板金エキスパートを目指せ! アマダスクールが「第31回優秀板金製品技能フェア」の入賞作品を表彰 ~厚生労働大臣省はナダヨシ、経済産業大臣賞は佐藤医療機械製作所が受賞~
職業訓練法人アマダスクール(理事長=末岡愼弘氏:神奈川県伊勢原市)は「第31回優秀板金製品技能フェア」5部門の入賞作品を選定し、3月9日(土)にアマダ・246ホールで表彰式を開いた。
選考は日本塑性加工学会会員、シートメタル工業会役員と審査委員の他、アマダ・ソリューションセンターの来場者の投票で行われ、その結果、応募総数263点の中から技能賞以上の優秀作品67点が選ばれた。また、今回は、過去最多であった昨年に迫る作品集に加え、海外から新たに出品する国が増えて、作品の幅が広がったこと、また、主要な賞に海外からの作品が例年より多く選出したことが特長となった。
同フェアは、国内外の製造業において板金加工技術・技能の向上と交流を図り、業界全体の発展につながることを目的に1989年から毎年開催している。現在は「単体品の部」、「組立品の部」、「溶接品の部」、「造形品の部」、「学生作品の部」の5つの部門で毎年5月から国内外の板金加工作品を募り、作品はアマダ・ソリューションセンターで全て展示され、厳正な審査を経て毎年3月に表彰式を行っている
海外からの出展増に加え、作品の質が非常に向上
主催者を代表して末岡理事長があいさつをした。末岡理事長は、「本日は平成最後の表彰式となり、同時に新しい時代のスタートラインに立ったと思う。これまで皆様方からご出展いただいた作品の総数、今回を含めて5,316点に達した。」と述べたあと関係者に感謝の意を表した。また、昨年に引き続き、厚生労働大臣賞、経済産業大臣賞をはじめ、分野を越えた上位7賞に加え、今年から新たに出展分野別のグランプリ各1点を表彰すると説明した。なお、学生の部については従来どおり、金賞、銀賞、銅賞の表彰となった。末岡理事長は、「過去最多であった昨年に迫る出展数となった。また、海外からの出展国の増加もあり、その作品の質自体も非常に向上していることが印象的だった。最新の加工機械あるいはソフトウェアを活用して、熟練者の高度な板金加工技術に知恵と工夫を重ね、特に意外性が高い、“これ、どうやって加工したんだろうか”という作品が多くの来場者から関心と高い評価を得ているように感じた。」と感想を述べたあと、「今後わが国の少子化・高齢化がますます進んで、加工設備の自動化や、AIと呼ばれる人工知能化がさらに進むものと考えられるが、板金加工の世界でAIが人を超える、いわゆるシンギュラリティが、いずれ訪れるのか今のところは予想ができないが、いずれにせよ高度な技術・技能を持つエキスパートのような人材が、これらの最新デジタル技術を駆使して、さらに創意工夫を重ねることによって新たな物が作られていくのだろう。そうした姿に期待したい。当フェアが、板金エキスパートを目指す若い皆様にとって一つの目標となり、また励みとなって技能・技術の向上の一助になれば幸いである。」と次世代へ向けて期待を込めて声援を送った。
来賓を代表して、毛利 正 厚生労働省 人材開発統括官付 能力評価担当参事官が、「このフェアの開催によって、板金業界に携わる方々が技能を競い合い、技能の重要性を広くアピールすることは非常に意義深い。日本の産業が強い競争力を発揮し、また地域社会の発展に結びついていくためには、これまで蓄積された優れた技能がものづくり立国日本の将来を担う皆様方の世代にしっかりと継承されていくことが必要であると考えている。次代を担う若者の技能獲得、それから技能尊重の機運醸成をさらに後押ししていくことが厚生労働省としても重要であるとしている。」とあいさつをした。続いて秋元祥代 経済産業省製造産業局素形材産業室長補佐が、岡本繁樹 経済産業省製造産業局素形材産業室長のあいさつを代読して、「近年では、海外からの出展も100点を越え、まさにワールドワイドで板金加工技術・技能の交流と向上を図っている。また、普段触れることのできない多様な作品の技術・技能に触れることができ、ものづくりの素晴らしさを再認識する貴重な機会であり、関係者の皆様の長きにわたるご尽力に心より敬意を評する。