【レポート】「牧野精機の機械を入れて良かったと言われたい!」~牧野フライス精機が新本社工場を完成! 生産能力が36%アップ!~

 工具研削盤メーカーとして国内市場トップシェアを誇る牧野フライス精機(社長=清水大介氏)が、このほど新本社工場を完成した。同社は10年前からアジアを中心とした海外市場にも積極的に進出しており、国内外の旺盛な需要を取り込んでいるため、生産能力の限界が近いことに加え、今後の事業拡大を考慮して2015年より旧本社工場を解体しながら三期に分けて工事を進めてきた。総工費は25億円。これにより、生産能力は、旧工場対比で36%増となった。

幅広いラインナップと優位性

説明する清水社長
説明する清水社長
 同社の国内における営業拠点は、本社工場のある厚木(神奈川県)、太田(群馬県)、名古屋(愛知県)、大阪(大阪府)の4カ所。現在アジア地域にも積極的に進出をしており、近年は売上げの30%~40%が海外向けとなっている。中国に3カ所のほか、タイ、インドネシア、インドに工具研削盤のデモマシンを設置しており、機械見学やテスト加工を現地で行うことができる。また、各国に日本から営業を含め、加工技術やサービスが駐在しているので、海外でも日本国内と同様の迅速な対応が可能であるところが大きな魅力だ。

 同社が製造している工具研削盤は、ドリルやエンドミル等の切削工具を製造及び再研削するための工作機械だ。航空機からスマートフォンまで世の中にある大半の製品、直接的、間接的にこの切削工具を用いた切削加工を経て生み出されている。切削工具はものをつくるための道具でもあることから、世の中にとっては必要不可欠なものであり、清水社長は、「弊社が製造している工具研削盤も必要不可欠、非常に重要な工作機械だと言えます。」と述べている。

 同社の工具研削盤の歴史だが、万能工具研削盤「C-40」から始まる。清水社長はこの研削盤について、「1962年に牧野フライス製作所で開発され、1968年に当社に移管されたものであり、歴史的価値のある工作機械ロングライフ・ベストセラー賞を頂いています。」と説明をしており、50年以上たった今でも、同社ではこの機械を作り続けている。すでに世界で1万3,000台以上を販売しているというから、まさにロングセラー中のロングセラーだろう。

 同社のNC化、数値制御化は1982年のこと。日本で初めて、ワンチャック全加工が可能なNC工具研削盤「CNX40」を開発した。これからも同社かなり早い段階でNC化に成功したことが分かる。

開放的で広々とした社内
開放的で広々とした社内
 現在、同社における製品ラインナップだが、工具の外刃から外周までの全行程を行うワンチャック全加工機と言われるものから、工程を限定させた工具研削盤、太径工具対応から0.05φの極小径工具対応の工具研削盤など多様な種類を持つ。現時点で先進国における工具研削盤メーカーでは、同社ほど幅広い製品ラインナップを揃えているところはないと聞いた。

 切削工具は通常、ブランク研削、もしくは段研と言われる円筒素材の大まかな形状出しを行って、工具研削で歯を付け、最後に測定をするが、この工具研削の前後工程に同社は2017年から進出をしている。この前後工程までカバーしている企業・メーカーについて清水社長は、「現時点で、世界では当社のみとなっています。」と優位性をアピールした。

これが新工場だ! 特長はダントツの生産能力!

価格競争に巻き込まれない! ダントツの生産力を目指す工場内。
価格競争に巻き込まれない! ダントツの生産力を目指す工場内。
 清水社長は、新工場建設に至った経緯について、「弊社はどんな会社になっていきたいのか。私はお客様から『牧野精機の機械を入れてほんとによかったよ。』と10年後も20年後も言ってもらえるような会社にしていきたいと考えています。そのためにわが社は継続して存続し、かつ発展をしていかなければなりません。そのためにはダントツの生産力と価格競争回避が必要と考えています。」と述べた。

 なぜ生産力が断トツでないと駄目なのか――の理由に、「当社のライバルメーカーは、主にドイツ、スイス、オーストラリアになり、その生産拠点は東欧、中国、台湾、タイ等、人件費の安い所に所在をしています。当社がここ日本で今後も製造していこうと考えたときに、人件費の差を跳ね返すためには、生産力がダントツでなければなりません。ダントツの生産力を達成するためには、旧工場では限界があるということを2012年終わりに判断をして、一気に工場建設に動き始めました。」と説明した。

 新本社工場は、3つの棟をつなぎ合わせた形で構成されている。それぞれサイト1~3まであり、サイト1は1階、中2階、2階、3階、サイト2とサイト3は1階、中2階、2階という構造だ。

 新工場1階は生産スペース機械の組み立てが重量に関係なくできるようになっているうえ、サイト2の2階が丸ごとユニット組み立てエリアとして使用できる。生産スペースの従来比較では、重量級工具研削盤をどこでも作れるようになったことを挙げた。機械の大きさは機種によって違うが、旧工場においては19台設置が可能だったことに対して、新工場ではマックスで30台の機械が設置可能だ。サイト2の2階が丸々ユニット組み立てエリアとして使用することができるので、生産スペースは旧工場と比べるとかなり広がった。

 物の整流化については、サイト3をパーツ供給センターに機能特化させることで、整流化を実現した。基本的には、ここで物を受け入れ、サイト1のプロダクションエリアやサイト2の機械組み立てエリアに物を流す。サイト3で物をストックしておいて、サイト2のユニット組み立てエリアのほうに物を流す―――ということで整流化を実現する。

社員が働きやすい環境へ

社員の健康を考慮し、ジムを完備している。設備も最新のトレーニングマシンがズラリ!
社員の健康を考慮し、ジムを完備している。設備も最新のトレーニングマシンがズラリ!
 清水社長は、「この生産スペースの拡張や物の整流化、この2つだけでも生産能力はかなり上げられると思っています。生産能力は旧工場対比で36%増できるという計算ですが、ただ、これで満足するのではなく、50%増・・・最終的には75%増の生産能力を達成したい。そのために当社は、人員増強と同時に、組立ての自動化、搬送の自動化、検査の自動化などにも積極的に投資をしていきたいと考えています。」と考えを述べた。

 また、価格競争回避についても触れ、「新工場ができてスペースが広がりますので、サイト1の1階部にソリューションセンターを設けます。このセンターでは機械を常設して、テスト加工や加工ノウハウの蓄積、研究開発等を行う計画です。現在機械メーカーは、機械だけ売っていれば良い、という時代はとうに過ぎています。加工ノウハウ等までを提供していかなければ簡単に価格競争に巻き込まれてしまう。今後はIoTを念頭に置いた研究等も実験を通して行う必要があり、ようやくこのソリューションセンターが完成したことでその準備が整いました。」と意気込みを示した。

 最後に清水社長は、「新本社工場建設にあたり、思いがありました。それは、社員が誇りを持てる職場環境づくりを目指すということです。従来、中小製造業と言えば、どうしても老朽化した薄暗い工場というイメージがつきまとっていました。私はそうしたイメージを払拭して、社員が清潔で働きやすく、家族を連れて来たくなるような職場環境を目指したかった。様々な意見はあろうと思いますが、私は優れた製品というのは、良い職場環境から生まれると信じております。けっして華美ではなく、社員が気持ちよく働けるようなデザインを心掛けて工場を建設して参りました。」と新工場建設において率直な気持ちを話し、しめくくった。

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