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台湾TMTS展が6年ぶり単独開催 7万人が来場、オンライン展には11万人
工作機械の輸出額で世界5位、生産額で世界7位の台湾で台湾国際工作機械展(TMTS2024)が3月27日から31日までの5日間、台北市東部の台北南港展示センター1、2号館で開かれた。6年ぶりの単独でのリアル開催に631社が3,350小間を超える規模で開催され、国内外から7万人が来場し、オンライン展には123カ国から11万人がアクセスした。今回展のテーマは「DX & GX 持続可能な未来」で、各出展者がDX(デジタルトランスフォーメーション)とGX(グリーントランスフォーメーション)の2つを軸に、製品とサービス、自動化や省人化に向けたソリューションを競った。台湾の工作機械業界にとり最大の輸出先の中国が不動産不況を受け、設備投資が急減速して販売を落とすなか、台湾メーカー各社が何を目指しどう取り組むのかを現地で取材した。【台北=是州煩太(文・写真)】
ファンを引き付け知名度も向上
TMTSは2010年に台湾中部の台中市で初開催され、今回で7回目の開催。6回目となるはずだった20年展は新型コロナウイルス感染症の拡大で中止に追い込まれ、2年前の22年展は会場を台北に移し、30回の節目を迎えた台北国際工作機械見本市(TIMTOS)との合同で、「TIMTOS×TMTS2022」として国内向けの開催を強いられた。海外の在住者に対しては、同時開催されたオンライン展での視聴参加の呼びかけを余儀なくされた。
半世紀を超える長い歴史を持つTIMTOSに比べ、台中で開催されるTMTSの知名度はかつては今ひとつ。初期の開催時には日本で開催される日本国際工作機械見本市(JIMTOF)の知名度と集客力を利用し、JIMTOF閉幕の翌日をTMTSの開幕日に当て、各国からのJIMTOF来場者に帰国前の立ち寄り、寄り道での来場を促した時期もあった。主催の台湾区工作機械工業会(TMBA)が編み出した秘策だった。
産業用機械を広範に展示するTIMTOSに対し、切削を中心とした金属加工用の工作機械と周辺機器に絞って展示するTMTSは、初開催から14年を経てより熱心なファンの引き付けに成功し、今や知名度も上げて来場者数を増やしてきた。
開催地の台中は、工作機械や周辺機器の各主要メーカーの本社と工場の集積地でもある。工場の見学も兼ねて、TMTSを目当てに台湾を目指す来場者も増えた。あえて例えるなら、TIMTOSが台湾版JIMTOFなのに対し、TMTSは台湾版メカトロテックジャパンの位置づけだ。今回はかつての台中の会場が取り壊され、新会場の建設計画の遅れも重なり、台北での開催となった。
意欲的な新興国の需要捉える
今回展には7万6776人が来場。台湾各地からはもちろん、68ヵ国・地域から3,319人の外国人が来場した。外国人来場者数の上位10カ国は、インド、日本、中国、マレーシア、フィリピン、米国、インドネシア、タイ、ベトナム、トルコで、多くの国が視察団を組織して会場を訪れた。
大手自動車メーカーが工場を持つポーランドやチェコ、メキシコやアフリカなどからも来場した。既存の工業国はもちろん、設備投資への意欲が高い、新興工業国の需要をしっかり捉えた印象だ。つまり、これらの国々が今後、日本の工作機械業界が挑むべき市場、いわば「お得意さま」へと導く国だ。台湾製の工作機械を導入したら、次は必ずより高性能な日本製の工作機械が欲しくなるはずだからだ。
TMBA理事長でYCMブランドを展開する永進機械工業の陳伯佳総経理は開会式で「今回のTMTSは、従来の台中での開催から台北での開催に変わっただけでなく、多くのユニークな取り組みに挑戦した。最新の機械の展示だけでなくソリューションを提案し、DXとGXを軸に持続可能な未来社会を提案する。ユーザーの経験や体験を基に分析を重ねて機械を改善した。これまでとは違った斬新なものづくりの世界を披露したい」と意気込みを述べた。
日本の首相に相当する陳建仁行政院長や官房長官に相当する林佳龍総統府秘書長らがあいさつし、官民挙げた応援体制もアピールした。蔡英文総統こそ来場しなかったものの、開会2日目には5月に次期総統に就任する頼清徳副総統、5日目の最終日には頼政権下で副総統に就任する蕭美琴前駐米大使も会場を訪れた。
DMG森精機「INHシリーズ」を拡充 ~旋削対応の「INH 63 FD」とSIEMENS製制御装置仕様を追加~
DMG森精機はこのほど、5軸制御横形マシニングセンタ「INHシリーズ」のラインアップを拡充すると発表した。「INH 63」に旋削加工が可能なミルターンテーブル仕様「INH 63 FD」を追加したほか、従来のFANUC製制御装置に加え、SIEMENS製制御装置にも対応する。
INHシリーズは、同社が2023年に販売を開始した5軸制御横形マシニングセンタで、「INH 63」と「INH 80」を展開している。航空機や宇宙、半導体、産業機器、金型、自動車などの分野を対象に、複雑形状部品や高精度部品の加工、多品種少量生産、長時間の安定した連続稼働などのニーズに応える。
■ミーリングと旋削を1台に集約
新たに追加したINH 63 FDは、INHシリーズの基本構造をベースに、最高回転速度900min⁻¹、最大トルク3,000N・mのミルターンテーブルを搭載する。ミーリングと旋削を1台に集約し、ワンチャッキングによる高精度加工を可能にした。
従来は別工程で行っていた旋削加工を集約することで、ワークの載せ替えや心出しなどの段取り作業を減らし、加工精度の向上とリードタイムの短縮につなげる。旋削工具ホルダは「HSK-T 100」に対応し、安定した旋削加工を実現する。
テーブル内部には振動センサを搭載した。テーブルを高速で回転させた際に生じやすいワークのアンバランスを加工開始前に検知し、安全性の確保とワーク位置の確認を支援する。