出品作品を製作する過程で、高度な技術や新鮮なアイデアを出すのに苦労されたり、いろいろと試行錯誤される場面もあったのではないか。通常業務をこなしながら、作品として仕上げることは、並大抵のご努力では達成できるものではなく、皆様方の板金加工技能技術に対する真摯な姿勢に心から敬意を表する。また、学生作品の部においても、優れた作品が多数出品されており、今回の製作の過程で得られた経験を糧に将来に羽ばたいていかれることを期待している。」と激励の言葉を述べたあと、「わが国製造業の基盤を支えてきたのは、皆さんのようなものづくりに真摯に取り組んでこられた企業の方々である。今回の受賞作品には、産業界への展開が期待できる作品も多い。受賞者の皆様には、わが国製造業、金属加工業の牽引役として、今後も産官学の叡智を結集して、さらなる技術・技能の発展、競争力強化に向けた取り組みを期待申し上げる。」と述べた。
今回の特長的なポイント
安田克彦 優秀板金技能フェア審査委員会 副委員長が今回の出展について特長的なポイントを述べた。それによると、昨年の5月から10月にかけて、国内で159点、海外で104点、総数263点の作品の応募があった。注目すべき点は、海外からの作品が総数の40%を占め、海外出品が昨年の最高水準を維持することに加え、高い評価を受ける作品も多数見られるようになったこと。安田副委員長は、「このように海外で今フェアの意義が評価されるということは、非常に喜ばしいことではあるが、反面、国内、日本のものづくりの観点からは、出品される皆さんのさらなる発展をお願いしたい。」と感想を述べた。また、今回の展示については、「昨年の11月から本年の1月まで展示と共に、来場者による一般投票、及び日本塑性学会の会員様の19名、全国シートメタル工業会役員、総数1,336名の方の投票を得て、第1審査が行われた。応募はほぼ60%がわが国で、40%の海外作品。特に今大会では、インドの作品の優秀な作品が非常に目立っている。」とした。
今フェアで特長的に見られた点は、「例えば3Dのスキャナーであるとか、3Dの情報等、電子化された情報を使い込んで、複雑な曲げ加工等が非常に精度よく行われ、そうした部品を組み立て、接合して、より精度の高い製品が作り上げられていた。」と述べた。また、本フェアの目標について、「技能の研さんや加工技術の進化はもちろん、今後は人とソフト、機械、これらが融合した形で新しい製品づくりや、新分野へ挑戦するような製品、変化する社会へ適合するものづくり、こうしたものに進化していくことを期待したい。」とした。
第二部の交流会では受賞作品がズラリとならぶ実証加工プラザで行われ、懇親会が開かれた。
第31回優秀板金製品技能フェア上位受賞作品
■厚生労働大臣省
作品名:保育園用デザインシンク
(株)ナダヨシ(福岡県)
評価視点>
本作品は「全面を大きなR形状」、「傾斜側面による水はね防止形状」によって使用者である幼児にタイする安全性と使いやすさを配慮したデザインとなっている。一方、一般シンクと比べ、加工上の難易度は高く、以下の点が評価された。
(1)CADによる展開図生成が困難な3辺R接合などを経験則で展開した点
(2)スリット加工を最小限にとどめ、溶接条件の最適化により、低ひずみの溶接加工を実現している点
最終的な仕上げの美しさとともに、高度な技能と技術として評価されている。
■経済産業大臣賞
作品名:ねじりパイプ
(株)佐藤医科器械製作所
評価視点>
板材に角度を持たせた曲げを連続的に行い、ジャバラ状に仕上げた材料を、ロール曲げにより、突起形状をつぶすことなく筒状に仕上げている加工方法が評価された。また、両筒端面を精度良く合わせるとともに、最後の曲げ端面の折り込み面においても、曲面の折り込み面と高精度一致させ重ねられている。
このようなジャバラ曲面の材料をその形状を壊すことなくロール曲げを行う技術と高精度な端面合わせなど、目標通りの製品につくり込むには、ロール曲げの材料挿入角や加工速度など、加工の工夫が必要である。
本作品は、内部を通るガスや粉体の流れをスムーズにするなど、これまでにない形状のジャバラ製品として、様々な工業分野への展開が期待できる点においても評価できる。