【レポート】新技術を見た! ヤマザキマザックが自動化・デジタル製造を高度化する新型複合加工機並びにCNC装置とソフトウェアを開発! 

 ヤマザキマザック(社長=山崎高嗣氏)が9月4日、自動化やデジタル製造を高度化する新型複合加工機並びにCNC装置とソフトウェアを開発し、同社本社内(愛知県丹羽郡大口町)にて発表した。現在、製造現場のトレンドといえば、自動化やデジタル製造だが、「これらのニーズに対応するために機械の基本的なデザイン、配置、機能等を徹底的に見直した。また、製造業においては特に熟練作業者不足が深刻化しているうえ、ニーズの多様化に対応するため多品種少量生産の効率化が求められている。」と同社。

 工作機械の性能を最大限に引き出し、製造現場に高い品質と経済的効果をもたらす画期的な新製品をレポートする。

自動化ニーズの対応力を高めた新型複合加工機「INTEGREX i-Hシリーズ」

説明する岡田技術本部長
説明する岡田技術本部長
 徹底的な見直しをしたという「INTEGREX i-Hシリーズ」は、「自動化に対応するのはもちろんのこと、スタンドアローンで使う場合でも、現場の要望に合わせて満足させるコンセプトのもと機械のデザインや構造を見直した。」と同社の岡田 常務執行役員技術本部長(以下岡田技術本部長)。

 また、今回注目すべき点は、新CNC「MAZATROL SmoothAi」を搭載していること。名前にAiが付いているとおり、マシンが持っているデジタルデータをAIが処理をして、より生産性と効率を上げる機能が搭載された。今回発表したマシンは、サイズ違いの「INTEGREX i-450H ST」と「INTEGREX i-200H ST」の2機種。

 実機によるデモンストレーションを拝見したが、機械本体正面はフラットなデザインを採用している。この件について「オペレータの動線を短くし、オペレータが使いやすいように機械の構造等を決定してきた。」とオペレータ目線の設計を強調した岡田技術本部長。

自動化が加速する
自動化が加速する
 自動化ニーズの高まりもあって、納入後からロボットを設置するといった場合も多いことから、前面にオペレータの動線が凸凹してしまうと、ロボットの配置等が難しくなる。従来は、マガジンにオペレータがアクセスしやすいようとの配慮からオペレータ周りのマガジンの部分が出っ張っていたが、この辺りにロボットを置くと少々腕の長いロボットが必要になり、搬送部分に無理が出る。そこで、今回、見直しをかけ、前面を完全フラットにしたと説明をしてくれた。後々自動化した場合でも、アクセシビリティが高くなることを狙ったのだ。

 また、機械構造においても、拡張性を高めたツールマガジンを採用したほか、従来より仕様を向上させた下刃物台やチャック爪自動交換装置のオプション搭載を可能にしている。

 岡田技術本部長は、「近年、ミーリングの能力が高くなっており、お客様もより複雑化している。ミーリング工具の本数を増やして自動運転の時間を延長するなどの要求が多く出ており、それに対応するため、大容量マガジンとして従来110本だったものを、277本と、大幅にマガジン本数を増加できる仕様にした。」と話した。多品種少量のワーク等に対して、機械の停止時間を大幅に削減できるということは、連続運転時間を大幅に延ばせることにも繋がる。また、今回は下刃物台の能力を大幅にアップさせ、工具本数を増やし、ここで使えるミル能力を大幅にアップしていた。これについては、「複雑なワーク等が増えてきて、長いツールは、なかなかATCができないという問題があったが、下刃物台にセットして、精度のいい複雑な加工も可能になる設計にした。」とのことだった。

 旋盤系マシンの自動化を進めるにあたって考慮すべきものが“チャックの爪”だ。岡田技術本部長は、「ワークが変わればチャックを交換するか、使う爪を交換することが必要になってくるが、従来だと人が交換する場合、その間、機械が止まるが、今回、オートジョーチェンジャーにより、チャックの爪の自動交換を実現した。」とのことで、これにより多品種少量部品の連続加工時に必要なチャック爪の補充作業は、機械を停止させることなく実施が可能になり、段取りロボットとの連携により、チャック爪の補充作業そのものの自動化にも対応する仕様だ。より自動化技術を加速させている印象を受けた。

デジタル製造を高度化し生産性を高める「MAZATROL SmoothAi」×「MAZATROL TWINS」

説明する堀部ソリューション事業部長
説明する堀部ソリューション事業部長
 一方、工作機械の性能を最大限に引き出し、加工システム全体の生産性効率を向上させた新技術を搭載したのが、新型CNC装置「MAZATROL SmoothAi」と対応ソフトウエアシリーズ「MAZATROL TWINS」だ。

