【レポート】日本初の本格的な研削加工の専門見本市「Grinding Technology Japan 2019」が濃厚だった! 注目企業の動向は!?
2019年04月15日
日本初の本格的な研削加工の専門見本市「Grinding Technology Japan 2019」(主催:日本工業出版/フジサンケイビジネスアイ)(特別協賛:切削フォーラム21、特別協力:砥粒加工学会)が3月18日(月)~20日(水)の3日間、幕張メッセ展示ホール1で開催された。展示会期間中は天候にも恵まれ、来場者は4,988名を数えた。
開会式であいさつに立った小林大作 日本工業出版社長は、「今回フジサンケイビジネスアイとの共催で、このような規模の展示会を開催できたことを、大変うれしく思う。この展示会が業界発展の力となり、参加いただいている皆さま方にとって有意義な時間となるよう願っている。」と開催の喜びと期待を述べた。来賓を代表して高井 作 切削フォーラム21会長が、「日本発のGrinding Technology Japan 2019への来場者は、多くの周辺技術に関する“研削”のキーワードで、熱い思いを持った熱心な方々ばかり。単なる個々の企業の受発注というイベントにとどまらず、出展者同士、あるいは来場する技術者とともに、未来に向けた技術を進化、創造するような展示会と位置付けて、日本の工業社会に貢献できるよう、期待を込めてエールを送りたい。」と声援を送った。
特別協力の砥粒加工学会 向井良平会長が祝辞を述べた。この中で向井会長は、「研削の分野において、日本の技術レベルは欧米と比べても優位性があり、今日の日本のものづくりに大きく貢献してきたと言っても、決して過言ではない。しかし100年に1度の変革といわれるように、ものづくりの世界には、大きな変化の波が押し寄せてきている。日本のものづくりが引き続き世界に貢献するためには、いかに価値のある加工を実現していくかが1つの鍵だと思われる。その意味でも、研削の分野はまさに価値ある加工を実現しなければならない分野だと思っている。また、ご覧いただいた際には皆さまから多くのご意見をいただき、今後の研究テーマにも反映していく。」と研削の重要性について述べた。
注目企業の目玉はコレだ!
オークマ、岡本工作機械製作所、ジェイテクト、ナガセインテグレックス、牧野フライス精機、三井精機工業
オークマは、内径・外径研削の工程集約、多目的な高精度内面研削盤「Gl-20NⅡ」が展示されていた。これはオークマのオンリーワン技術である“サーモフリーコンセプト”を研削盤に適用したもの。サーモフリーコンセプトとは、独自の機械構造設計と熱変位制御技術により、高い加工精度を実現しましょう――という概念。面倒臭い寸法補正からも解放され、熱変位を安定させるための暖気運転時間を短縮、加工再開時の寸法補正の負担が軽減される。このお陰で長時間連続運転や工場の温度環境の変化にも抜群の寸法安定性を発揮するわけだ。つまりは、機械の稼働率が上がるという嬉しい設計なのだ。具体的には、機械の熱変位特性を踏まえ、適切に配置されたセンサの温度情報と、送り軸の位置情報で、環境温度変化による機械構造体の熱変位を推定し、制御してくれる。 岡本工作機械製作所も優位性をアピール! 「最新研削加工トレンド」をテーマにした技術発表の会場は、あっという間に満員になったという盛況ぶり。働き方改革と製造現場における高能率加工の鍵を説明していた。同社によると、①センサーによる自動化、②ロボットによる自動化、③文字レス操作――にヒントを見出しており、聴講者も熱心にメモをとる様子が見受けられた。同社ではベースから研削盤を自社製造しており、木型・鋳物の自社工場を保有し、部品加工から塗装、組立まで徹底した内製化を行っているが、これは世界でも珍しいことで、これら一貫体制の強みから、生産能力向上やトラブル発生時の早期解決を実現している。