また、高精度な段取りステーションを標準装備し、パレット交換後に必要となる機内での心出し作業を短縮する。ワーク中心を自動補正する「easycenterSET」もオプションで用意し、段取り作業の効率化と自動化を図る。
なお、INH 63 FDはSIEMENS製制御装置を搭載した製品に限られる。「INH 80」のミルターンテーブル仕様については、今後対応する予定としている。
■SIEMENS製制御装置にも対応
制御装置については、従来のFANUC製に加え、SIEMENS製にも対応した。SIEMENS製仕様には、デジタルツインを実現する「SINUMERIK ONE」を採用。加工プログラムの事前検証や生産準備の効率化を支援する。
FANUC製とSIEMENS製の両方に対応することで、ユーザーが工場内の既存設備や生産環境に合わせて制御装置を選択しやすくする。既存設備との操作性を統一することにより、オペレーター教育や保守管理の効率化にもつなげる。
■高精度と高剛性を追求した機械構造
機械構造には、全軸ツインボールねじとスラントコラム構造を採用し、高速加工時の振動抑制と機械剛性の向上を図った。3点支持構造により、地盤の形状や経年変化による影響も抑える。
全軸には、マグネスケール製の高精度エンコーダ「SmartSCALE」を標準搭載し、フルクローズドループ制御を行う。ボールねじを含む熱源を冷却することで、長時間にわたり高い位置決め精度と安定した加工精度を維持する。
主軸には、400V仕様の高剛性主軸「powerMASTER」を搭載する。標準仕様で最大トルク808N・m、主軸出力85/40kWを備え、重切削から高速加工まで幅広く対応する。主軸側に旋回軸を持たないスリムな構造とし、長尺工具を使った深部加工やラインボーリング加工にも対応。工具の突出し量を抑えながらワークへ接近できる。
■切りくず、クーラント、ミストへの対策を強化
長時間の連続・無人稼働に向け、同社が「加工3悪」と呼ぶ切りくず、クーラント、ミストへの対策も盛り込んだ。
A軸を使ってテーブルを傾斜させることで、ワークやテーブル上にたまった切りくずとクーラントを機内下部へ落下させる。立型大容量クーラントタンク「zero-sludgeCOOLANT pro」は、立型タンクの構造を生かし、スラッジと混入油を効率的に回収する。
機内には大流量の洗浄クーラントを流すとともに、モータ駆動ノズルによって切りくずが堆積しやすい場所を集中的に洗浄する。オプションの「AIチップリムーバル」は、AIが機内の切りくずの堆積状況を認識し、効率的な除去を支援する。
加工内容に応じてクーラントの流量と圧力を自動で最適化する「Adaptive Coolant Flow」もオプションで用意する。必要な場面で作動させることにより、加工品質を安定させるとともに、エネルギー消費の削減につなげる。機内で発生したミストを捕集するビルトイン型ミストコレクタ「zeroFOG」もオプションで搭載できる。
■CAMから工作機械までのデジタル工程を支援
複雑形状ワークの5軸加工では、CAMによる加工プログラムの作成が欠かせない。DMG森精機は、CAMと工作機械をつなぐPCソフトウェア「CELOS DYNAMICpost」をオプションで用意する。
同ソフトウェアは、ポストプロセッサ、切削加工シミュレーション、切削力最適化の各機能を一つに統合。CAMで作成した加工データを工作機械へ正確かつ効率的につなぎ、加工前の確認や段取り作業を支援する。
操作画面には、直感的な操作を可能にするヒューマンマシンインタフェース「ERGOline X with CELOS X」を採用した。複雑な加工をガイダンスに沿った入力によって短時間で設定できるテクノロジーサイクルをはじめ、CELOS Xの各種アプリケーションによって生産プロセス全体を支援する。
■パレット、ロボット、工具搬送による自動化に対応
自動化では、横形マシニングセンタで一般的なパレット搬送システムに加え、ロボットシステム「MATRIS」を接続したワーク搬送に対応する。最大4,000本の工具を収納できる工具搬送システム「CTS(セントラルツールストレージ)」や、自律走行ロボット(AMR)を活用したチップバケットの搬送にも対応する。
既存の4軸制御横形マシニングセンタ「NHXシリーズ」「NH DCGシリーズ」とパレットを共用でき、4軸機とINHシリーズを組み合わせた自動化システムも構築できる。ただし、旋削加工には専用の円形パレットが必要となる。
同社は今回のラインアップ拡充により、工程集約や自動化、デジタル技術を組み合わせた「MX(マシニング・トランスフォーメーション)」への対応を強化し、生産性の向上とサステナブルな生産現場づくりに貢献する。
INH 63 FDは、10月26~31日に東京ビッグサイトで開催される「JIMTOF2026」のDMG森精機ブースで実機を披露する。
三菱マテリアル、産学共同研究テーマを募集 研究費上限を年間300万円に拡充
