【米国】アメリカの高齢者向け公的医療保険「メディケア」が、アザラシ型ロボット・「パロ」によるバイオフィードバック・セラピーを「非薬物療法」として保険適用に!

 産業技術総合研究所(理事長=中鉢良治氏)などが1993年から研究開発し、2013年に第9世代が発表され、(株)知能システム(社長=大川丈男氏)が知的財産権のライセンスを受けたアザラシ型ロボット「パロ」が、アメリカ合衆国において、認知症、パーキンソン病、PTSD、ガン、脳損傷等の患者が、うつ、不安、痛み等を診断された場合の治療に、アメリカ仕様の神経学的セラピー用医療機器(クラスII)のバイオフィードバック・セラピーとして処方された場合、そのトリートメントの医療費用が公的医療保険のメディケアにおいて、保険適用になったと、このほど知能システム並びにPARO Robots USが発表した。

 また、脳梗塞後等の身体的あるいは認知的なリハビリテーションのためのBFT-PARO も同様にメディケアの保険適用になった。 処方者(Prescriber:医師、ナース・プラクティショナー等)は、ICD10(国際疾病分類)に基づいて患者を診断後、CPT(Current Procedural Terminology:現行医療行為用語)コードを用いて、治療について処方する。

 BFT-PARO は、複数のCPT コードで処方することができる。病院(入院患者)、Skilled Nursing(高度看護施設)、ホスピスでのBFT-PARO の処方の他、Home Health Service(在宅医療サービス)の処方もメディケアで精算が可能である。

 現在、向精神薬や認知症薬は、副作用の問題があるため、海外では投薬をできるだけ低減しようとの動きがあり、非薬物療法として、BFT-PARO は看護・介護の質を高めることが期待できる。また、パロには副作用が無いため、本当に必要な薬物とBFT-PARO を組み合わせて用いることも可能だ。 例えば、「痛み」に対して、1 回当たり25 分間のトリートメントとしてBFT-PARO が処方された場合に、処方者自身によりBFT-PARO を実施するCPT コードでは1 回当たりの費用は約125 ドルであり、処方に従い各種のセラピスト等(理学療法士、作業療法士等)がBFT-PAROを実施する場合には、別のCPT コードで約85 ドルとなっている。

 アメリカのメディケアは、高齢者および障害者向け公的医療保険制度であり、連邦政府が管轄している社会保険プログラム。原則として、アメリカ合衆国に合法的に5 年以上居住している65 歳以上のすべての人が給付の対象となる。また、民間医療保険会社のBlue Cross Blue Shield も、メディケアと同様に、BFT-PARO の処方に関するCPT Code の保険適用を開始しており、今後、他の民間医療保険会社でも、同様に保険適用になることが期待できるとされている。

 今後は、アメリカの処方者に対して、臨床エビデンスを示して、パロとそのセラピー効果を認知してもらい、各種の疾患の診断結果に対して、非薬物療法として、BFT-PARO が処方されるようにする必要があるため、時間をかけて、普及に努める必要があるとしている。

 この詳細については、2018 年11 月1 日に開催される「第10 回アザラシ型ロボット・パロによるロボット・セラピー研究会」(会場:IKE Biz としま産業振興プラザ、東京都豊島区西池袋2-37-4)において、パロの治験を実施後、BFT-PARO を処方している、アメリカ・テキサス州立大学Sandra Petersen 教授から紹介される予定だ(Web 会議により参加)。

 日本では、海外との医療福祉制度の違いにより、パロを高齢者のケアを目的とする「福祉用具」としている。2013 年度から現在、岡山市が、総合特区事業「岡山市介護機器貸与モデル事業」の対象機器として、パロに介護保険を適用する毎月のレンタル対象として、10%の費用負担で、在宅介護の要介護者(1~5)がパロと生活する実証実験を行っている。

 これまでに、認知症の要介護者の「問題行動の改善」、「認知レベルの維持」、「家族等の介護者の負担の軽減」が示され、パロとの生活が、認知症の要介護者の在宅期間を維持しやすくする可能性が示された。詳細については、第10 回パロ研究会で岡山市から発表される。

 一方、今後、日本向けの医療機器として、安全性とセラピー効果を謳う「医療機器版のパロ」の研究開発も進め、急性期から慢性期にかけて、様々な患者に利用しやすくなるように、医療制度への組込みも目指す。

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