「会社の利益に繋げることが使命」 牧野フライス製作所の販促活動に注目!
製造現場ドットコムの読者の皆様ならご承知の通り、ものをつくるモトである工作機械は訴求するターゲットが明確である。したがって、一般消費財とは違い、「よく分からないんだけど、買っちゃえ!」という購入者はほとんどいない。加工のプロたちが納得する工作機械をつくるメーカーは国内外に多数あり、競争もシビアである。そのため、世界中に技術の塊である工作機械を売るためには、実に様々な部署が奮闘している。
最近、展示会などで「マキノ(牧野フライス製作所)の雰囲気が変わった!」と多く聞かれるようになった。白を基調とした爽やかで開放的なブース展開と、そこに集う多くの来場者。販促グッズも小洒落ている。現在、同社のブランド戦略の鍵を握るのが、営業業務部 リーダの石貝 亜子香さんだ。来場者に配るための販促グッズや、ブースのレイアウトなど、頭を悩ませながらも日々、業務に邁進している。
“マキノらしさ”を出すのが仕事
― 主な業務内容について教えてください。
石貝 売上に繋がるよう営業の販売支援活動がメインです。私は展示会でもデザイン等、表層的な部分を担当しています。
― 最近、展示会でもマキノさんのブースが変わったね! と高く評価されていますが、心がけていることはありますか。
石貝 ブースのレイアウトでも、使う色やデザインを通して、来場者の皆様に“マキノらしさ”をいかに訴求できるか、は常に考えています。デザインと販促活動は別物だと思われるところもありますが、これらの取り組みを営業利益に繋げていけるよう日々考えながら仕事をさせていただいています。
― デザインには会社のイメージがそのまま出てしまうものですが、こうしたイメージ戦略についてのお考えはありますか。
石貝 ブランディングについて強化をしていきたいと思っています。例えば、“マキノってこういうイメージだよね”、“マキノってこんな特色だよね”とイメージしやすくしたり、お客様にもっとマキノファンになっていただくための戦略を検討していきたい。
― そこで、具体的に実行したいことは?
石貝 ロゴの見直しやカタログデザインの刷新に加え、展示会のルールづくりでしょうか。一貫性を持たせたものをつくるだけでも、マキノらしさがさらに強化できるのではないか、と。そこを楽しみにしながら、今後は展示会などのデザインを含め、会社全体のブランディングの底上げをしていきたいと思っています。
― 近年、企業にとってブランィングの重要性が認識されてきました。貴社は歴史が長く、高度成長期の昭和を醸し出しながらも、現代における医療・車・航空機等の最先端技術をイメージさせるという、相反することをうまくミックスさせています。
石貝 個人的にも好きな昭和っぽい雰囲気もマキノらしさのひとつですが、令和になった今、それだけではマキノの良さを伝えきれない。単純にカッコイイとか面白いなど、目を引くだけの感じではなくて、使う現場の生産性を高められる最先端の工作機械をつくっている、というマキノらしさを皆様にしっかり認識していただけるよう、そこにデザイン的な要素や理屈を肉付けしていく。これらの作業を丁寧にしっかりしていきたいと思っています。
仕事の醍醐味
― この“らしさ”という曖昧なイメージを具体的に示すのは至難の業だと思います。
石貝 “らしさ”というのは、曖昧で認識しづらいものですよね。“うちってこんな感じかなあ~”っていうのはあるのですが、“本当にそうなの?”と言われれば、ちょっと考えてしまう。もちろん“らしさ”は“良さ”として認識される必要がある。そのためには、そこをきちんと紐解いて、理解していくことが大切なポイントになるので、社内の皆様を巻き込みながらブランディングの構築を目標にしています(笑)
― 逞しいですね!
石貝 なんだかんだいっても1人じゃなにもできません。1人だけだったら、孤独なアーティストみたいになっちゃいますから(笑)会社の利益に繋がらなければ意味がありません(笑)
― 一人ひとりの個性が活かされ、のびのびと仕事ができる風土を感じます。
石貝 のびのびとお仕事をさせていただいていますが、不思議なことに、本当に好きなことをやっていいよ、と言われたら案外できないものなのです。変な言い方ですが、“今回こういう目標があります、数字的にはこうですよ”とか、“今回の営業の目標は全体的にこうなので”という前提があると、そこに向かって見定めができます。そこでいろいろ実行していくことが、仕事の醍醐味なのかもしれません。
― 仕事の難しさを感じるところはありますか。
石貝 この仕事は、効果測定ができないところでしょうか。数字に出てこないので、説得するときに難しさを感じてしまいます。
― 確かに潜在的な数字が内包されているはずなのですが、表面に出てこないのはもどかしいですね。
石貝 いつもこれについては、日々どうすればいいんだ~! と悩んでいるのですが、答えがまだ見つからないのです(笑)
― そんな中でも、ブースのイメージを変えていったことは凄いことだと思います。
石貝 協力会社様の力も借りながら、全員の力を結集したお陰で、評判を得ることができました。あれこれと取り組んでいくうちに、ご協力いただける会社様も増えていきました。今後はさらにブラッシュアップして、さらに良い方向に行けばいいなと思っています。
デザインの重要性を考える
― 工業製品を売るためのデザインは、一般消費財と違って難しい。工作機械であれば、高剛性、超精密、高能率といった特長を主に持ちますが、競合他社との差別化も考えなければならず、訴求するためのアイデアにおけるポイントがあれば教えてください。
石貝 逆の発想を持つことでしょうか。お客様に寄り添う姿勢は弊社の良さでもありますが、不思議なことに画期的な技術とともにそれを前面に出すと、訴求したい部分が薄くなるという現象も起きて、“結局何があったのか”と混乱を招くこともあるのです。あれもこれも良い点を全部、ということは、必ずしも得策ではないということかもしれません。
―その課題を打破するための方策は?
石貝 展示会を例に出しますが、考え方として、あえてイメージとは違うものを持ってくる。すると、大抵、ああでもない、こうでもないと、噛みつかれる(笑)あえてそういうものをピックアップすることにより、様々な意見が出され、意見もそぎ落とされて納得するものが残っていく。皆がいぶかしげに思うだろうな、というものを幾つか提示していくことも大切なのかもしれません。そうしなければ、なかなか新しい発想をもって、既存のものを打破することができないと感じています。
― 10月に開催されたメカトロテックジャパンでも、貴社の販促グッズが目に止まりました。デニム生地のミニバッグは好評でした。
石貝 展示会が終わると役目がなくなるものよりも、普段使いができるグッズのほうが貰って嬉しいものですよね。なので、デニムというトレンドを取り入れ、企業名も目立たないようにしました。ちょうどお弁当を入れたり、買い物に行くにも役立ちます。わたしも使っているんですよ(笑)
― 仕事を通して嬉しかったことを教えてください。
石貝 この部署に来て約1年半が経過しましたが、理解を示してくれる方に恵まれ、非常にありがたく思っています。また、自分の仕事はこうなんだ、というポイントを崩さずにやってきたところは、自分でも頑張れたところでしょうか。そして、なにより、こうして仕事ができることを嬉しく思えることが、自分自身で良かったと思っています。
― 機械業界にはたくさんの人々が働いていますが、石貝さんのように縁の下の力持ち的な方が今後も増えていくといいな、と思っています。ありがとうございました。