三菱マテリアルは、2026年度の産学共同研究テーマの募集を開始した。資源循環と脱炭素につながる材料・プロセス関連技術を対象とし、共同研究費の上限を昨年度までの年間最大200万円から300万円に引き上げた。応募期限は10月30日午後11時59分。 同社は、中期経営戦略で「資源循環ビジネスで未来を創る企業」を基本方針に掲げ、資源循環・脱炭素分野の研究開発を成長の重要な原動力と位置付けている。今回の公募を通じ、国内外の大学や研究機関と連携し、革新的な技術の創出を目指す。 公募対象は、国内外の国公私立大学や公的研究機関などに所属する研究者。資源循環分野では、電子材料やモビリティ材料に使われる非鉄金属を含む材料のリサイクル技術を募集する。 具体的には、サーキュラーエコノミーとカーボンニュートラルの両立に貢献するプロセス技術や、経済合理性を確保するための低コスト技術、リサイクル素材を活用した電子材料・モビリティ材料の開発などを想定している。対象元素は、銅や貴金属のほか、半導体とその製造プロセスに関連する元素で、シリコン(Si)は対象外となる。 脱炭素分野では、再生可能エネルギーの活用を前提とした電化技術や、化石燃料を使わないプロセス技術を対象とする。ただし、バイオ技術は対象に含まない。 共同研究費は、税別・間接経費込みで年間最大300万円。研究期間は最長3年間とする。同社のニーズや保有技術との親和性が高く、事業性が見込まれる研究については、共同研究の枠組みを超えた「本格開発」へ移行する。本格開発の費用は年間最大2000万円で、期間は最長3年間。実施する場合は、専任研究者1人の配置が必要となり、その人件費も研究費に含まれる。 研究成果は将来の事業化も視野に活用を検討するほか、同社が共同運営するCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)との連携も想定している。 同社は、新技術や研究成果の発掘と将来の事業創出を目的に、2020年から産学共同研究公募制度を運営している。制度開始以来、応募件数は累計300件を超えている。▼応募は三菱マテリアルの2026年度産学共同研究公募ページで受け付ける▼https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/business/rd/koubo.html
DMG MORI SAILING TEAM、新艇で大西洋横断へ 「The Ocean Race Atlantic」に参戦
DMG MORI SAILING TEAMは、2026年7月に完成した新艇「DMG MORI GLOBAL ONE」で、フルクルーによる外洋レース「The Ocean Race Atlantic」に参戦する。新艇にとって初のレース出場となり、9月1日に米国・ニューヨークを出航し、約3,000マイル離れたフランス・ロリアンを目指す。
The Ocean Race Atlanticは、今回が第1回大会。開催期間は9月1日から同10日頃までを予定し、世代の異なるIMOCAクラスの計6艇が北大西洋を舞台に競う。
白石康次郎選手を中心に国際チームを編成
DMG MORI SAILING TEAMは、日本人スキッパーの白石康次郎選手を中心に、フランスのニコラ・ルンヴェン選手、英国のサマンサ・デイヴィス選手、日本の若手セーラー、守屋有紗選手でクルーを構成する。船上でレースの模様を発信するオンボードリポーターは、アンヌ・ボージェ氏が務める。
守屋選手は、同レースに出場する初のアジア人女性となる。男女同数の乗員編成が義務付けられた今大会で、IMOCAクラスのレースデビューを果たす。
白石選手は、単独無寄港世界一周レース「Vendée Globe」をこれまでに2度完走しているが、IMOCAクラスのクルー参加型レースに挑むのは今回が初めて。
デイヴィス選手はVendée Globeに4度出場し、クルー参加型世界一周レースへの参戦経験も持つ。ルンヴェン選手は2024年のVendée Globeで6位に入り、その後、「Solitaire du Figaro」で自身3度目の優勝を果たしている。
■7月完成の新艇、実戦で性能を検証
DMG MORI GLOBAL ONEは、造船設計家のギヨーム・ヴェルディエ氏が設計した最新世代のIMOCA。7月の進水から約2カ月で初戦を迎える。
チームは今回の大西洋横断を、2027年1月に始まるクルー参加型世界一周レースに向けた実戦テストと位置付けている。3,000マイルを超える航海を通じ、新艇の特性や強み、改善すべき点を把握するとともに、初めて同じ艇で戦うクルーの連携を深める。
白石選手は、新艇の開発に2年以上を費やしたと説明。「2027年1月にスタートするクルー参加型世界一周レースに向けた、実戦における最適な試金石」とし、新艇の開発成果を確かめる重要な機会になるとの考えを示している。
新艇は、レース出場に先立ってフランスから米国への大西洋横断回航を実施した。ルンヴェン選手は、建造品質の高さや操船に対する素直な反応、波を越える際の滑らかさなどを評価。実際のレースでライバル艇と競い、新艇の性能を確認することに期待を寄せている。
■最新世代のIMOCA艇同士が競う
今大会には、DMG MORI GLOBAL ONEと同じ最新世代のIMOCA艇として、ボリス・ヘアマン選手の「Malizia 4」も出場する予定。両艇にとって、実績を持つ既存のIMOCA艇と競いながら、新世代艇の実力を測る機会となる。
対戦相手には、2025年の「The Ocean Race Europe」優勝艇を擁するポール・メイヤ選手のチームや、フランチェスカ・クラプチッチ選手の「11th Hour」、オリバー・ヒーア選手が操るIMOCA艇などが名を連ねる。先頭集団は9月8日頃、DMG MORI GLOBAL ONEのホームポートでもあるロリアンに到着する見込み。
レースにはオンボードリポーターが乗船し、船上の様子を伝える。ボージェ氏は、2023年のThe Ocean Raceと2025年のThe Ocean Race Europeでも取材を担当した。今大会では、ライブ配信やドローンによるリアルタイム映像などを通じ、国籍や世代の異なるメンバーが協力して北大西洋横断に挑む姿を発信する。
【The Ocean Race Atlantic概要】
開催期間:2026年9月1日~9月10日頃
開催コース:米国・ニューヨーク~フランス・ロリアン(約3,000マイル)
出場艇数:6チーム
参加メンバー:白石康次郎選手、ニコラ・ルンヴェン選手、サマンサ・デイヴィス選手、守屋有紗選手、アンヌ・ボージェ氏(オンボードリポーター)