 同社では、「Mazak iSMART Factory」という取り組みがある。これは生産ボードのデジタル化によって得られるメリットの生産性向上を推進する取り組みを指している。同社工場では、同社の機械が同社製品部品を造っているが、その中で得た知見や技術を新しい価値として創出して、製品やサービスとしてお客さんに提供するという、コンセプトなのだ。
 
 昨今の製造現場では、熟練工がどんどんいなくなり、世界中で労働賃金が上昇するなど、製造現場で効率的にものをつくることが困難になりつつあるが、こうした中で「Mazak iSMART Factory」の提案は、一歩進んだ製造現場への強みになる。堀部 執行役員技術本部ソリューション事業部長(以下堀部ソリューション事業部長)は、「Mazak iSMART Factoryは、その中で使う製品として、INTEGREXがあり、CNC支援システムがあり、自動化ロボットも提供している。実際にデジタル制御を高度化する新型CNC装置MAZATROL SmoothAi、MAZATROL TWINSは、生産性をとにかく上げるのがコンセプトだ。」と話す。

次世代CNC装置
次世代CNC装置
 「MAZATROL SmoothAi」は、AI技術を活用したプログラム簡易作成機能や加工条件の自動補正機能を搭載し、さらに自動化支援機能を強化した新型のCNC装置。一方、「MAZATROL TWINS」は、“加工現場の工作機械の仮想モデルをオフィスのPC上に作成(デジタルツイン)”、工具データや各種パラメータを含め、全てのデータを現場の工作機械と完全に同期させることで、オフィスPC上の“仮想モデルで精度の高い加工段取り(デジタル段取り)”を可能とするソフトウエアシリーズだ。

 堀部ソリューション事業部長は、「AIを使ったプログラミングということで、SOLID MAZATROL(ソリッドマザトロール)を開発した。3D CADデータから自動的にマザトロールプログラムを自動作成できれば、プログラムにかかる工数を大幅に削減することができる。過去に製作したプログラムからAIが加工ノウハウを学習するので、このノウハウデータをもとに加工プロセスを推測し、最適な加工プログラムを自動で出力できる。」とのことで、ほぼ自動でプログラムがつくれるという。

 しかも、自社で製造している工作機械の部品では、従来だと約30分でプログラムができるところが、SOLID MAZATROLで3Dモデルから直接プログラムをつくると、なんと約2分で完成するというスピードだ。加工ノウハウは、ノウハウデータベースに蓄積され、ディープラーニングで学習していく機能があるので、この機能を使ってプログラムをどんどん組んでいく仕組みにより、機能そのものが進化し、賢く成長していくという。

 このAIのポイントは、似たような加工ワーク、さまざまな加工ワークの事例があっても、自動でお勧めしてくれるAIの機能を備えているので、加工の特性をどんどん覚えて、マシン自ら賢くなり、効率的な加工を提案してくれるという点だ。これがSOLID MAZATROL AI機能の強みであろう。

赤丸印の部位は曇りガラスが採用されていた。細々したものを見せないようにという細かい配慮にマザックらしさを感じる。
赤丸印の部位は曇りガラスが採用されていた。細々したものを見せないようにという細かい配慮にマザックらしさを感じる。
 一方、デジタルツインの考え方について堀部ソリューション事業部長は、「オフィスのPCで、工場内と同じ状態で段取りができる。いわゆるデジタルの双子という考え方で、実際の機械のデータ、それから、オフィスのパソコン上のソフトウエアに仮想マシンを作って、そこで実際の機械のデータを吸い上げて、その吸い上げたデータに基づいて、オフィスでさまざまな段取り作業をする。それによって効率的に段取りをし、シミュレーションによって分析をして、加工条件を調整した後に、実機にデータを送り返す。現状の加工現場は、実際の機械と、オフィスのパソコンのプログラムソースとの行き来が非常にたくさんあり、これらをゼロ、もしくは1回で済むという発想から成り立っている。」と説明した。

 実際に加工する機械は加工を続け、段取りで機械は止まらない。例えば、試し加工なしにオフィスのPCから加工を始められるような状態に持っていくという、一歩進んだ考え方である。

 今回、カッティングアドバイザーという新機能も付いた。これはシミュレーション機能で、加工の分析をして最適化する機能である。最適化したプログラムを実際の機械のほうにまた戻して、加工することを実行する。まさに、仮想機械によるデジタル段取りで実機の段取り作業は低減するうえ、稼働率が向上し、リードタイムが短縮される。これが同社の考えるデジタルツインによる生産性向上の仕組みだった。

 同社では、今後、こうした技術のインターフェイスをオープン化し、パートナーシップを強化することも視野に入れている。