また、今回目立っていたのは、全自動平面研削システム「PSG63CA3-SELF」で、特長はセンシング技術を搭載した平面検査宇盤の全自動化システムだ。ボタンを押すだけで平面検査が始まる。 ジェイテクトは、グループの総合力を押し出していたのが特長的だった。今回同社の目玉となった展示マシンは、CNC円筒研削盤「GE4Pi-100」。安定した研削精度を保つため、熱を遮断するアイソレーションカバーを採用している。このマシンの注目点は、使いやすさの追求をしている点だ。特に職人へのこだわりを考慮し、職人技の見せどころである手動介入操作を実現し、単品加工の効率アップを図っている。さらに、高い回転精度と送り精度を実現している鍵を握るのは、熟練技能者による“きさげ”の技。真直性が高いうえ、摺動面の摩耗を防ぐことができるので、長期にわたる精度維持が可能なのだ。また、同社では、近年トレンドワードのひとつでもある“IoT”の概念について、IoTではなく、人、モノ、情報、サービスをつなぐ“IoE”(Internet Of Everything:すべてのインターネット化)を採用している。 ナガセインテグレックスのブースでは、超精密ロータリマルチ研削盤「RG500」に来場者は興味津々の様子。このマシンは、φ500のチャックサイズで、小物部品の多数個同時研削や、静電チャック等の中型部品の加工に威力を発揮する。独自開発の対話式加工ソフト「Neo」の搭載で、平面だけでなく、階段形状の加工も簡単に設定できるのも嬉しい。「機械構造を一から見直し、省スペース化にこだわった。」とされるだけあって、驚くほどのコンパクトさ! なんと設置スペースは従来比25%もダウンしたという。最大の特長は、回転テーブルに、独自の多面拘束非接触油静圧案内を採用していること。これは振動の減衰性に優れた利点がある。したがって上下左右の回転振れが少なく、広範囲のテーブル面積において、非常に高い平面精度を実現しているのだ。なお、タッチセンサを取り付け、機上計測機能を追加するといった充実した周辺機器をオプションにて取り付けも可能だ。 牧野フライス精機では、高精度CNC工具研削盤「SG10」が展示されていたが、このマシンのウリは、高精度・高速・コンパクト。小径から中径工具を高精度に安定して生産するマシンだ。機械本体は熱変形の影響を最小限に抑える左右対象構造。温度調整された研削液を機内に循環させるベッドクーラント機能も付いている。さらに注目したいのは、同社が独自開発した切削工具加工プログラム作成ソフト「MSPS-Ⅱ」(Makino Seiki Programming SystemⅡ)」が搭載されていること。これは溝や外周、底刃工程などの加工工程を自由に追加・編集することができるので、標準形状の工具から複雑形状の工具まで、様々な形状の工具に対応するシステム。3Dシミュレーション機能や、2Dシミュレーション機能、干渉チェック機能、寸法測定機能、サイクルタイム表示機能、マクロプログラム登録機能がある。 三井精機工業は、高精度ジグ研削盤「J350G」を展示。最大の特長はなんといっても、砥石自動切込み(U軸)が-3~+50mmという広範囲なストロークを実現していること。このストロークはあらゆるジグ研削盤の中でも最大のものなのだ。遊星回転で穴径の異なる穴を加工する際に、1本の砥石で小さな穴から大きな穴まで連続で自動加工することができる。また、三井らしさといえば、徹底したつくり込みで実現した究極の高精度だが、X,Y軸摺動面は、きさげ仕上げをした面上に精密ニードルローラを入れ、高い真直度の実現と微細な送りに追従。十分な厚みとリブが配置された3点指示ベッドは、基礎の変化に影響されないので、機械の直角・平行・真直を保つとのこと。さらに、自社開発した「G-MAPS」も搭載されているが、これは必要データを入力するだけで最適な研削加工プログラムを自動生成するもの。スマホ感覚で直感的な入力が可能なので、ラクラク操作で煩わしいことがないのも嬉しい。