「JIMTOF2026」人口3万1000人弱の小千谷から7社が出展! 技術と名産を巡る「おぢやスタンプラリー」 ~人口3万1000人弱のまちから7社のメーカーがJIMTOFへ~

新潟県小千谷市から「第33回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2026)」に出展する工作機械・工作機器メーカー7社は、会期中の10月26~31日、「JIMTOF2026 おぢやスタンプラリー」を開催する。
小千谷市は、人口規模こそ大きくないものの、自社ブランドを持つ工作機械・工作機器メーカーが集積する、全国でも特色あるものづくりのまちだ。今回のスタンプラリーを通じ、小千谷市が工作機械・工作機器メーカーの集積地であることを広く発信するとともに、市内から出展する7社の技術や製品を来場者に知ってもらう。
実行委員会は、同市について「人口当たりのJIMTOF出展社数は、日本一の市であると考えられる」としている。人口3万1000人弱の地域から、7社ものメーカーが世界有数の工作機械見本市へそろって挑む。その数字からも、小千谷に蓄積されたものづくりの厚みがうかがえる。
7社のブースを巡り、小千谷の技術に触れる
スタンプラリーには、小千谷市からJIMTOF2026へ出展する7社が参加する。
来場者は、各社のブースで配布する応募はがきを受け取り、7社すべてのブースを訪問してスタンプを集める。各社の展示を見ながら会場を巡り、スタンプをそろえて応募すると、抽選で小千谷の名産品が当たる。
■参加企業と小間番号
・エヌ・エス・エス 東1ホール「E1048」
・オヂヤセイキ 東7ホール「E7042」
・第一測範製作所 東7ホール「E7004」
・タカハシキカイ 東7ホール「E7053」
・日本ベアリング 西2ホール「W2023」
・ユキワ精工 西2ホール「W2015」
・理研精機 西2ホール「W2057」
ブースは東1ホール、東7ホール、西2ホールに分かれている。会場を横断しながら7社の展示を巡ることで、来場者は小千谷企業が持つ多彩な技術や製品をまとめて見ることができる。
各社のブースでは来場登録が必要。スタンプを押す位置に指定はなく、応募は1人1通までとなる。すべてのスタンプを集めた応募はがきは、押印を完了した会社のブースで受け付ける。その際、参加記念として粗品の「おかき1袋」を進呈する。粗品は数量限定で、なくなり次第終了する。
応募締め切りは11月10日で、当日消印有効。当選者の発表は賞品の発送をもって代える。賞品の発送先は日本国内に限り、参加7社の社員は応募できない。
特賞は魚沼産新米コシヒカリ60kg!
スタンプラリーの特賞には、魚沼産新米コシヒカリ60kgを用意する。小千谷のものづくり企業を巡った先に待つ、実りの秋にふさわしい豪快な賞品だ。
〈賞品〉
・特賞 魚沼産新米コシヒカリ60kg 1名
・A賞 魚沼産新米コシヒカリ3kg 20名
・B賞 小千谷そば・うどんセット 20名
・C賞 小千谷おかき詰め合わせ 20名
・ドキドキ特別賞 7名
計68人に、小千谷ならではの賞品が当たる。
小さなまちに息づく、大きなものづくりの力
小千谷市は新潟県のほぼ中央、魚沼地域に位置する。市の中心には信濃川が流れ、全国でも類を見ない規模の河岸段丘が広がる。日本有数の豪雪地としても知られ、豊富な雪解け水と自然環境が、コシヒカリや錦鯉をはじめとする特産品と独自の文化を育んできた。
その小千谷には、長年培われてきた工作機械・工作機器の技術も息づいている。JIMTOF2026 おぢやスタンプラリーは、来場者に楽しみながら各社のブースを巡ってもらい、小千谷の技術力と地域の魅力を一体で伝える試みとなる。
7社の展示を巡れば、人口3万1000人弱のまちが、なぜこれほど多くのメーカーを育んできたのか、その答えの一端が見えてくるはずだ。
主催はJIMTOF2026 おぢやスタンプラリー実行委員会。実行委員長は、ユキワ精工の酒巻弘和社長が務める。ニュースダイジェスト社と小千谷鉄工電子協同組合が後援する。
共立ダイカスト加工所、ネジ不要の「DHロック機構」で落下事故を防止 医療・介護などへ用途拡大

共立ダイカスト加工所(社長=澤田 明氏、本社:兵庫県尼崎市)は、特許取得済みの落下防止技術「DHロック機構」を搭載した「ワンタッチクランプ」を製造・販売している。ネジを使わずに器具を固定できるのが特長で、理科実験器具をはじめ、企業の研究開発部門や医療・介護など、幅広い分野への用途拡大を目指す。
ワンタッチクランプは、レバーを握ると支柱に沿って上下に動かすことができ、手を離すとその位置で自動的にロックされる。「固定するときはネジを締め、動かすときはネジを緩める」という従来の操作を必要とせず、ネジの緩みや締め忘れによる器具の落下リスクを抑える。
搭載するDHロック機構は、荷重によってケースが傾くと、支柱との間に複合的な干渉が生じ、固定力が高まる構造を採用。シンプルな構造で製品へ組み込みやすく、静止荷重試験では100kgを超える耐荷重性能を測定したという。
開発のきっかけは、教育現場で実験器具を固定するネジが緩み、器具が落下して破損する事故が起きていると知ったことだった。本来は器具の改良によって防げる可能性のある事故が、現場の注意力だけに委ねられていることに課題を感じ、理科実験を安全に行える器具の開発に着手した。
一方、同社には、下請け加工を通じて培ってきた技術を生かし、独自製品を生み出して社会に貢献したいとの思いがあった。澤田社長は「何もしなければ固定され、操作したときだけ動く」という発想から約2年間にわたって試行錯誤を重ね、取引先の中小企業の協力も得て製品化した。現在は小中学校への普及を進めている。
