 年に4.5%まで回復するも、減速傾向が継続。リーマンショック後、経済の牽引役は消費から投資へと変化。
(2)ロシアの歳入は、石油と天然ガスの収入に依存。このため油価とルーブルの為替レートは、基本的に連動。
(3)政府は、油価下落の中、徴税強化、予算執行の効率化に注力。国有資産売却と予算執行・管理の厳格化で歳出削減を図っているものの、先行きの不透明な経済循環にあって、個人消費は依然低調。
(4)更に、工業分野において輸入代替促進策を展開。19 項目を挙げて原産比率を高める産業政策を実施。項目の上位に「工作機械・部分品」があり高度化を目指す。
(5)ロシア経済は、油価依存から脱却する政策に力を入れるも、技術力不足、専門人材不足から、停滞感が強い。高金利と投資低迷と言った不十分なビジネス環境は、企業活動の阻害要因。
日系メーカーの出展の様子
(写真:日工会)