工作機械の進化の歴史が見学できる! 「ヤマザキマザック工作機械博物館」が開業!

 ヤマザキマザック(社長=山崎高嗣氏)が、創業100周年記念事業として兼ねてから準備をしていた「ヤマザキマザック工作機械博物館」を11月2日(土)に開業した。開業に先立ち、前日の1日に開業式典並びに内覧会が開かれた。

 この博物館は、18世紀から現代に至るまで、工作機械の進化の歴史を見ることができる世界的にも珍しい、工作機械に特化した博物館だ。多くの工作機械を実際に動く状態で動態展示され、蒸気機関車や自動車、航空機など工作機械によって作られた代表的な工業製品も展示している。その数はなんと200点! またARを用いた展示で、マザーマシンとしての役割を子どもから大人まで楽しく、分かりやすく理解できる空間となっていた。ヤマザキマザック工作機械博物館をレポートする。

工作機械に特化した世界的にも珍しい博物館

特長的な建物入り口。博物館は地表から約11メートルの深さにある。
特長的な建物入り口。博物館は地表から約11メートルの深さにある。
 同社オプトニクス地下工場を改装して開設しているこの博物館の特長的なことは、地表から約11メートルの深さにあること。年間を通じて温度変化が少ない地熱を空調に利用する環境に優しい設計となっている。秘密基地めいた三角の建物の中に入り、エレベータに乗り地下まで行くと、そこには工作機械の歴史がぎっしり詰まっていた。近未来を想像させつつも、タイムスリップをした感覚を味わえる不思議空間というイメージ。


1927年に製造したベルト掛け旋盤
1927年に製造したベルト掛け旋盤
 まず、目についたのは、同社が“山崎鉄工所”だった1927年に製造したベルト掛け旋盤だ。同社は1919年に名古屋市中区にて製畳機械の製造で創業し、1927年に社内設備用として旋盤やフライス盤などの製造を開始し、現在に至っている。展示されているマシンの状態も非常に良く黒光りをしており、その姿は美しい佇まいを見せていた。

 “工作機械とはなにか?”という、一般向けの疑問にも分かりやすく説明が書かれてあった。強力な機械をつくることで、作業が早く、精密かつ安定的にものをつくり出すという工作機械の特性や重要性のポイントを簡単に分かりやすく英語と日本語で示してある。また、日本語にはふりがながふってあり、子どもでも大人でも、歩きながら工作機械のノウハウがスッと頭に入る。

紀元前から工作機械があったとは! 写真は古代エジプト時代のもの(レプリカ)
紀元前から工作機械があったとは! 写真は古代エジプト時代のもの(レプリカ)
 ああああっ! 驚いた! 工作機械の歴史の中で、世界最古の「旋盤」(レプリカ)が展示されているじゃないの!
 
 展示されていたのは、古代エジプト時代のものだ。紀元前から工作機械が使用されていたなんて! と思わず足を止めた。ピラミッドなど数多くの不思議な遺跡を残しているあの時代に使われていた道具が今も進化を遂げている! と、興奮して説明を読んだ。そこには、紀元前3世紀と推定されるエジプト王朝の墓のレリーフ彫刻に、2人が向き合って作業をしている旋盤のようなものが記されている――とあった。加工物に紐を巻き付けて回転させる方法が2000年以上も使用され続けているなんて! と仰天。 

写真右のマシンはブラット&ホイットニー社の初期の横フライス盤。その横にあるのは段車にベルトを掛けて動力を伝達する独製旋盤。
写真右のマシンはブラット&ホイットニー社の初期の横フライス盤。その横にあるのは段車にベルトを掛けて動力を伝達する独製旋盤。
 中世ヨーロッパに使用された「足踏みポール旋盤」、レオナルド・ダ・ヴィンチの「ねじ切り旋盤」などを拝見しながら、工作機械の父“ヘンリー・モーズレイ”の旋盤の仕組みに足をとめる。近代工作機械の源流といわれるのが、1797年に開発したねじ切旋盤だと書かれてあったが、この時代に、すでに超精密仕上げでできた2本の三角形のベッド摺動面の仕組みがあったことに驚かされる。この技術、今でも活用されていますものね。

 工作機械が活躍する産業分野といえば―――。機関車、飛行機、車などがドーンと展示されており、その迫力に圧倒される。ここは子ども大人もきっと大喜びの“映えスポット”になるだろう。

 もうひとつ、珍しいものがあった。エジソンがつくった録音機「エディフォン」(米国・1930年製)だ。19世紀後半から1950年まで生産されていたという。このスペースでは、打った文字が見える最初のタイプライターも展示されていた。こちらは同1920年製。

IoTを活用した現代における自動化ラインの仕組みも見学!

IoTを駆使した自動加工ラインも併設し、最先端の部品生産が見学できる
IoTを駆使した自動加工ラインも併設し、最先端の部品生産が見学できる
 時代は近代へ向かって歩いて行く。昭和初期の代表的な日本、アメリカ、ドイツの工作機械が展示され、歩くほど現代に近づいていき、最新の工作機械が展示されていた。

 この博物館は、IoTを活用した現代の工作機械で構成された自動加工ラインも併設し、実際の製品に使われる部品の生産を行っている。古代エジプトから現代の自動加工ラインを見学することで、工作機械の進化と先進性を体感できる施設となっており、非常に有意義な時間を過ごすことができた。

 一通り、見学したあと、「ものづくり体験教室」という部屋を発見した。ここでは機械組立仕上げ作業の体験「文鎮の製作」ができるとあった。注目したいのは、ヤスリがけ作業とキサゲ摺り合わせ作業を体験することができること。道具もプロ用具がしっかり揃ってある。これは貴重な体験ができそうだ! また、販売しているお土産品の数々も子どもから大人まで楽しめるものが並んでおり、要チェックだ!

「工作機械の重要性を広めたい」先代との約束

あいさつをする山崎会長兼博物館館長
あいさつをする山崎会長兼博物館館長
 開業記念式典であいさつに立った山崎智久ヤマザキマザック会長兼ヤマザキマザック博物館館長は、「この博物館は、前会長の山崎が“工作機械をもっと一般の方にも知って貰いたい”という思いのもと、20年前から構想を温めていたもので、世界の、昔の、有名な工作機械を集めていたが、残念ながら本人の存命中には実現できなかった。前会長が亡くなった際に、私は、“先代が実現できなかったこの博物館建設の夢をいつの日か必ず実現することが私の務めである”、とあいさつをした。それからすでに8年が過ぎてしまったが、ようやく博物館を開館できる運びとなった。」と喜びを滲ませた。

 また、博物館の特長にも触れ、「この博物館は2008年につくった地下工場を改装しているが、温度変化が年間を通じて少なく、環境に配慮した省エネ工場として当時は国土交通大臣省を受賞している建物。工作機械の博物館としてのユニークさだけではなく、建物の面でも環境に配慮した省エネ博物館としても注目されることと期待をしている。」と述べた。

古田岐阜県知事
古田岐阜県知事
 来賓を代表して、古田 肇 岐阜県知事が、「現在、人口減、地方創生と言われているが、博物館事業はこの時代において先端を行っているのではないか。地域に魅力発信の拠点をつくることで地域が元気になる。さらには子ども達に様々なモチベーションを与えて人づくりにも繋がる。特に本物を見せることの大切さを感じている。岐阜県はものづくりの地域。製造業の占める割合は14%で全国1位となった。ものづくり岐阜県を象徴するような工作機械博物館が誕生することは、ものづくり岐阜県をアピールできる絶好のチャンスでもある。」と期待を込めてあいさつをした。