同製品は「2023年度グッドデザイン賞」を受賞したほか、近畿経済産業局の「関西ものづくり新撰2025」に選定。「第37回中小企業優秀新技術・新製品賞」では奨励賞を受賞するなど、外部からも評価を得ている。
同社では今後、耐食性に優れ、クリーン環境や屋外、水回りでの使用を想定したオールステンレス仕様や、既設器具がある支柱にも途中から取り付けられる横入れタイプを開発する計画。DHロック機構を大型モニタースタンドや照明器具などへ応用する開発にも取り組み、教育現場にとどまらず、研究開発、医療、介護をはじめとする幅広い分野で、器具の落下事故防止につなげていく。
2026年7月分工作機械受注総額は1930.9億円
日本工作機械工業会(会長=坂元繁友 芝浦機械社長)がこのほどまとめた2026年7月分の受注実績は以下の通り。
2026年7月分工作機械受注総額は、1930.9億円(前月比△5.1%、前年同期比+50.4%)となった。受注総額は5カ月連続で1,700億円を超え、歴代では本年6月(2,034億円)、同3月(1,935億円)に次ぐ歴代3位に当たる。暦年上期末で2,000億円を超える受注があった前月(6月)比で▲5.1%(2カ月ぶり減少)となったものの、前年比(+50.4%)では13カ月連続で増加し、内外需とも50%を超える高い伸び率となった。
先月開催した記者会見にて、坂元繁友会長は「受注は回復局面から拡大局面に入ったとみている。」との見解を表明した。例年受注が一旦落ち着く夏場において、年度末効果で高まった3月実績に比肩する受注額となったことで、改めて今局面における設備需要の拡大傾向が鮮明になったと感じられる。
先⾏きは、内需では政策的⽀援効果、外需では、AI・ロボット関連需要の活況が国際情勢による不透明感を払拭し、更なる設備需要の伸⻑が⾒込まれる⼀⽅、インフレ懸念が設備投資に影響を及ぼす可能性にも留意が必要。
受注額の月別推移

(出所:日本工作機械工業会)
7月分内需532.4億円(前月比△8.2% 前年同月比+50.2%)
このうち内需は前月比で2カ月ぶり減少(△8.2%)、前年比で7カ月連続増加(+50.2%)の532億3700万円となった。外需と比較して立ち遅れ気味だった内需だが、3月以降は450億円を上回る水準で推移し、前年比の増加率も4カ月連続で35%を超えるなど、このところ回復の勢いが増している。
業種別に見ると、「一般機械」(231億円)は前月比で微減、「電気・精密」(82億円)は同△15.5%となったが、上期末明けの季節要因の影響が大きく、引き続き、データセンタや半導体製造装置、発電関連ユーザ等、随所に積極的な投資姿勢が窺える。「自動車」(93億円)も、6月に見られた複数の大型受注が剥落し、前月比で△39.3%と減少したが、前年比は+15.3%と4カ月連続で増加し、同じく4カ月連続で90億円を超えた。
・⼀般機械は、2カ⽉連続230億円⽔準で推移し、年平均が2023年平均と同⽔準と回復傾向。
・建設機械は2カ⽉ぶりに10億円を割れたものの、産業機械は2カ連続で200億円を超え、堅調に推移。
・⾦型は、前⽉⽐、前年⽐ともに減少し、18カ⽉ぶりに10億円割れとなるも、今後に期待。
・⾃動⾞向けは、前⽉の伸びが⼤きかった反動からか、前⽉⽐で⼤きく減少も、90億円を超えており堅調に推移している。直近の年平均で⾒ると、コロナ明けのペントアップ需要がみられた22年平均に次ぐ⾼い⽔準と⾔える。
・完成⾞向けは、前⽉⽐と前年⽐ともに減少しているが、特に前⽉⽐の⼤幅減からみて、スポット受注の剥落によるものと考えている。

(出所:日本工作機械工業会)
7月分外需 1398.5億円(前月比△3.8% 前年同月比+50.5%)

(出所:日本工作機械工業会)
外需は、前月比で2カ月ぶり減少(▲3.8%)、前年比で+50.5%(22カ月連続増加)の1,398億5300万円となった。外需は昨年12月以降の各月が歴代1~8位を占めており、受注総額と同じく歴代3位に相当する。
主な地域別にみると、北米は前月比微減も2カ月連続で400億円を超えた(404億円)。IMTS(9月中旬、米国・シカゴ)での活発な商談を見据えた商社や現地法人による活発なストック投資から、「商社・代理店」(76億円)が4カ月ぶりに75億円を上回った他、「一般機械」(94億円)、「航空・造船・輸送用機械」(88億円)も前月比でマイナスながら引き続き高めの受注水準を保っている。
欧州は3カ月ぶりに200億円を上回った(231億円)。ドイツ(47億円)は政策手続の遅れが設備投資抑制の一因となっていたが、改善方針が示されたことで3カ月ぶりに40億円を上回った他、イタリア等その他の国・地域の多くも前月比で増加した。業種別では「一般機械」(71億円)が前月比・前年比ともに大きく増加し、34カ月ぶりに70億円を超えたのが目を惹く。
アジアは、過去最高額(814億円)を記録した前月(6月)比で▲8.3%となったが、3~5月実績とほぼ同額の750億円となる等、引き続き力強さに揺るぎは見られない。中国(486億円)は5カ月ぶりに500億円を下回ったが、昨年1年間平均受注額(325億円)を依然大きく超えている。また、半導体関連の大型受注により8年7カ月ぶりに50億円に達した韓国(50億円)をはじめ、台湾、インド等でも勢いが感じられる。
・⼀般機械は、前⽉⽐で微減も、前年⽐は7カ⽉連続増加、4カ⽉連続の400億円超え。
・⾃動⾞は、前⽉⽐で2カ⽉連続増加、前年⽐では18カ⽉連続増加し、5カ⽉連続250億円超え。
・電気・精密は、前⽉⽐2カ⽉ぶり減少も、前年⽐では9カ⽉連続増加し、5カ⽉連続200億円超え。
・航空機・造船・輸送⽤機械は、前⽉⽐2カ⽉ぶり減少、前年⽐5カ⽉連続増加で、4カ⽉連続の100億円超えといずれも⾼い⽔準で推移。
① アジア
アジア計は、5カ月連続700億円超え
・東アジアは、9カ⽉連続400億円超え、550億円超えは5カ⽉連続。
