日本機械工具工業会が秋季総会並びに平成30年度日本機械工具工業会賞表彰式を開催

 日本機械工具工業会(会長=牛島 望 住友電気工業 専務)が、10月3日、名古屋キャッスルプラザで秋季総会並びに平成30度日本機械工具工業会賞表彰式を開催した。

 第一部の総会では、新規入会会員の紹介、平成30年度「日本機械工具工業会賞」の発表、各委員会報告のほか、平成30年度上記収支報告、同機械工具生産額改定見直しなどの報告があったあと、東京電機大学工学部機械工学科 教授 松村 隆氏を講師に迎え、「切削加工の動向と高度化技術」をテーマに記念講演が行われた。

平成30年度日本機械工具工業会賞「業界功労賞」


〇太田拓夫氏(元三菱マテリアル(株) 元三菱マテリアル神戸ツールズ(株))
 平成元年 6月~平成 3年6月 超硬工具協会 総務委員長
 平成15年5月~ 平成17年5月 日本工具工業会 副理事
 平成17年5月~ 平成19年6月 同 理事長

企業経歴
 昭和45年4月~平成14年3月 三菱マテリアル(株)
 平成14年4月~平成19年9月 三菱マテリアル神戸ツールズ(株) 代表取締役社長

功績の概要
 氏は、平成15年5月、日本工具工業会副理事に就任、副理事長を1期2年、平成17年からは、日本工具工業会第9代理事長を1期2年務めた。また、超硬工具協会でも平成元年から2年間総務委員長として活躍した。日本工具工業会の4年間の理事長、副理事長の間、フランクな人間性を発揮し、会員同士の融和に取り組み、工業会の活性化に貢献した。




〇故、木下徳彦氏(冨士ダイス(株))
 平成18年6月~平成19年6月 超硬工具協会 懇親担当常任理事
 平成19年6月~平成21年6月 同      関東地区常任理事
 平成21年6月~平成23年6月 同      副理事長協会賞
 平成23年6月~平成25年6月 同      特許担当常任理事
 平成25年6月~平成27年6月 同      副理事長関東地区
 平成27年6月~平成28年6月 日本機械工具工業会 副会長 コンプライアンス担当

企業経歴
 平成16年 5月 代表取締役社長
 平成27年10月 代表取締役会長
 平成29年11月25日 逝去

功績の概要
 氏は、平成16年、創業者新庄應義氏を後継し社長に就任。平成18年には、超硬工具協会役員として永年中枢で牽引された新庄應義氏から懇親担当常任理事を引き継ぎ、平成19年関東地区、その後、協会賞、特許、2期目の関東地区担当理事を歴任。さらに旧、日本工具工業会との統合後は副会長兼コンプライアンス委員長を担当し、それぞれの団体において主要役員として活躍した。関東地区担当理事時代には全員参加、会員協調の基本理念を具現化し、21、22年度には副理事長兼協会賞選考委員長として、特に中小・中堅会員の応募件数の増加策に腐心、「作業・事務・生産技術等の改善賞」の専攻評価、ノウハウの開示問題など、改善賞の客観性評価の難しさに一石を投じた。また、新庄基金の設立に際しては、「会社の業務は全て重要であり、永年にわたり決して目立った存在ではないが、黙々と業務に励み会社の発展になくてはならない方」を表彰したいとして先代の意向を基に「新庄(陰徳の士)賞」を設けた。

技術功績賞


「ワンレボリューションスレッドミル「AT-1」の開発
●オーエスジー(株) 依田智紀氏

新規性
・従来の製品は右刃右ねじれ溝であったため、工具先端側から切削負荷がかかり、倒れやすいという問題点があった。これを右刃左ねじれ溝にすることで、工具の倒れを大幅に減少したことに新規性がある(特許第4553251号)。
 ・スレッドミルは切削負荷によるビビリが発生しやすい工具である。これを不等分割・不等リード溝を採用することでビビリを減少させた点においても新規性がある(特許第4996694号)。




「ラジアスカッタ『Do Twist Ball』の開発」
●(株)タンガロイ 雲井春樹氏 及川有宇樹氏 坂内由昌氏

新規性
 ・本製品は、インサート底面をカッタの半径方向に傾かせたこと(ツイストクランプテクノロジー)によって、クランプ剛性を向上させ、切削中のインサートの動きを抑制した。インサートは、角丸長方形の両面4コーナ仕様で、従来製品と比較して、切れ刃-ねじ穴間の断面積が約2倍となり、強度が大幅に向上した。
 ・大きなインクリネーションを持つ切れ刃により、食いつき衝撃の緩和とスムーズな切りくず排出を両立した。カッタには、高送りインサートも搭載可能で、幅広いアプリケーションに対応できる。