・中国は、5カ⽉ぶりの500億円割れも9カ⽉連続350億円超えと⾼い⽔準で推移。
・その他アジアは15カ⽉連続の100億円超え、統計開始後3番⽬に⾼い受注額。
・インドは2カ⽉ぶりに90億円割れ。
② 欧州
欧州計は、3カ月ぶりの200億円超え
・ドイツは、3カ月連続の40億円超え、45億円超えは32カ月(2023年11月期)ぶり
・イタリアは、2カ月ぶりの30億円超え。
③ 北米
北米計は、歴代4番目の406.5億円
・アメリカは2カ月連続の350億円超え、統計開始後2番目に高い水準。
・メキシコは、2カ⽉連続20億円割れ

(出所:日本工作機械工業会)
今後の見通し
設備投資の周辺環境を見渡すと、恒常的に自動化・高効率化、環境対応に関する需要が見られ、長らく設備投資を控えてきたユーザを中心に老朽機更新の必要性が高まっている。その上で、技術革新に対応するための投資、様々な動機から生産拠点を見直す動きが強力なドライバとなり、設備投資の大きな流れを生み出しつつある。
全体的に見て、データセンタや半導体製造装置に関する需要拡大が、多くの地域で見込まれている。その上で、更に地域別に見ると、北米は、米国の即時償却恒久化措置や国内での製造業誘致、利下げ効果が相まって、ジョブショップ、エネルギ、建設機械、自動車、航空・宇宙関連等、幅広い分野で需要喚起が継続すると見られる。
アジアは、中国で引き続き、輸出向け自動車、通信機器、発電、ロボット等での需要が高原状態で推移すると見られる他、インドについても四輪車・二輪車、農業機械といった伝統的な需要分野に加え、航空機産業の成長の可能性にも注目が集まりつつある。加えて、韓国、台湾、東南アジア地域も半導体産業を中心に大型案件の出現が期待される。我が国では政策支援効果や、航空機・造船等でのプロジェクト投資、その他幅広い分野での老朽機更新の動きに繋がると期待される。
8月は各国で夏季休暇による稼働日数が少ないため、一時的に受注額は落ち着くと思われるが、これまでの商談の状況などから9月以降、再び受注は高まると思われる。日本国内において2024(R7)年度補正省エネ補助金の採択効果が受注の追い風となる可能性もある。また、IMTS及びAMB(9月中旬、ドイツ・シュツットガルト)並びにJIMTOF(10月下旬、東京)に向けて、会員や需要者の期待も膨らみつつある。
一方で、国際情勢を受けた調達事情の悪化やインフレが設備投資に影響を及ぼす可能性、部品・部材の入荷遅れが納期に影響する可能性など懸念材料もあり、受注残も含め、今後も業界を取巻く諸状況の推移に留意していきたい。
日本機械工具工業会 2026年7月分 会員統計生産額まとまる
日本機械工具工業会がこのほどまとめた2026年7月分の機械工具生産額は次のとおり。〈( )内は対前年比〉。■生産額 切削工具 507億円(135%)、耐摩耗工具 57.8億円(180%)、総合計 576.1億円(139%)。■ドリル生産額 特殊鋼工具 13.9億円(110%)、超硬工具 60.7億円(140%)、ダイヤ・CBN 1.1億円(150%)、総合計 75.7億円(134%)。■エンドミル生産額 特殊鋼工具 5.5億円(122%)、超硬工具 50.1億円(124%)、ダイヤ・CBN 1.7億円(130%)、総合計 57.3億円(124%)。■カッタ生産額 特殊鋼工具 1.7億円(110%)、超硬工具 10.4億円(179%)、ダイヤ・CBN 0.5億円(98%)、総合計 12.7億円(159%)。■ギヤカッタ生産額 総合計 6.6億円(108%)。■ブローチ生産額 総合計 8.2億円(107%)。■ねじ加工工具生産額 特殊鋼工具 44.6億円(138%)、超硬工具 4.7億円(125%)、総合計 49.3億円(137%)。■バイト生産額 特殊鋼工具 0.2億円(389%)、超硬工具 10.3億円(120%)、総合計 10.5億円(121%)。■リーマ生産額 特殊鋼工具 1.3億円(115%)、超硬工具 3.7億円(128%)、総合計 5億円(124%)。■鋸刃カッタ生産額 特殊鋼工具 1.4億円(112%)、超硬工具 0.6億円(121%)、総合計 2億円(114%)。■インサート生産額 超硬工具 214.6億円(144%)、ダイヤ・CBN 23.7億円(108%)、総合計 238.3億円(140%)。■ボディ関係生産額 総合計 18.7億円(105%)。■超硬合金生産額 切削用 206.8億円(162%)、耐摩耐触用 36.8億円(239%)、総合計 249.9億円(173%)。
経産省・2026年6月度機械統計 機械工具生産動態調査
経済産業省の2026年6月度 機械工具生産動態調査(機械統計)は以下のとおり。

*機械工具(機械統計)との差はダイヤモンド工具のダイヤモンドドレッサー、グライディングホイール、カッティングソー、セグメント工具、その他ダイヤモンド工具。
*耐摩工具の一部はその他超硬工具に含まれる。
(表出所:日本機械工具工業会)
【継続取材】超硬工具のリサイクル――タングステン供給リスクと国内循環
超硬工具リサイクルをめぐる企業戦略と加工現場の実状
切削工具のリサイクルが、資源価格と地政学リスクに左右される製造業の重要課題になっている。なかでも焦点となるのが、超硬工具の主原料であるタングステンだ。中国による輸出管理や国際価格の上昇を受け、使用済み超硬工具や研削スラッジを国内で回収し、再び工具原料へ戻す仕組みの重要性が増している。
超硬工具のリサイクルは、単なる廃棄物削減策ではない。超硬スクラップを「次の鉱物資源」として捉え、調達、製造、使用、回収、再資源化をつなぐ取り組みである。筆者は、製造現場ドットコムの開設以前から、紙媒体で切削工具業界を取材してきた。
本稿では、2012年以降に重ねてきた超硬工具とリサイクルに関する取材を、資源調達、企業戦略、製造現場という視点から再構成した。日本機械工具工業会、工具・素材メーカー、加工企業への取材を通じ、タングステンの国内循環をめぐる現在地をまとめた。
(取材・文=那須直美)
〈この記事のポイント〉
(1)超硬工具に使われるタングステンは、供給国の偏在が大きい重要鉱物である
(2)国内の超硬工具リサイクル率は約3割にとどまり、海外流出と現場での分別が課題になっている
(3)使用済み工具の回収と並行して、タングステンを使わない代替材料や使用量削減合金の開発も進んでいる
(4)資源循環は、環境対応に加え、原料調達、工具価格、製品設計にも関わる経営課題である
切削工具の性能を支えるタングステン
超硬合金は、炭化タングステン(WC)をコバルトなどの結合材で焼き固めた材料である。硬さ、耐摩耗性、耐熱性に優れ、自動車、航空・宇宙、半導体製造装置、金型、精密部品などの加工に欠かせないうえ、切削工具の性能にも大きく影響する。ざっくりいうと、切削工具も〝切れ味〟が安定しなければ、加工精度、生産性、品質の維持は難しいのだ。
一方、原料となるタングステンは供給地域の偏在が著しい。日本はその多くを海外からの輸入に頼っており、産出国の政策、輸出管理、国際市況、為替の影響を受けやすい。工具価格の問題に見えても、その背景には鉱物資源の調達構造がある。
中国の輸出管理とAPT価格の急騰
供給リスクを一段と顕在化させたのが、中国によるタングステン関連品目の輸出管理である。タングステンの国際価格指標の一つであるAPT(パラタングステン酸アンモニウム)の価格も大きく上昇した。
製造現場ドットコムの取材で確認した指標では、2026年3月18日時点の欧州市場におけるAPT価格は、1MTU(酸化タングステン〈WO₃〉10kg相当)当たり2,100~2,400ドルとなり、中心値は2,250ドルに達した。これは2025年2月の水準と比べて約6.6倍に当たる。価格は地域や取引条件、集計時点によって異なるが、調達環境が短期間で大きく変化したことを示している。
こうした変化は、素材メーカーだけの問題ではない。切削工具の値上げ、見積有効期間の短期化、工具仕様の見直しなどを通じ、加工現場の原価と生産計画に直接影響する。
超硬スクラップは「次の原料」になる
超硬スクラップは新しい概念ではない。使用済み超硬工具は、1930年代からタングステンを含む有価物として取引されてきた。ただし、回収品を粉末・化学処理によって再び工具原料へ戻す精錬型のリサイクルが本格化したのは2000年代以降である。
製造現場ドットコムでは2012年にも、中国への供給依存と価格高騰を背景に、超硬合金スクラップからタングステンを高効率で回収する国内技術を取材している。当時から課題は「使い終えた工具をどう処分するか」ではなく、「国内にある資源を、いかに国内の製造基盤へ戻すか」にあった。
現在は、使用済みのチップ、ドリル、エンドミルだけでなく、工具製造時に発生する研削スラッジも重要な回収対象になっている。適切に選別され、再資源化工程へ渡されれば、超硬スクラップは鉱石由来原料の一部を代替できる。
2014年に報じた「脱タングステン」 ダイジェット工業のサーメタル
資源リスクへの対応は、回収と再生だけではない。タングステンを使わない材料への置き換えや、使用量そのものを減らすという選択肢もある。
製造現場ドットコムでは2011年から、ダイジェット工業が開発した新材料「サーメタル」を取り上げてきた。サーメタルは炭窒化チタン(TiCN)を主原料とする複合材料で、タングステンとコバルトを含まない。超硬合金やセラミックスと同程度の硬さと耐摩耗性を持ちながら、超硬合金の約3分の1という軽さ、耐焼付き性、耐酸化性などを特徴とする。
2014年8月の記事では、同社がサーメタルを用いたダイスで金型の量産に成功し、燃料電池や自動車部品向けに一定の受注を確保したことを報じた。同社は同年秋を目処に1億円強を投じ、量産へ移る方針を示していた。タングステン価格の上昇が問題となるなか、「脱タングステン」をコストと供給リスクの両面から捉えた取り組みだった。
この技術開発は一時的なものではない。2016年にはサーメタルなど高品質合金の生産能力増強を目的に、三重県伊賀市で総投資額約10億円の新工場建設を発表した。その後も同社は、省タングステン材料としてサーメタルの用途開拓を続けてきた。
ダイジェット工業と冨士ダイス 使用量削減合金で提携検討
そして2026年、ダイジェット工業と冨士ダイスは、タングステンとコバルトの使用量を削減する新合金の開発・販売について、業務提携の検討を開始した。
ダイジェット工業は2010年にタングステンとコバルトを含まないサーメタルを開発・販売している。一方、冨士ダイスも両金属の使用量を削減した新合金の開発を進めてきた。中国が2025年2月にタングステンを輸出管理の対象とし、供給不安と価格高騰が強まるなか、脱タングステンを業界共通の課題とする両社の方針が一致した。
両社は、それぞれの技術と経営資源を活用した新合金の開発に加え、双方の販売網を使った販路拡大も検討する。2010年代に始まった代替材料の開発が、地政学的リスクを低減する企業間連携へ発展しようとしている。
原料の比率を高めること、海外へ流出するスクラップを国内へ戻すこと、代替材料を開発すること、製品一個当たりのタングステン使用量を減らすこと。いずれか一つで問題が解決するのではない。複数の手段を組み合わせることが、供給リスクに強い製造基盤につながる。
国内リサイクル率は約3割 工業会が指針を改定
日本機械工具工業会によると、国内の超硬工具リサイクル率は約3割にとどまる。国内で発生した超硬スクラップの一部が海外へ流出すれば、日本の製造現場で再利用できる資源も失われる。