「鋼用ハイパーバニシングドリルの開発」
●(株)アサヒ工具製作所 福田勝利氏

新規性 
 ・従来のバニシングドリルはアルミ、鋳鉄向けであった。鋼材に対してのバニシング加工は不可能とされてきた。同社既存のバニシング技術を応用し、食い付き部や溝形状を最適化。鋼へのバニシングに対応した超硬ボディー、コーティングは耐摩耗、耐溶着性に優れるものとした。




「耐熱合金加工用サイアロン材種『SX3』の開発」
●日本特殊陶業(株) 小村篤史氏 吉川文博氏

新規性
 ・被削材の難削化に伴い更なる長寿命化には耐欠損性と対摩耗性の双方を向上させる必要があった。この課題に対し従来はβサイアロン流新のAl固溶量を増やして耐摩耗性を向上させ、結晶粒の微細化で耐欠損製の低下を抑制していた。本開発品は被削材とβサイアロンの反応による脱粒が摩耗進行のメカニズムであることを解明し、①反応性が低いAl-rich結晶相を見出し、抑制することで耐摩耗性を向上、②新製法によるβサイアロン粒子の強靱化、針状化促進により耐欠損性を向上させた。結果、耐摩耗性と耐欠損性の両立を高次元で成功させた。




「高能率加工用多機能カッタ『VPX』の開発
●三菱マテリアル(株) 神原正史氏 北嶋 純氏 坂本千波氏

新規性
 ・切れ刃強度のみを重視した縦刃式インサートを採用したカッタは以前より存在していた。ただこれでは多機能性や切れ味を重要視する日本市場では受け入れられないことは明白である。同社では切れ刃強度を維持しつつ、多機能に使うことができるインサート側面形状、ならびに低抵抗を実現するインサートすくい面形状を発明し製品化に成功した。

環境賞

「環境大賞」
●京セラ(株)
 環境マネジメントシステムに基づく高レベルの組織的な仕組みが構築されており、地球温暖化防止、廃棄物削減等、環境活動に積極的に取組み、改善の推進力も高いと判断できる。いかなる状況下でも継続的省エネ、省資源への取組みを実践し、2015年度選考より4年連続で総合評価第1位。これらの環境活動は、他社の規範と成り、2018年度環境大賞に相応しい。

「環境特別賞」
●レッキス工業(株)

 従来より環境管理活動に継続的な取組みを実施し2014年度実績から4年連続してCo²原単位排出量を削減している。廃棄物対策の取組みについても継続的な活動が顕著にみられゼロエミッションに対する取組みの効果が確認できる。(過去7年再資源化率99%以上)。エネルギー使用量については、生産計画の見直し(効率的な生産)、老朽化した設備の計画的な更新を実施し使用量の削減を図り、現状の高いレベルを維持しながらさらに効果を上げている。

●日本特殊陶業(株)
 廃棄物対策に積極的に取組み、2015年度実績から再資源化率99%以上を3年連続継続し、ゼロエミッションを達成。エネルギーの生産高原単位も2015年度実績から毎年減少し、2017年度実績は2015年比7%向上した。廃棄物、省エネについて現状に満足することなく、改善活動をさらに活性化し、効果を上げている。

「しっかりリサイクル対応を」

あいさつをする牛島会長
あいさつをする牛島会長
 懇親会であいさつに立った牛島会長は日頃の感謝を表したあと、「中国は現在、環境規制が非常に厳しくなっている。タングステンの鉱山については環境監査も厳しくなっている。そういう中にあって原料の生産はされているが、日本でも使用済みの超硬チップ等が中国に流れているという問題があり、超硬工具協会時代には対応策はないのかと考えていたこともあったが、ここへきて中国が超硬でもスクラップを自国に入れないというポリシーをとりはじめている。したがって日本国内で発生するスクラップは、われわれの力でリサイクルができることになるので、皆さんとしっかり対応していきたい。」と述べた。

玉井経産省産業機械課長
玉井経産省産業機械課長
 来賓を代表して、玉井優子 経済産業省製造産業局産業機械課長が、「海外で大きなプラントを建てられるのを何度も見てきたが、そのたびに日本のものづくりの凄みを拝見した。海外で日本企業が活躍しているのも、こうした国内におけるものづくり企業があってこそだと強く実感している。経済産業省ではコネクテッドインダストリーズを掲げて企業や業界を超えて“ヒト・モノ・カネ”を結合してビジネスを生みだそうと取り組んでいる。」とあいさつをした。

 乾杯の発声を中村伸一副会長(三菱マテリアル常務 加工事業カンパニープレジデント)が行い開宴した。宴もたけなわのころ、岩田昌尚副会長(イワタツール社長)が中締めを行い散会した。

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