同工業会は2026年、超硬工具スクラップのリサイクル指針を改定した。工具使用者に向け、超硬、サーメット、ハイスなどの選別、保管、引き渡しの考え方を示すとともに、回収した資源を国内の製造基盤へ戻す方針を表明した「リサイクル窓口事業者リスト」も作成した。
ここで重要なのは、回収量だけではない。異なる材種が混ざれば、再資源化の効率や品質に影響する。発生した段階で正しく分け、適切な回収先へ渡すことが、国内循環の入口になる。
三菱マテリアルが構築する回収・精錬・再製品化の循環
三菱マテリアルは、使用済み超硬工具や研削スラッジを回収し、グループ内でタングステン原料へ戻す循環体制を構築している。国内では、日本新金属の秋田工場が湿式精錬を担い、回収したスクラップから鉱石由来品と同等水準のタングステン原料を再生する。
この仕組みは、単にリサイクル設備を保有するという話ではない。上流の原料回収・精錬から、粉末、超硬素材、切削工具、再回収までをつなぎ、供給網を自ら管理する取り組みである。中国の輸出管理が強化された局面でも、同社は必要量を確保できたという。
「原料は外部から購入するもの」という従来の前提は変わりつつある。市場に出た工具を回収し、自社の次の原料にする。循環量を増やすほど、資源価格や輸出政策による影響を抑える余地も広がる。
H.C. Starckに約5,000万ユーロを投資
三菱マテリアルは2024年、ドイツのH.C. Starck Tungsten GmbHを買収した。H.C. Starckは100年以上の歴史を持ち、欧州、北米、中国にタングステン粉末・炭化タングステン粉末の生産拠点を展開している。
同社はドイツ・ゴスラー拠点に約5,000万ユーロを投じ、タングステンのリサイクル能力を年間5,000トンから7,000トンへ引き上げる。建設開始は2026年、完成は2028年の予定だ。現在も原料の約8割にリサイクル材を使用しているが、増強後はほぼ全量をリサイクル原料で賄う計画である。
三菱マテリアルは、日本、欧州、米州、アジアの各地域で循環網を整備し、2030年度までに超硬製品の原料を100%リサイクル原料へ切り替える目標を掲げる。国内の精錬基盤と海外拠点を組み合わせ、地域ごとに回収と再資源化を完結させる構想だ。
製造現場に残る「分別の壁」
循環の入口に立つのは、工具を使う加工現場である。しかし、現場での分別は簡単ではない。
近藤鉄工所では、超硬、サーメット、ハイスを全社で分別し、超硬スクラップを住友電気工業の国内リサイクルへ回している。取り組みの契機は、商社や工具メーカーから「回収したスクラップが海外へ流れる場合がある」と聞いたことだった。国内で使う資源を国内へ戻したいとの考えから、分別を始めた。
一方、現場からは「分別が面倒」「分け方が分からない」「超硬とサーメットの違いが分からない」といった声も出る。回収箱を置くだけでは定着しない。なぜ分けるのか、何を分けるのか、どう見分けるのかを作業者へ伝え、迷わず投入できる表示と置き場を整える必要がある。
つまり、分別は環境部門だけの仕事ではない。工具管理、購買、生産技術、現場作業者が共通の知識を持つことで、初めて循環が機能する。
資源価格の上昇は工具選定も変える
タングステン価格の上昇は、加工現場の工具選定にも変化をもたらしている。近藤鉄工所への取材では、超硬工具の価格改定が年に複数回行われるほか、直径12ミリ以上のソリッドエンドミル、ドリル、超硬モジュラーシャンクなどで価格が都度見積もりとなり、見積有効期間も短くなっているという。
その結果、ソリッド超硬ドリルに対し、刃先だけを交換するヘッド交換式ドリルの経済性が相対的に高まっている。使用する超硬量を抑えながら性能を確保する設計は、調達リスクとコストの両面で意味を持つ。
回収して原料へ戻すことに加え、工具一本当たりのタングステン使用量を減らす、長寿命化する、再研磨して使う。資源循環は、廃棄後の処理に限らず、工具の設計、選定、運用まで含む課題である。
循環の成否を決めるのは現場の知識
超硬工具のリサイクルは、環境対応の付加的な活動ではなくなった。タングステンの安定調達、工具価格、生産継続、経済安全保障を結ぶ製造戦略の一部である。
メーカーが精錬設備を増強しても、使用済み工具が正しく回収されなければ原料は戻らない。加工企業が分別しても、回収後に海外へ流出すれば国内循環にはつながらない。工具メーカー、商社、回収事業者、加工企業の役割が一本の線になって初めて、使用済み工具は「次の原料」になる。
その出発点は、製造現場にある。工具を捨てる前に材種を見分け、分けて保管し、行き先を確認する。一見地道な作業が、国内のタングステン資源と製造基盤を支える。
製造現場ドットコムは今後も、資源価格や企業発表だけでなく、回収、分別、工具選定を担う現場の実態を継続して取材する。
〈関連記事〉
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●三菱マテリアルの取り組み 超硬スクラップが〝鉱物資源〟に
(https://seizougenba.com/node/14467)
●三菱マテリアル、独H.C. Starckのタングステンリサイクル能力を増強
(https://seizougenba.com/node/14464)
●近藤鉄工所に見る超硬工具スクラップの分別と国内循環
(https://seizougenba.com/node/14469)
●超硬合金スクラップからタングステンを高効率で回収する技術(2012年)
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●三菱マテリアル、加工事業カンパニーの組織を再編 資源循環と製品事業を一体化
(https://seizougenba.com/node/14423)
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